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二百二十話 嫌いじゃないよ
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セブールが、魔族でコソコソと草原地帯を探っている男に声を掛けた。
魔族でも特に諜報方面が得意なようで、直接の戦闘力はそうでもないのかな?
まあ、俺からすると魔王も魔族の子供もドングリの背比べなんだけどな。
セブールに連れて来られた魔族の男は、直接的な戦闘能力はルノーラさんどころか、ミルやララよりも少し落ちるか。まあ、対人戦の経験が乏しいルノーラさん達よりも、この男の方が実戦では有利だろうけどな。
「やぁ、はじめまして。俺はシグムンド。一応セブールの主人だな」
「あ、ああ、シャウトだ」
「ふむ。それで、依頼人の名前は?」
「ルバスっていう奴だ」
意外と言ってはなんだが、諜報系に特化したような男の割に、素直に俺の質問に答えてくれる。しかも、事前にセブールに聞いていた内容と違いがない。
ただ、セブールも思わずポカンとする話まで飛び出した。
「えっ!? ルバスがリッチロードですと?」
「あ、ああ。ただ、無茶な禁術だったみたいで、本来のリッチロードほどの力はないらしい。分かりやすく言うと、魔王陛下や武官長のイグリスは勿論、文官長のアバドンやデモリス老よりも弱いんじゃないかな」
シャウトと名乗った男の話にセブールは呆れて首を横に振って溜息を吐いている。
「前々から頭のネジが二~三本抜けた変な人物でしたが、魔族から魔物に至るとは……」
「それでたいして強くならなかったんだから、頭のおかしなジジイだ」
「まあ、ルバスは魔族では珍しい研究一筋の男でしたから。ですが、少なくとも寿命は無くなったのですから成功と言えるのでは?」
「ジジイは、成功と思っていないから、俺は魔王国からはるばる草原地帯まで来ている訳だがな」
セブールとシャウトの話を聞いて、俺はルバスという男を、ある意味感心してしまった。
「ガッツあるなぁ。そのルバスっていう奴。魔族からリッチロードが、進化と言えるかどうかは分からないが、そんなチャレンジ、普通なら絶対しないぞ」
「ええ、進化とは生半可な事では出来ませんからな」
俺は兎も角、セブールも進化を経験しているから、それが普通じゃないと分かっている。
セブールとリーファの二人は、俺の血を分けた眷属だ。逆に言えば、眷属に成らなければ進化など無縁だっただろう。
まあ、ルノーラさん達みたいに、種族が変わらない魔力の繋がりによる眷属でも進化はしただろうけどな。その場合、魔族のアルケニー種の中での進化だ。
リッチロードは唯一人族やエルフ、魔族に関わらず至れる可能性のある魔物だ。元の実力が高い者が、強い怨みを残して死んだ後、濃い魔力に晒され、尚且つ長い時が必要になる。
何故なら、生前どんな実力のある魔法使いだったとしても、魔物と成った時点でいきなりリッチロードになど成れない。せいぜいがレイス。余程実力があり怨みも強く瘴気に穢された濃い魔力に晒されてもリッチが精一杯だろう。そこからリッチロードに進化するなんて、もの凄く長い時間が掛かる。短期間でなんて、深淵の森のダンジョンでもないと無理だ。
「いや、それでも愉快な奴だな。頭のネジがごそっと抜け落ちてるんじゃないか?」
「まあ、魔族だった頃から変わった御仁でしたから」
セブール曰く。愉快な奴は魔族だった頃から変人だったらしい。まあ、そうだろうな。
「ご主人様は、魔物になったルバスに対して寛容ですね」
「それはなぁ。まあ、俺もスタートはゴーストだったからなぁ」
リーファは、ルバスがリッチロードに成った事に、俺が面白そうにしているのが意外そうだ。ただ、俺自身がゴーストスタートだったんだ。しかも、特殊な個体だったが、リッチロードも通った道だからな。
「ご主人様がゴーストだったなんて、何度聞いても信じられません」
「今から考えると、そもそも俺は普通のゴーストだったか怪しいけどな」
「そうですな。ゴーストにしっかりとした思考などありませんから。聞くところによると、旦那様はゴーストの頃から理性的だったと。その様なゴーストは存在しません」
「だよな。俺もそう思う」
リーファの反応が普通なんだろうな。俺も今考えると、普通のゴーストだったか怪しいと思う。ステータスにゴーストってあったが、ゴーストが自分のステータスを確認している時点で異常だしな。
「面白そうだし、会ってみるか」
「えっ!? ジジイに会うっていうのか! もの好きだな」
「孤児院の子供達や住民に被害が出る前に会った方がいいだろう。それに、オオ爺サマをどうこう出来るとは思わないが、迷惑はかけたくないしな」
俺が一度ルバスって言うリッチロードに会うと言うと、シャウトは驚いているが、変にトラブルを起こす前に会った方がいいだろう。
まあ、半分は面白そうだからだけどな。
魔族でも特に諜報方面が得意なようで、直接の戦闘力はそうでもないのかな?
