259 / 314
連載
後日談百三十四話 今度は土の中
しおりを挟む
離島の開発を最低限済ませ、あとはソフィア達と聖域騎士団、創世教の神官に任せて、僕は工房へと戻っていた。
勿論、妻達は毎日、聖域騎士団のメンバー、神官さん達も交代で聖域には戻している。
で、僕はというと、工房でカリカリとスケッチを何枚も描いては考え、描いては思案しを繰り返していた。
「タクミ様、やっぱり土の中は難しいでありますか?」
「うーん。普通は行かない場所だからね」
そう。離島の地下水脈の浄化の為の準備だ。
今のところウィンディーネとノームが、汚染された水が、他に漏れ出さないよう結界で覆ってくれているので、後回しにしていたけれど、そろそろ本気で考えなきゃね。
「結局、あの島は転移ゲートで結ぶのでありますか?」
「いや、それはやめておこうかと思ってる」
「そうでありますな。このままだと、タクミ様に依存しちゃいそうであります」
「だよね。ある程度自立できる道筋をつけたら、ほんと偶に確認するくらいでいいかと思ってる」
レーヴァから離島と聖域を、転移ゲートで繋ぐのかと聞かれたけれど、僕は首を横に振る。レーヴァも言うように、何もかも与えられるのが当たり前になると、自立心が損なわれるだろうし、聖域に依存されるのも違う。
創世教の神官からは、ガルーダでの渡航を頼まれているので、偶の行き来は続けるだろう。
創世教の神官さん達は、離島の住民で光属性に適性のある人を指導するみたい。
実際、先祖代々神官だった人の血筋から、少数だけど光属性に適性がある人が居たみたいで、魔法の訓練が始まっている。
それに加えて、現地の薬草を使った薬類の作り方なんかも指導していくそうだ。
まあ、今は浄化の方法だ。
「今度は土の中でありますか。魔導具で地下水脈を浄化するでありますか?」
「いや、地面に魔導具を打ち込んで浄化するって方法も考えてみたんだけど、難しそうなんだよね」
「確かに、打ち込む方法はともかく、当てずっぽうになりそうでありますな」
レーヴァが興味津々で聞いてきたのは、地下水脈の浄化だ。魔導具を地中に打ち込んで浄化するって方法もあるとは思うけど、地下水脈の場所を正確に特定しないといけないので難しそうだ。
「まあ、乗り物の方が楽しそうだからっていうのが大きいけどね」
「それは仕方ないでありますよ。レーヴァもそっちの方が好みでありますから」
「だよね」
そうなんだよね。新しい乗り物を考える方が楽しいってのが強い。離島の水問題に関しては、当面湧水の魔導具を複数用意して対処するので、僕はじっくりと趣味に走れるって訳だ。
「そうなると、僕達なら土の中を行く乗り物一択だね」
「そうでありますな。土の中、楽しみであります」
「まあ、土の中だから景色もなにもないけどね」
「そう言えばそうでありますな」
陸や空、水中なら外の景色を見る事も楽しみの一つだけど、今回は土の中。地層の違いを見ても楽しくないだろう。
「取り敢えず、色々とスケッチかな」
「そうでありますな。レーヴァも協力するでありますよ」
「うん。お願い。アイデアはたくさん欲しいからね」
先ずは、実現可能か不可能かは別にして、レーヴァと二人色々とアイデアをスケッチしまくる事にした。
「う~ん。土の中っていうとアイアンモールを思い出すんだよなぁ」
「モグラの魔物でありますか?」
「うん。まだソフィアやマリアと出会って間もない時に、ドガンボさんと鉱山に採掘へ行ったんだよ。まあ、僕達は冒険者だから採掘よりもアイアンモールの討伐の方がメインの仕事だったんだけどね」
僕がこの世界に降り立って一年も経ってなかった頃の話。そんなに昔の話じゃないけれど、随分と懐かしく感じる。
ウラノスやガルーダはまだそれ程生物っぽい感じに見えないけど、ドラゴンフライはもうもろトンボがモチーフだ。潜水艇トリトンはタガメだし、今度も蟲でいこうかな。
先ず、土の中に穴を掘る生き物を思い浮かべる。
最初に浮かんだのは蟲じゃなくてアイアンモール。まだ僕とソフィア、マリアの三人だった頃に、ドガンボさんの護衛という建前で鉱山に行った時に出て来たモグラの魔物だ。
あの時、初めてミスリルやアダマンタイトを採掘したんだったな。まあ、その後の精錬の方が大変だったけどね。
取り敢えずモグラは候補に入れておくか。
次に地面に穴を掘ると考えると蟻やオケラ、ミミズか。……ミミズは無いな。でもレーヴァはスケッチくらいしてそう。
そうそう、地蜘蛛も土の中に巣を作ってたな。子供の頃、細長い袋状の巣を地面から引っ張り出したりした記憶がある。蜘蛛がモチーフだとカエデが喜びそうだ。とはいえ、純粋に土の中を進む乗り物となると、オケラが一番しっくりくるか。
サラサラと何枚もスケッチしていく。うん、ミミズは無しだな。気持ち悪い。
