幻獣使いの英雄譚

小狐丸

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戦乱編

聖域結界

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 ロンバルドの飛空船基地で慌ただしく大勢の兵士や作業員が走りまわっている。
 緊急の出撃に皆が緊張した表情だった。


「どのくらいで出航出来ます?」

 フィリッポスが作業員を監督している人物に、出航予定時間をたずねる。

「はっ!15分で出航準備完了します」

「そうですか、航路と目的地の確認をよろしくお願いしますね」

 食料やポーションなどの薬品類などが積み込まれていく。

 輸送船型飛行船三隻とドノバンが操船するユキトの飛行船に、フィリッポス、ノブツナ、バーバラ、アイザック、ヴォルフが乗り込んでいく。

 ティアとメイド隊やイリスは、国境付近での難民支援に向かう。

 ユキトはサティスとルドラの背に乗っていた。

「さあ、僕等も行こうか」

 ユキトは六芒星の頂点のうち、一番遠くのポイントを担当している為、一足先に北の空へと飛び立った。


 ユキトから遅れること数分で、ロンバルドの飛空船基地から、次々に飛空船が飛び立って行く。



 トルースタイン共和国内の他の都市からも、精鋭部隊が旧ケディミナス教国国境付近へ出陣して行く。
 彼達は、ケディミナスから魔物がトルースタイン側に流れてくるのを防ぐと共に、避難民が魔物に襲われないよう駆逐する役割を持っていた。


 パルミナ王国とブランデン帝国のケディミナス侵攻から始まった混乱に対応するため、慌ただしく準備が出来た部隊から出撃して行く。




 聖域結界を張る為の魔法具を設置する、六芒星の頂点に位置する場所に、三隻の飛空船がそれぞれ向かい、到着すると護衛の部隊とフィリッポス達が準備を始める。
 ドノバンもアイザックと護衛の部隊を降ろすと、飛空船による援護攻撃の為に飛び立った。
 ユキトもルドラに乗ってポイントへ到着すると、早速準備にかかる。




 聖都は正に地獄の様相を見せていた。
 黒い肉の塊はドンドン膨れ上がり、パルミナ王国兵士やブランデン帝国兵士を呑み込み、さらに魔物まで呑み込み始めている。
 黒い巨大な肉のイソギンチャクが触手を蠢かせ、新たな獲物を欲して、周りに触手を伸ばしていく。
 その触手には、取り込まれた人々の苦しげな顔が無数に浮き出ている。
 取り込まれた人々は、怨嗟の叫びを上げている。

 瘴気渦巻く聖都は、ここが神聖な宗教国家の首都の面影はない。




『こちらユキト、こちらは準備完了です』

 ユキトが、通信の魔導具でフィリッポス達に、準備完了の連絡を入れる。

『こちらバーバラだよ。こっちも済んだよ』

『こちらノブツナ、こっちも完了した』

『こちらアイザック、準備完了です』

『こちらヴォルフ、準備完了だ』

『こちらフィリッポス、準備完了です』

 全員の準備が完了した事を確認して、ユキトは術式の発動の合図を出す。

『では、合図で魔法具を起動して下さい。いきますよ、3、2、1、起動!』

 ユキトの合図で魔法具が起動する。
 ユキトは同時に、聖域結界(サンクチュアリィフィールド)を発動する。
 今回、ユキトが用意したのは、ユキトが発動した聖域結界(サンクチュアリィフィールド)の魔法を広範囲に増幅する魔法具だった。
 ユキトが発動した聖域結界は、六つの魔法具の力を借りて、旧ケディミナス教国の聖都を覆い尽くした。

 六芒星の頂点に設置した、魔法具から光の柱が立ち上り、六本の光の柱が天を突く。
 さらに光の柱の内側が光のヴェールに包まれる。


 ケディミナス教国中から集まって来ていた瘴気が、瞬く間に浄化されて行く。それは聖域結界(サンクチュアリィフィールド)の中だけではなく、その周辺の瘴気まで浄化されていく。

「これは凄いね、後で褒めてあげないとね。じゃあ魔法師部隊、火魔法と光魔法が使える者は付いておいで」

 バーバラが援護攻撃の為に聖都へ向かう。
 同じくアイザックとフィリッポスも魔法師部隊を率いて、援護攻撃の為に聖都へ向かった。

 ノブツナとヴォルフは避難民の支援に向かう。



「ふぅ~、これで三日は聖域結界(サンクチュアリィフィールド)は維持し続けれる」

 ユキトはマナポーションを一気に飲むと口元を拭う。

「げふっ、さすがに結構魔力を持っていかれたな」

 魔法具の補助が有ったとしても、これだけの広範囲に、聖域結界(サンクチュアリィフィールド)を発動させるのは大変だった。

「それは仕方ないですよユキト様、これだけの儀式魔法を魔法具の補助が有ったとしても、ほぼ一人で発動させたのですから」

 実際には、フィリッポス、バーバラ、アイザックも多少魔力を使っているが、それでもユキトがほぼ一人で発動させたと言うのは間違いない。

「じゃあ行こうか」

 ユキトはサティスとルドラに乗り込んで、聖都上空へ飛び立った。



 聖都で際限なく増殖と膨張を繰り返していた、黒い巨大な肉のイソギンチャクが、神聖な光のヴェールに包まれ、苦しげにのたうちまわり膨張を止め、縮んでいく。
 触手に取り込まれた人々の顔も、いっそう苦しげに叫びを上げる。

 その声は怨嗟か、それとも救いを求める声か。
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