不死王はスローライフを希望します

小狐丸

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5巻

5-3

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 三話 さらわれた子供たち


 数日後のある日。俺はポーラちゃんと遊ぶ約束をしていたミルとララを孤児院に転移で送り、深淵の森の拠点に戻って農作業にいそしんでいた。
 深淵の森の拠点には、クグノチやトムのような俺の眷属であるウッドゴーレムたちがいるので、俺自身が農作業する必要はないんだが、そこは俺の趣味だからな。
 そしてそれはちょうど、俺が果樹の手入れをしていた時だった。セブールから緊急の念話が入る。
 リーファ、セブールは血の眷属なので、この大陸内なら距離は関係なく念話が可能なんだ。

(旦那様。お仕事中に申し訳ございません。緊急事態でございます。孤児院の子供が二人ほど攫われたようです)

 セブールからの突然の報告は、俺としてはすぐに信じられない内容だった。

(えっ!? 孤児院の子供たちを攫える奴なんていたのか?)

 ポーラちゃんをはじめ、孤児院の子供たちは、赤ちゃん以外はパワーレベリング済みなんだ。
 この間のテロリストの襲撃騒ぎの時も難なく乗りきった。いや、少々やりすぎたともいえる。
 そんな風に強い子供たちなので、お金欲しさに子供を攫うような犯罪者に、おくれを取ることはないはずなんだ。
 俺のそんな考えを読み取ったのか、セブールから告げられたのは、こんな話だった。

(旦那様。攫われたのは、数日前に他所よその孤児院から新しく引き取った姉妹だそうです)
(ああ、新しく子供を引き取ったのか。そりゃそうか。孤児院だもんな)

 そもそも西方諸国の国々にある孤児院に収容しきれない子供たちを、少しでも拾い上げようと孤児院を作ったんだしな。新規で子供たちが入所するのに文句はない。むしろ余裕があるならウェルカムだ。人選はダーヴィッド君が上手くやってくれるだろうからな。
 とにかく、攫われたのはミルやララたちほど強くない、数日前に引き取られた子たちのようだ。
 騒ぎが終わったら、時間を見つけてパワーレベリングしてあげないとな。
 そんなことを緊急事態にもかかわらず呑気のんきに考えていると、セブールから追加の情報が伝えられる。

(それとミル嬢とララ嬢、ポーラ嬢が、誘拐犯ゆうかいはんを追い、城塞都市を飛び出してしまいました)
(ちょっ、それを先に言えよ!)
(旦那様、落ち着いてください。犯人は、草原地帯の蛮族ばんぞく崩れです。お嬢様方は、パワーレベリング済み。それに加えシロ、クロ、マロンを駆っています。アーシア様も、慌ててグリースを駆り後を追ってますので、蛮族ごときなんでもないかと思われます。おそらく子供を売るため、西方諸国へ向かうつもりのようですが、草原地帯の入り口にもたどり着けぬでしょう)
(それもそうか。それに多分、ヤタが見守ってるだろうしな。万が一の事態なんて起きないか)

 慌てたけれど、よく考えれば慌てる必要はなかった。
 まず、草原地帯にはもう大きな蛮族の集団はいない。目立つ集団は潰したし、最大の集団だった奴らは、岩山の上に建てた俺の城を襲撃しようとしたから返り討ちにしたしな。
 そもそも、深淵の森の拠点で暮らしているミルたちに、蛮族なんかがかなうわけがない。
 だから数人単位で動く小さな蛮族の集団なんかは放置していたんだが、まだそんな悪さをする奴らもいたんだって感じだな。
 ミルたちならすぐに追いつくだろうし、攫われた子供を人質におどそうとしても無駄だ。力の差がありすぎるからな。
 しかもアーシアさんが、グリースと一緒に追いかけているし、ヤタも見逃すはずがない。
 アーシアさんは、従軍経験がある戦えるシスターさんだし、ロダンさんやメルティーさんと一緒にパワーレベリング済みだから安心していいだろう。
 心配があるとすれば、ミルたちがやりすぎて蛮族たちを皆殺しにしないかということくらいか。

