異世界立志伝

小狐丸

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国境の街 ノトス

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 深淵の森外縁部から国境の街、ノトスまでは徒歩で2日掛かるみたいだ。
 危険な森からかなり近い場所に街はあるようだ。なんでも、深淵の森は危険な魔物が多いが、その分貴重な素材を得れる場所でもあるようだ。

 あれから後始末を終えた俺達は、日も暮れて来たので、森から離れた場所まで移動して、一晩野営した後、翌朝、二人の盗賊を引き連れ、ノトスの街に向け歩いている。
 深淵の森側には、馬車などが通る事は無く、少女も徒歩で森の側まで来たらしい。

「そういえば、あなた名前を聞いてなかったわね。名前を教えてちょうだい」

 なんか無理して強がってる感じだな。

「俺の名前は、カイトです。14歳になりました」
「えっ!まだ14歳なの?身体が大きいから同じ歳くらいか歳上かと思ったわ。まぁ良いわ、私の名前は、エルレイン。エルで構わないわ。それにしても、あなた若いのに強いのね。高位の冒険者かしら?」
「高位の冒険者って言うのが、何だか知らないけど、冒険者じゃないよ」

 そこでエルレインが何かを思い出したようにカイトに聞く。

「……そういえば、カイトあなた深淵の森から出てこなかった?」
「あゝ、あんなに広い森だとは思わなかったよ。森を抜けるまで、七日も掛かった」

 あれ?エルからの反応がない。

「……聞き間違いよね、そうよ深淵の森の深部で人が生きれる訳がないもの」

 エルがブツブツと呟いているけど、その気持ちも分からなくない。俺だって何回か死ぬかと思ったし、もう一週間も森に籠るのは勘弁して欲しい。二~三日目なら良いけど。


 カイトの成長速度が早いのは、稀人の特性もあるのだが、魔物ランクで言えば、S級ランクで、なおかつ高レベルの、ドルファレスとの修行の成果も大きい。
 相手が格上であればあるだけ、戦闘時の経験値は多くなる。カイトはそれに気づいていないが。


 途中、野営を挟み、2日目の日が暮れる前に、ノトスの街に到着した。
 ノトスの街は、高い城壁に囲まれた、城塞都市だった。
 深部の森側の北門は、夕方にもなると人の姿も無く、並ぶ事なく街へ入る事が出来た。
 当然、俺には身分を証明する物がないので、税として、銀板5枚を払って街に入る。だいたい五万円位だろうか?高いのかどうか分からない。

 門兵に盗賊の二人を引き渡すと、金貨4枚貰えた。一人20万円と考えたら、犯罪奴隷の安さがよくわかる。

「……カイト、ちょっとお願いがあるんだけど……。少しお金を貸してくれないかしら」

 エルが恥ずかしそうに、借金を頼んできた。

「いや、だからさっきの金貨を、半分づつ分ければ良いじゃないか」
「だめよ!私は助けられただけで、何もしていないもの」
「じゃあ、エルがこの街を案内してよ。取り敢えず案内料として金貨1枚渡すから」

 そう言ってエルの手に、金貨1枚を強引に握らせる。

「いいの?金貨1枚あれば、20日は暮らせるのよ」
「良いよ、俺は盗賊達の持ってたお金も有るからね」

 その後、エルに宿を紹介して貰い。夕食を宿の食堂で、一緒に食べた。

「それでカイトは、明日からどうするの?」

 夕食後のお茶を飲みながら、エルと明日からの予定を話し合う。エルに街の案内を頼みたいが、優先順位を決めなきゃいけない。

「そうたな、身分証明書になるステータスプレートは、どこのギルドでも大丈夫なんだろう」
「どこのギルドでも大丈夫だけど、商業ギルドと職人ギルドは、加入条件が厳しいから、冒険者ギルドの一択だと思うわよ」

 そうなのか、鍛治もしてみたかったけど、それじゃあ、朝一で冒険者ギルドで良いか。

「じゃあ、朝一で冒険者ギルドに登録と、盗賊のステータスプレートを渡して、報償金を貰わないといけないな。出来ればそのあと、下着や服が欲しいんだけど」
「そういえばカイト、あなた鞄も持ってないじゃない。……あれ?じゃあ盗賊から回収したお金とかはどうしたの?あれ?」

 今、気づいたのか。エルって意外と天然なのか?

