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二百三十七話 襲撃
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今日は、竜人族の集落に来ている。理由は勿論、ジーラッド聖国の軍が直ぐ側まで来ているから。
「ご主人様、手を出されるのですか?」
「流石に必要ないだろう。ただの見学だよ」
西側の外壁の上に立ち、ジーラッド聖国の軍が来るのを見ていると、横に立つリーファが手を出すのか聞いてきたが、流石に俺が手を出すなんて事はしない。弱い者いじめどころの話じゃないからな。
「しかし、諦めの悪さは尊敬に値しますな」
「本当にそれな。西方諸国でも浮いてるらしいしな」
いまだに草原地帯への野心を持つジーラッド聖国に感心すらするよ。
そこに竜人族の若者が駆けて来た。
「森神様、配置につきました」
「うん。攻撃は最初だけで大丈夫だよ。あとはドンナーとベルク、それと二体のアイアンゴーレムに任せれば直ぐに終わるから」
この外壁の上には、矢狭間は勿論、バリスタも設置してある。今回、射手は少ないけど、弓とバリスタで一撃を加えてもらう。
その後、スパルトイのドンナーとベルク、アイアンゴーレムにお任せだ。乱戦の中に、矢を射かけてもアイアンゴーレムやドンナーとベルクに当たってもまったく問題ないんだが、今回はスパルトイがどの程度手加減しながら戦えるかのテストも兼ねているからな。
「森神様。我らも戦えます!」
「うーん、そうだな。どうしようか」
竜人族の若者が、自分達も戦いたいと訴えてくる。この若者の気持ちも理解できる。自分達の集落だしな。自分達の力で守りたいって思いは叶えてあげたい気もする。
少し悩んでセブールを見る。
「……そうですな。敵が崩れて掃討戦に移ったタイミングで、追撃の兵を出すのは如何でしょう?」
「そうだな。それなら比較的危険も少ないか。それでもいいか?」
「はい! 早速、腕利きを集めます!」
竜人族の若者が勢いよく駆けて行く。
崩れた敵を追撃するだけなら、死者を出す可能性も低いだろう。魔族の中でも強者で知られる竜人族だしな。その竜人族のプライドもあって、遠距離から弓を射るだけじゃ我慢出来なかったのかな。
とはいえそこは戦いだ。戦死するかもしれないのは彼らも覚悟の上だろう。
「それとなくサポートするか」
「旦那様、それは私にお任せください。元同じ魔王国の民という誼ですから」
「そうか。ならセブールに任せるか」
こそっと手を貸そうかと思ってたけど、セブールがそれとなくサポートしてくれると言うので任せる事にした。
そこに俺の肩がチョンチョンと突かれる。まあ、眷属だから誰かは分かってる。
「えっ、マザーもそれとなく手伝うの?」
『……』
俺の肩を突いたのは、緑の蔓。キラープランツが進化したマザープランツ。その名は、そのまま「マザー」にした。そのマザーが、蔓を伸ばして肩を突いたんだ。
俺がマザーも手伝うのかという問いに、蔓を縦に振って、これは頷いているんだな。眷属だから意思は伝わるので間違いない。
『……』
「ふんふん。ああ、種子を飛ばすのか」
マザープランツの種子は、キラープランツを増やす種子と、攻撃用の種子爆弾がある。今回ほ、その種子爆弾で遠距離からサポートするらしい。
「やり過ぎないようにな」
『……』
あまりやり過ぎて一方的になり過ぎると、相手も逃げるタイミングを逃すからな。やり過ぎないよう言っておくとマザーも頷く。
これは一方的になりそうだな。実は、スパルトイだけに名前を付けるのも可哀想かと思い、二体のアイアンゴーレムにも名付けたんだよな。「鉄男」と「鉄次」。名付けのセンスは勘弁してほしいが、これで二体のアイアンゴーレムもパワーアップした。もう苦戦する要素もない。
「旦那様、またあの将軍が居るようですぞ」
「ああ、かわいそうに。また逃げ帰るのか」
「懲りないバカは死ねばいいのに」
遠くに見えて来たジーラッド聖国の軍を見て、セブールが何とかと言う将軍が居ると教えてくれた。何度もご苦労さまだな。リーファは、懲りないバカは死ねと辛辣だ。
俺としては、何の被害もないからどっちでもいい。今回のことも迷惑とも思っていない。スパルトイを造ったり、イモータルトレントやキラープランツを眷属にしたりと楽しめたからな。
「此処を見て、それでも諦める気はなさそうですな」
「ほんと、ガッツだけはあるな」
「それで多くの部下は死ぬのですけどね」