「リーファ。聞いてた?」

 俺は側に控えていたリーファに声を掛けた。

「はい。そっと見守りますか?」
「一応ね。ミルたちの勇姿を見届けようか」
「はい」

 俺とリーファは、出かける準備をする。
 しかし、城塞都市への出入りは、もう少し厳しく制限した方がいいかな。ただ、普通の遊牧民と半グレな蛮族の見分けは難しいからな。
 戻ったらセブールと相談だな。


 ◇


 人族の姉妹、ジルとベル。彼女たちは親を亡くして最初に入所した孤児院から、数日前にこの城塞都市の孤児院に連れてこられた。
 魔王国が西方諸国全土に仕掛けた戦争が終わってから年月が経ったが、西方諸国連合の国々は多少の差はあれど、どこも余裕はない。ジルとベルも、もといた孤児院では満足に食べることができなかった。
 西方諸国では孤児院の収容人数の多さ的にも、食料や金銭的にも世話をする人員の少なさ的にも、厳しい運営を強いられる孤児院がほとんどだった。
 まだ幼いジルとベルは、西方諸国連合と魔王国の間に戦争があったことなど知らない。
 だからある日、その魔王国の教会関係者に引き取られることになったと言われても「ああ、そうか」としか思わなかった。
 それほど現実に絶望し、無気力になっているともいえる。
 ジルは、妹のベルと離れ離れになると言われれば、二人で手を取り合い、孤児院から逃げ出すことも考えたかもしれない。だがそうでなければ、どこの孤児院へ移されようが、もうどうでもよかった。
 どうせ両親を亡くした幼い姉妹二人。大人の庇護ひごがなければ、生きるのは難しいのだから。
 親のない子供なんて、どこへ行っても同じ。そんな風に考えていた。
 ただ、ジルとベルは予想とは少々違う展開に戸惑うことになった。
 孤児が乗るには少々どころか、だいぶ豪華な馬車に乗せられ、大陸の南東部、草原地帯という場所にある孤児院に行くと教えられる。
 大陸の南東部にある草原地帯と言われても、学のない平民の孤児であるジルとベルには何も分からない。馬車に揺られていても不安でいっぱいのジルとベル。
 ところで、魔王国と草原地帯を行き来する者の中でも、キャラバンは魔王国が主体だ。その中でも孤児の移送を担当するのは、魔王国でも精鋭の兵士と優秀な文官、それと教会関係者だ。
 その付き添いの文官が二人を安心させようと、優しく話しかける。

「心配しなくても大丈夫だ。草原地帯にある孤児院なら、毎日お腹いっぱいご飯が食べれるさ」
「ご飯!」

 妹のベルは目を輝かせて期待の声を上げた。
 草原地帯に作られた孤児院は、シグムンドが関わっているだけあり、西方諸国にあるどの孤児院よりも待遇はいい。いや、比べるのもバカバカしいほどだ。
 まず、圧倒的に治安がいい。西方諸国では子供だけで出歩くと攫われ売られることも多いが、シグムンドの城塞都市には、常にゴーレムが巡回しているし、駐在している魔王国も治安維持に協力している。
 交易のために、魔王国や西方諸国から人の出入りがある以上、百パーセント確実な安全などありえないが、それでも大陸のどこの場所よりも治安がいいのは間違いない。
 それにもともと肥沃ひよくで水も豊富な草原地帯なので、農作物の収量は右肩上がりだから、食べ物もたくさんある。
 それに加え、シグムンドが深淵の森にある拠点で、様々な作物を育てている。
 その中には、この世界では貴重な果実などもあり、それをシグムンドは孤児院や教会へ定期的に差し入れしている。つまり、下手な貴族よりも、贅沢ぜいたくな食事ができると言える。

「それに、教会の司祭をされているロダン殿や、孤児院の責任者のアーシア様はお優しい人ですからね。何も心配することはありませんよ」

 教会関係者もロダンやアーシアの名を出し、二人を安心させようと気遣きづかう。
 魔王国でも聖職者という以前に、ひとかどの人物として評価されるロダンやアーシア。普通なら魔王国から遠く離れた僻地へきちの、教会や孤児院にいるべき人ではない。
 まあ、それは草原地帯の城塞都市が、それだけ魔王国……いや、この大陸にとって重要な地であることを示しているともいえる。
 ジルとベルはある意味幸運だった。大陸中を探しても、城塞都市の孤児院以上の待遇の施設などないのだから。道中に提供される食事も、そんな希望を姉妹に感じさせる。孤児院で出されていた食事よりも味も量も満足だった。