「その事とか、諸々後で話すから、俺の部屋に来てよ」

 俺がエルにそう言ったら、急にエルの顔が真っ赤になり、もじもじしだした。

「……えっと、私達だって、まだ会ったばかりだし……、それはカイトに助けて貰って、トキめいたし、でも私、初めてだし……」
「イヤイヤイヤ、エル、話をするだけだから。食堂で話す内容じゃないから、部屋に行くだけだからね」

 エルは聴こえているのか、いないのか、クネクネしている。
 まあ、良いか。



 コン コン!

「どうぞ!開いてるよ」

 食事を済ませて部屋に戻り、久しぶりのベッドでのんびりしていると、エルが俺の部屋に尋ねてきた。

 エルに部屋に一つある椅子に座ってもらい、俺はベッドに座る。

「それで話なんだけど、俺が深淵の森の奥から来たと言ったよね。俺は森の奥で暮らしていたから、一般常識に疎いんだ。だからエルに街の案内は勿論、一般常識も教えて貰えたらと思ってるんだけど、どうかな?」

 そこまで話してエルを見ると、目を見開いて固まっていた。

「えっと、エル」
「深淵の森の奥で、暮らしていたですって!!」
「ちょっ!エル落ち着いて!俺そう言ったよね」
「そんなの冗談だと思うじゃない!」

 なんとかエルに落ち着いて貰って、森の奥に山で囲まれた土地がある事。そこは神聖な空気に満ちた場所だった事。そこには精霊女王様がいる湖があった事。そこでドルファレス師匠に鍛えられながら、暮らしていた事を話す。

「どこから突っ込んで良いのか、分からないわ」

 エルが酷く疲れた顔をしている。

「理性を保ったアンデットが師匠?精霊女王様?精霊女王と言えば、4大精霊より上の存在よ。何よ、S級クラスの魔物が師匠って」
「ドルファレス師匠とは六年だけだよ」
「そんな事言ってるんじゃないわよ!」
「俺が暮らしていた場所は、魔物もたいしたのが居なかったし、俺が少しは戦える様になったのは、ドルファレス師匠のお陰なんだ」
「なに爽やかに師匠を、語ってるのよ!」
「それで盗賊達の持ってたお金は、アイテムボックスに収納しているのさ」
「話を聞きなさいよ!なにサラッとアイテムボックスの事を喋っているのよ!そんなの伝説のレアスキルじゃない!」

 なんだかエルが興奮して、顔を真っ赤にしている。

「はぁ~、もういいわ。カイトが常識知らずで、規格外だって事ね。もうそれでいいわよ。
 それで武器はアイテムボックスに入れてあるんだ?」
「うん、これね」

 アイテムボックスから、バルデッィシュを取り出す。

「……なんか……、物凄い力を感じるんだけど……。それ、普通の武器じゃないわよね。なんで出来ているの?」
「うん?そうかな。俺が造ったんだけどね。一応オリハルコン合金製だよ」

 オリハルコンと聞いたエルが、再び石のように固まる。

「オ、オリハルコンって、まさか、総オリハルコン製なの?そんな訳ないわよね。そんなにオリハルコンがある訳ないもの」

 おやっ?オリハルコンは、俺が思ったより希少な金属だったみたいだ。
 でも俺結構たくさんストック持っているよな。

「自分の装備を造りたいから、出来れば工房に出来る家を借りたいんだ。素材もソコソコ集まったしね」
「……疲れたから、私もう寝るわ」

 エルはそう言うと、フラフラと自分の部屋に帰って行った。

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