いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

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九話 暇になりました

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エトワール視点

 今、私は絶賛反省中。

「やり過ぎたわ」
「仕方ないよお姉ちゃん」
「春姉の言う通りだよ」

 武術実技の授業で、教師が職務放棄したのが悪いと思うの。教えられないから自習してろって言ったじゃない。

「私達に自習させた教師が悪い」
「そうね。私達、ただ模擬戦してただけだもんね」
「そうだ。そうだー!」

 春香はともかく、フローラは模擬戦で体を動かせたからストレス解消できたみたいね。無駄に元気だわ。

「仕方ないよ。僕達も感心を通り越して、ドン引きしたもん」
「だよな。俺、三人の動きが見えなかったぜ」

 教室で、机に頬杖付いてブータレていると、ユークスとルディがやって来た。

 そこにサティとシャルルも合流する。

「ドン引きなんて表現、可愛いものよ。家の父さまや兄さまなんて、エトワール達と比べたら、アリンコよりも劣るって思ったもの」
「サティちゃん。流石にそれは可哀想だよ」

 サティの家は騎士家系だから、武術にはある程度明るいみたいだけど、聴くと寄親が中立派らしいから、近衛騎士団は当然ながら、ボルトン辺境伯領やロックフォード伯爵領の騎士団の実力を知らなかったみたい。

 それでよシャルルが言うように、アリンコは可哀想だと思うよ。


「それで、自習もダメなんだって?」
「流石にダメって事はないみたいだけど、みんなと一緒の時間は避けてくれって」
「情けない教師陣ね」
「仕方ないよサティちゃん。先生達、自信無くしちゃったんだと思うよ。エトワールちゃん達を教えるなんて無理だってね」

 サティが言うように、みんなと一緒に授業を受けるのを拒否されちゃった。闘技場のスケジュールを渡すので、どの学年も使っていない時間に自由にしてもいいって言われちゃった。

 多分、学園の教師は意図して中立派から多く選んでいるんだと思う。

 教師は、貴族派でもなく、国王派でもない存在がいいんでしょうね。

 でも、そうなると元騎士の武術教師でも、私達に教えるには力不足になるのよね。



「でも時間が別になるって言っても、その時間は他の授業があるでしょう。どうするの?」
「基礎学科は試験を受けて飛び級しろって言われたわ」
「魔法の座学も免除だって」
「今更、私達が呪文の詠唱って、ウケるよね」

 バーキラ王国史は、学園に入学する事が決まってから集中して勉強したし、地理はそれ以前から聖域の学校で習った。

 その他、計算や他の教科も、この学園で学ぶのは、聖域ではもっと小さな子が学ぶレベルだもの。

 魔法に関しては、正確な呪文を正確な抑揚で唱えるなんて、どんな罰ゲームよ。恥ずかしい。魔法なんて無詠唱に決まってるじゃない。

 攻撃を合わせる時、魔法名を言う事はあるけど詠唱じゃないし、敵を前に詠唱なんて出来るのかしら。常に守ってくれる人がセットなのかな。

「……エトワール達って、この学園に通う意味ないんじゃない?」
「図書館は興味あるんだよね」

 サティが言ってはならない事を言ったわ。そんな事、来る前から分かってたわよ。でも学園で学ぶ事はないけど、図書館は興味があるんだよね。蔵書の数も多いって聞いているしね。

「エトワールお姉ちゃんは、本が好きだもんね」
「でも聖域にも本は一杯あるよ」
「聖域にも無い本があるかもしれないからね」

 フローラが言うように、聖域には本が沢山ある。図書館もあるしね。

 パパが色んな国で集めた物と、ミーミル様やルーミア様が、ユグル王国から持って来てくれた物。ドワーフのゴラン親方やドガンボさんが、ノムストル王国から取り寄せてくれた物。下手したらバーキラ王国の王城の書庫よりもバリエーションは豊富かも。

「薬師系の専門的な授業があれば受けてみたいけどね」
「お姉ちゃん。パパやレーヴァさんのポーション以上のって、外じゃ無いってマーニママが言ってたよ」
「パパとレーヴァさんは、錬金術系のポーションでしょう。錬金術師じゃない薬師の作る薬品類がどうなのか見てみたいのよ」
「う~ん。エトワールさんの希望は叶えられないと思うけどなぁ」

 知識として薬師系の専門的な知識があればと思ったんだけど、フローラが水を差すような事を言う。ユークスからも、この学園のレベルじゃ無理じゃないかと言われちゃった。

「じゃあさ、私に教えてよ」
「サティに? 何を?」
「私は騎士家系だから剣かな」

 サティから暇なら教えて欲しいとお願いされた。まあ、教える分には教師達の前で激しく動かないから、実技の授業に出れるのかしら?