 ◇


 魔王国と草原地帯のキャラバンが定期的に行き来するようになり、昔に比べ随分ずいぶんと整備された街道を行くこと数日。
 やがて馬車は草原地帯にそびえる、城塞都市の巨大な門へとたどり着く。

「ほら、着いたぞ。ここが嬢ちゃんたちが暮らす場所だ」
「ほわぁ~!」

 護衛の魔王国の兵士が、城塞都市への到着を告げると、その立派な城壁にベルは口をポカンと開けて驚きの声を上げた。

「……あれはっ!?」

 ジルは門の横に立つ巨大なゴーレムに、目を釘づけにしている。
 この規模の城塞都市は、西方諸国どころか、魔王国を探してもない。ジルやベルが圧倒されるのも仕方なかった。
 二人は、城塞都市の中に入っても驚きの連続だった。
 まず、石造りの頑丈そうな建物が並び、整えられた農地がある。道は広く、石畳で整えられている。
 道路や建物は、どれも初めて見るくらいに立派で、路地の裏や道の脇に寝転ぶ人もいない。
 ここにはストリートチルドレンもいないし、スラムも存在しない。職にありつけない路上生活者も見当たらない。
 やがて馬車は、教会に併設された孤児院の前に止まる。そこには、教会の責任者で司祭のロダン、シスターのアーシアとメルティーが出迎えのために待っていた。
 他にも聖職者や職員はいるが、この三人がまだ歴史浅いこの教会と孤児院の立ち上げ時からの最古参になる。シグムンドとも交流がある三人は、この教会と孤児院では責任者扱いとなっている。

「ロダン殿、子供二人の移送です。それと希望されていた物資をお持ちしました」
「ご苦労様です。物資の搬入は倉庫にお願いします」

 報告する魔王国の兵士と会話した後、ロダン、アーシア、メルティーが膝をつき、ジルとベルと目線を合わせて挨拶する。

「君たちが新しいお友達だね。私はこの教会の責任者でロダンという。歓迎するよ。よろしくね」
「私は、アーシアよ。私とこっちのメルティーは、孤児院にいることが多いから仲良くしてね」
「私が、メルティーよ。よろしくね」
「……ジルです」
「……ベル」

 が、ジルとベルは緊張でガチガチだ。
 魔王国の兵士は物資の搬入に倉庫へ向かったが、体を硬くするジルに隠れ、ベルは今にも泣きそうだった。
 その時、孤児院の建物から、ワラワラと子供たちが飛び出してくる。

「えっ、何、何? 新しいお友達?」
「あっ! 二人いるよ!」
「ねえ、ねえ、なんてお名前?」
「案内してあげる!」

 ジルとベルは子供たちに引っ張られて、孤児院の中へと連れられていく。
 この孤児院の子供たちはパワフルだ。シグムンドによりパワーレベリング済みということもあるが、毎日が充実しているせいもあるだろう。
 だが、マシンガンのように話しかけられて、ジルとベルはいっそう体を強張こわばらせ、顔をきつらせる。
 ジルとベルが戸惑うのも仕方ない。二人が直前にいた孤児院に暮らす子供たちは、これほど明るい笑顔ではなかったから。あまりの違いに戸惑う二人に、すぐに馴染なじめというのは無理というものだ。


 ジルとベルが孤児院の中に入って、何時間か経った頃。
 二人の様子を見に行ったアーシアが、ロダン、メルティのもとに戻ってきた。
 アーシアに、メルティーが聞く。

「アーシア様。どうでした?」
「う~ん。そうねぇ。仕方ないと思うけれど、姉妹二人で部屋のすみで固まってしまってたわね」
「仕方ないでしょうね。うちの孤児院の子供たちは団結が強いですし、特にパワフルですから。慣れるまで少し時間は掛かるかもしれません」