セブールが、この集落を見ても横陣を敷き、攻撃の意思をなくさないジーラッド聖国の軍を見て溜息を吐く。ほんとあの将軍、ガッツだけはあるよな。リーファが言うように、それで死ぬのは部下なんだけどな。
◇
内心、動揺しながらも横陣を敷くジーラッド聖国の軍。
「外壁の上に少数ですが射手がいるようです」
「矢に気を付けるよう指示しておけ」
近くで見ると想像以上に堅固な外壁に、顔を顰めたくなるのを我慢し、ローデンは自軍の兵に盾で矢を防ぐよう言う。
平坦な草原地帯だけに、三千の兵が布陣するにも余裕がある。
「それと傭兵どもを好き勝手にさせるな。出来るだけ前に出させろ」
「……了解しました」
ローデンが傭兵を盾にしようとしているのは簡単に理解できた。ただ、傭兵達にそんな指示を出す意味はない。傭兵達は、目の前の堅固な外壁など気にせず、その中のお宝に湧き立っていたのだから。放っておいても吾先に突撃するだろう。
「放て!」
外壁の上から声が聞こえ、矢と槍の様なものが降り注ぐ。
「防げ!」
竜人族の人数が少ない事もあり、降り注ぐ矢の数は少ない。槍の様なものは、盾で防げそうにないと判断した魔力持ちの兵士が、咄嗟に魔法障壁を張る。
そこここで呻き声が上がるが、その数は多くない。マザーことマザーキラープランツのタネによる攻撃がなかったから余計だ。この時、マザーも攻撃に参加していたなら、この時点でジーラッド聖国軍を撃退できていただろう。
「ふん。この程度の攻撃、我らの足を鈍らせるのが精一杯よ」
そんな事も知るよしもないローデンは、今回こそ侵攻に成功すると、自信を持ってほくそ笑む。
その時、足の鈍った隙をつき集落の門が開き、鉄男と鉄次の二体のアイアンゴーレムとドンナーとベルク、二体のスパルトイが出陣した。
「将軍!」
「ゴーレムが四体? いや、二体はスケルトンなのか……怯むな! 敵はたかだか四体、すり潰せ!」
遠目からも威圧感のあるドンナー、ベルク、鉄男と鉄次。それに一瞬アスラのトラウマを思い出すも、相手は四体。アスラのように巨大な体躯をしている訳でもないと思い直す。数ですり潰せば簡単に斃せると……。
進軍を始めるジーラッド聖国軍。次の瞬間、ドンナー、ベルク、鉄男、鉄次が駆け出す。
特にドンナーの駆けるスピードはズバ抜けて速く、あっという間にその距離を潰し、ジーラッド聖国軍が弾けた。
続けて鉄男と鉄次が接敵し、同じくジーラッド聖国軍が弾ける。
最後に重騎士タイプのベルクが、ジーラッド聖国軍を蹴散らした。
「ぐわっ!?」
「ヒィッ!!」
反撃を試みようとするも、ドンナーのスピードに対応できず、竜骨が元になった剣と盾で吹き飛ばされる。
そう、本来なら剣で斬れば鎧や盾ごと真っ二つ間違いなしのところ、絶妙な力加減により吹き飛ばされるに収まっている。
鉄男や鉄次、ベルクも同じくジーラッド聖国軍を蹴散らしてはいるが、手加減により殲滅戦にはなっていない。とはいえ、吹き飛ばされて無事である訳はない。中には命を落とす者も居るだろうが、そこは戦争を仕掛けてきたのだからとシグムンドの考えだ。何度もちょっかいを掛けてくる相手に、そこまで慈悲深くはない。
ただ、ドンナーの剣は片刃の曲剣。峰打ちが可能だった。鉄男と鉄次の剣は、この日の為にシグムンドが用意した刃引きしたもの。ベルクのメイスが少々凶悪だが、そこはもう仕方ない。大盾で殴られただけで、間違いなくノックアウトなのだから。
「何をしておる!! たった四体だぞっ!! 一斉にかからんか!!」
ローデンが声を張り上げるも、目に映り込む光景は変わらない。部下や傭兵達が、面白いように吹き飛ぶ。
ただ、ジーラッド聖国軍は三千の兵で攻めたてている。ドンナーやベルク達が、無双していても集落側へと抜ける者も出てくる。
訓練を受けた騎士や兵士は、集団戦を徹底されているので、先走った行動には移らないが、傭兵は別である。バケモノの攻撃から逃れ、目の前にお宝がある場所。しかも門は開いている。ならば前へと進むのが盗賊まがいの傭兵だった。
これが戦争のプロフェッショナルだったなら、また違ったのだろうが、この世界の傭兵など、時に盗賊や山賊と同じような仕事をしている者達がほとんど、この者達も例外ではなかった。
ただ、その抜け出した傭兵達を、門から出陣した竜人族が迎え討つ。
「森神様と黄金竜様に、勝利を献げるぞ!」
「「「オゥ!!」」」
人数としては百人も居ないが、その士気は高く、しかも人族に比べて種族的に強者である魔族。その中でも戦闘力の高い竜人族だ。統率もなくバラバラと散発的に攻め来る傭兵達をものともしない。
