いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

文字の大きさ
表紙へ
上 下
243 / 318
16巻

16-3

しおりを挟む
「まあ、タクミ達がウェッジフォートで経験したスタンピードレベルって事はないと思うわよ。聖域が出来たお陰で、地脈の浄化も進んでいるからね」
「あれ? あの時って、まだシルフは顕現していなかったよね。だって精霊樹の種子を拾う前だし、聖域のせの字もない時だよ」
「馬鹿ね。私は風の大精霊シルフよ。顕現しなくても太古の昔から存在し続けているの」
「それもそうか」

 話を聞く限り、一部の魔物が聖域やウェッジフォート、バロルがある未開地の中央付近に移動してくるのは間違いないみたい。
 ただ、結構ギリギリの戦いをいられた、ウェッジフォートの魔物のスタンピードと比べると数はずっと少ないと、シルフは予想している。
 まあ、僕やソフィア達も、あの頃と比べるとずっと強くなっているから、あの時以上のスタンピードがあっても大丈夫だと断言できる。
 ソフィアも同じように思ったのか、一つ提案をしてきた。

「おそらくしばらくはイレギュラーな魔物の群れの移動があるでしょう。その対処は、私達に任せてもらえませんか?」
「あっ、ソフィアさん、リハビリをするんですね」
「いいかもしれません。なまった体をきたえ直したいですから」

 マリアは直ぐにソフィアの意図に気が付き、マーニも賛成みたい。

「どうでしょう、タクミ様。今さら、未開地の魔境から出てくる魔物程度、私達なら何の問題もないと思うのですが」
「聖域騎士団からも小隊長に新人をつけて派遣しましょう。ソフィア殿達の足手まといにはならんと思いますぞ」

 ソフィアからお願いされ、そこにガラハットさんまで賛成すると、僕としてもダメとは言えない。
 ガラハットさんはこの機会を、騎士団の新人教育に使う意図があるみたいだしね。

「そうね。いいんじゃないかしら。一日二日の話じゃなくて、未開地が落ち着くまで少しかかると思うから」

 シルフも良い案だと言うので、僕は頷いてソフィアに返す。

「分かったよ。ベールクトやフルーナも誘うんだろう?」
「はい。あの子達の都合もあるでしょうが、喜んで参加すると思います」

 産後のリハビリに魔物退治はどうかと思うけど、うちの妻達はこの世界でもトップレベルだから大丈夫かな。

「心配しなくてもいいわよ。聖域騎士団とは別に、私もたまに参加するから」
「勿論、ルルもアカネ様と一緒に、ソフィア様達を守るニャ」
「あ、ありがとう」

 アカネとルルちゃんも参加すると言うので、安心ではあるけれど、ほとんど彼女達自身のストレス解消が目的だろうな。

「それで、未開地に影響がある期間って、どのくらいか分かる?」
「う~ん。しばらくすれば落ち着くとは思うけど、それでも南西端での開発がいち段落するまで、多少の影響は残ると思うのよね」

 シルフの予想では、最初の数ヶ月から一年くらいは、大小の魔物の群れが北へ移動したり、それにより中央付近の魔境に棲息せいそくする魔物が騒がしくなったりするらしい。
 けれど、だんだんと落ち着いていくだろうとも言った。

「多分ね。知らないけど」
「いや、そこは断言してよ」
「精霊の事ならまだしも、魔物の行動なんて知らないわよ」
「それもそうか」

 シルフは、あくまで眷属けんぞくの風精霊からの情報を伝えてくれているだけで、あとは予測するしかないもんな。
 僕がシルフの言う事ももっともだと思っていると、ガラハットさんからも要望が入る。

「イルマ殿。小さめでいいので、騎士達の休憩用のとりでを一つお願いできますか。以前のシドニア神皇国とトリアリア王国との戦争で造った砦は、確か更地さらちにしたんでしたな。あれほどの規模は必要ありませんので、バロルとウェッジフォートの南にお願いします」
「ああ、あった方がいいですね。特に新人の訓練なら休憩したり怪我けがの治療をしたりと色々と使えますし」

