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二百十七話 チラチラ
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草原地帯の城塞都市内に、総合買取り所を建てるという計画は、俺達がびっくりするくらいスピーディーに進められている。
商業ギルドとは少しゴタゴタあったみたいだが、冒険者ギルドや薬師ギルド、錬金術師ギルドが協力的で、しかも鍛治師などが加入している職人ギルドまでが是非協力させて欲しいと言ってきたらしい。
そこで早くも物資の搬入が始まっている。
「場所はあそこでよかったのか? もっと良い場所もまだ空いてるぞ」
「魔物素材を扱いますので、少し離れた場所に広い敷地がある方がいいのです。あとは門が近い場所をと考えました」
総合買取り所の建設予定地は、城塞都市の中でも少し端の方になる。もっと良い場所の方がいいんじゃないかとセブールに聞いたんだけど、それなりにちゃんとした理由があったようだ。
「それもそうか。まあ、セブールに任せたんだから、俺としては文句はないよ。あとは適当に頼むよ」
「お任せください。旦那様」
「頼むね」
各ギルドから魔王国以外の人間も大勢来るだろうから、俺が前面に出ない方がいいだろうしな。
そして一番遠い筈の魔王国から、早くも草原地帯へと駆けつけた者達がいる。
一人はダーヴィッド君。一応、魔王国側の責任者として来ている。
ダーヴィッド君は、この城塞都市には一番通っているし、セブールとも知り合いだし、何より色々と世話になっている。今度、何か贈り物でもした方がいいかな。
その魔王国から護衛の兵士以外で、人数が多いのが竜人族達だ。
一応、高い身体能力を買われて、作業員として来ている筈なんだが……
セブールが、ダーヴィッド君と作業員やギルド関係者の宿泊場所や食事などに関して話し合っているので、俺のお供はリーファだ。
そのリーファに、竜人族達の様子を見ていた。
「……あれ、仕事になるのか?」
「一応、仕事はしているようですが……」
「ああ、一応仕事はしているみたいだな。まあ、作業が遅れていないようだし、いいんだけどな」
「そこは、身体能力の高い竜人族ですね。……真面目に作業に集中すれば、もっと捗るでしょうが」
竜人族達がさぼっているってわけじゃない。作業の合間に、ある場所をチラチラと見ているだけだ。
まあ、ある場所ってのはオオ爺サマの家なんだけどな。
「気持ちは分かるけどな」
「ですね。竜人族にとって、信仰の対象であるオオ爺サマや他の古竜様達がいますし、自分達の始祖と同じ存在であるギータ達が目の前にいるのですから」
オオ爺サマ以外の四体の古竜(ヴァイス、ロッソ、ブラウ、ジョーヌ)は、いつも全員いるわけじゃないが、それでも古竜がそこにいるのは竜人族なら分かるだろう。
みんな周りへの影響を配慮して、魔力や気配を抑えてくれているからな。とはいえ、それでも尚古竜の存在感は隠しきれないんだよな。
それに加えて、ギータやグラース、ゲイル、メールというオオ爺サマが生み出した眷属の竜人がいる。ギータ達は、古竜のお世話係りだから、ちょくちょく家から出て来るからな。
料理はシプルの仕事だけど、その食材を調達したりするのはギータ達も手伝う。特に魔物肉を狩ってくるなんてシプルには難しいからな。
「一竜に一人って言ってたけど、四人じゃ一人足りないな」
「オオ爺サマ以外の古竜様達が全員揃う事はほとんどありませんから」
「それもそうか。なら問題ないか」
丁度ギータが、オオ爺サマの家から出て来て、それに竜人族達が反応してガン見しているのを眺めながら、リーファと無駄話する。
「ギータ達と接触したいんだろうな」
「魔王陛下から止められていますから。まあ、ダーヴィッド殿下が一度くらい機会を設けると思います」
「その方がいいか。ゲイルあたりは女の竜人族と積極的にコミュニケーションとりそうだしな」
「……間違いなくそうなりますね」
俺がゲイルの名を出すと、リーファが眉間に皺を寄せて頷いた。
風竜のドラゴンオーブから生まれたゲイルは、他の竜人と違いとても軽い。いや、チャライと言ってもいいだろう。同じ竜人のギータやグラース、メールが真面目な感じだから余計にそう思うのかもしれないがな。
「まあ、女の竜人族にとっては良い事じゃないか。カタブツのギータとグラースじゃ竜人族の男どもは難しいだろうがな」
「そうですね。男の竜人でもメール殿は真面目過ぎるくらいなのに、どうしてああなったのでしょうか」
「まぁ、賑やかでいいじゃないか。うちでもヤタっていう賑やかな奴がいるしな」
「そうですね。でもヤタは普段西方諸国にいる事が多いので、ゲイル殿のように四六時中一緒とは違いますけどね」
「……ヤタと四六時中一緒か、それは大変かもな」
四人の竜人はゲイル以外は凄く真面目な性格なんだよな。自分達からすれば神と等しい古竜に仕える為に生み出されたんだから、自然とそうなるのかもしれない。