竜人族はドンナーやベルク達と違い、自分達の集落を襲撃してきた者に慈悲はない。戸惑う事なく、襲撃者の命を刈り取っていく。ジーラッド聖国軍は、侵略軍なのだから当然と言える。しかも一言の交渉も無く、いきなりの攻撃開始だ。ドンナーやベルク達のように、手加減する意味を見出せない。
まあ、シグムンドがドンナー達に手加減するよう指示していた理由は、本気で攻撃してミンチになった敵兵の後片付けが面倒だからなのだが。
流石に余りの一方的な戦いに、ローデンも不味い流れだと気付く。負傷者は加速度的に増えている。その回収もままならぬ状況。このままでは全滅もあり得る。
そこからのローデンは早かった。
「て、てっ、撤退だ!」
「て、撤退! 負傷者を可能な限り回収! 撤退するぞ!」
ローデンは撤退の指示を出すと、真っ先に馬首を返し駆け出す。
そうなると傭兵達も吾差しにと逃げ始め、そこへ謎の飛来物が追撃し、ジーラッド聖国軍も負傷者を回収しながら撤退し始める。
謎の飛来物は、勿論マザーキラープランツの種子爆弾だ。追い立てるように飛来する種子に、陣形もなにもなく逃げるジーラッド聖国軍。
ドンナーとベルク、鉄男と鉄次は、それを追撃する事なく仁王立ちで見届ける。
後方で待機していた物資の輸送任務に就いていた部隊も、可能な限り負傷者の治療をすると、そのままジーラッド聖国へと撤退して行く。
商業ギルドの本部長モーガンに煽てられ始まった、ジーラッド聖国による再びの草原地帯への侵攻は、こうして幕を閉じた。
戦後の集落近くの草原では、竜人族が総出で死体の片付けを行っていた。
そこに竜人族の長老が作業を見守りながら、その場に居たセブールに問いかける。
「セブール殿、あやつらを帰してよかったのですか?」
「ええ、彼の国なら何度仕掛けて来ても大丈夫ですから。それに失敗する度に国庫への深刻なダメージとなりますからな」
ジーラッド聖国の軍が撤退してから、取り残された負傷者を、セブールは死なぬ程度にポーションを振りかけていた。それでも自力では帰国は無理なので、わざわざシグムンドが影に収納し、ジーラッド聖国の国境付近に運んでいる。そんな面倒な事をと長老は思ったのだろう。
ただ、これにも理由はある。基本的にシグムンドが甘いのは当然だが、それに加えて二度と戦場に立てない状態の兵士達を帰国させれば、それだけジーラッド聖国の負担になるとの考えからだ。
「なる程、確かに我らにもメリットはありますしな」
「ええ、若い者達には、いい実戦経験になったでしょう」
竜人族の長老が言うメリットは、若者達の実戦経験不足の解消だった。
前魔王時代、戦争に明け暮れた魔王国だが、この十年は、戦いらしい戦いはない。対魔物との戦闘は経験できるが、戦争となるとそうはいかない。
「まぁ、ドンナー殿やベルク殿方のお陰で、我らの仕事は逃げる相手への追撃戦ですから、余り自慢にはなりませんがな」
「いえいえ、容赦なく敵を刈り取る経験も重要ですぞ。自分達の集落を自分達の手で守る覚悟を示したのですから」
今回は、人数の差が大きかった所為で、シグムンドの眷属達からの手厚いサポートありきだった為、竜人族の長老も多少不満はあるようだ。
逃げ帰ったローデン達よりも、打ち捨てられた重症の負傷兵の方が、先に帰国できたという事態になったが、侵攻軍はなんとか聖都に帰り着く。
ローデンは軍の責任者として、直ぐにバキャルの元へと報告に上がる。
その場には、商業ギルドの本部長モーガンの姿もあった。今回の侵攻に際して、傭兵の手配と資金援助、格安での物資の調達など多くの援助をしているのだから当然だろう。
「申し訳ありません。竜人族の集落への侵攻は大失敗に終わりました」
「なんじゃとぉー! どういう事だぁ!」
「な、なんですとぉー!」
ローデン将軍の第一声に、バキャルとモーガンが絶叫する。
宰相のジムランと内務卿のメディスは、やはりかと渋い表情だ。特にメディスは、また財政がひっ迫すると顔が青い。
「くっ、詳しく話せっ!」
「はっ、それでは……」
ローデン将軍の報告をバキャルは信じたくはなかった。いや、到底信じる事はできない。だが、帰還した兵士達の様子は既に伝わっている。多くの兵士が死傷した事も事実だろう。傭兵に至っては、半数も帰還していない。大敗の一言で済ませていい話じゃない。
ローデン将軍は竜人族の集落が、集落とは名ばかりの堅固な砦だった事に始まり、二体のアイアンゴーレムと二体の尋常じゃない強さのスケルトン。たった四体により、三千のジーラッド聖国軍が散々に打ちのめされた事を、順を追って話してゆく。