 毎回、聖域から行軍するのも手間だし、簡易なものでも宿泊する場所があれば便利だろう。
 少し前の未開地での戦争では、砦を含めて色々と準備したけれど、場所的に維持するのが大変なので、僕が魔法で更地に戻してある。魔物のになっても嫌だしね。
 ガラハットさん曰く、それほど広くなくていいので、野営よりましな寝床とそこそこの外壁が欲しいとの事。

「倉庫を魔導具にすれば、備品や食糧も劣化れっかさせずにストックできるでしょう。タクミなら一日もあれば楽勝でしょ」
「ま、まあ、出来なくはないけど……」
「おお、それは助かりますな。調理器具と水場もあれば、温かい食事がれて疲れもいやせるでしょうな」
「ま、まあ、必要ですよね」

 アカネから魔導具化した倉庫をリクエストされ、ガラハットさんからも食事関係の要望が上がる。
 確かに、倉庫をアイテムボックス化するのは問題ない。
 空間を拡張せず、状態を維持するだけならなおさら簡単に出来る。それにガラハットさんが言う調理場や調理器具、水源も必要だと分かる。
 でも、そうなるとセキュリティーを考える必要がある。常駐する砦じゃないので、水を調達する魔導具や調理用の魔導具なんかは直ぐ盗難にあいそうだ。
 セキュリティーに関して考えていると、アカネが言う。

「戦争に使ったゴーレムが結構余ってるんじゃないの?」
「ああ、それがあったね」
「同盟三ヶ国の騎士団が砦を使用したいなら、ゴーレムに認証させる目印でも持ってもらえばいいんじゃない」

 確かに、それなら問題は解決しそうだ。
 アカネが言うようにゴーレムを配置して、同盟三ヶ国の面々には味方だと認識されるアイテムを持ってもらおう。

「門番ゴーレムは、別途造ってもいいしね」
「タクミが造りたいだけでしょ」

 アカネからツッコミが入る。
 まあ、そうなんだけどね。
 ボルトンの屋敷や戦争の時以来、ゴーレムはしばらく造ってなかったから。

「ゴーレム造りは、レーヴァも手伝うでありますよ」
「ほどほどにしなさいよ。今あるゴーレムだけでも十分なんだから」

 ゴーレム造りにレーヴァも参加を表明すると、アカネがやりすぎるなとくぎを刺した。

「アカネ様、それはタクミ様とレーヴァさんには無理な話ニャ」

 ルルちゃんはあきらめ気味だ。
 仕方ないよね。僕らは生産こそ本職なんだから。



 5 砦とゴーレムと訓練


 未開地の南西端開発をきっかけに起こるであろう魔物の移動及び増加。
 スタンピードまではいかないレベルだとしても、普通の商隊には被害が出る可能性があるという事で、やって来ました、未開地中央から少し南へ下った場所。
 ウェッジフォートからもバロルからも数十キロ程度の距離なので、かなり街に近い位置になる。
 とはいえ、普段定期的に街の近くの魔物を駆除している同盟三ヶ国の騎士団も、ここまでは来ない。
 ソフィアとマリア、マーニは、魔物の群れを求めてここからさらに南を目指す。

「ではタクミ様。私達は、もう少し南へ向かいます」
「タクミ様、行ってきます!」
「旦那様。行ってまいります」
「うん。気を付けてね」

 砦を築くためにここに残る僕に声をかけて出発するソフィア達。

「ソフィア殿達の事はお任せください」
「タクミ、サボんないでよ」
「行ってきますニャ」

 ガラハットさんが僕に声をかけ、騎士団の部下を連れて陸戦艇りくせんていサラマンダーに乗り込む。アカネも軽口を叩いてルルちゃんと乗り込み、皆んなは二台のサラマンダーで行ってしまった。
 今回、広範囲を移動できるよう陸戦艇サラマンダーを出動させた。
 初日の今日は、念のため二台一緒に行動するらしいけど、ベールクトやフルーナが参加して人数が増えれば、二手に分かれて魔物を間引くんだそうだ。
 残されたのは、僕とレーヴァ、それとゴーレムのタイタン。いつもの土木作業仲間だ。

