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二十七話 訓練する者、遊ぶ者
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エトワール視点
六枚の花びらが宙を舞う。
シールドペタルズ。
それがこの装備の名前。
私が操る六枚の花びらとは別に、前後左右に四つに分かれた台座が浮かぶ。
私が駆けるのに合わせ、私の四方を囲む四つの台座も自動で追従する。
浮いて自動追従する台座部分は、無属性の障壁で私を護る。何故、自動なのかと言うと、私は六枚の花びらを操作するので一杯一杯だから。
かといってシールドペタルズだけに集中していられない。前後左右の浮かぶ台座部分を避けながら、杖を振り回さなきゃいけないから。
私は駆けながら六枚の花びらを防御から攻撃へと切り替える。
「百花繚乱!」
火、水、風、土、光、闇の六つの属性の法撃が、六色の光の軌跡が訓練所の的を穿つ。
轟音が周囲に響き、的は粉々に跡形もなく壊れ、シールドペタルズの威力を見せつける。
「……パパ、張り切り過ぎだよ」
瞬時に任意の場所に障壁を張る自由度。その結果の強度に加え、攻撃に切り替えた時の威力。もう、やり過ぎだよ。
まあ、パパも私達を心配してくれての事だと思うけど、半分以上はパパが物作りに関しては、手抜きが出来ない性質だという事も大きい。
特に、命に関わる私達の装備に関しては、あのパパが自重なんてする訳がないものね。
「エトワールお姉ちゃん! 行っくよぉー!」
「ええ!」
今度は、フローラが昔マーニママが使ってたと言うクレセントアックスの刃だけ大きくしたような、それこそ刃の化け物のような武器を振り被って攻撃して来る。
ガキッ!!
重力物である斧刃、クレセントムーンの攻撃が障壁に止められる。
「すっご~い! 全然余裕で防げるね!」
キンッ!
「本当だ。死角も無いね」
「もう、春香。不意打ちはやめてよね」
フローラの攻撃を防いだ結界に、別方向からバックラーからのワイヤーアンカーで攻撃したのは春香だ。
「でも凄いね。エトワールお姉ちゃんにピッタリの装備じゃない」
「まあ、そうね。飛ばせる距離の制限はあるけど、今度の演習みたいに皆んなを護らないといけないかもしれないと考えると、凄く有用だと思うわ」
死角から不意打ちした事を悪びれもせず、春香がシールドペタルズを褒める。
実際、距離の制限もそれ程気にならない程度のものだ。
私は展開していた花びらと台座を呼び寄せる。
四つの台座が二つに合体し、その上に三枚ずつの花びらが帰還した。
そこに巨大なクレセントムーンを担いだフローラも近付いて来る。
「私の全力でもびくともしないって凄いよね。これならドラゴンの攻撃でも平気じゃない?」
「まあ、パパが自重せずに造った装備だしね。そのくらい当然だよ」
「だね。でもこれはエトワールお姉ちゃんしか使えそうにないね」
「春香なら使えそうだけどね」
「私にも無理だよ。花びらが四つならいけそうな気もするけどね」
確かに、私達三人の姉妹の中では、私が一番シールドペタルズを使えると思う。もともと魔法使いタイプの私は、幾つもの魔法を同時に使ったり、それに体術や杖術を組み合わせたりと、並列して思考するのが得意なのよね。
「それにしても、夏休みに家に帰って来たのに忙しいね」
「仕方ないじゃない。私も未開地での郊外演習って、何か嫌な予感するもの」
「そうだね。それに弟や妹達も、遊び感覚で一緒に訓練しているからこれも家族のコミュニケーションのうちじゃないかな」
「まあ、そうか」
今年八歳になる弟や妹達。
私と同じソフィアママが産んだエルフのセルトは、私と違いソフィアママのような剣と槍を使う騎士に憧れている。
春香と同じマリアママから赤い髪色を受け継いだユーリは、大人しくて何時も本を読んでいる。
フローラと同じ兎人族のクルスは、元気一杯のフローラとは違って、マーニママに似たクールなどころのあるちょっと澄ました弟。魔法はフローラ以上に苦手みたいで、使うのは身体強化のみという潔さだ。
三人の弟達は、姉の私達が帰って来ても普段と変わらず、外に遊びに出て帰らない。
人魚族だから、普段同族と海側で過ごす事の多い妹のリューカと、これも普段は天空島にいる事が多い有翼人族の妹セッテは、私達が戻って来ているからって会いに来てるのにね。
「「「お姉ちゃん!」」」
