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12巻
12-1
しおりを挟む1 僕らも色々試してみよう
僕、タクミに三人の子供が出来てしばらく経った頃――
聖域の屋敷の訓練所で、マーニが三日月形の巨大な刃物を振り回していた。
隣にいた日本を故郷に持つ同輩のアカネが言う。
「ねぇ、あれって、もう大斧でもよかったんじゃないの?」
「……うん、僕もそう思うよ」
当初、長物を嫌がった僕の三人の奥さんの一人、兎人族のマーニの要望に応えて武器を造ったけど、意外とマーニは一撃必殺の武器を気に入った。
そうなると、刃のバケモノみたいな物でも、持ち手が真ん中にあるために、さほど間合いの長くないアレより、普通に長柄の大斧でよかったと思う。
マーニが斧術スキルを磨けばいい話だもの。
ただ、無駄だったわけじゃない。
体術と併用して戦いやすいという、アレにはアレの良い所がある。
「マーニが斧術スキルを習得した今だから、大型のクレセントアックスでも大丈夫でしょうが、慣れるまではアレでよかったと思いますよ」
もう一人の奥さん、エルフのソフィアが、マーニの訓練の様子を見ながらフォローしてくれた。
「だね。この際、皆んなも色々な武器を試してみる?」
「はい! はい! 私やります! 私も槍以外の武器を試してみたいです!」
どうせ僕も変わったものからオーソドックスなものまで試してみようと考えていたので、ソフィア達にも勧めると、三人目の奥さんで人族のメイドのマリアが驚くほど積極的だ。
どうやら剣と槍を使い分けるソフィアや僕を見ていて、自分も槍以外の武器を使ってみたかったらしい。
「色んな武術スキルや職業レベルが上がれば、強力な上位職を取得出来るかもしれないし、この際、皆んなで色々試してみよう」
「そうね。私も近接戦闘に慣れた方がいいわね」
後衛でいる事がほとんどのアカネも、近接戦闘の重要性は分かっていると思う。アカネ自身が護身の術を持つ事で、パーティー全体の安定感がグッと増すというのも理解しているだろう。
それに僕はもう一振り剣を打とうと思っていた。
僕には、ソフィアが持つ聖剣アマテラスと対を成す絶剣ツクヨミがあるが、これは普通の魔物や人間には有効なんだけど、この前のダンジョンにあったアンデッド部屋――アンデッド系の魔物ばかりが出現する部屋――だと使えない剣になってしまう。
最近の僕は、体術と錬金術で間合いの近い戦闘をこなしていたけど、アンデッドや瘴気を多く取り込んだ魔物に特効のある光属性の剣が欲しくなったんだ。
それに色々な武器に手を出すのは、僕達以外なら器用貧乏になりそうだけど、僕達には女神ノルン様の恩恵があるので、各種スキルや職業レベルを育てるハードルはグッと低くなる。
皆んなもその辺りを実感しているから、この機会に色々な武器を使ってみようという事になったんだと思う。
リビングに集まって、それぞれ試してみたい武器の希望を聞く。
「私は棍術スキルと鎚術スキルを取得してみようかと思います。打撃武器を重点的に訓練してみようかと」
「うん、いいんじゃないかな。じゃあソフィアには、棍と戦鎚を造ってみるよ」
「ありがとうございます」
ソフィアは打撃武器にチャレンジするようだ。スケルトンやゴーレムには、打撃武器の方が有効だからね。
「私は剣をソフィアさんに習います。剣士系の職業にも就いてみたいので」
「そうだね。マリアは槍一筋だったもんね。いいんじゃないかな」
マリアは剣の訓練をすると言う。片手剣がいいのかな。それとも大剣かな。とりあえず色々造ってみるか。
「私は槍がいいのかな。どう思う、タクミ」
「アカネは今まで後衛専門だったからね。槍のように間合いが遠い方が最初は安心するんじゃないかな」
「そうよね。じゃあ私には槍か、薙刀みたいなのをお願いね」
「了解。長物をいくつか用意するよ」
