110 / 110
連載
二百四十二話 収穫祭
しおりを挟む
収穫祭当日、城塞都市は非常に賑わっている。
草原地帯は快晴。秋だからか、空が高く気持ちの良い天気だ。まさに収穫祭日和りだな。
もともと城塞都市の人口は、それ程多くない。そこに元遊牧民や西方諸国からの移民で、外の農地の移民が増え、竜人族がオオ爺サマ詣でで来るようになった。駐屯するダーヴィッド君達魔王国の人間も含めると、なかなかの賑わいだ。
それでも草原地帯という場所柄なのか、魔王国のキャラバン以外はそれ程行き来しないし、移住しようにも自力ではここまで来るのも大変だから、人口はこれ以上急激に増える事はないかな。
そもそも、俺としては孤児院さえあればいいんだ。あとはオマケ。流石に、今はそれなりに責任感をもって統治する方向で考えているけどな。
「あっ、3点だ!」
「さっきが5点だったから……、合わせて8点!」
輪投げは五回投げて、一から九までの数字が書かれた棒に、ロープで作った輪を投げて合計点数を競って遊ぶ。景品は、参加賞という事にして、皆んなに飴の詰め合わせを配っている。
「クソッ! オモチャの弓じゃ、真ん中に当てるの難しくないか?」
「バーカ、それを計算して当てるのが面白いんじゃないか。最初の一射で弓のクセを掴むんだよ」
的当てには、竜人族の若者が挑戦していて苦戦していた。まあ、オモチャの弓だしな。矢もわざと適当に作ってあるし、本物の弓や矢と同じようにはいかない。
輪投げや的当てには、子供達だけじゃなく大人も夢中で、順番待ちの列が出来ている。娯楽に飢えているのがよくわかるな。
「次は、タコ焼き食べたい!」
「分かった。だけど皆んなで分けるんだぞ。すぐにお腹いっぱいになるからな」
「だいじょうぶだよ!」
孤児院の子供達も、年長組の子達が年少組の子を面倒みながら屋台を周っている。大人からは極少額ながらお金はもらうが、子供達は全部の屋台が無料だ。勿論、大赤字だけど、収穫祭だけあって、農作物にはほとんどお金は掛からないし、肉も空間収納の肥やしになってた物が山ほどあるからこれも無料で提供している。魚介類も俺が獲ったのが売るほどある。
あとは皆んなの手間賃くらい。それもお祭りだからと、冒険者ギルドの解体所の人達や他のギルドの人達も無給で手伝ってくれた。皆んなで収穫祭を盛り上げる形が出来ているので、これは来年も開催できそうだな。
「りんご飴、おいしいよー!」
「ベッコウ飴も、おいしいよー!」
「すごく甘いよー!」
俺の屋台のすぐ近くで、ミルとララ、あとポーラちゃんが客引きをしていた。
りんご飴とベッコウ飴の屋台は、孤児院の子供達に任せたけど、楽しそうだからよかった。
りんご飴とベッコウ飴は、俺が拠点で大量に仕込んで、あとは子供達が並べて売るだけだから難しくない。お店屋さんごっこの延長なのかな。
「なぁ、次は何にする?」
「串焼き肉は美味かったから、もう一本食いたいところだけど、焼きそばってのも食べたい」
「タコ焼きってのも変わってて気になるんだよな」
竜人族の若者が食べ歩いて、次は何にしようかとワイワイ言いながら楽しんでいる。
「なぁ、魚介類と野菜のスープ美味かったな」
「うん! 父ちゃんの作った野菜だね!」
「俺っ、魚って初めて食べた!」
「ほらほら、あんた達、騒がないのよ」
両親と男の子二人、農民の家族だろう。自分の父親が作った野菜が入ったスープが美味しかったと誇らし気だ。弟かな? 魚介類を食べたのは初めてだったみたいだな。
移民を選ぶ時に、基本的に困窮する家族を優先的に選んでいる。それは、ダーヴィッド君達に任せても同じだ。だから美味しい物をお腹いっぱい食べれるだけで幸せを感じているようだ。
衣食足りて礼節を知るって言うけど、ここは衣食住足りてだからな。治安が良いのもそのお陰かな。
まあ、俺やオオ爺サマのようか超越者が居るって事も大きいんだろうけどな。
平和だなぁ。とまったりしていると、ミルとララ、ポーラちゃんが駆け寄って来た。
「お兄ちゃん! りんご飴、いっぱい売れたよ!」
「ベッコウ飴も!」
「りんご飴、美味しいね!」
「ミルとララ、ポーラちゃんも、食べ過ぎてお腹痛くならないようにな」