 アーシアに告げられ、ロダンが言った。
 他所の孤児院では子供の出入りが発生するが、ここの孤児院は場所が場所だけに、その頻度は多くない。わざわざ草原地帯にある孤児院に、養子を探しに来る人間なんていないのだ。それゆえ、今のところこの孤児院に子供が増えることはあっても、出ていくことはない。
 あと数年すれば、卒院する子供が出てくるだろうが、それはまだ先だ。
 そんなわけで、ジルとベルが、前の孤児院との違いに馴染めなさを感じるのも無理もないのだった。
 ちなみに今回、ジルとベルは二人部屋にした。
 アーシアとしては、四人部屋で他の子供と同室にしたかったが、ジルとベルの様子を見ると、それは無理そうだとの判断からだ。
 孤児院は、シグムンドが余裕を持って建てたので、部屋数は多い。なので、もう少しここに慣れてから考えようという話になった。

「ロダン司祭。シグムンド殿に、早い段階で二人のパワーレベリングをお願いした方がいいかもしれません」
「そうですね。ここの子供たちは、レベルが高いせいで覇気はきがすごいですから。あの二人も無意識に気後れしているのかもしれません。となるとパワーレベリングしてもらうのはアリですね」

 アーシアがロダンに進言すると、ロダンもそれにうなずく。
 シグムンド、リーファ、セブールは、自身の気配や魔力を完璧にコントロールしているので、他者を無意識に威圧したりすることはないが、ポーラたち孤児院の子供たちにそれはまだ無理だ。だから自然とジルとベルは萎縮いしゅくしてしまう。
 ロダン司祭、アーシア、メルティーは相談し、早期に二人のパワーレベリングをシグムンドに頼むことを決めた。
 こうして、生活環境は劇的に改善したものの、孤児院に馴染めないジルとベル。
 だが、一人だけ姉妹に積極的に関わり、気にかけたのがポーラだった。
 ポーラは、自分が盲目もうもくだった頃、孤児院でいつも一人孤独だったことを忘れていない。シグムンドのお陰で、目が見えるようになっても、すぐにはみんなと打ち解けるなんてできなかった。
 そんなポーラを救ってくれたのが、ミルとララのエルフ姉妹だった。
 同年代の遊び相手をとシグムンドが考え、頻繁ひんぱんに城塞都市に連れてきてもらっていたミルとララは、ポーラとすぐに仲良くなった。
 ミルとララは、シグムンドに保護されるまで、草原地帯で一家族での遊牧民生活をしていた。当然、同年代の友達など望むべくもなく、しかも過酷な暮らしだったこともあって、子供らしく遊んだりできなかった過去を持つ。
 そんなミルとララも、シグムンドに助けられてから、母親のルノーラは当然として、シグムンドはもちろん、リーファやセブール、クグノチやトムといったゴーレムたち、ブランとノワールといったリビングドールたちから、たくさんの愛情を受けて育っている。
 なのでミルとララがさびしく独りぼっちのポーラを放っておけるわけもなく、ポーラもミルとララの優しさに救われたのだった。この出会いはポーラにとっても、ミルとララにとっても貴重なものだった。
 そんなポーラからすると、ジルとベルの姉妹は放っておけない存在だ。少し前の自分を見ているようなものだから。
 そして、そんな思いを持つポーラには、強い味方がいた。

「ニャァ」
「うわぁ! お姉ちゃん! 可愛いネコちゃんだよ!」
「う、うん。猫だね」

 小さく仔猫サイズになったマロンに目を輝かせ喜ぶベルと、なぜ孤児院の女の子が猫を飼っているのかと首を傾げるジル。
 ジルの反応は正しい。自分たちが食べるのにも困窮こんきゅうする孤児院で、ペットの犬や猫など飼うなんて普通は考えられないからだ。

「可愛いでしょう? ジルちゃんとベルちゃんだよね。わたし、ポーラっていうの。その子はマロンよ」
「マロンちゃんっていうんだ! ポーラちゃん。一緒に遊んでもいい?」
「もちろんいいよ」

