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第三十三話 魔法陣は面白い
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ホクトは手元の金属板に何かを刻み込んでいる。それは六芒星と、古代魔法文字と、この世界には存在しない文字である漢字。
ホクトは魔法陣に漢字を使う事が出来る事が分かると、積極的に漢字を用いる様になった。
漢字は、表語文字である。一つの文字が語を表す為に、表音文字を使った従来の魔法陣よりも遥かに効果の高い術式を構築する事が出来る様になった。
この世界には、表音文字しか存在しなかった。
そこにホクトが漢字を導入した。
一文字で語を表す事の出来る漢字は、魔法陣において強烈なアドバンテージを持つ事になる。
ただ、ここでホクトは面倒な人物に絡まれる事になる。そしてそれは決して避けられたいのだった。
「ねぇ、ねぇ、それ文字なの?記号?その魔法陣の効率と威力おかしくない?ねぇねぇ、どこでその文字を知ったの?ねぇ、教えてよホクト君」
「シェスター教授、うるさくて集中出来ないです」
「ホクト君、ところで何の魔導具を造るつもりなの?」
シェスター教授はホクトに邪魔にされてもめげた様子を見せない。オリハルコンの心臓だとホクトは思った。
「はぁ、分かりましたよ。
今僕が造ろうとしているのはモーターです」
「モーター?それは何だい?」
「回転を生み出して動力源となるモノです」
「回転?動力源?」
ホクトが造りたかったのはオートモービル。
所謂、自動車だ。
この世界では、ゴーレム馬車と言う乗り物が存在する。
まだまだ高価な割に、性能が普通の馬車と変わらず、普及しているとは言い難い。しかも乗り心地も馬車と変わらない。ホクトが魔改造したヴァルハイム家の馬車の方がよっぽど優れている。
そこでホクトは、自動車の開発を決める。
先ずは手始めにオードバイを造る計画を立てた。
そこで必要になって来るのがモーターだった。
モーターが出来れば、他にも色々転用出来る。
クレーンやポンプ、発電にも使えるが、この世界には灯りの魔導具がある。冷蔵庫の魔導具がある。わざわざ電気を起こす必要性が余り無いので普及は難しいだろう。
「成る程、モーターね。
変わった名前だけど、有用だね~。
面白い!その魔法陣が出来たら私にも教えてよ」
シェスター教授は授業中なのに、ホクトとサクヤの側にへばり付いている。
ホクトは出来るだけ考えない様にして、あらかじめ羊皮紙に描いておいた魔法陣を金属板に刻み込んで行く。
無属性魔法の念道で対象物を回転させる。
消費する魔力量で回転数が変わる様に記述して行く。
魔力量を増減する術式は別の魔法陣で制御した方が良いと判断する。
馬力とトルクは魔石の質に左右される。
魔石の価値は内包する魔力量と魔力密度で魔石の価値は変わって来る。
ホクトの手持ちの魔石は、余り高ランクの物は持っていない。
冒険者として活動している時に、実家の商会用に確保した低レベルの魔石は多く手に入れたが、質の良い魔石は売却していたからだ。
それでも幾つかのBランク~Cランクの魔石は確保しているので、バイク程度の重量物を動かす事は問題ないだろう。
シェスター教授は、ホクト達がBランクの魔石を個人的に所持している事に驚いていたが、冒険者として活動している事を言うと、シェスター教授用の魔石を調達して来るように頼まれたが、丁寧にお断りした。
「ずるいよホクト君、サクヤ君も言ってよ~。
私は忙しくて魔石狩りに行く時間がないんだよ」
「いやっ、シェスター教授。そこは冒険者ギルドに依頼を出して下さいよ」
「まぁ、そうなんだけどね。
それにしてもホクト君は手先が器用だね」
ホクトが魔法陣を刻んでいる金属板は、銀にミスリルを少量含んだ合金で、魔力伝達に優れている。
そこに、何種類もの円形定規や三角定規を使って円と六芒星や五芒星を刻んでいく。
始点となる魔法記号を刻み、古代魔法文字と漢字を使い魔法の作用、魔力の流れ、魔力使用量などを刻み、魔法記号で術式の制御をする。
条件付けして発動術式を分岐、ホクトはコンピューターとはどちらかと言えば無縁な前世を送ってきたが、ファンタジー世界に転生して、プログラミングのような事に熱中している自分がおかしかった。
こういった手先の器用さが求められる作業はホクトは得意だった。これも元日本人だからなのか、鍛治師の息子だった酒呑童子の頃のなごりなのかは分からない。
「ふぅ~、今日はこの位にしておこうかな」
ホクトが工具を片付け始める。
「ホクト君達は夏季休暇はどうするの?」
「そうですね。実家に帰ったり、装備を新しくしたり色々ですね」
夏季休暇の予定をシェスター教授に聞かれたホクトだが、ダンジョンへ行く事は言わなかった。シェスター教授にバレると何故か面倒な事になりそうだと、ホクトの第六感が訴えていた。