一斉に襲いかかってもまるで相手にならず、蹴散らされ数を減らしてゆくのを見て、撤退を決めるも竜人族まで追撃に加わり、さらに謎の爆発するナニカが飛来するに至り、死傷者の回収も満足に出来ないまま、なんとかジーラッド聖国へとたどり着いた。
その国境付近で、まるでこちらの力を侮るように、泣く泣く残してきた死傷者が、死なぬ程度の最低限の治療を受け、自分達よりも先に運び込まれていた。
「幸い、追撃は集落付近だけでしたので、輸送部隊が無事だった事もあり、我らの撤退に支障はなかったのですが、多くの兵が復帰が難しい状態です」
「グヌゥゥ……」
「嘘だ。集落など一捻りなのではないのか……」
ドンナーやベルク、鉄男と鉄次が、追撃しなかったお陰で、惨敗の割に被害は抑えられている。とはいえ、普通なら全滅と言っていい結果なので、ジーラッド聖国にあたえる軍事、経済ともに影響は大きい。
特に、身分のある騎士で、二度と戦場に立てない者に対する補償を考えると、内務卿のメディスなどは、今にも泡を吹いて倒れそうだ。
なんとか王宮から高級宿の部屋へと戻って来たモーガンは、上質なソファーにボスッと身を沈め頭を抱える。
「儂の、儂の、儂の金がぁ」
薄くなり始めた頭を掻きむしり、大損害となり痛手を被った懐を嘆く。
草原地帯の入り口付近に在る集落を抑え、商業ギルドで交易をコントロールし、膨大な利益を得ようとしたモーガンの「取らぬ狸の皮算用」は、脆くも崩れ去った。
そもそもジーラッド聖国頼みの戦力。しかも相手の戦力もはっきりとしていない段階での軍事行動。モーガンの思惑は最初から破綻していたと言える。
そこに草原地帯の竜人族集落と、城塞都市へと向かったローズ商会の動向を探っていた者からの報告が入る。
「旦那様。ローズ商会の動きを探らせていた者からの報告と、そのローズ商会のバーバラ殿からの手紙が届いています」
「……話せ」
震える手で、バーバラからの手紙を受け取りながら、先ずは報告を聞こうとするモーガン。
「ローズ商会として、竜人族の集落で食料や調味料を商い、城塞都市では魔王国の第二王子ダーヴィッド殿下と会談を持ったようですが、優遇を得られる程の成果はなかったみたいです。ただ、魔王国に割り当て分の深淵の森の素材を少量買えたのと、教会とも取り引きをしたようです」
「ふん。あの牝狐の色仕掛けは通じなかったようだな。だが交渉が上手くいかなくたとも、利益だけ得るところは流石だな。あの女が、ただ大人しく交渉だけの為に、あんな何も無い場所に行った訳ではないだろう?」
モーガンはバーバラが、魔王国との交渉が失敗しても手ぶらで帰るような女ではない事を知っている。儲ける為なら少々汚い手を使う事も厭わない。女だてらに西方諸国で大商会を営むとはそういう事だ。だからきっと何かアクションを起こしている筈だと。
「はい。ローズ商会の会頭バーバラ殿は、竜人族の集落か城塞都市のどちらかで騒ぎを起こして、それへの対応を見ようとしたのでしょう。荷を増やした分の護衛に、素行の悪い冒険者か盗賊か分からないような者どもを雇ったようです。思惑通りなのでしょう。城塞都市で子供を拐い、それを人質に倉庫のお宝を狙ったようですが……」
「うん、どうなった?」
「……子供達に簡単に撃退されたようです」
「はっ!?」
一流の冒険者ではないとはいえ、荒事に慣れた盗賊のような者達が、子供達に撃退されたと聞き、意味が分からず聞き返す。
「やはり森神の縄張りに在る城塞都市は、そこに暮らす孤児すら普通ではなかったようです。子供達のペットの筈の仔犬や仔猫は、高ランクの魔物だったと報告があります」
「……はぁ??」
報告を聞いても頭が理解を拒否する事態に、モーガンはバーバラからの手紙を開く。
そこには草原地帯に於いて悪意をもって接するなかれ。合同買取所に関しても、竜人族が主体で他はオマケなので、商業ギルドもそのつもりで謙虚な気持ちで、進んで調整役を引き受け仕事をするべきと書かれてある。
そして深淵の森と草原地帯は、「森神」の地故、決して敵対するべからずとの言葉で締め括られていた。
その手紙を呆然と見詰めるモーガンは意味が分からなかった。
実際、モーガンがそれを見に染みて理解する時、果たして彼は商業ギルドの本部長でいられるのかどうか……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されます。
あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されます。
あわせてよろしくお願いします。
小狐丸
「ご主人様、手を出されるのですか?」
「流石に必要ないだろう。ただの見学だよ」
西側の外壁の上に立ち、ジーラッド聖国の軍が来るのを見ていると、横に立つリーファが手を出すのか聞いてきたが、流石に俺が手を出すなんて事はしない。弱い者いじめどころの話じゃないからな。
「しかし、諦めの悪さは尊敬に値しますな」
「本当にそれな。西方諸国でも浮いてるらしいしな」
いまだに草原地帯への野心を持つジーラッド聖国に感心すらするよ。
そこに竜人族の若者が駆けて来た。
「森神様、配置につきました」
「うん。攻撃は最初だけで大丈夫だよ。あとはドンナーとベルク、それと二体のアイアンゴーレムに任せれば直ぐに終わるから」
この外壁の上には、矢狭間は勿論、バリスタも設置してある。今回、射手は少ないけど、弓とバリスタで一撃を加えてもらう。
その後、スパルトイのドンナーとベルク、アイアンゴーレムにお任せだ。乱戦の中に、矢を射かけてもアイアンゴーレムやドンナーとベルクに当たってもまったく問題ないんだが、今回はスパルトイがどの程度手加減しながら戦えるかのテストも兼ねているからな。
「森神様。我らも戦えます!」
「うーん、そうだな。どうしようか」
竜人族の若者が、自分達も戦いたいと訴えてくる。この若者の気持ちも理解できる。自分達の集落だしな。自分達の力で守りたいって思いは叶えてあげたい気もする。
少し悩んでセブールを見る。
「……そうですな。敵が崩れて掃討戦に移ったタイミングで、追撃の兵を出すのは如何でしょう?」
「そうだな。それなら比較的危険も少ないか。それでもいいか?」
「はい! 早速、腕利きを集めます!」
竜人族の若者が勢いよく駆けて行く。
崩れた敵を追撃するだけなら、死者を出す可能性も低いだろう。魔族の中でも強者で知られる竜人族だしな。その竜人族のプライドもあって、遠距離から弓を射るだけじゃ我慢出来なかったのかな。
とはいえそこは戦いだ。戦死するかもしれないのは彼らも覚悟の上だろう。
「それとなくサポートするか」
「旦那様、それは私にお任せください。元同じ魔王国の民という誼ですから」
「そうか。ならセブールに任せるか」
こそっと手を貸そうかと思ってたけど、セブールがそれとなくサポートしてくれると言うので任せる事にした。
そこに俺の肩がチョンチョンと突かれる。まあ、眷属だから誰かは分かってる。
「えっ、マザーもそれとなく手伝うの?」
『……』
俺の肩を突いたのは、緑の蔓。キラープランツが進化したマザープランツ。その名は、そのまま「マザー」にした。そのマザーが、蔓を伸ばして肩を突いたんだ。
俺がマザーも手伝うのかという問いに、蔓を縦に振って、これは頷いているんだな。眷属だから意思は伝わるので間違いない。
『……』
「ふんふん。ああ、種子を飛ばすのか」
マザープランツの種子は、キラープランツを増やす種子と、攻撃用の種子爆弾がある。今回ほ、その種子爆弾で遠距離からサポートするらしい。
「やり過ぎないようにな」
『……』
あまりやり過ぎて一方的になり過ぎると、相手も逃げるタイミングを逃すからな。やり過ぎないよう言っておくとマザーも頷く。
これは一方的になりそうだな。実は、スパルトイだけに名前を付けるのも可哀想かと思い、二体のアイアンゴーレムにも名付けたんだよな。「鉄男」と「鉄次」。名付けのセンスは勘弁してほしいが、これで二体のアイアンゴーレムもパワーアップした。もう苦戦する要素もない。
「旦那様、またあの将軍が居るようですぞ」
「ああ、かわいそうに。また逃げ帰るのか」
「懲りないバカは死ねばいいのに」
遠くに見えて来たジーラッド聖国の軍を見て、セブールが何とかと言う将軍が居ると教えてくれた。何度もご苦労さまだな。リーファは、懲りないバカは死ねと辛辣だ。
俺としては、何の被害もないからどっちでもいい。今回のことも迷惑とも思っていない。スパルトイを造ったり、イモータルトレントやキラープランツを眷属にしたりと楽しめたからな。
「此処を見て、それでも諦める気はなさそうですな」
「ほんと、ガッツだけはあるな」
「それで多くの部下は死ぬのですけどね」
セブールが、この集落を見ても横陣を敷き、攻撃の意思をなくさないジーラッド聖国の軍を見て溜息を吐く。ほんとあの将軍、ガッツだけはあるよな。リーファが言うように、それで死ぬのは部下なんだけどな。
◇
内心、動揺しながらも横陣を敷くジーラッド聖国の軍。