 マロンはシグムンドの眷属であり、進化を繰り返し、高ランクの魔物となっている。
 なのでただの猫と比べて非常に賢く、ポーラの気持ちを汲み取ってジルやベルの足に体を優しく擦りつけたり、ゴロゴロとのどを鳴らして甘えてみたりとアピールする。決して引っかいたりんだりもしない。
 ポーラの従魔であるマロンの力もあり、少しずつ打ち解け始めるジルとベル。
 この調子なら、他の子たちと仲良くなるのも時間の問題だろう。


 ◇


 そんなある日のこと。ポーラがジルとベルを、孤児院の近くにある小さな公園に誘う。

「ねえねえ。公園で遊ばない?」
「こうえん?」
「ポーラちゃん。こうえんって何?」

 ポカンとするジルとベルだが、それも仕方ない。
 子供だけで出歩くと攫われるなんてことが珍しくない世界だ。シグムンドが、前世の記憶から作った児童公園なんて、この世界ではここにしかない。

「公園はね、色んな遊び道具がある広場だよ」

 ポーラがそう言うと、ジル、ベルは目を輝かせる。

「えっ! 行きたい! お姉ちゃん。いいでしょう?」
「……そうだね。でもポーラちゃん、孤児院の外に出てもいいの?」
「アーシア先生に言っておくから大丈夫だよ」

 そんなふうに話していたポーラ、ベル、ジルの三人に、遊びに来たミルとララが加わる。

「ポーラちゃん、遊びに来たよ」
「来たよ!」

 ミルとララの背後にはそれぞれシロとクロがいて、それを見て喜ぶベル。

「わぁ! 猫ちゃんがいっぱい!」

 マロンに加え、ミルとララの相棒であるシロとクロまで増え、三匹の仔猫にベルは大喜びだ。

「新しいお友達? わたしミルーラ。ミルって呼んで!」
「わたしが妹のララーナ。ララだよ! ポーラちゃんとはお友達なの!」
「「……」」

 黙ってしまう姉妹。
 特に姉のジルは警戒しているが、それはミルとララの容姿も関係していた。ジルはエルフを見るのは初めてだった。孤児のジルやベルは、獣人族や魔族は見たことがあっても、種族として容姿端麗なエルフを見たことはなかったので、少し緊張してしまっていた。

「二人とも、大丈夫だよ。ミルちゃんもララちゃんも優しいからね。きっといいお友達になれるよ」

 そう言ってジルとベルを安心させるポーラ。
 優しいポーラと、そのポーラの優しさを引き出したミルとララだ。そこから三人と、ジルとベルの姉妹と仲良くなるのは早かった。

「これからどうする?」

 ポーラがみんなに聞くと、草原地帯の孤児院に来てからお腹いっぱいご飯が食べられるようになり、元気いっぱいのベルが手を上げて主張した。

「さっき言ってた、公園で遊びたい!」
「そうだね。公園に行こうか」
「うん!」

 ミルとララも賛成し、五人は公園へと向かうことに決める。


 公園に着くと、五人は公園の遊具で遊んだり、シロたちと一緒に追いかけっこしたりと楽しむうちに、ジルとベルも子供らしくなっていく。
 もちろん、ミル、ララ、ポーラはジルとベルの身体能力に合わせて遊んでいる。テロリストを撃退するポーラも、深淵の森で行動できるミルとララも、この世界では規格外の存在だから。


 遊んでしばらく経つと、ベルのお腹がグゥと鳴った。

「あっ、もうお昼だね」
「そうだ。ここでシートを敷いてお弁当食べない?」

 ベルのお腹の音に気付いたミルが、太陽の位置を確認してそう言うと、ポーラがポンと手を叩き提案した。

「あっ、楽しそう。ピクニックだね」
「ここでご飯食べるの。楽しそうだね」

 それにララとジルも賛成すると、ベルも言う。

「ベルも! ベルも、お外で食べる!」
「じゃあ、決まり。アーシア先生とメルティー先生にお願いして、お昼ご飯を詰めてもらうよ」
「あっ、シートとかお茶とか運ぶの手伝うよ」
「ジルちゃんとベルちゃんは、ここで待ってて」

 そう言って、ポーラ、ミル、ララが孤児院に駆けていく。ジルとベルを残したのは、遊び疲れているんじゃないかと気を遣ったのだ。


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