異世界立志伝

小狐丸

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サーリット王国は潰すべきか?

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 俺が不在の中、結界の魔導具も使わず昨夜の襲撃者を問題無く撃退出来た。

 エピル達の戦闘力も証明された。彼女達は屋敷の護衛とメイドの仕事が合っているみたいだ。

 スーラの造った騎士型ゴーレムも上手く機能していたみたいだ。俺の造った三体のゴーレムは出番がなかったが、こればっかりは仕方がない。

 フーガ率いる諜報部隊も問題無く機能している。今回はエピル達の訓練用に、わざわざ泳がせて屋敷を襲撃させたけど、フーガ達の実力なら街に入った時点で拘束なり、何なり簡単に処理出来るだろう。

 エピル達のバトルモップも出番がなかった。弱過ぎだろサーリット王国の諜報部隊。

 さて、今回の襲撃者は簡単に撃退出来た訳だが、だからと言って許せる事じゃない。エルやイリアは同じ時期に子供を産んだせいもあるのか激怒していた。特にルシエルは自分の娘を奪いに来た訳だからその怒りは激しかった。当然、俺も自分の娘を奪いに来る馬鹿共に怒ってはいた。




「さて、今回の襲撃者は全員エルフだった訳だけど、もう考える必要がないよな」

 俺と妻達、騎士団をまとめるランカス、諜報部隊トップのフーガで話し合っていた。

「そうね、サーリット王国の愚王が出した命令みたいね」

 エルが怖い笑顔で言う。相当怒っているみたいだね。

「まぁ、ルーがハイエルフとして産まれた時点で、何がしかのチョッカイはかけてくるとは思ったけど……、いきなり影を三十人も送り込んで来るなんて」

「ルシエル、影って?」

 ルシエルが襲撃者達の素性を知ってそうなので聞いてみる。

「影とはサーリット王国で国王と六長老が動かせる諜報、暗殺、誘拐、破壊活動などを行う部隊のことです。一般のエルフにはあまり知られていませんが」

「しかし随分とお粗末な諜報部隊ですね」

 ルシエルの説明を聞いていたフーガが、エピル達に簡単に撃退された影のメンバーの評価をする。

「サーリット王国の兵士の質もあの程度ですか?」

 ランカスがルシエルに兵士の質を聞いた。

「そうね、良くも悪くもサーリット王国は強力な結界で覆われた国なの。本来なら認められた方法でしか国に入る事が出来ないようになっているの。何千年も外敵から護られた環境で暮らす国の兵士が精強な訳がないわ。だがら私は結界に頼らず兵士の質を高める努力が必要だと何度も訴えたのに」

 哀しそうな顔を見せるルシエルに胸が痛む。愚王や六長老には責任が伴うが、ルシエルの知り合いや友人もいるだろう。そこを俺の屋敷へ襲撃者を送り込んだという事で、国ごと潰す訳にはいかないだろうな。

「落とし所が難しいな」

 俺がそう言うと皆んなも考え込んでいる。サーリット王国を潰すだけならドラーク伯爵軍を動かすまでもない。問題は全てのエルフが敵対している訳ではないという事だ。ルシエルも罪も無い一般国民が被害を被るのは望まないだろう。

「確かに何処まで制裁するかのさじ加減が難しいわね」

 エルも考え込む。エル自身もエルフの血が入っている事もあり、エルフに対して嫌悪感も無いし敵視している訳でもない。

「王城を破壊しますか」

 ランカスが過激な提案をする。

「うん、良いかもね」

「なら出来るだけ少人数で行こうか」

 ランカスの過激な提案にエルは乗り気だ。俺も少数精鋭で行くことを提案する。

「そうですな……、カイト様、ルシエル様、イリア様、私、バルデス、ユーファン、フーガ辺りでどうでしょう」

 ランカスがメンバーを上げる。

「そうだな、領地にはエルとコレット、ボーデンが居れば大丈夫か。屋敷の警護はエピル達に任せれば心配ないしな」

「そうね、オウカはルキナに見ておいて貰おうかしら」

「そうだな、オウカも小さな子供に護られるのは恥ずかしいかもしれないけど、取り敢えずは仕方ないよな。希少種族なんだから、念には念をかな」

 話し合いで、サーリット王国への対応が決まった。取り敢えず愚王には痛い目に遭って貰わないといけない。六長老も同罪だ。なんせ六長老の中にはルシエルを嵌めて酷い火傷を負わせた犯人が居るのだから。

「一応、愚王は殺さない方針だけど、その辺は臨機応変に。では、解散!準備にかかろう!」

 俺の号令でそれぞれが準備にかかる。

 俺も忙しいが、騎士団長のランカスや部隊長のバルデスやフーガも暇じゃない。今ある仕事を片付けて、参加するメンバーのスケジュールを調整する必要があるのだ。

 俺はその間に、エルにオウカを預けて少しでも鍛えて貰うように指示しておいた。



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