いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

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後日談百三十四話 今度は土の中

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 離島の開発を最低限済ませ、あとはソフィア達と聖域騎士団、創世教の神官に任せて、僕は工房へと戻っていた。

 勿論、妻達は毎日、聖域騎士団のメンバー、神官さん達も交代で聖域には戻している。


 で、僕はというと、工房でカリカリとスケッチを何枚も描いては考え、描いては思案しを繰り返していた。

「タクミ様、やっぱり土の中は難しいでありますか?」
「うーん。普通は行かない場所だからね」

 そう。離島の地下水脈の浄化の為の準備だ。

 今のところウィンディーネとノームが、汚染された水が、他に漏れ出さないよう結界で覆ってくれているので、後回しにしていたけれど、そろそろ本気で考えなきゃね。

「結局、あの島は転移ゲートで結ぶのでありますか?」
「いや、それはやめておこうかと思ってる」
「そうでありますな。このままだと、タクミ様に依存しちゃいそうであります」
「だよね。ある程度自立できる道筋をつけたら、ほんと偶に確認するくらいでいいかと思ってる」

 レーヴァから離島と聖域を、転移ゲートで繋ぐのかと聞かれたけれど、僕は首を横に振る。レーヴァも言うように、何もかも与えられるのが当たり前になると、自立心が損なわれるだろうし、聖域に依存されるのも違う。

 創世教の神官からは、ガルーダでの渡航を頼まれているので、偶の行き来は続けるだろう。

 創世教の神官さん達は、離島の住民で光属性に適性のある人を指導するみたい。

 実際、先祖代々神官だった人の血筋から、少数だけど光属性に適性がある人が居たみたいで、魔法の訓練が始まっている。

 それに加えて、現地の薬草を使った薬類の作り方なんかも指導していくそうだ。


 まあ、今は浄化の方法だ。

「今度は土の中でありますか。魔導具で地下水脈を浄化するでありますか?」
「いや、地面に魔導具を打ち込んで浄化するって方法も考えてみたんだけど、難しそうなんだよね」
「確かに、打ち込む方法はともかく、当てずっぽうになりそうでありますな」

 レーヴァが興味津々で聞いてきたのは、地下水脈の浄化だ。魔導具を地中に打ち込んで浄化するって方法もあるとは思うけど、地下水脈の場所を正確に特定しないといけないので難しそうだ。

「まあ、乗り物の方が楽しそうだからっていうのが大きいけどね」
「それは仕方ないでありますよ。レーヴァもそっちの方が好みでありますから」
「だよね」

 そうなんだよね。新しい乗り物を考える方が楽しいってのが強い。離島の水問題に関しては、当面湧水の魔導具を複数用意して対処するので、僕はじっくりと趣味に走れるって訳だ。

「そうなると、僕達なら土の中を行く乗り物一択だね」
「そうでありますな。土の中、楽しみであります」
「まあ、土の中だから景色もなにもないけどね」
「そう言えばそうでありますな」

 陸や空、水中なら外の景色を見る事も楽しみの一つだけど、今回は土の中。地層の違いを見ても楽しくないだろう。

「取り敢えず、色々とスケッチかな」
「そうでありますな。レーヴァも協力するでありますよ」
「うん。お願い。アイデアはたくさん欲しいからね」

 先ずは、実現可能か不可能かは別にして、レーヴァと二人色々とアイデアをスケッチしまくる事にした。

「う~ん。土の中っていうとアイアンモールを思い出すんだよなぁ」
「モグラの魔物でありますか?」
「うん。まだソフィアやマリアと出会って間もない時に、ドガンボさんと鉱山に採掘へ行ったんだよ。まあ、僕達は冒険者だから採掘よりもアイアンモールの討伐の方がメインの仕事だったんだけどね」

 僕がこの世界に降り立って一年も経ってなかった頃の話。そんなに昔の話じゃないけれど、随分と懐かしく感じる。



 ウラノスやガルーダはまだそれ程生物っぽい感じに見えないけど、ドラゴンフライはもうもろトンボがモチーフだ。潜水艇トリトンはタガメだし、今度も蟲でいこうかな。

 先ず、土の中に穴を掘る生き物を思い浮かべる。

 最初に浮かんだのは蟲じゃなくてアイアンモール。まだ僕とソフィア、マリアの三人だった頃に、ドガンボさんの護衛という建前で鉱山に行った時に出て来たモグラの魔物だ。

 あの時、初めてミスリルやアダマンタイトを採掘したんだったな。まあ、その後の精錬の方が大変だったけどね。


 取り敢えずモグラは候補に入れておくか。

 次に地面に穴を掘ると考えると蟻やオケラ、ミミズか。……ミミズは無いな。でもレーヴァはスケッチくらいしてそう。

 そうそう、地蜘蛛も土の中に巣を作ってたな。子供の頃、細長い袋状の巣を地面から引っ張り出したりした記憶がある。蜘蛛がモチーフだとカエデが喜びそうだ。とはいえ、純粋に土の中を進む乗り物となると、オケラが一番しっくりくるか。

 サラサラと何枚もスケッチしていく。うん、ミミズは無しだな。気持ち悪い。

 この世界にもミミズはいるし、もっと気持ち悪いワーム系の魔物もいる。僕はまだ見た事がないけど、もの凄く巨大なワームもいるらしい。

 いっそ生物に寄せるのをやめて、某人形アニメ、◯ンダーバードに出てくるような、ドリルの付いた円筒形のマシーンにするっていうのもありか。いや、それは面白くないか。でも、オケアノスは昭和の特撮とか宇宙海賊アニメをパクッ……イメージしてデザインしたから、地中用の乗り物も、その線でいくのもおかしくはないか。悩むところだな。

 それこそ穴を掘るって一点だけを考えれば、前世のトンネル工事に使われていたシールド工法のシールドマシンみたいなのがいいかとも考えた。けど、シールド工法も欠点が無い訳じゃないんだよね。掘削した泥や水を分離し処理する手間が凄くコストが掛かるって聞いた事がある。とはいえ、どんな乗り物にしたとしても、その辺は魔法で処理する予定なので、結局形は何でも有りって事になっちゃうんだよな。

「穴を埋めるかどうするかも決めないとね」
「それもあるでありますな。まあ、安全を考えれば、穴はその都度埋めて固める方がよさそうであります」
「そうだよね。となると土属性魔法と時空間属性魔法は必須だな」
「で、ありますな」
「これはなかなか難しいね」
「そうでありますな」

 海や空と比べても、土の中っていうのは、なかなかに難しいと、悩む僕とレーヴァだった。





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 この度、「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。

 2025年1月まで、楽しみにして頂けると嬉しいです。


 また「いずれ最強の錬金術師?」の16巻が、5月下旬に発売されます。

 あと、ササカマタロウ先生のコミック版「いずれ最強の錬金術師?」6巻も5月下旬に発売されます。

 あわせてよろしくお願いします。

 小狐丸


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