後衛で魔法による攻撃や回復、それと皆んなのサポートをしていたアカネは、槍の訓練をするようだ。
「ルルは大っきなのが良いニャ!」
「大っきなの?」
「そうニャ!」
アカネの従者で猫人族の女の子のルルちゃんは大っきな武器を所望のようだ。
「大っきなのねぇ……そうだな、ルルちゃんなら武器の重さに負ける事はないか」
「ルルは力持ちニャ!」
「そうだね。分かった、大っきな武器を考えてみるよ」
「やったニャ!」
身体能力の高い獣人族のルルちゃんは、高レベルな事もあり、その小柄な見た目にそぐわぬ力持ちだ。それこそ巨大な鉄の塊でも楽に振り回すだろう。
「レーヴァは自分の武器は自分で造るであります」
「それはそうだよね」
「そうであります。自分で色々と試行錯誤するのが楽しいのであります」
狐人族のレーヴァも違う武器を試してみるらしいが、僕と同じ生産職なので、自分で造るようだ。
生産は、アイデアを出して造って直してを繰り返すのが楽しいんだから当然だよね。
皆んなの要望をメモに取ったら、僕は鉱石と素材の確保かな。在庫はあったかな。
僕はアイテムボックスの中にある大量の素材を、リストアップする事から始めた。
2 宰相夫人再来
僕とレーヴァが皆んなの要望に沿った武器を製作し始め少し経ったある日――
「えっ? ロザリー夫人が? どうして? サイモン様はいないんでしょ?」
「ちょっと落ち着いてタクミ」
工房で武器の構想を練っていた時、風の大精霊シルフが予想外の人物の訪問を報せてくれた。
「ふぅ……それで、ロザリー夫人が来てるの?」
「もう宿泊施設にチェックインしているわよ」
「どうしたんだろう。この前帰ったばかりなのに……」
サイモン様には僕達が暮らす聖域の運営も任せられる文官の選定をお願いしているのだが、彼から、文官の件はもう少し時間が欲しいと連絡をもらっている。
まあ、サイモン様の仕事の話にロザリー夫人は関与しないと思うから、別件だと思うんだけど…………考えても分からないな。
「とりあえず会いに行くか」
「それが良いと思うわ。ここで考えていても始まらないもの」
「うん、そうするよ。レーヴァ、僕はロザリー夫人に会ってくるから、ソフィア達にそう伝えてくれるかな」
「了解でありますよ」
机に向かってアイデアを絞り出しているレーヴァに一声かけ、僕は宿泊施設のある出島区画へ転移した。
宿泊施設のフロントで用件を伝えてロビーでしばらく待っていると、宿泊施設で働く従業員がやってきた。
「タクミ様、ポートフォート夫人がお部屋へお連れするようにとの事です。ご案内致しますので、どうぞこちらへ」
「分かりました。お願いします」
だいぶサービス業も浸透してきたなあ。聖域の住民の中で、宿泊施設での仕事は人気だって聞いてるしね。
部屋に通されると、ロザリー夫人はスイートルームのリビングにあるソファーに座っていた。
僕を見ると立ち上がり、ニコニコと微笑んで迎えてくれたんだけど、その微笑みに少し警戒したのは、多分間違いじゃないと思う。
「タクミさん、お久しぶりね」
「いえ、久しぶりというか、この前帰ったばかりだと思うのですが……」
「あら、男の子は細かい事を言ってちゃダメよ」
何故だかロザリー夫人の機嫌がいい。それが余計に僕を警戒させる。
「それで今回の訪問の目的は? サイモン様と一緒じゃないみたいですし、休暇ですか?」
「フフッ、タクミさんはウチのに文官……いえ、内政官と言った方がいいかしら、そういう人材の採用を頼んでいるのよね」
「はい。いくつもの国と取引が増えて、流石に今までのような体制では厳しくなってきましたので……」
「それは当然よね。もう聖域はタクミさんを中心にした小さな国ですもの」
聖域に人手が足りないのは、サイモン様を通してロザリー夫人も知っているだろうけど、それがどうしたんだろう。ただの休暇じゃなさそうだな。