そんな事を考えていると弟達がやって来た。
「どうしたの?」
「訓練してるんだろう。僕達も混ぜてよ!」
「久しぶりなんだから、いいだろう」
「お姉ちゃん。相手してよ」
セルト、ユーリ、クルスが、稽古着姿でやる気まんまんだ。この歳頃の四年差は大きいから、弟達は当然私達に勝った事がない。でも、誰に似たのか負けず嫌いなのよね。
私は、シールドペタルズをアイテムボックスに収納する。こんなの使ったら、弟達の訓練にならないもの。
で、私、春香、フローラの三人が待ち構えるけど、セルト達三人共春香の前に並ぶ。
「ちょっ、どうしてよ! せめてセルトは私の所に来なさいよ!」
「そうだよ! ユーリは仕方ないにしても、クルスはこっちでしょう!」
エルフのセルトは、魔法と近接戦闘の両方を満遍なく訓練するなら私の所に来るべきでしょう。普段大人しいユーリは、タイプ的に春香と同じオールラウンダーだから春香の元に行くのは分かる。でも獣人族のクルスまで春香の前に並んだから、それはフローラが大きな声で怒るでしょう。
「嫌だよ。僕はママみたいな騎士を目指してるんだ。エトワールお姉ちゃんとは戦闘スタイルが違い過ぎるよ!」
「僕だって嫌だよ。フローラお姉ちゃんに教えて貰っても、擬音ばかりで意味が分からないもの!」
「「うっ」」
セルトとクルスからド正論を言われて何も言えない私とフローラ。
まあ、近接戦闘は杖術を使い、そもそも魔法がメインの私と違い、セルトはママみたいに片手剣と盾又は、槍を使う戦闘スタイルを目指している。エルフのくせに魔法は牽制に使うくらいだ。
クルスは、兎人族なので魔法は身体強化しか使わないし、武器も剣を使うのでフローラに近いと言えるんだけど、フローラは超感覚派なので、人に教えるのが苦手だ。クルスが嫌がるのも理解できる。
「フローラお姉ちゃんは、グッとして、ギュッとして、バーンッてするのって本気で言ってるだろう。そんなの誰も分からないよ」
「ええっー! 分かりやすいじゃないの!」
いや、フローラ。それじゃ誰も分からないわよ。もしかすると、パパなら汲み取ってくれるかもしれないけど、普通は理解できないよ。
特に、クルスは本当にフローラの弟って疑いたくなるくらい落ち着いているからね。どっちかと言うと理論派だもの。
まあ、フローラくらい感覚派に振り切っているのは、兄弟姉妹の中でもフローラだけなんだけどね。
「「お姉ちゃーん!」」
そこにリューカとセッテがやって来た。
人魚族のリューカと有翼人族のセッテは、それぞれ特殊な種族なので、リューカなら海での生き方を学んだり、セッテは天空島や魔大陸での暮らしがあるので、セルト達みたいに常に家にいない。
久しぶりに兄弟姉妹が集まって賑やかだけど、それが嬉しいと思うのは、離れて暮らすようになったからかもね。
六枚の花びらが宙を舞う。
シールドペタルズ。
それがこの装備の名前。
私が操る六枚の花びらとは別に、前後左右に四つに分かれた台座が浮かぶ。
私が駆けるのに合わせ、私の四方を囲む四つの台座も自動で追従する。
浮いて自動追従する台座部分は、無属性の障壁で私を護る。何故、自動なのかと言うと、私は六枚の花びらを操作するので一杯一杯だから。
かといってシールドペタルズだけに集中していられない。前後左右の浮かぶ台座部分を避けながら、杖を振り回さなきゃいけないから。
私は駆けながら六枚の花びらを防御から攻撃へと切り替える。
「百花繚乱!」
火、水、風、土、光、闇の六つの属性の法撃が、六色の光の軌跡が訓練所の的を穿つ。
轟音が周囲に響き、的は粉々に跡形もなく壊れ、シールドペタルズの威力を見せつける。
「……パパ、張り切り過ぎだよ」
瞬時に任意の場所に障壁を張る自由度。その結果の強度に加え、攻撃に切り替えた時の威力。もう、やり過ぎだよ。
まあ、パパも私達を心配してくれての事だと思うけど、半分以上はパパが物作りに関しては、手抜きが出来ない性質だという事も大きい。
特に、命に関わる私達の装備に関しては、あのパパが自重なんてする訳がないものね。
「エトワールお姉ちゃん! 行っくよぉー!」
「ええ!」
今度は、フローラが昔マーニママが使ってたと言うクレセントアックスの刃だけ大きくしたような、それこそ刃の化け物のような武器を振り被って攻撃して来る。
ガキッ!!
重力物である斧刃、クレセントムーンの攻撃が障壁に止められる。
「すっご~い! 全然余裕で防げるね!」
キンッ!