「「「わかった!」」」
三人は、手を繋いで駆け去って行く。屋台の店番は交代の時間がきたんだな。これが、ここ以外なら、幼児三人だけで危ないんだろうが、今日に限れば100パーセント安全だ。それに、三人の後を追い掛けて、三匹の猫が追い掛けて行った。ミル達の従魔、シロとクロ、マロンだ。これ以上ない護衛だからな。
そこにオオ爺サマが、チビ竜とギータを連れてやって来た。
「これはオオ爺サマ、お好きな席にどうぞ」
『オヤジ! 熱燗といいところ、見繕ってくれでシュ!』
「チビ竜様、まだお酒は早いと思います」
『なに言うデシュ! 僕は生まれたてじゃないデシュヨ!』
「はいはい。で、オオ爺サマも熱燗でいいか?」
「いや、最初の一杯はエールにしよう」
「はいよ! ギータもエールでいいか?」
「はい。黄金竜様と一緒で結構です」
他の売りっぱなしの屋台と違って、俺の屋台は売り物がおでんだから、椅子に座ってお酒を飲みながら、おでんを楽しめるようになっている。勿論、持ち帰り用の容器も用意してある。
オオ爺サマに席を薦めると、チビ竜が先に席に着き、何処で覚えたのか熱燗とおでんを頼み、それをギータが嗜める。
チンチクリンな見た目と違い、眷属としての格はチビ竜の方が、ギータ達よりもずっと上になる。チビ竜は、長い年月は掛かるものの古竜へと至るが、ギータ達は属性竜だ。そこには超えられない壁があるらしい。
因みにチビ竜は、小さくても古竜なので、アルコールを飲んでも大丈夫だ。
俺はチビ竜に熱燗を出し、オオ爺サマとギータにグラスを渡し、ビールの大瓶の栓を抜き渡す。
「ほら、取り敢えず、大根とハンペン、蛸とスジだ」
『卵も欲しいデシュ』
「はいはい。で、オオ爺サマとギータは?」
「うーむ。そうじゃの。取り敢えず、大根と厚揚げ、さつま揚げとスジをもらおうか」
「では、私も同じものを」
「はいよ!」
先にチビ竜の皿に卵を入れて、オオ爺サマとギータの注文のタネを皿に盛って出す。
「おお! よく出汁が沁みておる。冷えたエールによく合うな」
「はい。出汁が沁みた大根が美味しいですね」
『おかわり! お任せでお願いしまシュ! 卵はマストでシュ!』
「チビ竜は、もう少し落ち着いて食べろ」
古竜や竜人がおでん屋台で、一杯ひっかけている。なかなかレアだな。
そこに賑やかな奴がやって来た。
「あっ、黄金竜様もシグンムンド様の屋台ですか? 僕も一通り屋台を制覇して、ここが最後です。やっぱり、一番気になる屋台は最後のお楽しみって決めてたのです」
「分かったから、先に飲み物を注文しろゲイル」
何処に居ても賑やかな男。風属性の竜人ゲイルだ。
「うーん、どうしましょう。黄金竜様やギータと同じエールでもいいんですが、エールはもう他の屋台で飲みましたからね。ここは熱燗をもらいましょうか」
「はいはい。オオ爺サマはどうします?」
「ふむ。では儂も熱燗にしようか。それとまたお任せで幾つかもらえるかな」
「では、私も黄金竜様と同じで」
「はいよ」
口数が多いゲイルはスルーするとして、オオ爺サマとギータの注文を受ける。
そうこうしていると、俺の眷属が集まって来た。孤児院の子供達の屋台は売り切れで店じまいしたから、暇になったのかな。
「旦那様、お手伝いしましょうか?」
「ご主人様、お手伝いします」
「いや、セブールもリーファも、座って座って」
そこに元気な足音が近付いて来る。
「お兄ちゃん、来たよ!」
「ララも! ママも連れて来たの!」
「ミルちゃん! ララちゃん! 待ってよ!」
ミルとララ、あとポーラちゃんが勢いよく駆けて来た。
「お邪魔しても構いませんか?」
「勿論です。お好きな席に座ってください」
ミル達がルノーラさんを連れて来たようだ。
「あっ! チビ竜がもう食べてる!」
「あぁ、ずるいんだ!」
「ポーラも卵食べる!」
『うるさいデシュ。大人しくおでんを食べるデシュ』
「はいはい。ミルとララ、ポーラちゃんは、果実水でいいな。ルノーラさんは何を飲みます?」
「では、エールをお願いします」
「直ぐに用意しますね」
ミル達が、先に来ていて、黙々とおでんを食べるチビ竜を見つけ騒ぐ。俺はミル達に果実水を出して、ルノーラさんに飲み物の注文を聞いた。ルノーラさん、森の拠点産のエールが好きだからな。
