異世界立志伝

小狐丸

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カイト開発に追われる

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 フーガが屋敷の執務室に入って来る。

 その場には俺以外に、ランカス、バルデス、ボーデン、ユーファン、サンクが集まっていた。

「ターゲットは全て確認しました」

「それで、裏組織の暗殺者達で間違いないんだな」

 フーガの報告に、ランカスが怒りを抑えた声で聞く。俺に暗殺者を送る存在がいる事が許せないみたいだ。

「間違いない。奴らはローラシアの裏組織だ。
 ローラシアの諜報組織に所属していた俺が間違う訳がない」

「ローラシア王国が暗殺者を送って来たのか」

 ランカスの目が座って来る。

「いや、ちょっと待てランカス。ローラシアの裏組織をローラシア王国が使うのはおかしい」

「ふむ、それはそうですな」

「あゝ、むしろ帝国の方が疑わしいな」

「そいつらは、フーガ達だけで排除するのか?」

 バルデスが自分も行きたそうにフーガに聞いている。

「手伝いたければ行っても良いけど、暴れ過ぎるなよ」

 俺がそう言うと、バルデスが満面の笑みで頷く。

「我等も街の警戒に出ますから大丈夫でしょう」

「……俺も行くから安心してくれ」

 ランカスとボーデンがサポートしてくれるのなら大丈夫だろう。

「じゃあついでにサンク」

「鍵開けか?いいぜ」

 俺が全部言い切る前にサンクが立ち上がる。

「じゃあ頼んだ。後の報告はフーガから聞く」

 全員が部屋を出て行く。

「さて、俺は開発のお仕事なんだよな」

 横を向くと、ルシエルが迎えに来ていた。

「はい、開発のお仕事ですよ」

 ニコニコとルシエルが微笑む。

「ルキナも一緒にお手伝いするのー!」

 勢い良くドアが開いて、ルキナが部屋に入って来た。そのままの勢いで俺の胸に飛び込んで来る。

「ルキナも手伝ってくれるの?」

「うん!」

 開けっ放しのドアからイリアも入って来た。
 今日はこのメンバーで出掛ける事になった。


 今日は領都と海辺の町までの間に、村や町を建設するための基礎工事の予定だ。

「ねえねえ!ルキナ凄い?」

「あゝルキナは凄いな」

 ルキナが村予定地を整地する手伝いをしている。
 まだ世間的には幼女なのに、土魔法を駆使して地面を平らにして行く。
 まだ、魔力量が多くないので、ルシエルと俺でサポートする。その間、イリアが俺達の護衛に付いている。

「平らになれー」

 小さな手で、ペタンと地面を叩いて土魔法を発動する姿を見ると、思わず頬が緩んでしまう。

 その横でルシエルは土精霊に頼んで、広い範囲を整地している。

 それを横目で見ながら、俺は村の外壁を造って行く。
 この周辺には、強力な魔物の居ないので、防壁も高さ2メートル幅20センチ程度で、どちらかと言えば、野生動物避けの意味あいが強い。

 俺が村の建設予定地を外壁で囲い終えると、ルキナとルシエルも整地を終えていた。

 トテトテとルキナが走り寄り、俺の腰に抱きついて来た。俺が頭を撫でてあげると、嬉しそうに兎耳をピコピコさせている。

「パパー、次は何するのー」

「そうだな、ルキナはルシエルと用水路を引いてくれる?」

「うん!ルキナ出来るよ!」

 ルキナがピシッと手を上げる。

「じゃあルキナお願い」

「うん!」元気よくルキナが返事する。

「ルシエル、ルキナを頼むね」

「ええ、お任せ下さい」

 ルシエルとルキナに用水路を任せ、俺は一人村の中で井戸を掘りに行く。

 探知魔法で水脈を探し、井戸の位置を決めると、地面に手をつき土魔法を発動する。

 水脈に当たり水が出てくると、井戸の表面を石に変化させる。
 さらに水を含めて井戸全体に浄化を掛けて、薄い石の板を被せておく。

 同じ作業を村の何ヶ所かで続けて、井戸を複数確保する。

 井戸を作り終えてルキナとルシエルを見に行くと、用水路もほぼ完成していた。
 俺は用水路に合わせて広範囲に開墾する。
 地面に手を付き魔法を発動すると、土地が平らになり、土が掘り起こされフカフカの柔らかい畑が出来上がる。

「すご~い!」

 ルキナがバンザイして走り回る。

「カイト様、この後は領内の街道整備をお願いします」

 ルシエルから領内の街道網の整備を頼まれる。
 ルシエルは現在のドラーク子爵領の内政責任者に就いている。だがら俺はルシエルの指示通りに、領内の工事に飛び回る。

 ルキナを肩車して、町や村を結ぶ街道網を整備して行く。
 ルシエルと分担して行えるので、工事のスピードは、現代日本で重機を使うよりも、はるかに早く出来上がる。

「交通網の整備は、領内の発展に影響が大きいですから」

「うん、正しい認識だね。俺は大変だけど」

「パパ大丈夫?」

 肩車しているルキナが、俺の顔を覗き込む。

「大丈夫だよ」

 俺の土魔法とルシエルの土精霊魔法で、曲がりくねること無く、真っ直ぐで広い街道があっと言う間に出来て行く。
 魔力枯渇しかけると、マジックポーションを飲み休憩をして、魔力が回復するとまた作業を続ける。

 ルキナは、いつの間にか俺の頭を抱かえて寝ていた。

「今日はここまでにしましょう」

 夕方まで工事に励むと、ルシエルが今日の作業の終了を告げる。

 俺は魔力の残りを確認して、全員を連れて屋敷へ転移した。

「ではカイト様、今日はゆっくりお休み下さい」

 ルシエルがそう言った後、小さな声で「明日もありますから」と言ったのを聞こえてしまった。

 まぁ、自分の領地だからと諦める。


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