「外壁の上に少数ですが射手がいるようです」
「矢に気を付けるよう指示しておけ」
近くで見ると想像以上に堅固な外壁に、顔を顰めたくなるのを我慢し、ローデンは自軍の兵に盾で矢を防ぐよう言う。
平坦な草原地帯だけに、三千の兵が布陣するにも余裕がある。
「それと傭兵どもを好き勝手にさせるな。出来るだけ前に出させろ」
「……了解しました」
ローデンが傭兵を盾にしようとしているのは簡単に理解できた。ただ、傭兵達にそんな指示を出す意味はない。傭兵達は、目の前の堅固な外壁など気にせず、その中のお宝に湧き立っていたのだから。放っておいても吾先に突撃するだろう。
「放て!」
外壁の上から声が聞こえ、矢と槍の様なものが降り注ぐ。
「防げ!」
竜人族の人数が少ない事もあり、降り注ぐ矢の数は少ない。槍の様なものは、盾で防げそうにないと判断した魔力持ちの兵士が、咄嗟に魔法障壁を張る。
そこここで呻き声が上がるが、その数は多くない。マザーことマザーキラープランツのタネによる攻撃がなかったから余計だ。この時、マザーも攻撃に参加していたなら、この時点でジーラッド聖国軍を撃退できていただろう。
「ふん。この程度の攻撃、我らの足を鈍らせるのが精一杯よ」
そんな事も知るよしもないローデンは、今回こそ侵攻に成功すると、自信を持ってほくそ笑む。
その時、足の鈍った隙をつき集落の門が開き、鉄男と鉄次の二体のアイアンゴーレムとドンナーとベルク、二体のスパルトイが出陣した。
「将軍!」
「ゴーレムが四体? いや、二体はスケルトンなのか……怯むな! 敵はたかだか四体、すり潰せ!」
遠目からも威圧感のあるドンナー、ベルク、鉄男と鉄次。それに一瞬アスラのトラウマを思い出すも、相手は四体。アスラのように巨大な体躯をしている訳でもないと思い直す。数ですり潰せば簡単に斃せると……。
進軍を始めるジーラッド聖国軍。次の瞬間、ドンナー、ベルク、鉄男、鉄次が駆け出す。
特にドンナーの駆けるスピードはズバ抜けて速く、あっという間にその距離を潰し、ジーラッド聖国軍が弾けた。
続けて鉄男と鉄次が接敵し、同じくジーラッド聖国軍が弾ける。
最後に重騎士タイプのベルクが、ジーラッド聖国軍を蹴散らした。
「ぐわっ!?」
「ヒィッ!!」
反撃を試みようとするも、ドンナーのスピードに対応できず、竜骨が元になった剣と盾で吹き飛ばされる。
そう、本来なら剣で斬れば鎧や盾ごと真っ二つ間違いなしのところ、絶妙な力加減により吹き飛ばされるに収まっている。
鉄男や鉄次、ベルクも同じくジーラッド聖国軍を蹴散らしてはいるが、手加減により殲滅戦にはなっていない。とはいえ、吹き飛ばされて無事である訳はない。中には命を落とす者も居るだろうが、そこは戦争を仕掛けてきたのだからとシグムンドの考えだ。何度もちょっかいを掛けてくる相手に、そこまで慈悲深くはない。
ただ、ドンナーの剣は片刃の曲剣。峰打ちが可能だった。鉄男と鉄次の剣は、この日の為にシグムンドが用意した刃引きしたもの。ベルクのメイスが少々凶悪だが、そこはもう仕方ない。大盾で殴られただけで、間違いなくノックアウトなのだから。
「何をしておる!! たった四体だぞっ!! 一斉にかからんか!!」
ローデンが声を張り上げるも、目に映り込む光景は変わらない。部下や傭兵達が、面白いように吹き飛ぶ。
ただ、ジーラッド聖国軍は三千の兵で攻めたてている。ドンナーやベルク達が、無双していても集落側へと抜ける者も出てくる。
訓練を受けた騎士や兵士は、集団戦を徹底されているので、先走った行動には移らないが、傭兵は別である。バケモノの攻撃から逃れ、目の前にお宝がある場所。しかも門は開いている。ならば前へと進むのが盗賊まがいの傭兵だった。
これが戦争のプロフェッショナルだったなら、また違ったのだろうが、この世界の傭兵など、時に盗賊や山賊と同じような仕事をしている者達がほとんど、この者達も例外ではなかった。
ただ、その抜け出した傭兵達を、門から出陣した竜人族が迎え討つ。
「森神様と黄金竜様に、勝利を献げるぞ!」
「「「オゥ!!」」」
人数としては百人も居ないが、その士気は高く、しかも人族に比べて種族的に強者である魔族。その中でも戦闘力の高い竜人族だ。統率もなくバラバラと散発的に攻め来る傭兵達をものともしない。
竜人族はドンナーやベルク達と違い、自分達の集落を襲撃してきた者に慈悲はない。戸惑う事なく、襲撃者の命を刈り取っていく。ジーラッド聖国軍は、侵略軍なのだから当然と言える。しかも一言の交渉も無く、いきなりの攻撃開始だ。ドンナーやベルク達のように、手加減する意味を見出せない。