「ポーラちゃん、これ、この蛸美味しいよ!」
「ええ! こっちのスジも美味しいよ!」
「本当だ! どっちも美味しい!」
「ミル、ララ、はしゃぎ過ぎないのよ」
「慌てずにゆっくり食べるんだぞ」
「「「はーい!」」」
こんなお祭りなんて、初めての経験なんだろう、ミルとララ、ポーラちゃんのテンションが異常に高い。
その後、オオ爺サマとギータが屋敷へと引きあげ、入れ替わるように竜人族の長老二人がやって来た。
「なんだ。さっきまでオオ爺サマも居たのに」
「いえいえ、流石に恐れ多い」
「心臓が止まってしまいます」
「なんだ。そんなの気にしなくてもいいのに。黄金竜様は気さくな方だよ。ほんの僅かだけど、竜人の血が流れているんだから、僕とも遠い遠い遠い親戚みたいなものじゃない」
「ほんの僅か……」
「と、遠い……」
「いや、ゲイルはちょっと黙ろうか」
長老二人に、オオ爺サマが居る時に来ればよかったのにと俺が言うと、長老達は青い顔をしてフルフルと顔を横に振って拒否する。流石に、信仰する神と同席は敷居が高いみたいだ。ただ、そんな長老二人に、ゲイルが余計な事を言う。
ショックを受ける長老に、俺はゲイルを黙らせる。本当に、こいつゴーイングマイウェイだな。
その前に、長老はチビ竜に気付いてるのかな? あれでも将来の古竜だぞ。
はしゃぐミル達と、黙々とおでんを食べ続けるチビ竜。誰彼なしに話し掛けては、適当に相槌を打たれるゲイル。落ち込む竜人族の長老と、お酒を勧めながら慰める俺。カオスだな。
収穫祭、来年もしていいかもな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されました。
あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されました。
あわせてよろしくお願いします。
あと、アニメ化記念、連続投稿もストック切れなので一旦終了です。
次回更新は未定です。
小狐丸
草原地帯は快晴。秋だからか、空が高く気持ちの良い天気だ。まさに収穫祭日和りだな。
もともと城塞都市の人口は、それ程多くない。そこに元遊牧民や西方諸国からの移民で、外の農地の移民が増え、竜人族がオオ爺サマ詣でで来るようになった。駐屯するダーヴィッド君達魔王国の人間も含めると、なかなかの賑わいだ。
それでも草原地帯という場所柄なのか、魔王国のキャラバン以外はそれ程行き来しないし、移住しようにも自力ではここまで来るのも大変だから、人口はこれ以上急激に増える事はないかな。
そもそも、俺としては孤児院さえあればいいんだ。あとはオマケ。流石に、今はそれなりに責任感をもって統治する方向で考えているけどな。
「あっ、3点だ!」
「さっきが5点だったから……、合わせて8点!」
輪投げは五回投げて、一から九までの数字が書かれた棒に、ロープで作った輪を投げて合計点数を競って遊ぶ。景品は、参加賞という事にして、皆んなに飴の詰め合わせを配っている。
「クソッ! オモチャの弓じゃ、真ん中に当てるの難しくないか?」
「バーカ、それを計算して当てるのが面白いんじゃないか。最初の一射で弓のクセを掴むんだよ」
的当てには、竜人族の若者が挑戦していて苦戦していた。まあ、オモチャの弓だしな。矢もわざと適当に作ってあるし、本物の弓や矢と同じようにはいかない。
輪投げや的当てには、子供達だけじゃなく大人も夢中で、順番待ちの列が出来ている。娯楽に飢えているのがよくわかるな。
「次は、タコ焼き食べたい!」
「分かった。だけど皆んなで分けるんだぞ。すぐにお腹いっぱいになるからな」
「だいじょうぶだよ!」
孤児院の子供達も、年長組の子達が年少組の子を面倒みながら屋台を周っている。大人からは極少額ながらお金はもらうが、子供達は全部の屋台が無料だ。勿論、大赤字だけど、収穫祭だけあって、農作物にはほとんどお金は掛からないし、肉も空間収納の肥やしになってた物が山ほどあるからこれも無料で提供している。魚介類も俺が獲ったのが売るほどある。
