不死王はスローライフを希望します

小狐丸

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二百十五話 サクッと打ち合わせ

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 あの後、商業ギルドの本部長は、プリプリ怒って帰って行った。

 とはいえ、冒険者ギルドのグランツと錬金術師ギルド、薬師ギルドは無条件で魔王国に協力する事を約束したので、その辺の条件を詰める為に、明日もう一度打ち合わせをするとなったらしい。

 それで、俺達はどうしたかっていうと、デモリスとアバドンの前に姿を現したって訳だ。

「!? ッ、シグムンド殿っ!」
「なっ!? セブール殿までっ!」
「やぁ、見てたよ」
「はい。一部始終、拝見致しました」

 突然、部屋に現れた俺達に驚くデモリスとアバドンだけど、流石は魔王国を動かす重鎮だけあり、直ぐに落ち着いたので、軽く話し合いをする事にした。

「竜人族の茶葉は俺的にもありがたいから、ダーヴィッド君にマジックバッグを預けたんだ。それで魔物素材も新鮮な状態で持ち帰れると思ったんだが、そう簡単にはいかないみたいだな」
「はい。西方諸国の人間からすると、魔王国からの魔物素材ですら貴重ですから。それが深淵の森の魔物素材となると、商業ギルドの本部長のように、何とかして食い込もうとする気持ちは分かります」
「モーガンはやたらとマウントを取りたがる男ですからの。我ら魔族も下に見ておるのを隠しきれていませんしな」

 貴重過ぎる深淵の森の魔物素材も良し悪しだな。商業ギルドの本部長みたいに、要らぬ欲をかいてしまう。アバドンとデモリスも、多少は仕方ないと思っていたようだが、モーガンという男は想定以上に愚かだったみたいだ。

 そこでセブールから提案があった。

「合同の買取り所を設置するのはどうでしょう」
「商業ギルドは兎も角、草原地帯の城塞都市に買取り所が在るのはありだな。今も本当にごく少数だけどガッツある商人が来ているけど、何時も俺やセブールがいる訳じゃないからな」

 素材の買取りというと商業ギルドってなるらしいが、セブールはそうじゃない買取り所はどうかと言ってきた。確かに、冒険者ギルドでも買取りはするそうだし、薬草は薬師ギルドが買取ってくれるだろう。錬金術に使える物は錬金術師ギルドが買取ればいい。

「総合買取り所ですな。それはいい案かもしれませんな」
「ああ、商業ギルドもどうしてもと言うなら噛ませてもいいしな」

 デモリスとアバドンもセブールの提案に好感触な反応をみせる。

 冒険者ギルド単体では、所属する冒険者達が誤解する可能性があるからな。草原地帯の魔物なら普通の冒険者でも討伐可能だけど、森から出て来た魔物は無理らしいしな。

 まあ、依頼として森の魔物の素材を欲するようなのは張り出さないだろうけど。

「旦那様、総合買取り所を建てるスペースは安価で貸し出し、建物も各ギルドに任せた方がいいでしょうな」
「ああ、売ってしまうのは問題あるか。それに俺が建物まで与えるのも違うか」
「はい。その程度、各ギルドが協力すれば可能でしょうから」

 総合買取り所の建物は、自分達で建てさせるかたちになりそうだ。確かに、集めた移民達は兎も角、全部俺が用意して与えるなんてやり過ぎだな。

「それがいい。シグムンド殿には、スペースだけ指示して頂ければよろしいかと」
「ですね。商業ギルドは別にして、他のギルドは今のところ下手に出ているが、甘やかすとずに乗るかもしれないしな」
「了解。空き地はまだまだあるから、適当な場所を用意するよ」

 デモリスとアバドンも建物くらい自分達で用意させるのに賛成した。

 魔王国が駐屯する場所や建物は、俺が用意したけど、これはダーヴィッド君達にお世話になっているからだ。ギルド関係者にそこまでする必要はないって皆んなの認識だな。

「あとは竜人族の茶葉と森の魔物素材とのレートをどうするかだな。凄く貴重な茶葉なんだろ?」
「そうですな。魔王国どころか、西方諸国でもみなが金に糸目をつけず求める茶葉ですし」

 茶葉が育つ環境や条件から、竜人族が住む地でしか採れない高級茶葉。聞いた話では、同じ重さの金よりずっと貴重なものらしい。

 人工的に増やせないそうで、大量に出回る事はないのも高額になる理由だとか。

ゴーレム達に頼めば、栽培は出来そうな気もするけど、さすがにそれはしないけどな。

「まあ、その辺の細かな話はセブールに任せるよ」
「お任せください」

 この世界の常識に疎い俺が交易のレートなんて決めれる訳がない。そこはセブールにお任せだ。

 実際、今も建材を買ったり、麦や塩を売ったりするのはセブールに任せているしな。

「では、わしらは各ギルドと話を詰めて、買取り所の建設打ち合わせをしておくかの」
「そうですね。ダーヴィッド殿下が監督した方がいいでしょうし」

 デモリスとアバドンは、ギルドのサポートをするつもりのようだ。何気にダーヴィッド君に仕事が押し付けられているけど、魔王国が手綱を握った方がいいだろうし仕方ないか。



 その後、竜人族も協力して総合買取り所を建てる事に決まったみたい。

 何故、竜人族もかと言うと、単純にオオ爺サマに会いに行きたいからだろう。まあ、身体能力の高い竜人族なら邪魔にはならないし許可しておいた。ギータ達が困るかもしれないけどな。





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『いずれ最強の錬金術師?』のコミック版6巻が、7月19日より順次書店にて発売予定です。

お手に取って頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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