まあ、シグムンドがドンナー達に手加減するよう指示していた理由は、本気で攻撃してミンチになった敵兵の後片付けが面倒だからなのだが。
流石に余りの一方的な戦いに、ローデンも不味い流れだと気付く。負傷者は加速度的に増えている。その回収もままならぬ状況。このままでは全滅もあり得る。
そこからのローデンは早かった。
「て、てっ、撤退だ!」
「て、撤退! 負傷者を可能な限り回収! 撤退するぞ!」
ローデンは撤退の指示を出すと、真っ先に馬首を返し駆け出す。
そうなると傭兵達も吾差しにと逃げ始め、そこへ謎の飛来物が追撃し、ジーラッド聖国軍も負傷者を回収しながら撤退し始める。
謎の飛来物は、勿論マザーキラープランツの種子爆弾だ。追い立てるように飛来する種子に、陣形もなにもなく逃げるジーラッド聖国軍。
ドンナーとベルク、鉄男と鉄次は、それを追撃する事なく仁王立ちで見届ける。
後方で待機していた物資の輸送任務に就いていた部隊も、可能な限り負傷者の治療をすると、そのままジーラッド聖国へと撤退して行く。
商業ギルドの本部長モーガンに煽てられ始まった、ジーラッド聖国による再びの草原地帯への侵攻は、こうして幕を閉じた。
戦後の集落近くの草原では、竜人族が総出で死体の片付けを行っていた。
そこに竜人族の長老が作業を見守りながら、その場に居たセブールに問いかける。
「セブール殿、あやつらを帰してよかったのですか?」
「ええ、彼の国なら何度仕掛けて来ても大丈夫ですから。それに失敗する度に国庫への深刻なダメージとなりますからな」
ジーラッド聖国の軍が撤退してから、取り残された負傷者を、セブールは死なぬ程度にポーションを振りかけていた。それでも自力では帰国は無理なので、わざわざシグムンドが影に収納し、ジーラッド聖国の国境付近に運んでいる。そんな面倒な事をと長老は思ったのだろう。
ただ、これにも理由はある。基本的にシグムンドが甘いのは当然だが、それに加えて二度と戦場に立てない状態の兵士達を帰国させれば、それだけジーラッド聖国の負担になるとの考えからだ。
「なる程、確かに我らにもメリットはありますしな」
「ええ、若い者達には、いい実戦経験になったでしょう」
竜人族の長老が言うメリットは、若者達の実戦経験不足の解消だった。
前魔王時代、戦争に明け暮れた魔王国だが、この十年は、戦いらしい戦いはない。対魔物との戦闘は経験できるが、戦争となるとそうはいかない。
「まぁ、ドンナー殿やベルク殿方のお陰で、我らの仕事は逃げる相手への追撃戦ですから、余り自慢にはなりませんがな」
「いえいえ、容赦なく敵を刈り取る経験も重要ですぞ。自分達の集落を自分達の手で守る覚悟を示したのですから」
今回は、人数の差が大きかった所為で、シグムンドの眷属達からの手厚いサポートありきだった為、竜人族の長老も多少不満はあるようだ。
逃げ帰ったローデン達よりも、打ち捨てられた重症の負傷兵の方が、先に帰国できたという事態になったが、侵攻軍はなんとか聖都に帰り着く。
ローデンは軍の責任者として、直ぐにバキャルの元へと報告に上がる。
その場には、商業ギルドの本部長モーガンの姿もあった。今回の侵攻に際して、傭兵の手配と資金援助、格安での物資の調達など多くの援助をしているのだから当然だろう。
「申し訳ありません。竜人族の集落への侵攻は大失敗に終わりました」
「なんじゃとぉー! どういう事だぁ!」
「な、なんですとぉー!」
ローデン将軍の第一声に、バキャルとモーガンが絶叫する。
宰相のジムランと内務卿のメディスは、やはりかと渋い表情だ。特にメディスは、また財政がひっ迫すると顔が青い。
「くっ、詳しく話せっ!」
「はっ、それでは……」
ローデン将軍の報告をバキャルは信じたくはなかった。いや、到底信じる事はできない。だが、帰還した兵士達の様子は既に伝わっている。多くの兵士が死傷した事も事実だろう。傭兵に至っては、半数も帰還していない。大敗の一言で済ませていい話じゃない。
ローデン将軍は竜人族の集落が、集落とは名ばかりの堅固な砦だった事に始まり、二体のアイアンゴーレムと二体の尋常じゃない強さのスケルトン。たった四体により、三千のジーラッド聖国軍が散々に打ちのめされた事を、順を追って話してゆく。
一斉に襲いかかってもまるで相手にならず、蹴散らされ数を減らしてゆくのを見て、撤退を決めるも竜人族まで追撃に加わり、さらに謎の爆発するナニカが飛来するに至り、死傷者の回収も満足に出来ないまま、なんとかジーラッド聖国へとたどり着いた。
