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第四十六話 所詮、空飛ぶトカゲです
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はぐれ劣飛竜討伐の依頼を受けたホクト達は、ベルンの北門より出て死の森を左手に見ながら、ロドム山脈方向へと歩いている。
さすが死の森が近いだけあって、道中遭遇する魔物の数も強さもヴァルハイムや王都近郊とは違う。
死の森が近いこの付近は、ホクトやサクヤが感じる周囲に漂う魔素も濃い様だ。
「あれが死の森か、遠くから見ても魔素が濃いのが分かるな」
「そうね、地竜を討伐するのに、あの中に入らないといけないのは要注意ね」
「アニキも姐さんも、魔力が視えるんだなぁ。そんな所を見るとアニキ達がエルフだと再確認するよな」
死の森から現れる魔物を倒しながら、劣飛竜の目撃地点へと向かう。
「確かこの辺りだったよな。この辺で良いかな」
ベルンの街から二時間近く離れた場所にある、死の森とベルンの間にある草原で罠を仕掛ける。
ホクトが途中で狩ったオークをアイテムボックスから取り出す。未だ血が滴る2メートルを超えるオークが地面に血溜まりを作る。
土魔法でオークの近くに穴を掘り、その中に隠れて隠匿結界を張る。
「さて、ワイバーン以外が釣れると面倒だな」
「でも最近この辺りはワイバーンのお陰で、他の魔物は少ないって聞いたわよ」
「早く来ねえかな」
カジムは大剣を握り、何時でも飛び出せる様に準備している。
じっと目を瞑って待っていたホクトが、目を開けサクヤを見る。
サクヤはホクトを見て頷く。
「アニキ達にはワイバーンの位置が分かるのか?」
アイコンタクトするホクトとサクヤを見て、カジムが不思議そうに聞く。
「あゝ、僕は気配察知と探知の魔法で、サクヤは精霊が教えてくれるんだ」
ホクトは精霊の存在は感じる事が出来るし、視る事も出来るが、コミュニケーションは取れない。当然、精霊魔法も使わない。
サクヤは、精霊と話す事が出来るし、精霊魔法も使える。
その精霊がワイバーンが近付くのをサクヤに知らせる。
ロドム山脈から飛来した劣飛竜は、通常のワイバーンとは色が違った。
通常、ワイバーンは赤茶色だが、このワイバーンは漆黒の特異種だった。
他のワイバーンと比べ、ふた回りは大きいその個体。鱗の硬さも皮の強度も段違いに丈夫だった。
餌を求めて飛来したワイバーンは、血の匂いに引き寄せられ、空中からオークへと急降下を始める。
そのワイバーンにとって、オークも人間も等しく餌にしか過ぎない。
「サクヤ!」
「風の上級精霊お願い!
ダウンバースト!」
オークに向けて急降下するワイバーンへ、突然上空から叩きつける突風が吹きつける。
「ギャギャァーーー!!」
突然の事にバランスを取れずに地面に叩きつけられるワイバーン。
「オラッアーーーッ!!」
カジムが穴から飛び出し、ワイバーンの翼へ大剣を振り下ろす。
ガンッ!
斬れ味よりも頑丈さを求めた大剣が、ワイバーンに取って比較的弱い部分である翼に当たり、硬質な音が響く。
「グゥギャアーー!!」
ワイバーンは叫び声をあげて、トゲのある尻尾を振り回し暴れる。
罠に嵌められた事に怒り、己がテリトリーの大空へ飛び立とうとして失敗する。
身体を不可視の壁に押さえ付けられている。
ワイバーンの周りを四本の白い短剣が宙に浮いている。サクヤがアブソリュートガーディアンを使い、結界でワイバーンを押さえ付けていたのだ。
こうなれば後は簡単だった。
ホクトに取ってワイバーンは、ちょっと空を飛べるだけのトカゲだ。
剣に氣と魔力を纏い、ゆっくりとワイバーンへと歩いて行く。
「ギァアァーー!!」
ワイバーンがホクトを威嚇する。
「劣った飛竜のクセに生意気だな」
ホクトは首の横に立ち剣を振り上げる。
「サクヤ!」
ホクトの合図でサクヤがアブソリュートガーディアンの結界を解除する。
ザンッ!