まあ、俺からすると魔王も魔族の子供もドングリの背比べなんだけどな。
セブールに連れて来られた魔族の男は、直接的な戦闘能力はルノーラさんどころか、ミルやララよりも少し落ちるか。まあ、対人戦の経験が乏しいルノーラさん達よりも、この男の方が実戦では有利だろうけどな。
「やぁ、はじめまして。俺はシグムンド。一応セブールの主人だな」
「あ、ああ、シャウトだ」
「ふむ。それで、依頼人の名前は?」
「ルバスっていう奴だ」
意外と言ってはなんだが、諜報系に特化したような男の割に、素直に俺の質問に答えてくれる。しかも、事前にセブールに聞いていた内容と違いがない。
ただ、セブールも思わずポカンとする話まで飛び出した。
「えっ!? ルバスがリッチロードですと?」
「あ、ああ。ただ、無茶な禁術だったみたいで、本来のリッチロードほどの力はないらしい。分かりやすく言うと、魔王陛下や武官長のイグリスは勿論、文官長のアバドンやデモリス老よりも弱いんじゃないかな」
シャウトと名乗った男の話にセブールは呆れて首を横に振って溜息を吐いている。
「前々から頭のネジが二~三本抜けた変な人物でしたが、魔族から魔物に至るとは……」
「それでたいして強くならなかったんだから、頭のおかしなジジイだ」
「まあ、ルバスは魔族では珍しい研究一筋の男でしたから。ですが、少なくとも寿命は無くなったのですから成功と言えるのでは?」
「ジジイは、成功と思っていないから、俺は魔王国からはるばる草原地帯まで来ている訳だがな」
セブールとシャウトの話を聞いて、俺はルバスという男を、ある意味感心してしまった。
「ガッツあるなぁ。そのルバスっていう奴。魔族からリッチロードが、進化と言えるかどうかは分からないが、そんなチャレンジ、普通なら絶対しないぞ」
「ええ、進化とは生半可な事では出来ませんからな」
俺は兎も角、セブールも進化を経験しているから、それが普通じゃないと分かっている。
セブールとリーファの二人は、俺の血を分けた眷属だ。逆に言えば、眷属に成らなければ進化など無縁だっただろう。
まあ、ルノーラさん達みたいに、種族が変わらない魔力の繋がりによる眷属でも進化はしただろうけどな。その場合、魔族のアルケニー種の中での進化だ。
リッチロードは唯一人族やエルフ、魔族に関わらず至れる可能性のある魔物だ。元の実力が高い者が、強い怨みを残して死んだ後、濃い魔力に晒され、尚且つ長い時が必要になる。
何故なら、生前どんな実力のある魔法使いだったとしても、魔物と成った時点でいきなりリッチロードになど成れない。せいぜいがレイス。余程実力があり怨みも強く瘴気に穢された濃い魔力に晒されてもリッチが精一杯だろう。そこからリッチロードに進化するなんて、もの凄く長い時間が掛かる。短期間でなんて、深淵の森のダンジョンでもないと無理だ。
「いや、それでも愉快な奴だな。頭のネジがごそっと抜け落ちてるんじゃないか?」
「まあ、魔族だった頃から変わった御仁でしたから」
セブール曰く。愉快な奴は魔族だった頃から変人だったらしい。まあ、そうだろうな。
「ご主人様は、魔物になったルバスに対して寛容ですね」
「それはなぁ。まあ、俺もスタートはゴーストだったからなぁ」
リーファは、ルバスがリッチロードに成った事に、俺が面白そうにしているのが意外そうだ。ただ、俺自身がゴーストスタートだったんだ。しかも、特殊な個体だったが、リッチロードも通った道だからな。
「ご主人様がゴーストだったなんて、何度聞いても信じられません」
「今から考えると、そもそも俺は普通のゴーストだったか怪しいけどな」
「そうですな。ゴーストにしっかりとした思考などありませんから。聞くところによると、旦那様はゴーストの頃から理性的だったと。その様なゴーストは存在しません」
「だよな。俺もそう思う」
リーファの反応が普通なんだろうな。俺も今考えると、普通のゴーストだったか怪しいと思う。ステータスにゴーストってあったが、ゴーストが自分のステータスを確認している時点で異常だしな。
「面白そうだし、会ってみるか」
「えっ!? ジジイに会うっていうのか! もの好きだな」
「孤児院の子供達や住民に被害が出る前に会った方がいいだろう。それに、オオ爺サマをどうこう出来るとは思わないが、迷惑はかけたくないしな」
俺が一度ルバスって言うリッチロードに会うと言うと、シャウトは驚いているが、変にトラブルを起こす前に会った方がいいだろう。
まあ、半分は面白そうだからだけどな。
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