いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

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後日談百十八話 影響

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 バーキラ王国の王都での映画上映に続き、ユグル王国でも上映の初日を迎え、反応はバーキラ王国以上によかったらしい。

 僕は行かなかったので、アカネとルルちゃん、あとルーミア様とミーミル様から聞いた話なんだけど、バーキラ王国の時みたいに、気持ち悪い声を上げる人は居なかったと聞く。

 これは種族的にエルフにロリコンが少ないのか、また別の理由があるのかは分からないけれど、ホッとしたのは確かだ。

「大精霊様方のお姿を目にした観衆は、スクリーンに祈り始めたくらいですよ」
「そうですね。幸運な事に、私やお母様は聖域でお目に掛かる機会がありますけれど、そうでない方々がほとんどですから」
「大騒ぎになったみたいですね」
「「それはもう」」

 ルーミア様とミーミル様が言うには、大精霊達の姿がスクリーンに映し出されると、映画館の席から降りて跪いて祈る人が続出したらしい。もう映画どころじゃないよね。

「それと、これは想定通りですけれど、エトワールちゃんがユグル王国で大人気なのよ」
「ええ、初日に映画を観た人達の口コミで、次回の上映チケットは即完しましたもの。上映スケジュールを考えないといけないかしら」
「ええ、どうして? ユグル王国にも子供は沢山いるでしょうに」

 ルーミア様とミーミル様が、エトワールを孫や娘の様に、妹の様に可愛がってくれるのは、エトワールが生まれた時からだ。聖域に暮らすエルフの人達もエトワールを可愛がってくれる。だからといってユグル王国で大人気になる理由が分からない。

「何を言っているのタクミ君。大精霊様の加護を持つエルフなど、エトワールちゃんとセルトちゃんだけなのよ」
「そうですタクミ様。精霊信仰が盛んなユグル王国で、大精霊様方の愛し子となれば、それだけで特別な事ですから。しかもエトワールちゃんはとても可愛く愛らしい子ですもの」
「そうよね。その容姿だけでも人気になるわ」

 エトワールが生まれた時から、ルーミア様とミーミル様の態度でなんとなく分かっていたけど、エトワールは普通にエルフに愛される存在なんだよな。それ自体は親として嬉しい事なんだけど、多分行き過ぎた推し活の対象になりそうで心配だ。

「恥ずかしながら、他種族を下に見る傾向のあるエルフが、春香ちゃんやフローラちゃんにも可愛い、可愛いと絶賛していますもの」
「そうね。セルトちゃんが生まれた事を知れば、もっと大騒ぎになりそうね」
「そんなにですか……」

 ミーミル様から人気なのはエトワールだけじゃなく、春香やフローラもだと聞くと、逆に少し怖くなる。聖域の暮らすエルフの人達はそんな事はないけれど、基本的にエルフという人達は、自分達の種族が至高だと考える人が多い。自然と他種族を見下す人が見られるのだけど、そんな中、春香やフローラが人気と聞くと僕の方が困惑してしまう。



 アカネを交えてルーミア様とミーミル様から、ユグル王国での映画の反応を聞いていた訳なんだけど、そこにガラハットさんとロザリー様が顔を見せた。

「おお、これはルーミア様にミーミル様。ユグル王国での映画上映も大成功だったようで、おめでとうございます」
「ええ、ありがとうございます。今、丁度その話をしていたところなのよ」
「そうでしたか。こちらは早速、ガルーダやサンダーボルト、サラマンダーを売って欲しいと問い合わせが殺到しておるようですぞ」
「まぁ、それは余りにも無謀ではないでしょうか」

 ガラハットさんが言うには、大型輸送機のガルーダ、攻撃機サンダーボルト、陸戦艇サラマンダーを売って欲しいとの要望が殺到しているらしい。それに対してルーミア様が、無謀なと言うのは当然だ。どれも売るとなると、怖しい値段になる。それだけの素材が必要だし、加えて造れるのも現状僕かレーヴァしか居ないのだから。