結界が無くなった瞬間、ホクトが剣を振り下ろし、漆黒のワイバーンはその首を落とされる。
すぐさまホクトは氷魔法で血を止め、ワイバーンの身体をアイテムボックスへ収納する。
「確か、ワイバーンの血も錬金術や薬の素材になったよな」
「そうね、下位とは言え竜種だから、捨てる所が無いはずよ」
サクヤも斬り落とされたワイバーンの頭をアイテムボックスへ収納する。
ワイバーンは下位竜種とはいえ、牙や爪、皮や鱗は勿論、血、内臓、骨、脳ミソまで素材として高額で取引される。
空を飛ぶ魔物は、それだけで討伐難易度が高いので高額になりやすい。
「はぁ~、ダメだな。
翼を潰す事が出来なかったよアニキ」
一撃いれたにもかかわらず、飛び立とうとしたワイバーンに、まだまだ力不足だと落ち込むカジム。
「剣にもう少し魔力を纏わせる事が出来るようになったら、もっと一撃の威力が上がる筈だ」
「今日は帰りましょう。どうせ解体はガンツの工房でするんでしょう」
罠に使ったオークを回収し、ベルンへと転移せず歩いて戻る。
消化不良気味のカジムのストレス発散の為、襲って来る魔物を倒しながらベルンの街へと帰った。
さすが死の森が近いだけあって、道中遭遇する魔物の数も強さもヴァルハイムや王都近郊とは違う。
死の森が近いこの付近は、ホクトやサクヤが感じる周囲に漂う魔素も濃い様だ。
「あれが死の森か、遠くから見ても魔素が濃いのが分かるな」
「そうね、地竜を討伐するのに、あの中に入らないといけないのは要注意ね」
「アニキも姐さんも、魔力が視えるんだなぁ。そんな所を見るとアニキ達がエルフだと再確認するよな」
死の森から現れる魔物を倒しながら、劣飛竜の目撃地点へと向かう。
「確かこの辺りだったよな。この辺で良いかな」
ベルンの街から二時間近く離れた場所にある、死の森とベルンの間にある草原で罠を仕掛ける。
ホクトが途中で狩ったオークをアイテムボックスから取り出す。未だ血が滴る2メートルを超えるオークが地面に血溜まりを作る。
土魔法でオークの近くに穴を掘り、その中に隠れて隠匿結界を張る。
「さて、ワイバーン以外が釣れると面倒だな」
「でも最近この辺りはワイバーンのお陰で、他の魔物は少ないって聞いたわよ」
「早く来ねえかな」
カジムは大剣を握り、何時でも飛び出せる様に準備している。
じっと目を瞑って待っていたホクトが、目を開けサクヤを見る。
サクヤはホクトを見て頷く。
「アニキ達にはワイバーンの位置が分かるのか?」
アイコンタクトするホクトとサクヤを見て、カジムが不思議そうに聞く。
「あゝ、僕は気配察知と探知の魔法で、サクヤは精霊が教えてくれるんだ」
ホクトは精霊の存在は感じる事が出来るし、視る事も出来るが、コミュニケーションは取れない。当然、精霊魔法も使わない。
サクヤは、精霊と話す事が出来るし、精霊魔法も使える。
その精霊がワイバーンが近付くのをサクヤに知らせる。
ロドム山脈から飛来した劣飛竜は、通常のワイバーンとは色が違った。
通常、ワイバーンは赤茶色だが、このワイバーンは漆黒の特異種だった。
他のワイバーンと比べ、ふた回りは大きいその個体。鱗の硬さも皮の強度も段違いに丈夫だった。
餌を求めて飛来したワイバーンは、血の匂いに引き寄せられ、空中からオークへと急降下を始める。
そのワイバーンにとって、オークも人間も等しく餌にしか過ぎない。
「サクヤ!」
「風の上級精霊お願い!
ダウンバースト!」
オークに向けて急降下するワイバーンへ、突然上空から叩きつける突風が吹きつける。
「ギャギャァーーー!!」
突然の事にバランスを取れずに地面に叩きつけられるワイバーン。
「オラッアーーーッ!!」
カジムが穴から飛び出し、ワイバーンの翼へ大剣を振り下ろす。
ガンッ!
斬れ味よりも頑丈さを求めた大剣が、ワイバーンに取って比較的弱い部分である翼に当たり、硬質な音が響く。
「グゥギャアーー!!」
ワイバーンは叫び声をあげて、トゲのある尻尾を振り回し暴れる。
罠に嵌められた事に怒り、己がテリトリーの大空へ飛び立とうとして失敗する。
身体を不可視の壁に押さえ付けられている。
ワイバーンの周りを四本の白い短剣が宙に浮いている。サクヤがアブソリュートガーディアンを使い、結界でワイバーンを押さえ付けていたのだ。
こうなれば後は簡単だった。
ホクトに取ってワイバーンは、ちょっと空を飛べるだけのトカゲだ。
剣に氣と魔力を纏い、ゆっくりとワイバーンへと歩いて行く。
「ギァアァーー!!」
ワイバーンがホクトを威嚇する。
「劣った飛竜のクセに生意気だな」
ホクトは首の横に立ち剣を振り上げる。
「サクヤ!」
ホクトの合図でサクヤがアブソリュートガーディアンの結界を解除する。
ザンッ!
結界が無くなった瞬間、ホクトが剣を振り下ろし、漆黒のワイバーンはその首を落とされる。
すぐさまホクトは氷魔法で血を止め、ワイバーンの身体をアイテムボックスへ収納する。
「確か、ワイバーンの血も錬金術や薬の素材になったよな」
「そうね、下位とは言え竜種だから、捨てる所が無いはずよ」
サクヤも斬り落とされたワイバーンの頭をアイテムボックスへ収納する。
ワイバーンは下位竜種とはいえ、牙や爪、皮や鱗は勿論、血、内臓、骨、脳ミソまで素材として高額で取引される。
空を飛ぶ魔物は、それだけで討伐難易度が高いので高額になりやすい。
「はぁ~、ダメだな。
翼を潰す事が出来なかったよアニキ」
一撃いれたにもかかわらず、飛び立とうとしたワイバーンに、まだまだ力不足だと落ち込むカジム。
「剣にもう少し魔力を纏わせる事が出来るようになったら、もっと一撃の威力が上がる筈だ」
「今日は帰りましょう。どうせ解体はガンツの工房でするんでしょう」
罠に使ったオークを回収し、ベルンへと転移せず歩いて戻る。
消化不良気味のカジムのストレス発散の為、襲って来る魔物を倒しながらベルンの街へと帰った。
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