「……それで、ロザリー夫人の訪問理由は?」
「勿論、聖域の文官になるためよ」
「えっ⁉」
絶句とはまさにこの状態の事だろう。
バーキラ王国の宰相夫人が文官に応募してきたの? うそ? 嘘って言ってください。
「これでもサイモンと一緒になる前は内政官としてバリバリ働いていたのよ。少ーし、歳は取っているけど、長年貴族のパーティーやご婦人方のサロンに行った経験もあるから、貴族の扱いは得意な方よ」
「イヤイヤイヤ、バーキラ王国の宰相夫人が聖域で文官ですか? ありえないでしょう」
「あら、あの人と私は別だと考えてちょうだい。あの人も今文官を探しているのでしょうけど、それとは別口だと思ってくれていいわ。一緒に連れてきた侍女達も文官の仕事を任せてもいいくらい優秀よ」
今回、ロザリー夫人は、老人の馭者一人とその妻、身の回りの世話をする侍女を二人連れてきていた。馭者の人もその奥さんも、老人とは言っても背筋がピンと伸び、見た目は若々しい。この二人は子爵家の使用人として教育を受けたとかで、文官としての仕事も出来るらしい。
ロザリー夫人と合わせて文官が五人増えるのは、喉から手が出るほど人手が欲しい現状、とてもありがたいんだけど……本当にいいのかな。
「それと提案なんだけど、聖域の政務を司る建物が必要じゃないかしら。いつまでもタクミさんのお屋敷ではダメだと思うの」
「……ロザリー夫人が文官を云々は、サイモン様に連絡して確認してからでもいいですか? 政務専用の建物も考えてみます」
「あら、あの人に確認なんて必要ないのに。まあ、タクミさんがそうしたいのなら、それでいいわ。しばらくはここからタクミさんの屋敷に通ってお手伝いするわね」
「はぁ、当面は簡単なお手伝い程度になると思いますが……」
「勿論、立場がちゃんとするまで、重要な書類なんて触らないわよ」
本当にどういうつもりだろう。ただ単に聖域が気に入って、ここで暮らすのに仕事が必要だと思って売り込んできてるのかな。
政務専用の建物は、役所みたいなものだよな。前からあれば良いなとは思っていたからちょうどいいか。
さて、直ぐにサイモン様に連絡しないといけないな。
◇
王都にある僕のお店に通信の魔導具で連絡し、サイモン様にロザリー夫人の件を確認してもらう事にした。その間、家族や屋敷で書類仕事を任せている文官シャルロット達と相談すると、政務を行う建物は必要だという事になった。
「仕事とプライベートの区別は必要ですね」
「この際、聖域の住民の戸籍を作るべきじゃないの」
シャルロットとアカネも役所的なものは必要だと思っていたらしい。
「戸籍か、正確な人口を把握するのは必要だな」
「そうですね。バーキラ王国やユグル王国でも、街には役所がありますし、村では村長がその役割を果たしています」
「そ、そうだったんだね。対応が遅すぎたのか……」
ソフィアが言ったように、そういえば街には役所があったよ。
「聖域は、住民から税を徴収するようになったのは最近ですから。それに聖域の住民なら税をごまかしたりする心配もありませんでしたし」
「でも聖域もこれだけ人口が増えてきたのなら役所が必要よ。税を徴収しているんだから、それを住民に還元する必要もあるわ」
ソフィアが言うように、最初は田畑や住居は僕が造ったものを与え、自給自足が出来るまでは、そのサポートもしていた。
色んな種族の色んな人達が暮らすようになって仕事の幅も広がり、僕が全部与える歪な関係じゃなくなった。
そして税を徴収するようになったんだけど、住民に還元するのは当然だったね。
基本的に公共事業的なものは、ほとんど僕かレーヴァが魔法でこなしていたから思い付かなかった。
「そうだね。とりあえず、建物だけでも建てておくよ」
「サイモン様が紹介してくれる予定の方達が来ると、この屋敷では手狭ですからね」
シャルロットがそう言った。
