異世界立志伝

小狐丸

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アンデット

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 清浄な光が辺りを包み込み、瘴気溢れる土地ごと浄化されていく。

 腐った肉が崩れ落ち、小さな魔石を残す。

 ダンジョンが溢れだし、スタンピードの被害にあった人達の死体は、アンデットのゾンビとなって動きだす。ゾンビは、生者を求めて彷徨い歩く。

 ゴンドワナ帝国とローラシア王国で多数の死者がだした魔物のスタンピードは終息したが、その傷痕は大きかった。
 その一つが、処理しきれなかった死体のアンデット化だった。ゾンビやスケルトンなどの低級アンデットが、生者を求めて彷徨い歩く。
 ゾンビ自体は動作も遅く弱い部類に入る魔物だが、土地の瘴気汚染や疫病が蔓延する原因になる。






「ひぃ~!」

 オウカが悲鳴をあげながら棍を振るい、グチャと音を立ててゾンビの頭を粉砕する。
 ゾンビやスケルトンは、火魔法で焼くか、浄化魔法で消し去る以外に、頭か核を潰す事によって倒す事が出来る。

 火魔法と聖属性の浄化魔法が、まだ使えないオウカは、棍を使って戦っていた。

『ピュリフィケーション』

 オウカの側で浄化魔法を使い、神官戦士がゾンビやスケルトンを消し去っていく。

「オウカさん、ゾンビが怖いのですか?」

「スケルトンは平気なんですけど、ゾンビは見た目が気持ち悪いので…………」

 オウカはカイトが領都へ帰った後も、魔物のスタンピードで被害を受けた帝国周辺の土地を巡回していた。たくさんの人の命が失われた土地には、怨みや呪いにより瘴気がその場に蔓延する。その瘴気の所為でアンデットが発生するため、神官戦士や魔法師部隊を中心に、アンデットの討伐と土地の浄化をしているのだ。

 僧侶や神官が使う浄化魔法『ピュリフィケーション』があれば、ほとんどのアンデットモンスターは一瞬にして浄化され土地も浄化されるのだが、広い土地を全て浄化するには、ドラーク伯爵軍には神官戦士はいない。その為に、魔法師部隊が火魔法で焼き、騎士団員は物理攻撃で倒した後に、聖水で浄化していく。

 オウカは、一日も早くイリア達と肩を並べて戦えるように、一人神官戦士達と残り戦っていた。

「オウカさん、回復魔法のヒールでもゾンビやスケルトンなら有効なので、出来るだけ回復魔法のスキルを伸ばすことを考えたほうが良いと思いますよ」

「うっ…………、わかってはいるんだけど、つい簡単な方法で倒しちゃうのよね」

「せっかく僧侶職と回復魔法スキルを伸ばす機会ですから、頑張って下さい」

「……はい」

 ドラーク伯爵軍の浄化部隊は、ゴンドワナ帝国を周りながら浄化を続け、十日ほどで領都へと帰還する。オウカは、その間の頑張りで、ピュリフィケーションが使えるまでになる。





「ふんっ!」

 横薙ぎされたハルバードが、三体のスケルトンを一撃で砕いていく。

「魔法師部隊はゾンビを焼き尽くせー!」

 バルフレア将軍が指示を飛ばす。

「「「「「はっ!」」」」」

 ファイヤーボールがゾンビを襲い、焼き尽くしていく。

 ローラシア王国でも魔物のスタンピードによる被害は甚大なものだった。しかしゴンドワナ帝国に比べると、諜報部からの情報を得るのが早かったお陰で、騎士団を素早く現地に送り、魔物の討伐が出来た。
 現在は、処理しきれなかった死体から生まれたアンデットの討伐を行なっていた。

「はぁ、帝国のバカヤロウ、いらんダンジョンなら潰しておけよ」

「将軍、あの規模の小さなダンジョンは、中々見つけられないでしょう。しかも場所が場所ですし」

 悪態を吐くバルフレアに部下の騎士がつっこむ。

「わかってるよ!」

 ダンジョンが、戦争状態にあるローラシア王国とゴンドワナ帝国の国境付近にあった事は、気付けなかった両国に責任がある。しかしあの小さなダンジョンを、有用な資源もない森の中から発見するのは無理というものだ。
 しかしその結果失われたローラシアの民は、小さな被害だなんて言えない。

 ただでさえゴンドワナ帝国との戦争が、膠着状態にある現在、自然災害とも言える魔物のスタンピードによる自国民の被害は、ローラシア王国にとって痛いではすまない衝撃だった。

「ちくしょう、このままじゃサーメイヤ王国の一人勝ちじゃねえか。何とかあの国傾かねえかな」

 バルフレアは広がりつつあるサーメイヤ王国との国力に、他力本願な願いをする程には、ローラシア王国の状況はよくなかった。





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