とはいえゲイルならワンチャンありそうだな。男女間のトラブルが起きないよう注意しておくべきかな。一度、オオ爺サマと話しておくか。
商業ギルドとは少しゴタゴタあったみたいだが、冒険者ギルドや薬師ギルド、錬金術師ギルドが協力的で、しかも鍛治師などが加入している職人ギルドまでが是非協力させて欲しいと言ってきたらしい。
そこで早くも物資の搬入が始まっている。
「場所はあそこでよかったのか? もっと良い場所もまだ空いてるぞ」
「魔物素材を扱いますので、少し離れた場所に広い敷地がある方がいいのです。あとは門が近い場所をと考えました」
総合買取り所の建設予定地は、城塞都市の中でも少し端の方になる。もっと良い場所の方がいいんじゃないかとセブールに聞いたんだけど、それなりにちゃんとした理由があったようだ。
「それもそうか。まあ、セブールに任せたんだから、俺としては文句はないよ。あとは適当に頼むよ」
「お任せください。旦那様」
「頼むね」
各ギルドから魔王国以外の人間も大勢来るだろうから、俺が前面に出ない方がいいだろうしな。
そして一番遠い筈の魔王国から、早くも草原地帯へと駆けつけた者達がいる。
一人はダーヴィッド君。一応、魔王国側の責任者として来ている。
ダーヴィッド君は、この城塞都市には一番通っているし、セブールとも知り合いだし、何より色々と世話になっている。今度、何か贈り物でもした方がいいかな。
その魔王国から護衛の兵士以外で、人数が多いのが竜人族達だ。
一応、高い身体能力を買われて、作業員として来ている筈なんだが……
セブールが、ダーヴィッド君と作業員やギルド関係者の宿泊場所や食事などに関して話し合っているので、俺のお供はリーファだ。
そのリーファに、竜人族達の様子を見ていた。
「……あれ、仕事になるのか?」
「一応、仕事はしているようですが……」
「ああ、一応仕事はしているみたいだな。まあ、作業が遅れていないようだし、いいんだけどな」
「そこは、身体能力の高い竜人族ですね。……真面目に作業に集中すれば、もっと捗るでしょうが」
竜人族達がさぼっているってわけじゃない。作業の合間に、ある場所をチラチラと見ているだけだ。
まあ、ある場所ってのはオオ爺サマの家なんだけどな。
「気持ちは分かるけどな」
「ですね。竜人族にとって、信仰の対象であるオオ爺サマや他の古竜様達がいますし、自分達の始祖と同じ存在であるギータ達が目の前にいるのですから」
オオ爺サマ以外の四体の古竜(ヴァイス、ロッソ、ブラウ、ジョーヌ)は、いつも全員いるわけじゃないが、それでも古竜がそこにいるのは竜人族なら分かるだろう。
みんな周りへの影響を配慮して、魔力や気配を抑えてくれているからな。とはいえ、それでも尚古竜の存在感は隠しきれないんだよな。
それに加えて、ギータやグラース、ゲイル、メールというオオ爺サマが生み出した眷属の竜人がいる。ギータ達は、古竜のお世話係りだから、ちょくちょく家から出て来るからな。
料理はシプルの仕事だけど、その食材を調達したりするのはギータ達も手伝う。特に魔物肉を狩ってくるなんてシプルには難しいからな。
「一竜に一人って言ってたけど、四人じゃ一人足りないな」
「オオ爺サマ以外の古竜様達が全員揃う事はほとんどありませんから」
「それもそうか。なら問題ないか」
丁度ギータが、オオ爺サマの家から出て来て、それに竜人族達が反応してガン見しているのを眺めながら、リーファと無駄話する。
「ギータ達と接触したいんだろうな」
「魔王陛下から止められていますから。まあ、ダーヴィッド殿下が一度くらい機会を設けると思います」
「その方がいいか。ゲイルあたりは女の竜人族と積極的にコミュニケーションとりそうだしな」
「……間違いなくそうなりますね」
俺がゲイルの名を出すと、リーファが眉間に皺を寄せて頷いた。
風竜のドラゴンオーブから生まれたゲイルは、他の竜人と違いとても軽い。いや、チャライと言ってもいいだろう。同じ竜人のギータやグラース、メールが真面目な感じだから余計にそう思うのかもしれないがな。
「まあ、女の竜人族にとっては良い事じゃないか。カタブツのギータとグラースじゃ竜人族の男どもは難しいだろうがな」
「そうですね。男の竜人でもメール殿は真面目過ぎるくらいなのに、どうしてああなったのでしょうか」
「まぁ、賑やかでいいじゃないか。うちでもヤタっていう賑やかな奴がいるしな」
「そうですね。でもヤタは普段西方諸国にいる事が多いので、ゲイル殿のように四六時中一緒とは違いますけどね」
「……ヤタと四六時中一緒か、それは大変かもな」
四人の竜人はゲイル以外は凄く真面目な性格なんだよな。自分達からすれば神と等しい古竜に仕える為に生み出されたんだから、自然とそうなるのかもしれない。
とはいえゲイルならワンチャンありそうだな。男女間のトラブルが起きないよう注意しておくべきかな。一度、オオ爺サマと話しておくか。
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