「さて、先に線を引こうか」
「早く砦を建てて、ゴーレムを造りに戻るでありますよ」
『マスター、ガンバリ、マショウ』

 図面を確認しながら地面に線を引いていく。
 今回は、レーヴァとタイタンと協力して四方の外壁を一度に造る予定なので、イメージ頼りにしないで、最初にきっちりと線でアタリをつけておく。

「じゃあ、僕がここから……この辺りまで、半分くらいを受け持つよ」
「では、レーヴァは、この辺りから全体の四分の一を受け持つであります」
『ワタシハ、ソノ、ノコリヲ』

 三人で分担を決め、タイミングを合わせて魔法を発動する。
 ズゴゴゴゴォォォォーー!!
 高さ十五メートル、幅五メートル、一辺の長さ八十メートル四方の外壁が出来上がった。

「ふぅ。上手くいったね」
「完璧であります」
『オツカレサマデス』
「じゃあ、僕は北と南に門を造って、外壁の強化をするよ」
「レーヴァは宿舎と食堂の建物を造るであります」
『ワタシハ、ソウコヲツクリマス』

 とりあえず外壁は出来たけれど、これで完成ではない。
 門を設置するスペースを空け、そこに鋼鉄こうてつ製の門を取りつけないといけない。それに加え、外壁と門を強化していく。
 レーヴァは騎士団が寝泊まりする建物と食堂を、タイタンは倉庫を造ってくれる。
 僕はレーヴァとタイタンと別れ、外壁を内側から強化していく。因みに、砦の外壁の外側、周囲には空堀からぼりが出来ている。
 錬金術れんきんじゅつと土属性魔法を併用し、外壁の強化と門の設置を進めていく。

「ふぅ。こんなものかな」

 外壁を一周し、門を設置し終えて砦の中を振り返ると、ちょうどレーヴァとタイタンの作業も終わっていた。

「さて、あとは魔導具かな」
「手分けするであります」

 レーヴァと一緒に建物内へ魔導具を設置していく。
 照明の魔導具を、狭い部屋には一つ、大きな部屋には複数取りつけ、スイッチ一つで点灯、消灯するようにしておく。そうじゃないと不便だしね。
 井戸を掘ってもよかったんだけど、運良くいい水脈に当たるか分からなかったので、今回は湧水の魔導具頼りだ。
 大型のタンクを建物の上に設置。そこに湧水の魔導具を取りつけ、使う分だけ水が湧き出すようにする。タンクからパイプを引き、水道として使用するのだ。
 湧水の魔導具を複数取りつければ、こんな大掛かりな装置は必要ないんだけどね。
 素材は自前だし、造るのも自分だから忘れがちだけど、魔導具って世間的にはとても高価なんだ。
 僕はそれを安価で大衆に届けられたらって思う。でも、なかなか難しいのが現状だ。

「タクミ様、浄化の魔導具をプリーズであります」
「はい。半分お願い」
「了解であります」

 この規模の砦ならトイレの数なんてしれてるんだけど、僕が造るならそんなところで不自由したくないからね。
 寝泊まりする建物にもトイレを複数造るのは当然だし、公衆トイレみたいに独立した小さな建物としても用意した。
 レーヴァにアイテムボックスから浄化の魔導具付き便器を取り出して渡すと、僕もトイレを設置していく。
 因みに、宿泊施設として建てた建物は、騎士団長や隊長格用に個室を造り、トイレとシャワーも設置してある。
 あとは申し訳ないけれど四人部屋と二人部屋で、共同トイレと共同シャワーだ。
 ひと通り設備を整えると、次は門番ゴーレムだ。

「タイタン。ソフィア達が戻ってくるまで、ここの守りをお願い」
『リョウカイ、シマシタ』
「では、レッツ、ゴーレムクリエイトであります!」

 僕はテンションの高いレーヴァを連れて、聖域の自宅工房へと転移した。


 一瞬で目の前の景色が変わり、いつもの自分達の工房に到着。気分も落ち着く。

「さて、今回のゴーレムは、そんなに時間がかけられないから、既存のゴーレムのアレンジでいこうと思ってるんだ」
「いいと思うであります。となると決めるのは、素材の金属と持たせる武器、あとはゴーレムのサイズでありますな」