「そうですね。そもそもガルーダやサンダーボルトは、聖域騎士団だけに配備したものですし、サラマンダーにしても少数を販売したに過ぎませんからね」
「タクミ君、そんなの放っておけばいいわよ。どうせ馬鹿な貴族派の連中でしょう」

 ロザリー様もそんな要請は放置で大丈夫だと言ってくれる。どうやら聖域騎士団の実力や配備された兵器を見て、焦っているのが貴族派と呼ばれる派閥に属する貴族らしい。

「だいたいガルーダやサンダーボルト、サラマンダーには、ミスリルやアダマンタイトを惜しげもなく使っているが、そんな事が可能なのはノーム様の鉱山を持つ聖域だからじゃ。聖域以外で、あれだけの量のミスリルやアダマンタイトを贖おうとすれば、国家が傾くわい」
「本当よね。うちの主人も鼻で笑ってたわよ。サラマンダーだけでも正規の値段じゃ買えないのにってね」
「ハハッ、ま、まあ、そうですよね」

 ガラハットさんとロザリー様の言うように、聖域以外なら必要量のミスリルやアダマンタイトを揃えるなんて難しいだろう。しかも、それを精錬し合金にした状態でとなると不可能に近いんじゃないかな。

 まあ、あの映像を見ちゃうと怖いよな。そして考えるのは、同じものを手に入れたいとなるのが普通か。

「ところがあの馬鹿どもは、献上させろと言ってきておるそうですな」
「ええ、陛下も流石に笑っていられなかったようで、きつく叱ったみたいだけど、あの古狸が陛下の言葉を素直には聞かないのよね」
「あの、それって貴族派のトップの公爵ですよね」
「そうよ。ランズリット公爵。俗物中の俗物って有名よ」
「そうなんですね」

 確か、王都の映画館で不躾な視線を送ってきたのがランズリット公爵だった筈だ。しかし献上しろはないよね。完全に聖域を下に見ている。

 僕的にはバーキラ王国の高位貴族の悪口を聞いているのも憚れるので、無理矢理に話題を変える。

「それはそうと、バーキラ王国側とユグル王国側の撮影の進捗はどうですか?」
「それは私に聞きなさいよ。両方とも順調よ。二ヶ月も経たないで上映にこぎ着けるんじゃないかな」

 するとガラハットさんやロザリー様、ルーミア様じゃなく、アカネが自分に聞けと言って進捗状況を教えてくれた。いや、二ヶ月は早くないか?

「映画を二ヶ月って、早くない?」
「短編映画みたいなものだからね。それにどちらもやる気が凄いもの」
「いや、やる気って……」
「カメラと編集の魔導具は早い段階で貸し出したからね。その時に、今回の映画も私が編集しているのを見せてあるから、やる気が違うのよ」

 どうやらバーキラ王国もユグル王国も、そう遠くない時期に、オリジナルの映画を上映できるみたいだ。勿論、二時間から二時間半あるフル尺のものではなく、三十分から一時間程度の長さのものになるそうだけどね。

「まあ、いつまでもエトワール達の映画が上映されるよりはいいけど」
「そうね。三ヶ月から最長でも半年かな」
「いや、半年は長いよ」
「タクミ君、余り短いと見れなかった人が暴動を起こしそうよ」
「そうですよタクミ様。既にもう一度見たい人が多いのですから」
「はぁ、そうなんですね」

 今のエトワール達が映る映画を、余り早く打ち切りにすると、暴動が起きかねないなんてルーミア様とミーミル様が脅すものだから、僕もこれ以上言えなくなったよ。









 上映された聖域発信の映画は、バーキラ王国の貴族派に影響を与えたが、少なからず衝撃を受けた者はそれなりに居た。

 父親であるロボス王や宰相のサイモン、近衛騎士団の団長であるギルフォード以下団員達は、聖域騎士団との合同訓練を通して、彼らの実力は知っていたので、驚く事はなかったが、次代の王候補であるロナルドや、その兄の補佐をする予定のリッグルには驚き戸惑う映像だったのだろう。