あとは皆んなの手間賃くらい。それもお祭りだからと、冒険者ギルドの解体所の人達や他のギルドの人達も無給で手伝ってくれた。皆んなで収穫祭を盛り上げる形が出来ているので、これは来年も開催できそうだな。
「りんご飴、おいしいよー!」
「ベッコウ飴も、おいしいよー!」
「すごく甘いよー!」
俺の屋台のすぐ近くで、ミルとララ、あとポーラちゃんが客引きをしていた。
りんご飴とベッコウ飴の屋台は、孤児院の子供達に任せたけど、楽しそうだからよかった。
りんご飴とベッコウ飴は、俺が拠点で大量に仕込んで、あとは子供達が並べて売るだけだから難しくない。お店屋さんごっこの延長なのかな。
「なぁ、次は何にする?」
「串焼き肉は美味かったから、もう一本食いたいところだけど、焼きそばってのも食べたい」
「タコ焼きってのも変わってて気になるんだよな」
竜人族の若者が食べ歩いて、次は何にしようかとワイワイ言いながら楽しんでいる。
「なぁ、魚介類と野菜のスープ美味かったな」
「うん! 父ちゃんの作った野菜だね!」
「俺っ、魚って初めて食べた!」
「ほらほら、あんた達、騒がないのよ」
両親と男の子二人、農民の家族だろう。自分の父親が作った野菜が入ったスープが美味しかったと誇らし気だ。弟かな? 魚介類を食べたのは初めてだったみたいだな。
移民を選ぶ時に、基本的に困窮する家族を優先的に選んでいる。それは、ダーヴィッド君達に任せても同じだ。だから美味しい物をお腹いっぱい食べれるだけで幸せを感じているようだ。
衣食足りて礼節を知るって言うけど、ここは衣食住足りてだからな。治安が良いのもそのお陰かな。
まあ、俺やオオ爺サマのようか超越者が居るって事も大きいんだろうけどな。
平和だなぁ。とまったりしていると、ミルとララ、ポーラちゃんが駆け寄って来た。
「お兄ちゃん! りんご飴、いっぱい売れたよ!」
「ベッコウ飴も!」
「りんご飴、美味しいね!」
「ミルとララ、ポーラちゃんも、食べ過ぎてお腹痛くならないようにな」
「「「わかった!」」」
三人は、手を繋いで駆け去って行く。屋台の店番は交代の時間がきたんだな。これが、ここ以外なら、幼児三人だけで危ないんだろうが、今日に限れば100パーセント安全だ。それに、三人の後を追い掛けて、三匹の猫が追い掛けて行った。ミル達の従魔、シロとクロ、マロンだ。これ以上ない護衛だからな。
そこにオオ爺サマが、チビ竜とギータを連れてやって来た。
「これはオオ爺サマ、お好きな席にどうぞ」
『オヤジ! 熱燗といいところ、見繕ってくれでシュ!』
「チビ竜様、まだお酒は早いと思います」
『なに言うデシュ! 僕は生まれたてじゃないデシュヨ!』
「はいはい。で、オオ爺サマも熱燗でいいか?」
「いや、最初の一杯はエールにしよう」
「はいよ! ギータもエールでいいか?」
「はい。黄金竜様と一緒で結構です」
他の売りっぱなしの屋台と違って、俺の屋台は売り物がおでんだから、椅子に座ってお酒を飲みながら、おでんを楽しめるようになっている。勿論、持ち帰り用の容器も用意してある。
オオ爺サマに席を薦めると、チビ竜が先に席に着き、何処で覚えたのか熱燗とおでんを頼み、それをギータが嗜める。
チンチクリンな見た目と違い、眷属としての格はチビ竜の方が、ギータ達よりもずっと上になる。チビ竜は、長い年月は掛かるものの古竜へと至るが、ギータ達は属性竜だ。そこには超えられない壁があるらしい。
因みにチビ竜は、小さくても古竜なので、アルコールを飲んでも大丈夫だ。
俺はチビ竜に熱燗を出し、オオ爺サマとギータにグラスを渡し、ビールの大瓶の栓を抜き渡す。
「ほら、取り敢えず、大根とハンペン、蛸とスジだ」
『卵も欲しいデシュ』
「はいはい。で、オオ爺サマとギータは?」
「うーむ。そうじゃの。取り敢えず、大根と厚揚げ、さつま揚げとスジをもらおうか」
「では、私も同じものを」
「はいよ!」
先にチビ竜の皿に卵を入れて、オオ爺サマとギータの注文のタネを皿に盛って出す。
「おお! よく出汁が沁みておる。冷えたエールによく合うな」
「はい。出汁が沁みた大根が美味しいですね」
『おかわり! お任せでお願いしまシュ! 卵はマストでシュ!』
「チビ竜は、もう少し落ち着いて食べろ」