この世界にもミミズはいるし、もっと気持ち悪いワーム系の魔物もいる。僕はまだ見た事がないけど、もの凄く巨大なワームもいるらしい。
いっそ生物に寄せるのをやめて、某人形アニメ、◯ンダーバードに出てくるような、ドリルの付いた円筒形のマシーンにするっていうのもありか。いや、それは面白くないか。でも、オケアノスは昭和の特撮とか宇宙海賊アニメをパクッ……イメージしてデザインしたから、地中用の乗り物も、その線でいくのもおかしくはないか。悩むところだな。
それこそ穴を掘るって一点だけを考えれば、前世のトンネル工事に使われていたシールド工法のシールドマシンみたいなのがいいかとも考えた。けど、シールド工法も欠点が無い訳じゃないんだよね。掘削した泥や水を分離し処理する手間が凄くコストが掛かるって聞いた事がある。とはいえ、どんな乗り物にしたとしても、その辺は魔法で処理する予定なので、結局形は何でも有りって事になっちゃうんだよな。
「穴を埋めるかどうするかも決めないとね」
「それもあるでありますな。まあ、安全を考えれば、穴はその都度埋めて固める方がよさそうであります」
「そうだよね。となると土属性魔法と時空間属性魔法は必須だな」
「で、ありますな」
「これはなかなか難しいね」
「そうでありますな」
海や空と比べても、土の中っていうのは、なかなかに難しいと、悩む僕とレーヴァだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されます。
あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されます。
あわせてよろしくお願いします。
小狐丸
勿論、妻達は毎日、聖域騎士団のメンバー、神官さん達も交代で聖域には戻している。
で、僕はというと、工房でカリカリとスケッチを何枚も描いては考え、描いては思案しを繰り返していた。
「タクミ様、やっぱり土の中は難しいでありますか?」
「うーん。普通は行かない場所だからね」
そう。離島の地下水脈の浄化の為の準備だ。
今のところウィンディーネとノームが、汚染された水が、他に漏れ出さないよう結界で覆ってくれているので、後回しにしていたけれど、そろそろ本気で考えなきゃね。
「結局、あの島は転移ゲートで結ぶのでありますか?」
「いや、それはやめておこうかと思ってる」
「そうでありますな。このままだと、タクミ様に依存しちゃいそうであります」
「だよね。ある程度自立できる道筋をつけたら、ほんと偶に確認するくらいでいいかと思ってる」
レーヴァから離島と聖域を、転移ゲートで繋ぐのかと聞かれたけれど、僕は首を横に振る。レーヴァも言うように、何もかも与えられるのが当たり前になると、自立心が損なわれるだろうし、聖域に依存されるのも違う。
創世教の神官からは、ガルーダでの渡航を頼まれているので、偶の行き来は続けるだろう。
創世教の神官さん達は、離島の住民で光属性に適性のある人を指導するみたい。
実際、先祖代々神官だった人の血筋から、少数だけど光属性に適性がある人が居たみたいで、魔法の訓練が始まっている。
それに加えて、現地の薬草を使った薬類の作り方なんかも指導していくそうだ。
まあ、今は浄化の方法だ。
「今度は土の中でありますか。魔導具で地下水脈を浄化するでありますか?」
「いや、地面に魔導具を打ち込んで浄化するって方法も考えてみたんだけど、難しそうなんだよね」
「確かに、打ち込む方法はともかく、当てずっぽうになりそうでありますな」
レーヴァが興味津々で聞いてきたのは、地下水脈の浄化だ。魔導具を地中に打ち込んで浄化するって方法もあるとは思うけど、地下水脈の場所を正確に特定しないといけないので難しそうだ。
「まあ、乗り物の方が楽しそうだからっていうのが大きいけどね」
「それは仕方ないでありますよ。レーヴァもそっちの方が好みでありますから」
「だよね」
そうなんだよね。新しい乗り物を考える方が楽しいってのが強い。離島の水問題に関しては、当面湧水の魔導具を複数用意して対処するので、僕はじっくりと趣味に走れるって訳だ。
「そうなると、僕達なら土の中を行く乗り物一択だね」
「そうでありますな。土の中、楽しみであります」
「まあ、土の中だから景色もなにもないけどね」
「そう言えばそうでありますな」
陸や空、水中なら外の景色を見る事も楽しみの一つだけど、今回は土の中。地層の違いを見ても楽しくないだろう。
「取り敢えず、色々とスケッチかな」
「そうでありますな。レーヴァも協力するでありますよ」
「うん。お願い。アイデアはたくさん欲しいからね」
先ずは、実現可能か不可能かは別にして、レーヴァと二人色々とアイデアをスケッチしまくる事にした。