 映画を観てから直ぐに父親に謁見の申し込みをするも、ロボスは謁見ではなく自室にロナルドとリッグルを呼んだ。

「陛下」
「ここは私室だ。言葉遣いは気にしなくていい。映画の話だろう」
「では父上。小さな弟や妹達は、純粋に楽しめたのでしょうが、私やリッグルはそこまで幼くはありませんでしたから。将来、跡を継ぐ身としては考えさせられました」

 ロナルドは、近衛騎士団が精強な事や陸戦艇サラマンダーが配備されている事は知っていたが、聖域騎士団は想像を遥かに超えていた。

「怖くなったか?」
「はい。空から攻められれば、私達は守りようがありません」
「確かに、アレは反則だよな。剣なんかじゃ届かないもん」

 十四歳の長男ロナルドは、賢王と呼ばれるロボスの跡を継ぐに相応しい器だと周囲から見られている。実際、それだけの能力もあるし、人間性も問題ない。十二歳で次男のリッグルは、勉強よりも剣を振っていたいタイプの少年で、出来れば六歳になる弟のランカートに兄の内政をサポートしてもらい、自分は騎士団に所属したいと思ってるくらいだ。

「まあ心配せずとも、我が国が世界に混沌をもたらすような事がない限り、聖域の矛はこちらには向んよ」
「それは?」

 聖域の圧倒的な武力を怖がるロナルドに、ロボスは心配する事はないと安心させるように言う。ただ、ロボスが語った理由は、ロナルドやリッグルにとって驚愕だった。

「簡単な話だ。これは他言無用だぞ。ユグル王国やロマリア王国の中枢の人間は気付いている事だが、聖域の管理者たるイルマ殿は、創世の女神様の使徒であらせられる。聖域に牙を剥くという事は、創世の女神様に歯向かうに等しい」
「「えっ!?」」

 タクミが自分の事を、女神ノルンの使徒などと言った事はないし、加護を持っているとも言ってはいない。

 ただ、聖域の教会でタクミの前にノルンが顕現して祝福を与えたり、創世教の司祭を飛び越えて、タクミに神託が降ったと思われる事もあった。その後も色々と推測できる事は多い。各国の首脳の共通した認識は、タクミがノルンの使徒だという事だった。

「それにイルマ殿と奥方達。そのお仲間の実力は大陸でもダントツで頭二つ抜けておる。我が近衛騎士団の実力も聖域騎士団との合同訓練のお陰だ」
「父上、僕も訓練に参加したい!」
「おいリッグル」
「ハハッ、リッグルにはまだ早い。訓練は魔大陸の魔境かダンジョンでおこなわれるからな。足手まといだ」
「魔大陸……」
「大陸全土が魔境と言われる地ですね」

 ロボスが、タクミ達の実力や近衛騎士団の強さも聖域騎士団との合同訓練のお陰だと言うと、リッグルが自分も訓練に参加したいと言い出す。ロナルドが止め、ロボスはリッグルには魔大陸での訓練はまだ早いと首を横に振る。

 ロナルドとリッグルは、魔大陸というワードに口をポカンとする。

 ロナルドは次期国王という事もあり、国内外の事も学んでいる。その過程で、サマンドール王国の南に在る魔大陸の事もおおまかには知っていた。

「なに難しい事はない。聖域とは誠意を持って付き合うだけだ。そうすれば我が国の利に繋がる」
「……分かりました。決して悪意を持って向き合わないよう肝に銘じます」
「うむ。それでいい。今は聖域より映画という新しい文化がもたらされた事を喜べばいい」
「「はい」」

 ロボスは、優秀な息子達に思わず微笑む。だが直ぐに、この先五月蝿くなるだろう男の顔を思い出し憂鬱になるのだった。







 そして同じ王都の豪華な屋敷の一室では、マハルとラハルのおバカ親子が、衝撃を受けた映画を話題に騒がしくしていた。

「父上、あの空を飛ぶ乗り物、我が家にも必要なのでは?」
「ああ、アレは聖域にしか無いらしいな。なら国よりも先に我が家が手にすれば、王家を出し抜ける」

 都合のいい事を言う親子だが、合同訓練をするくらい関係のあるバーキラ王国やユグル王国も配備されていないものを、公爵家とはいえ手に入れるなど不可能なのだが、二人はランズリット公爵家なら叶うと信じて疑わない。