 ソフィア達を迎えに行かないといけないので、四方の門を守らせるゴーレム四体に時間はかけられない。

「やっぱり魔鋼かな」
「ミスリルを混ぜてもいいと思うでありますよ」
「ああ、ありだね。とにかく頑丈に造るとなると、ミスリルかアダマンタイトを混ぜてもいいだろうね」

 門番ゴーレムは、どうしても風雨にさらされるので、魔鋼よりはびにくいミスリルやアダマンタイトの合金の方がいい。
 勿論、腐食に対する付与はするけれど、素材自体の性質が丈夫な方がいいに決まっている。
 結局、魔法を操る魔物対策として、ミスリル合金製に決まった。とはいえ、合金のベースは魔鋼だけどね。

「魔晶石は、ゴーレムの核となるものと、魔力タンク用の二つでありますか?」
「うん。一応、他のゴーレムと同じく周辺の魔素を取り込んで魔力を補充するようにするけど、基本立っているだけならほとんど魔力は使わないから、それほど大きな石じゃなくても大丈夫だしね。二つ以上使うと、大きくない魔晶石でも、それを狙う人が出てきそうで怖いし」
「でもタクミ様。魔力の認証を行う魔導具を組み込むなら、魔晶石三つになるでありますよ」
「……ほんとだ。忘れてた。うーん、仕方ないか。誰も街から離れた辺鄙へんぴな場所にある未開地の砦まで、ゴーレムを盗みに来たりしないだろう。うん、そう思おう」
「まあ、大抵のやからは返り討ちでありますから」

 基本、僕が錬成する魔晶石は、大きさは様々だけどその純度は最高だと自負している。
 だからそんな魔晶石を複数使ったゴーレムと知られれば、それを盗もうと考える輩も出ないとは言えない。
 ただ、レーヴァに指摘されて思い出したけど、魔力の認証をする魔導具を組み込む事が前提のゴーレムなので、その時点で魔晶石を三つ使用するのは避けられない。
 まあ、これもレーヴァが言うように、僕らの仲間クラスの強さじゃないと対処不可能なゴーレムだから、大丈夫だと割り切ろう。

「サイズはどうするでありますか? レーヴァとしては、大きい方がかっこいいと思うであります」
「そうだね。ただ、タイタン級になると魔晶石を大きくしないと燃費が悪いから、それよりは小さくして、二メートル五十センチくらいにしようと思ってる」
「その大きさのゴーレムなら十分威圧感があるであります」
「じゃあ、サイズはそのくらいでいこう」

 ゴーレムの大きさは、これまで造ったものと同じような感じだ。それ故、造り慣れているので、錬成して組み立てるのにそれほど時間はかからなかった。

「認証の魔導具は、顔に配置したのでありますな。単眼みたいでいい感じであります」
「そ、そう。ならよかった」

 レーヴァからの感想にドキリとする。
 何故なら、ショルダーアーマーに草摺くさずりのような西洋甲冑かっちゅうの雰囲気に深い緑の配色。そこにモノアイとくれば、そうアレだ。袖付きの主力量産M◯。
 アカネなら分かってくれるだろう。
 カエデの専用グライドバイクを造る時に、赤くて三倍速いなんてネタを教え込んでいたくらいだからな。

「と、とりあえず、残りの三体をまとめて錬成するよ」
「お願いするであります。レーヴァは、手に持たせる武器を見繕みつくろうであります」

 心の動揺を抑えて言うと、レーヴァはゴーレムに装備させる武器をストックの中から選ぶために倉庫へと向かった。
 倉庫は空間拡張され、状態保存の魔法がかけられ、僕とレーヴァの作品や素材のストックが大量に収納してある。
 加えて、種類ごとにマジックバッグに整理してある物も多く、僕やレーヴァもそろそろ把握するのが難しくなってきている。
 それはさておき、僕は三体分の素材を取り出し、纏めて錬成してしまう。

「錬成!」

 一度、造ったものと同じものを錬成するのは難しくない。これも他の錬金術師を知らないから、世間の常識とは違う可能性も高いけどね。
 四体のゴーレムを並べていると、レーヴァが戻ってきた。
 その手には大きな両刃のおのがある。