「う~ん。土の中っていうとアイアンモールを思い出すんだよなぁ」
「モグラの魔物でありますか?」
「うん。まだソフィアやマリアと出会って間もない時に、ドガンボさんと鉱山に採掘へ行ったんだよ。まあ、僕達は冒険者だから採掘よりもアイアンモールの討伐の方がメインの仕事だったんだけどね」
僕がこの世界に降り立って一年も経ってなかった頃の話。そんなに昔の話じゃないけれど、随分と懐かしく感じる。
ウラノスやガルーダはまだそれ程生物っぽい感じに見えないけど、ドラゴンフライはもうもろトンボがモチーフだ。潜水艇トリトンはタガメだし、今度も蟲でいこうかな。
先ず、土の中に穴を掘る生き物を思い浮かべる。
最初に浮かんだのは蟲じゃなくてアイアンモール。まだ僕とソフィア、マリアの三人だった頃に、ドガンボさんの護衛という建前で鉱山に行った時に出て来たモグラの魔物だ。
あの時、初めてミスリルやアダマンタイトを採掘したんだったな。まあ、その後の精錬の方が大変だったけどね。
取り敢えずモグラは候補に入れておくか。
次に地面に穴を掘ると考えると蟻やオケラ、ミミズか。……ミミズは無いな。でもレーヴァはスケッチくらいしてそう。
そうそう、地蜘蛛も土の中に巣を作ってたな。子供の頃、細長い袋状の巣を地面から引っ張り出したりした記憶がある。蜘蛛がモチーフだとカエデが喜びそうだ。とはいえ、純粋に土の中を進む乗り物となると、オケラが一番しっくりくるか。
サラサラと何枚もスケッチしていく。うん、ミミズは無しだな。気持ち悪い。
この世界にもミミズはいるし、もっと気持ち悪いワーム系の魔物もいる。僕はまだ見た事がないけど、もの凄く巨大なワームもいるらしい。
いっそ生物に寄せるのをやめて、某人形アニメ、◯ンダーバードに出てくるような、ドリルの付いた円筒形のマシーンにするっていうのもありか。いや、それは面白くないか。でも、オケアノスは昭和の特撮とか宇宙海賊アニメをパクッ……イメージしてデザインしたから、地中用の乗り物も、その線でいくのもおかしくはないか。悩むところだな。
それこそ穴を掘るって一点だけを考えれば、前世のトンネル工事に使われていたシールド工法のシールドマシンみたいなのがいいかとも考えた。けど、シールド工法も欠点が無い訳じゃないんだよね。掘削した泥や水を分離し処理する手間が凄くコストが掛かるって聞いた事がある。とはいえ、どんな乗り物にしたとしても、その辺は魔法で処理する予定なので、結局形は何でも有りって事になっちゃうんだよな。
「穴を埋めるかどうするかも決めないとね」
「それもあるでありますな。まあ、安全を考えれば、穴はその都度埋めて固める方がよさそうであります」
「そうだよね。となると土属性魔法と時空間属性魔法は必須だな」
「で、ありますな」
「これはなかなか難しいね」
「そうでありますな」
海や空と比べても、土の中っていうのは、なかなかに難しいと、悩む僕とレーヴァだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。
2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。
また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されます。
あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されます。
あわせてよろしくお願いします。
小狐丸
1,555
お気に入りに追加
35,523
あなたにおすすめの小説
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
異世界立志伝
小狐丸
ファンタジー
ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。
さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
不死王はスローライフを希望します
小狐丸
ファンタジー
気がついたら、暗い森の中に居た男。
深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。
そこで俺は気がつく。
「俺って透けてないか?」
そう、男はゴーストになっていた。
最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。
その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。
設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。