「しかし父上。あの様な乗り物、非常に高価なのではないですか?」
「それはそうだろう。ここ数年で売り出した新しい馬車でさえ、下位の貴族では買えぬくらいには高価だからな」

 タクミが開発したサスペンションを装備した馬車は、パペック商会から大々的に売り出され、今やバーキラ王国だけに止まらず流行しているのだが、その馬車でさえ貧乏な貴族では購入するのは難しい。

「そんなもの、献上させればいいではないか」
「おお、そうでしたな」
「ああ、ランズリット公爵家に献上できるのだ。名誉な事だと地面に頭を擦り付けるくらいしてもらわねばな」

 驚く事に、マハルもラハルも本気で献上してもらえると思っている。子供でも考えなくても分かる事だが、そんな事はあり得ない。

 ガルーダなど配備しようとすれば、適正価格だと国家予算を全て突っ込むくらいでないと無理なのに、タダで手に入れようなど、ロボスが聞けば頭が湧いているのかと、これ以上トラブルを起こす前に、本気で暗殺しようか悩む事だろう。

 そんな事はいざ知らず、能天気な親子は暴走気味だ。

「それより父上、奴の娘達をどう思いますか?」
「クフッ、ラハルも目の付け所がいいのう。さすがに儂と親子という事か」
「では、父上も」
「ああ、人達の娘は勿論、エルフとケモノ混じりの二人も十分愛らしい。アレは、ランズリット公爵家にこそ相応しい」
「おお! 父上もそうでしたか。では、空飛ぶ乗り物と一緒に、寄こすよう言い付けますか」
「ああ、それで問題ない」

 ガルーダやサンダーボルトの話がひと段落すると、次にラハルが振った話題は、エトワールや春香、フローラの事だった。親子揃ってロリコンだったようだ。

 マハルは、人族以外を亜人と蔑んでいるタイプのバーキラ王国では少数派に属する貴族だが、そんなマハルでもエトワールやフローラは許容範囲らしい。

 そのタクミの娘達を、当たり前のように手にする事が出来ると考える。もうロボスはランズリット公爵家を取り潰した方がいいだろう。

 マハルとラハルの親子が、ランズリット公爵家やどの貴族派の者も、聖域とはパイプがないと気が付くまで、もう少し時間が掛かったようだ。





 バーキラ王国の王都バキラトスの豪華な宿泊施設の一室で、人族に擬装したエルフ、ホーディアが映画の余韻に浸っていた。

「クフッフッフッ、あの大画面で天使の笑顔が見れるとは、得難いひと時であったな」
「誠に……」

 ホーディアも一応伯爵家の当主だった男。私兵や裏組織の手下も居たのだから、もう少し聖域の軍事面に興味を持ってもよさそうなのだが、ホーディアがその辺りまで考えれるようになるには、もう少し時間が必要だろう。

 ただ、家宰の男はそうはいかない。自分の主人はさんざんタクミ達に敵対するような事をし続けてきたのだ。あの尋常ならざる武力を見て平静ではいられない。

「旦那様、聖域と対立するのは悪手なのでは?」
「んっ、今更、何を言う。そんな事は分かりきっておる。それを何とかするのがホーディア様だろうに」
「そ、そうですな」
「何も武力で対抗する必要などないのだ。儂は溢れる叡智で奴らに勝てばいいのだ」
「ハ、ハハッ、ですな」

 自分がタクミ達と知恵比べで勝てると信じているホーディアに、それ以上家宰の男も言えなくなる。

 確かに、今となれば以前の伯爵だった頃のホーディアだとしても、武力で聖域と渡り合えるなどとは思わない。ホーディアが言うように、対抗するなら知略でというのは正しいと思う。ただ、出来れば真っ当に生きて欲しいという家宰の男の願いがホーディアに届く事はなさそうだった。

「ともかく、今は次の上映のチケットを手に入れる事が重要だ」
「旦那様、かなりの反響のようで、次回以降のチケットも争奪戦になるかと……」
「そんな事は分かっておる。儂の天使が出ているのだからな。だが何としてもチケットを手に入れろ。どんな手段を使ってでもだ」
「は、はい。承知しました」
「暫く王都で滞在する。その間に、貴族派と縁を繋ぎ、ついでにロマリア王国の反主流派ともコンタクトをとるか」
「……では、そのように」

