幻獣使いの英雄譚

小狐丸

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激動編

レベルアップ2+α

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 ユキトとサティスが、バルクにオークの後始末を任せて、オークの集落にたどり着くと……、

「……うわ~」

 思わず、ユキトが声をあげた。
 ユキトとサティスが、オークの集落に着いた時、何故かそこではイリス、ティア、アメリアによる、『オーク大撲殺大会』が繰り広げられていた。


「え~~い!」

 アメリアが可愛い声をあげて、小さな身体に不釣り合いな武骨なメイスを、跳び上がりながらオークの頭に叩き込んで撲殺している。

「えい!」「やぁー!」

 アメリアから数メートル離れて、イリスがオークにメイスを振るっている。その度にオークが、錐揉み状に飛んで行く。
 また、反対側数メートル離れて、ティアが戦鎚を振るいオークを撲殺している。


「えっと、ジーブル。これはどうしたの?」

 ユキトが、イリス達を見守るジーブルに話しかける。

『あぁ、ユキト様。皆様、レベルアップしてステータスが上がったので、遠距離からの攻撃だけではなく、近接戦闘の訓練もした方が良いと言う事になりまして』 

「……あぁ、そうなんだ。しかし、……全員、打撃武器なんだね」

 何種類か武器を渡してあったが、全員が打撃武器を選ぶとは思っていなかった。
 見る間に、オークの数を減らすイリス達。そこで、ふと、ユキトは疑問に思った事をジーブルに聞いてみた。

「そういえば、上位種が居ただろう?どうしたの?」

『オークキングが居ましたが、最初に遠距離からの法撃を集中して斃しました。上位種を最初に斃す方が、安全に闘えますから』

「……あぁ、うん、そうだね、上位種が残って居ると、配下を統率されるて厄介だもんね」

 オークキングは、既に斃されている様だ。
 イリス達が、討ち漏らしたり、逃げ出すオークをルドラとエリンが狩っていく。程なくその場に、イリス達やルドラ達以外、動く者が居なくなる。




「お疲れ様!」

 ユキトが、闘いを終えたイリス達に近寄る。

「あっ!ユキトおにいちゃーん!」

 アメリアが、レベルアップして上がったステータスで、ユキトのお腹に突撃してくる。

「ぐふっ……、アメリアちゃん。頑張ったね」

 抱きついたアメリアの頭をユキトが撫でる。

「ユキト様、一日でレベルが四十になりました」

 イリスも褒めて欲しそうにしていたので、頭を撫でてあげる。

「よく頑張ったね、イリス。近接戦闘のスキルも覚えたかもしれないね」

 少し離れて、ティアがモジモジしているので、ユキトが歩み寄り頭を撫でてあげると、ニッコリと嬉しそうに笑う。

「……あっ、ありがとうございます」

「じゃあ、皆んなで討伐部位の剥ぎ取りしてしまおうか。ジーブル、ヴァイス、ルドラ、エリンは周りを警戒しておいてくれ。アメリアちゃんは、休憩してて良いよ」

 ユキトが、皆んなに声を掛けると皆んなが、それぞれ後始末を始める。

「あのっ、ユキト様。お父さんとお母さんも、私達と同じ様に訓練するのですか?」

 ティアがユキトに、普段ヴォルフのもとで働いている、父で犬獣人のダンと母で猫獣人のニケの事が心配らしい。

「ティア、心配しなくて大丈夫だよ、ダンさんとニケさんはヴォルフさんと爺ちゃんが鍛えるって言ってたから。それにダンさんとニケさんは、普段から自警団の獣人部隊で働いているから、ティア達に比べると元々のレベルも高いからね」

「そうですね、私もお父さん達に負けない様に強くなりますから」

 そう言うとティアは、後始末に戻って行った。

「本当は、争い事は苦手なんだろうな」

「そうですね、兎人族は闘いを好みませんから。それでも、イリスやアメリアちゃんと一緒に強くなりたいのでしょう」

 サティスがティアを見ながらそう言った。

「そうだな、……ティアは勿論、イリスやアメリアちゃんも実際には、積極的に戦いの場に出るわけじゃないけど……。となると、ジーブル達が何時でも側でガード出来ないよな……」

 ユキトが、ブツブツと独り言を言いながら、何かを考え始めた。それを見てサティスは、また始まったと、少し呆れる。
 今迄、何度も見てきた、ユキトが何か物を作り始める時の行動である。これは、明日からは、ユキト抜きでの訓練になりそうだとサティスは諦める。





 次の日から、場所を変えて魔物を相手のレベルアップを兼ねた訓練は続けられたが、案の定ユキトの姿はそこにはなかった。

 ユキトは何処に居るのかというと、何時ものように、自宅の工房に籠っていた。

「先ずはアメリアちゃんだよな。馬は違うか、でもいざという時に、乗れる方が良いよな~」

 ユキトが工房に籠って、何をしているのか。
 それは、イリス、ティア、アメリア達専用の護衛用ゴーレムを作ろうと思い立ったのだ。
 実際に、魔物の氾濫や戦争が起きた時、ルドラやジーブル達は、ユキトと共に戦いの場に赴くことになる。そこで、イリス達に専用のゴーレムを作る事に決めた。

「そうだな。アメリアちゃんの側に、余り厳ついゴーレムはないよな。……クマのヌイグルミを大きくして乗れる様にするか、クマなら二足歩行でも闘えるな……うん、魔物の毛皮を被せれば、手触りも良いから、アメリアちゃんも喜ぶだろう」

 ユキトはアメリア用に、小型のクマ型ゴーレムを作ることに決め、設計図を描いて行く。
 ある程度、クマ型ゴーレムのアウトラインを決めると、後は作りながら仕上げていく事にして、イリスとティアのゴーレムをどうするか考える。

「後は、イリスとティア用だな。さすがにアメリアちゃんと同じ、ヌイグルミみたいなクマのゴーレムはないよなぁ~」

 ユキトは続けて、イリスとティアのゴーレムを考えていく。

(やっぱり乗れる方が、もしもの時に安心だよな。人型に拘る事もないから、余計に選択肢が広くて迷うな……)

 ユキトは、何時もの様に時間を忘れて、ゴーレム作成に熱中して行く。
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