「本当だ。死角も無いね」
「もう、春香。不意打ちはやめてよね」
フローラの攻撃を防いだ結界に、別方向からバックラーからのワイヤーアンカーで攻撃したのは春香だ。
「でも凄いね。エトワールお姉ちゃんにピッタリの装備じゃない」
「まあ、そうね。飛ばせる距離の制限はあるけど、今度の演習みたいに皆んなを護らないといけないかもしれないと考えると、凄く有用だと思うわ」
死角から不意打ちした事を悪びれもせず、春香がシールドペタルズを褒める。
実際、距離の制限もそれ程気にならない程度のものだ。
私は展開していた花びらと台座を呼び寄せる。
四つの台座が二つに合体し、その上に三枚ずつの花びらが帰還した。
そこに巨大なクレセントムーンを担いだフローラも近付いて来る。
「私の全力でもびくともしないって凄いよね。これならドラゴンの攻撃でも平気じゃない?」
「まあ、パパが自重せずに造った装備だしね。そのくらい当然だよ」
「だね。でもこれはエトワールお姉ちゃんしか使えそうにないね」
「春香なら使えそうだけどね」
「私にも無理だよ。花びらが四つならいけそうな気もするけどね」
確かに、私達三人の姉妹の中では、私が一番シールドペタルズを使えると思う。もともと魔法使いタイプの私は、幾つもの魔法を同時に使ったり、それに体術や杖術を組み合わせたりと、並列して思考するのが得意なのよね。
「それにしても、夏休みに家に帰って来たのに忙しいね」
「仕方ないじゃない。私も未開地での郊外演習って、何か嫌な予感するもの」
「そうだね。それに弟や妹達も、遊び感覚で一緒に訓練しているからこれも家族のコミュニケーションのうちじゃないかな」
「まあ、そうか」
今年八歳になる弟や妹達。
私と同じソフィアママが産んだエルフのセルトは、私と違いソフィアママのような剣と槍を使う騎士に憧れている。
春香と同じマリアママから赤い髪色を受け継いだユーリは、大人しくて何時も本を読んでいる。
フローラと同じ兎人族のクルスは、元気一杯のフローラとは違って、マーニママに似たクールなどころのあるちょっと澄ました弟。魔法はフローラ以上に苦手みたいで、使うのは身体強化のみという潔さだ。
三人の弟達は、姉の私達が帰って来ても普段と変わらず、外に遊びに出て帰らない。
人魚族だから、普段同族と海側で過ごす事の多い妹のリューカと、これも普段は天空島にいる事が多い有翼人族の妹セッテは、私達が戻って来ているからって会いに来てるのにね。
「「「お姉ちゃん!」」」
そんな事を考えていると弟達がやって来た。
「どうしたの?」
「訓練してるんだろう。僕達も混ぜてよ!」
「久しぶりなんだから、いいだろう」
「お姉ちゃん。相手してよ」
セルト、ユーリ、クルスが、稽古着姿でやる気まんまんだ。この歳頃の四年差は大きいから、弟達は当然私達に勝った事がない。でも、誰に似たのか負けず嫌いなのよね。
私は、シールドペタルズをアイテムボックスに収納する。こんなの使ったら、弟達の訓練にならないもの。
で、私、春香、フローラの三人が待ち構えるけど、セルト達三人共春香の前に並ぶ。
「ちょっ、どうしてよ! せめてセルトは私の所に来なさいよ!」
「そうだよ! ユーリは仕方ないにしても、クルスはこっちでしょう!」
エルフのセルトは、魔法と近接戦闘の両方を満遍なく訓練するなら私の所に来るべきでしょう。普段大人しいユーリは、タイプ的に春香と同じオールラウンダーだから春香の元に行くのは分かる。でも獣人族のクルスまで春香の前に並んだから、それはフローラが大きな声で怒るでしょう。
「嫌だよ。僕はママみたいな騎士を目指してるんだ。エトワールお姉ちゃんとは戦闘スタイルが違い過ぎるよ!」
「僕だって嫌だよ。フローラお姉ちゃんに教えて貰っても、擬音ばかりで意味が分からないもの!」
「「うっ」」
セルトとクルスからド正論を言われて何も言えない私とフローラ。
まあ、近接戦闘は杖術を使い、そもそも魔法がメインの私と違い、セルトはママみたいに片手剣と盾又は、槍を使う戦闘スタイルを目指している。エルフのくせに魔法は牽制に使うくらいだ。
クルスは、兎人族なので魔法は身体強化しか使わないし、武器も剣を使うのでフローラに近いと言えるんだけど、フローラは超感覚派なので、人に教えるのが苦手だ。クルスが嫌がるのも理解できる。
「フローラお姉ちゃんは、グッとして、ギュッとして、バーンッてするのって本気で言ってるだろう。そんなの誰も分からないよ」
「ええっー! 分かりやすいじゃないの!」
いや、フローラ。それじゃ誰も分からないわよ。もしかすると、パパなら汲み取ってくれるかもしれないけど、普通は理解できないよ。
特に、クルスは本当にフローラの弟って疑いたくなるくらい落ち着いているからね。どっちかと言うと理論派だもの。
まあ、フローラくらい感覚派に振り切っているのは、兄弟姉妹の中でもフローラだけなんだけどね。
「「お姉ちゃーん!」」
そこにリューカとセッテがやって来た。
人魚族のリューカと有翼人族のセッテは、それぞれ特殊な種族なので、リューカなら海での生き方を学んだり、セッテは天空島や魔大陸での暮らしがあるので、セルト達みたいに常に家にいない。
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