 エトワールが出演する映画の上映が続く限り、王都に滞在するつもりのホーディア。そのついでに、バーキラ王国の貴族派やロマリア王国の反国王派との繋がりを模索するようだ。

 パペック商会のように、革新的な商品がある訳ではないホーディア達が、バキラトスの商圏に食い込むには、うしろ暗い商売をするしかなく、そしてそれはホーディアの得意分野だった。






 ランズリット公爵などの貴族派やホーディア元伯爵が、気持ちの悪い夢想をしている頃、眉間に皺を寄せて唸っている者達も居た。

「旦那様、各方面から何とか手に入らないかと問い合わせがひっきりなしでございます」
「無理だと返答してください」
「中には公爵家からもありますが?」
「公爵であろうと、王家であろうと、無理なものは無理です」

 王都の店で無理難題を吹っ掛けられているのは、パペック商会の会頭パペックその人だった。

 聖域ともっとも近い商人となると、真っ先に名が上がるくらいには、タクミとの関係は知られている。当然、今回の映画上映にもパペックは招待されていたので、その映画の内容を見たパペックは、ある程度こうなるだろうと予想はしていた。

「そもそも王家ですら購入できたのは、陸戦艇サラマンダーのみなのですよ」
「あれは悪路でも走りますが、一応道が必要です。ですが空飛ぶ乗り物は戦争の形を根本から変えてしまいますから」
「ええ、ええ、ですからタクミ様は、アレらを決して外には出さないでしょう。何処かの国へ戦争の道具となるモノを与えるなどあり得ません」

 パペックは、タクミが極力外に武力に繋がるようなモノを出さないようにしている事を知っている。ポーション類に関しても、初級のポーションは制限していないが、数を保有する事で軍事行動に直結しそうな、効き目の高いポーションは基本的に売っていない。

 まあ、その素材の状態でなら売っているので、各国は優秀な薬師や錬金術師を育てているくらいだ。

「グライドバイクですら、販売する台数は制限して、誰にでも売った訳ではないというのに、戦争の形を変えうる兵器を、金さえ出せば買えると思う方が多いのが頭が痛くなります」
「そもそも公爵家でも、あの様な巨大な空飛ぶ乗り物を買えるのでしょうか? 国の予算でも難しいと思うのですが……」
「全くです」

 性能を制限したグライドバイクですら、国王用と近衛騎士団用に数台販売しただけで、他には子供用のおもちゃの様なタイプしか売っていない。それでも非常に高価なものになったのだ。番頭の言うように、公爵家だとしてもガルーダやサンダーボルトを買うのは無理だ。

「ですが旦那様。この後、王都中の商会からも問い合わせが殺到するのでは?」
「はぁ、でしょうね。現状、もっとも聖域と、タクミ様と近い商人は私だと自負できますからね。少しでも可能性があればと無理を言うでしょう。店の者達にも警戒させてください」
「はい。護衛を増やして対応します」
「お願いします」

 番頭が危惧したように、王都中の商会がパペック商会へと問い合わせてくるだろう。パペックは、タクミがボルトンに拠点を置くきっかけを作り、その後もソフィアやマリア、レーヴァ達と出会いに関わっている。タクミとしては、恩人の一言では言い表せないくらいに恩を感じている。

 まあ、その分、無茶振りにも付き合わされているが、それはタクミのモノ作りとなると自重を忘れてはっちゃけた自業自得の部分も多いだろう。

 そんなパペックの立ち位置を理解している人間は多く、今回の事でトラブルに巻き込まれる可能性もおおいにあると感じ、従業員を含め家族の身を守らねばと考えるのも当然だった。




 ただ、パペックが危惧した事は、ロボスやサイモンも推測していたので、実は秘密裏にパペック商会は警護されていた。

 巡回の兵士が見回りの回数を増やし、影からの護衛も付けられ、多くの愚か者を捕縛する事態となった。





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