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第三十七話 鉱物迷宮その四

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 鉱物迷宮二十階層


「さて、どうする?
 採掘はもう十分の量採れたからな。このまま帰る事も出来るぞ」

 すっかり満足したガンツがボス戦をどうするか聞いて来た。

「挑戦するに決まってるぜ!なぁアニキ!」

 カジムはやる気満々だが、今の所一番役に立たない事は自分でも分かっていた。

「ミスリルゴーレムのドロップはミスリル鉱石ですよね」

「おお、そうじゃ。じゃが、ボス戦後の宝箱の方がオイシイぞ」

「ミスリルゴーレムの弱点てなんなの?」

 サクヤはやる気になってきているようだ。

「ミスリルゴーレムの弱点か、ミスリルだけあって魔法耐性は高いし、当然物理耐性も高いしの。これがボス個体じゃなければ帝級の火魔法辺りだと効く筈じゃが、ボス個体は特別じゃからのう」

 ガンツが考え込むなか、ホクトには考えがあるようで、サクヤの耳元で何かを話している。

「それでダンジョンコアは壊しちゃダメなんですよね」

「あゝ、ここはドワーフにとって大事な場所だからな。そう言うって事は、ボス部屋に挑戦するんじゃな」

「はい」

 ホクトは二十階層のボスと戦う事を決める。







 ホクト達が二十階層のボス部屋の扉の前に立つ。

「じゃあ開けるよ」

 重厚な金属製の扉が音を立て開いた。
 扉が開いたその先の広い空間の中央に、白銀に輝く巨大なゴーレムがホクト達を待ち受けていた。

 アイアンゴーレムよりもさらに大きく、全長4メートルはあるだろう。

 ホクト達が部屋に入ると、地響きを立てながらミスリルゴーレムが動きだした。

「ファイヤーランス!」「サンダーランス!」

 ドォーーーーン!!

 ホクトとサクヤが試しに魔法を放つ。

「やっぱり、これじゃあダメだよな」

 ミスリルゴーレムにはダメージを受けた様に見えない。魔法耐性は相当高いようだ。
 ホクトとサクヤにとっては想定内だった様で、二人とも落ち着いていた。


 迫り来るミスリルゴーレムに対して、ホクトとサクヤが珍しく詠唱を始める。
 それと共に二人の身体から膨大な魔力が嵐の様に吹き荒れる。

「「我求めるは、巌を溶かす白炎の焔」」

『『フレア!』』

 ミスリルゴーレムの頭上に巨大な白炎の焔が二つ現れる。

 ドォーーーーーーーーン!!!!

 ミスリルゴーレムの巨体が真っ赤に白熱する。



 続けてホクトとサクヤが詠唱を始め放つ。
 それは神の御業とされる神級魔法のひとつ。

「「我求めるは、地獄の最下層よりの万物を閉じ籠める獄寒の冷気」」

『『獄寒地獄コキュートス!』』

 真っ赤に熱せられたミスリルゴーレムが、氷の監獄に囚われる。
 白熱したミスリルゴーレムが急激に冷却され、ミスリルゴーレムのボディから何かが破れる音がする。

「今だ!たたみ掛けるぞ!」

 急激に動きがギクシャクしだしたミスリルゴーレムへ、ホクトとカジムが走りだす。

 一瞬で懐まで間合いを詰めたホクトに、巨大な白銀の拳が振り下ろされる。ホクトは拳を避けながら魔力と氣を纏わせた剣が一閃すると、ミスリルゴーレムの腕が斬り落とされる。

「ウォリャアァーー!!」

 カジムがメイスを肩の関節に叩き込むと、ミスリルゴーレムの残った腕の付け根にヒビが入る。

「もう一丁!!」

 腕を軋ませ振り上げるミスリルゴーレムに、カジムは追撃を仕掛ける。

 ガンッ!!一撃を耐えたミスリルゴーレムの肩の関節は、追撃で放たれた一撃に耐えきれなかった。

「コアを砕くぞ!!」

 ホクトが大声で叫び、ミスリルゴーレムへ走りだす。戦鎚を振り回したガンツも参加した総攻撃に、なすすべもなく斃れるかと思われたその時、ミスリルゴーレムが発光する。

「っ! 僕とサクヤの背後に!!」

 カジムとガンツがホクトとサクヤの背後に逃れたと同時に、ミスリルゴーレムから無属性の光線が放たれた。

 レーザーの様な無属性の魔法を、ホクトとサクヤが何重にも張り巡らせた、全力の魔法障壁で防ぎきる。
 何枚かの魔法障壁を撃ち破りミスリルゴーレムからの魔法が止まる。

 光線が止むと、再びコア目掛けて攻撃を重ねる。

 バキンッ!!金属が破砕する音が響き、ミスリルゴーレムの巨体がゆっくりと後ろに倒れた。

 その瞬間、ボス部屋の中央に白銀の宝箱が出現して、ミスリルゴーレムが討伐された事を知らせてくれた。

「みんなケガはない?大丈夫みたいだね」

 ホクトが全員の状態を確認する。

 ミスリルゴーレムのドロップを回収すると、宝箱を全員で確認する。

「何が出て来るかの」「そうだな、デカイ宝箱だから期待出来るんじゃねえか」

 ガンツとカジムは疲れた身体を引き摺って宝箱まで近付いて来た。

「じゃあ開けるよ」

 全員が宝箱の周りに集まったのを確認したホクトは宝箱を開ける。





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