とりあえずロザリー夫人の事は、サイモン様の連絡待ちなので、サイモン様が紹介してくれる予定の文官達の仕事場を造ってしまおう。ついでにその側に三階建てのマンションみたいなものを建てておこうかな。
寮のような建物はもう三度目だから慣れたものだ。一つは僕の屋敷の側に建てたメリーベル達メイドとシャルロット達文官娘用の住居。二つ目は、ユグル王国の王女ミーミル様に頼まれて建てた使用人や侍女用のもの。そして今回ので三度目だから、材料さえあれば目をつぶってても造れる。
僕とレーヴァは、新しい装備の製作を一旦止めて、先に政務を執るための建物と、そこで働く人用の宿舎を造る事にした。
レーヴァと一緒に、中央区画の端っこの方、空き地の広がっていた場所を整地する。
土属性魔法で平らにした土地は、かなりのスペースだ。
「地下三階で地上五階でありますね」
「うん、地下三階分の土や石を錬成して地上部分の建物用の素材にしよう」
「建物用の素材というと、補強材と窓ガラスの素材、あとは板張りにする部屋用の木材くらいでありますか」
「そうだね。魔導具関連は後回しにすればいいから、外側だけでも造ってしまおうか」
「了解であります」
木材や石材、珪砂、鉄、銅などを、建設予定地に積み上げていく。
建物の間取りや仕様を描き込んだ図を見ながら、強くイメージしていく。
僕が大きい方の役所の建物を担当、レーヴァが寮というか宿舎の錬成を担当する。
「「錬成‼」」
地響きと共に魔力光が輝き石造りの建物が完成する。
地下三階、地上五階の石造りの建物の外観は、昔の銀行をイメージしてもらえば分かりやすいかもしれない。
「ふぅ、細かな彫刻はドワーフやエルフの職人に頼もうかな」
「それがいいであります」
中と外のチェックと微調整は必要だけど、建物を飾る彫刻なんかは、ドワーフやエルフの職人達に任せた方がいい。彼等の仕事を奪う事になるからね。
「じゃあ、チェックしちゃおうか」
「了解であります」
レーヴァと手分けして、外周りと中のチェックをしていく。
大きな建物なので構造的に大丈夫か、追加で補強しないといけない箇所はないか調べておいた。
一通りチェックし終え、魔導具の設置は明日にしようとレーヴァと屋敷へ戻り、リビングのソファーに座ると、お茶を持ってきてくれたメリーベルからユグル王国の王妃ルーミア様が戻ってきていると報された。
「えっと、この前帰ったばかりだよね」
「そうですね」
まるでデジャブのようだな。
「それでルーミア様から、旦那様へ言付けがございます。明日、何時でも構わないのでお会いしたいそうです」
「……分かったよ」
ルーミア様はうちに来て、僕とソフィアの子エトワールをひとしきり可愛がると、そう言付けてお隣にあるミーミル様の屋敷へ帰ったらしい。
ロザリー夫人に続いて、ルーミア様まで聖域に戻ってきた。
ユグル王やサイモン様の許可は得たんだろうか? ユグル王もサイモン様も奥さんに弱いからな。まぁ、僕も人の事は言えないけどね。
3 王妃様は帰らないらしい
装備を色々と造りたいんだけど、なかなか集中して作業させてくれない。
マーニは、頻繁に訓練所で鍛錬し、着実に斧術スキルを伸ばしている。
今日はレーヴァは、役所と寮に照明と水まわり、トイレに浄化の魔導具を設置した後、自分用の武具を考えるらしい。
ソフィアとマリアは子供達の世話をしている。
アカネとルルちゃんは王都にある僕達の店に用事があるらしく、屋敷の地下にあるゲートで王都に転移していった。
そして僕は、ルーミア様に呼ばれていたので、お隣に行こうと思っていたんだけど、朝からルーミア様が我が家にやってきた。
「ウフフッ、本当に可愛いわね」
ルーミア様はソファーに座り、エトワールを抱いてご満悦だ。
「国へ戻ったばかりで、またここに来て良かったんですか?」
「フフッ、その前に、せっかく淹れてもらったお茶が冷めないうちに飲みましょう」
「はぁ」