「これでいいでありますか?」
「ああ、斧ね。いいんじゃないかな。うちの騎士団でも使うのって、土精どせい騎士団のドワーフか、元冒険者パーティー『獅子ししきば』のヒースさんくらいだし、何よりそれはゴーレムサイズだしね」

 普通、騎士団で斧を使う人は少ない。騎士と言えば剣だからね。
 だけど聖域騎士団には、ドワーフを中心とした土精騎士団があるから、まだ需要はある方だ。
 ヒースさんも冒険者時代から戦斧を使っている。
 でもレーヴァが持ってきたのは、以前造って余っていたゴーレム用の斧なので、人間が使うには少々大きい。
 レーヴァがマジックバッグから残りの斧を取り出し、一体一体に持たせていく。うん、ますます敵側の量産機だな。

「腰の後ろに取りつけられるようにしようか」
「そうでありますな。普段は手に持たず、腰裏に装備している方が、他国の騎士団を無駄むだに威圧しないで済むであります」

 レーヴァがゴーレムに斧の扱いをインストールしている間に、僕は腰裏に斧を留める金具を付けていく。
 因みに、レーヴァが行っているインストールというのは、ゴーレム核に各武術の基本的な動きを追加で書き込む作業だ。
 最初から、様々な武術の動きを書き込めればいいのだけど、タイタンクラスの魔晶石じゃないと難しい。
 しかもタイタンのゴーレム核は、僕達が錬成して書き込んだものじゃなく、もともとは女神様の遺跡いせきを護るガーディアンゴーレムだった頃のものだ。同じものを造れと言われれば可能だろうけれど、タイタンのように自我のあるゴーレムにはならない。

「オッケーであります。砦に運ぶでありますか?」
「ああ、タイタンも待っているし、そろそろソフィア達も戻ってくる頃かもしれないからね」

 完成した四体の門番ゴーレムをアイテムボックスに収納し、僕とレーヴァは未開地の砦へと転移した。


 ◆


 タクミとレーヴァとタイタンが砦を築いている頃、そこからさらに南へと向かった場所で、ソフィア、マリア、マーニ、アカネ、ルルを残し、もう一台のサラマンダーが離れていく。
 ガラハット率いる聖域騎士団の新人は、もう少し東側で魔物の駆除をするのだ。

「さて、久しぶりの戦闘になりますが、一度経験済みなので問題ないですね」
「そうですね。もう私達もベテラン冒険者ですから」
「フフッ」

 ソフィアが剣を抜き、何度か素振すぶりして体の動きを確かめ、頷く。出産は二度目という事もあり、産後のリハビリも二度目なので、自身のサビつき具合も理解していた。
 それはマリアとマーニも同じで、何処となく余裕があるのもそのせいだろう。

「即死以外なら治してみせるから心配いらないわよ」
「アカネ様、その言い方はないニャ」
「フフッ、お願いします」
「心強いです!」

 腕を組み胸を張って言い放ったアカネのセリフに、ルルがツッコミを入れるも、そこはアカネともそれなりの付き合いになりつつあるソフィアとマリア。二人は笑顔で礼を言った。

「私達を見つけたみたいですね」
「相手の強さが分からないのね。雑魚ざこよ雑魚」

 ソフィアが近づいてくる魔物の群れを察知した。ほぼ同時にアカネも察知しており、無謀むぼうにも襲ってくる魔物に吐き捨てた。
 実際、ソフィア達からすれば、未開地に棲息する魔物はほぼ雑魚になる。

「じゃあルル行くニャ!」
「あ、ルルちゃん! 抜け駆けはダメです!」

 ルルが我慢しきれず魔物に向かって駆け出した。ルルにとって今日の任務はストレス解消の運動だった。ソフィア達のリハビリが目的だと忘れている。
 飛び出したルルの後をマリアが追いかける。

「さて、私達も行きましょうか」
「はい。他の群れも集まってきたみたいですし」

 ソフィアとマーニも追加の群れが近づいてくるのを察知しつつ、駆ける。

「皆んな元気ねぇ。今日は私は楽をさせてもらおうかしらね」

 アカネはその場で討ち漏らしを始末するつもりのようだ。


しおりを挟む
表紙へ

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。