その国境付近で、まるでこちらの力を侮るように、泣く泣く残してきた死傷者が、死なぬ程度の最低限の治療を受け、自分達よりも先に運び込まれていた。
「幸い、追撃は集落付近だけでしたので、輸送部隊が無事だった事もあり、我らの撤退に支障はなかったのですが、多くの兵が復帰が難しい状態です」
「グヌゥゥ……」
「嘘だ。集落など一捻りなのではないのか……」
ドンナーやベルク、鉄男と鉄次が、追撃しなかったお陰で、惨敗の割に被害は抑えられている。とはいえ、普通なら全滅と言っていい結果なので、ジーラッド聖国にあたえる軍事、経済ともに影響は大きい。
特に、身分のある騎士で、二度と戦場に立てない者に対する補償を考えると、内務卿のメディスなどは、今にも泡を吹いて倒れそうだ。
なんとか王宮から高級宿の部屋へと戻って来たモーガンは、上質なソファーにボスッと身を沈め頭を抱える。
「儂の、儂の、儂の金がぁ」
薄くなり始めた頭を掻きむしり、大損害となり痛手を被った懐を嘆く。
草原地帯の入り口付近に在る集落を抑え、商業ギルドで交易をコントロールし、膨大な利益を得ようとしたモーガンの「取らぬ狸の皮算用」は、脆くも崩れ去った。
そもそもジーラッド聖国頼みの戦力。しかも相手の戦力もはっきりとしていない段階での軍事行動。モーガンの思惑は最初から破綻していたと言える。
そこに草原地帯の竜人族集落と、城塞都市へと向かったローズ商会の動向を探っていた者からの報告が入る。
「旦那様。ローズ商会の動きを探らせていた者からの報告と、そのローズ商会のバーバラ殿からの手紙が届いています」
「……話せ」
震える手で、バーバラからの手紙を受け取りながら、先ずは報告を聞こうとするモーガン。
「ローズ商会として、竜人族の集落で食料や調味料を商い、城塞都市では魔王国の第二王子ダーヴィッド殿下と会談を持ったようですが、優遇を得られる程の成果はなかったみたいです。ただ、魔王国に割り当て分の深淵の森の素材を少量買えたのと、教会とも取り引きをしたようです」
「ふん。あの牝狐の色仕掛けは通じなかったようだな。だが交渉が上手くいかなくたとも、利益だけ得るところは流石だな。あの女が、ただ大人しく交渉だけの為に、あんな何も無い場所に行った訳ではないだろう?」
モーガンはバーバラが、魔王国との交渉が失敗しても手ぶらで帰るような女ではない事を知っている。儲ける為なら少々汚い手を使う事も厭わない。女だてらに西方諸国で大商会を営むとはそういう事だ。だからきっと何かアクションを起こしている筈だと。
「はい。ローズ商会の会頭バーバラ殿は、竜人族の集落か城塞都市のどちらかで騒ぎを起こして、それへの対応を見ようとしたのでしょう。荷を増やした分の護衛に、素行の悪い冒険者か盗賊か分からないような者どもを雇ったようです。思惑通りなのでしょう。城塞都市で子供を拐い、それを人質に倉庫のお宝を狙ったようですが……」
「うん、どうなった?」
「……子供達に簡単に撃退されたようです」
「はっ!?」
一流の冒険者ではないとはいえ、荒事に慣れた盗賊のような者達が、子供達に撃退されたと聞き、意味が分からず聞き返す。
「やはり森神の縄張りに在る城塞都市は、そこに暮らす孤児すら普通ではなかったようです。子供達のペットの筈の仔犬や仔猫は、高ランクの魔物だったと報告があります」
「……はぁ??」
報告を聞いても頭が理解を拒否する事態に、モーガンはバーバラからの手紙を開く。
そこには草原地帯に於いて悪意をもって接するなかれ。合同買取所に関しても、竜人族が主体で他はオマケなので、商業ギルドもそのつもりで謙虚な気持ちで、進んで調整役を引き受け仕事をするべきと書かれてある。
そして深淵の森と草原地帯は、「森神」の地故、決して敵対するべからずとの言葉で締め括られていた。
その手紙を呆然と見詰めるモーガンは意味が分からなかった。
実際、モーガンがそれを見に染みて理解する時、果たして彼は商業ギルドの本部長でいられるのかどうか……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されます。
あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されます。
あわせてよろしくお願いします。
小狐丸
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