エトワールをメリーベルに預けると、優雅な仕草でお茶を飲むルーミア様。こういう仕草ひとつ見ても、流石は王妃だと感心してしまう。ミーミル様も同じように、気品のある所作が染み付いているから、王族って凄いんだと思う。
「タクミ君、私ここで暮らす事にしたわ」
「へっ?」
お茶を飲み終えたルーミア様が唐突に発した言葉に驚く。
「ど、どういう事ですか?」
「あら、そのままの意味よ。私は長く王城で窮屈な暮らしをしてきたもの。そろそろノンビリ自由に暮らしても良いと思わない? それに、ここならエトワールちゃんの成長を見ていられるもの」
ルーミア様の聖域移住宣言に、僕が呆然としていると、メリーベルに案内されたミーミル様がやってきた。
「あ、ミーミル様」
「お邪魔します、タクミ様。お母様が我儘を言い出したのですが、私には止める事が出来なくて……」
「あら、我儘なんて心外だわ。娘の側で暮らしたいというのは母親として真っ当な望みだと思うわよ」
「でしたら、私が国に戻ったらお母様もお戻りになるのですね?」
「ええ、ミーミルが戻るのでしたらね」
「クッ、お母様はズルいです。今さら、私が窮屈な国に帰りたくないのを分かってて言ってますね」
「当たり前です。貴女は私の娘ですよ。貴女の事なんて、手に取るように分かります」
「まあまあ、ルーミア様もミーミル様も落ち着いてください」
言い争いを始めたルーミア様とミーミル様を宥め、僕は尋ねる。
「それで本当にお隣に住むのですか?」
「ええ、タクミ君のお屋敷のお隣なら、いつでもエリザベス様とお茶出来ますし、何よりエトワールちゃんにいつでも会えるわ」
エリザベス様とは文官シャルロットのお母さんで、女性ながらボルド男爵家の当主だ。
ルーミア様がエトワールの事を気に入ってくれているのはありがたいんだけど、それが理由で聖域に住むんじゃないだろうな。
「お父様は何と仰っているのですか?」
「あら、私が何処に住むかについて、あの人の許可は必要ないわ」
僕はルーミア様の言葉を聞き、首を横に振る。
「イヤイヤイヤ、ありますから。ルーミア様は王妃様ですから。ユグル王の許可が必要ないなんてありえませんから」
「あら、人間の国ではそうなのね。生憎、ユグル王国はエルフの国。人間の国とはルールが違うのよ」
「平気な顔して嘘をつかないでください。お母様!」
ミーミル様がそう言った。
ルーミア様が、あまりに普通のトーンで言うから、信じかけちゃったじゃないか。
「それに、これはタクミ君にもメリットはあるのよ」
「メリットですか?」
「ええ、私は王妃を引退したけれど、ここで遊んで暮らすのはアレじゃない。だからタクミ君のお仕事を手伝ってあげようと思ったのよ。連れてきた侍女は仕事が出来る子ばかりよ」
「いや、ユグル王国の王妃に聖域の仕事をさせるのは流石にまずいでしょう」
「だから王妃は引退って言ってるじゃない。ここにいるのはただのルーミアよ」
ルーミア様が涼しい顔で無茶を言うので、僕とミーミル様は頭を抱えてどうしようと悩んでいた。
この王妃様、普段は穏やかで優しい女性なんだけど、こういうちょっと……いや、だいぶぶっ飛んだ所があるんだよな。
「タクミ様、お父様と直ぐに連絡を取りますから、この件は少し待っていただけますか?」
「はい、勿論です」
僕が頷くと、ルーミア様が言う。
「あら、あの人に連絡しても同じですのに」
「お母様は少し黙っていてください!」
「タクミ君~、ミーミルがイジメるのぉ~」
「もう! お母様!」
「……」
空気になろう。
いたたまれない。
僕的には、ロザリー夫人もルーミア様も、背景がなければ是非助けてもらいたいけどな。
お二人共頭の回転が速いし、貴族や商人ともやりあえる人だからね。
ああ、工房にこもりたい。
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