古竜や竜人がおでん屋台で、一杯ひっかけている。なかなかレアだな。
そこに賑やかな奴がやって来た。
「あっ、黄金竜様もシグンムンド様の屋台ですか? 僕も一通り屋台を制覇して、ここが最後です。やっぱり、一番気になる屋台は最後のお楽しみって決めてたのです」
「分かったから、先に飲み物を注文しろゲイル」
何処に居ても賑やかな男。風属性の竜人ゲイルだ。
「うーん、どうしましょう。黄金竜様やギータと同じエールでもいいんですが、エールはもう他の屋台で飲みましたからね。ここは熱燗をもらいましょうか」
「はいはい。オオ爺サマはどうします?」
「ふむ。では儂も熱燗にしようか。それとまたお任せで幾つかもらえるかな」
「では、私も黄金竜様と同じで」
「はいよ」
口数が多いゲイルはスルーするとして、オオ爺サマとギータの注文を受ける。
そうこうしていると、俺の眷属が集まって来た。孤児院の子供達の屋台は売り切れで店じまいしたから、暇になったのかな。
「旦那様、お手伝いしましょうか?」
「ご主人様、お手伝いします」
「いや、セブールもリーファも、座って座って」
そこに元気な足音が近付いて来る。
「お兄ちゃん、来たよ!」
「ララも! ママも連れて来たの!」
「ミルちゃん! ララちゃん! 待ってよ!」
ミルとララ、あとポーラちゃんが勢いよく駆けて来た。
「お邪魔しても構いませんか?」
「勿論です。お好きな席に座ってください」
ミル達がルノーラさんを連れて来たようだ。
「あっ! チビ竜がもう食べてる!」
「あぁ、ずるいんだ!」
「ポーラも卵食べる!」
『うるさいデシュ。大人しくおでんを食べるデシュ』
「はいはい。ミルとララ、ポーラちゃんは、果実水でいいな。ルノーラさんは何を飲みます?」
「では、エールをお願いします」
「直ぐに用意しますね」
ミル達が、先に来ていて、黙々とおでんを食べるチビ竜を見つけ騒ぐ。俺はミル達に果実水を出して、ルノーラさんに飲み物の注文を聞いた。ルノーラさん、森の拠点産のエールが好きだからな。
「ポーラちゃん、これ、この蛸美味しいよ!」
「ええ! こっちのスジも美味しいよ!」
「本当だ! どっちも美味しい!」
「ミル、ララ、はしゃぎ過ぎないのよ」
「慌てずにゆっくり食べるんだぞ」
「「「はーい!」」」
こんなお祭りなんて、初めての経験なんだろう、ミルとララ、ポーラちゃんのテンションが異常に高い。
その後、オオ爺サマとギータが屋敷へと引きあげ、入れ替わるように竜人族の長老二人がやって来た。
「なんだ。さっきまでオオ爺サマも居たのに」
「いえいえ、流石に恐れ多い」
「心臓が止まってしまいます」
「なんだ。そんなの気にしなくてもいいのに。黄金竜様は気さくな方だよ。ほんの僅かだけど、竜人の血が流れているんだから、僕とも遠い遠い遠い親戚みたいなものじゃない」
「ほんの僅か……」
「と、遠い……」
「いや、ゲイルはちょっと黙ろうか」
長老二人に、オオ爺サマが居る時に来ればよかったのにと俺が言うと、長老達は青い顔をしてフルフルと顔を横に振って拒否する。流石に、信仰する神と同席は敷居が高いみたいだ。ただ、そんな長老二人に、ゲイルが余計な事を言う。
ショックを受ける長老に、俺はゲイルを黙らせる。本当に、こいつゴーイングマイウェイだな。
その前に、長老はチビ竜に気付いてるのかな? あれでも将来の古竜だぞ。
はしゃぐミル達と、黙々とおでんを食べ続けるチビ竜。誰彼なしに話し掛けては、適当に相槌を打たれるゲイル。落ち込む竜人族の長老と、お酒を勧めながら慰める俺。カオスだな。
収穫祭、来年もしていいかもな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されました。
あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されました。
あわせてよろしくお願いします。
あと、アニメ化記念、連続投稿もストック切れなので一旦終了です。
次回更新は未定です。
小狐丸
4,410
お気に入りに追加
18,393
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。