「剣なら春香かフローラかしら。私は杖術と棒術、それと槍術なんかの長物専門だから」
「私もどちらかと言えば槍が得意なんだけど、剣もパパに習ってるわよ」
「フローラは、武器系は何でもOKだよ!」
「じゃあ、お願いしてもいいかな」
「あ、あの、私もお願いします」

 春香とフローラが乗り気ならいいんじゃないかな。シャルルも遠慮しつつ手を上げている。

「どうせ武術の実技授業は暇になるところだったんだし、いいんじゃないかしら」
「ありがとう!」
「あ、ありがとうエトワールちゃん」

 お礼を言うサティとシャルル。でもシャルルがまだ何か言いたそうにしている。

「どうしたのシャルル?」
「あ、あの、エトワールちゃん達のお父さんって、薬品に詳しいんだよね」
「そうね。今は他の作り手と育ってきたけど、最初の頃は聖域産のポーション類は、パパとレーヴァさんが全部作ってたわね」

 聖域産のポーション類は、効果が高いと評判で、パペック商会やボルトンの冒険者ギルドに定期的に卸しているもの。

「エトワールちゃん達も詳しいの?」
「その辺は、エトワールお姉ちゃんだけかな」
「そうだね。私はその手の事は苦手だもん」
「じゃ、じゃあ、エトワールちゃん。私に教えてくれないかな?」
「別に構わないけど、パパは薬師じゃなくて、錬金術師だからね」
「うん。大丈夫。錬金術が無くても作れる薬はあるから」
「ならいいけど。一度、パパに相談してみようかな」

 ポーション類を作る上で、錬金術が無くても作れる薬は当然あるわ。でも錬金術師じゃないと作れない薬も多いのよね。

 余り裕福じゃない平民が買う薬は、薬師の作った物で、ランクの高い冒険者や貴族、豪商が求めるのは、錬金術師の作った薬って棲み分けが出来ているって聞いた。

 魔法が使える人で、錬金術師を目指す人は少ないってパパは言ってた。そもそも適性がないと成功率は低くいし、品質も安定しないらしいから。

 私達姉妹の中では、私だけ錬金術師の才能をパパから受け継いだ。

 春香も才能が無い訳ではないけど、オールラウンダーの春香は、訓練しないといけないものが多いから、今のところ手を付けていない。

 フローラは、そもそも繊細な魔法なんて苦手だから、しようなんて考えもしないんじゃないかな。

 確かに錬金術は知識の量が武器になるから、もの凄く勉強しなきゃいけないのよね。フローラから一番遠いものね。





 シャルルの事もあって、私は図書館に来ていた。

 春香とフローラ? 勿論、別行動よ。フローラが図書館になんて近寄らないもの。

 図書館で私は、錬金術を使わない薬の作り方を調べてみた。

 そもそも錬金術ってチートなのよね。ノルン様、面倒くさくなって適当に創ったのかしら。

 錬金術は、出来る事の幅がもの凄く広い。

 様々な物から必要な物を抽出したり、合成したり、複雑な形状の物も錬成出来ちゃう。

 まあ、その為に必要な知識の量も凄いけどね。パパやレーヴァさんを本当に尊敬しちゃうもの。

 で、錬金術を使わない薬師は、全部の工程を器具は使うものの、魔法を使わないで作る。

「成分の抽出や合成を人力でしようと思うと大変ね」

 蒸留水を作るの一つだけとっても面倒だわ。

「あっ、魔力を込めながら煮たりする事もあるのね」

 ミスリルやトレントみたいな、魔力伝導性の高い素材で作った棒に魔力を込めながら鍋を混ぜるんだ。興味深いわね。

 これ、部分的に錬金術を使うともっと楽になりそうね。

「単純な錬成なら、錬金台に魔法陣を刻んでおけば、加減は覚える必要はあるけど魔力を流せば薬師でもいけそうね」

 本を読みながら色々と考察していると、アイデアが湧いてくる。パパとの繋がりを強く感じる瞬間ってこんな時よね。

 一度、シャルルと実験してみようかしら。





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