「夏季休暇は長いから寂しくなるね~。休みなんていらないのにね~」
シェスター教授は学園で研究している時間だけが楽しい時間らしい。
片付けを終えて本来なら次の授業へと向かうのだが、ホクトとサクヤは免除されている授業だったので、何時もの様に図書館へと向かった。夏季休暇に入ると長い期間図書館を利用出来ないので、最近は時間があると図書館へ通っている。
「夏季休暇楽しみだね」
「そうだな。サクヤもエヴァさんとバグスさんに会えるしな」
ホクトにとって初めてと言っていい、宿業から解き放たれて過ごす学生生活。
決して平和な世界ではないが、それを乗り越える力を授かり過ごす満ち足りた日々が楽しかった。
ホクトは魔法陣に漢字を使う事が出来る事が分かると、積極的に漢字を用いる様になった。
漢字は、表語文字である。一つの文字が語を表す為に、表音文字を使った従来の魔法陣よりも遥かに効果の高い術式を構築する事が出来る様になった。
この世界には、表音文字しか存在しなかった。
そこにホクトが漢字を導入した。
一文字で語を表す事の出来る漢字は、魔法陣において強烈なアドバンテージを持つ事になる。
ただ、ここでホクトは面倒な人物に絡まれる事になる。そしてそれは決して避けられたいのだった。
「ねぇ、ねぇ、それ文字なの?記号?その魔法陣の効率と威力おかしくない?ねぇねぇ、どこでその文字を知ったの?ねぇ、教えてよホクト君」
「シェスター教授、うるさくて集中出来ないです」
「ホクト君、ところで何の魔導具を造るつもりなの?」
シェスター教授はホクトに邪魔にされてもめげた様子を見せない。オリハルコンの心臓だとホクトは思った。
「はぁ、分かりましたよ。
今僕が造ろうとしているのはモーターです」
「モーター?それは何だい?」
「回転を生み出して動力源となるモノです」
「回転?動力源?」
ホクトが造りたかったのはオートモービル。
所謂、自動車だ。
この世界では、ゴーレム馬車と言う乗り物が存在する。
まだまだ高価な割に、性能が普通の馬車と変わらず、普及しているとは言い難い。しかも乗り心地も馬車と変わらない。ホクトが魔改造したヴァルハイム家の馬車の方がよっぽど優れている。
そこでホクトは、自動車の開発を決める。
先ずは手始めにオードバイを造る計画を立てた。
そこで必要になって来るのがモーターだった。
モーターが出来れば、他にも色々転用出来る。
クレーンやポンプ、発電にも使えるが、この世界には灯りの魔導具がある。冷蔵庫の魔導具がある。わざわざ電気を起こす必要性が余り無いので普及は難しいだろう。
「成る程、モーターね。
変わった名前だけど、有用だね~。
面白い!その魔法陣が出来たら私にも教えてよ」
シェスター教授は授業中なのに、ホクトとサクヤの側にへばり付いている。
ホクトは出来るだけ考えない様にして、あらかじめ羊皮紙に描いておいた魔法陣を金属板に刻み込んで行く。
無属性魔法の念道で対象物を回転させる。
消費する魔力量で回転数が変わる様に記述して行く。
魔力量を増減する術式は別の魔法陣で制御した方が良いと判断する。
馬力とトルクは魔石の質に左右される。
魔石の価値は内包する魔力量と魔力密度で魔石の価値は変わって来る。
ホクトの手持ちの魔石は、余り高ランクの物は持っていない。
冒険者として活動している時に、実家の商会用に確保した低レベルの魔石は多く手に入れたが、質の良い魔石は売却していたからだ。
それでも幾つかのBランク~Cランクの魔石は確保しているので、バイク程度の重量物を動かす事は問題ないだろう。
シェスター教授は、ホクト達がBランクの魔石を個人的に所持している事に驚いていたが、冒険者として活動している事を言うと、シェスター教授用の魔石を調達して来るように頼まれたが、丁寧にお断りした。
「ずるいよホクト君、サクヤ君も言ってよ~。
私は忙しくて魔石狩りに行く時間がないんだよ」
「いやっ、シェスター教授。そこは冒険者ギルドに依頼を出して下さいよ」
「まぁ、そうなんだけどね。
それにしてもホクト君は手先が器用だね」
ホクトが魔法陣を刻んでいる金属板は、銀にミスリルを少量含んだ合金で、魔力伝達に優れている。
そこに、何種類もの円形定規や三角定規を使って円と六芒星や五芒星を刻んでいく。
始点となる魔法記号を刻み、古代魔法文字と漢字を使い魔法の作用、魔力の流れ、魔力使用量などを刻み、魔法記号で術式の制御をする。
条件付けして発動術式を分岐、ホクトはコンピューターとはどちらかと言えば無縁な前世を送ってきたが、ファンタジー世界に転生して、プログラミングのような事に熱中している自分がおかしかった。
こういった手先の器用さが求められる作業はホクトは得意だった。これも元日本人だからなのか、鍛治師の息子だった酒呑童子の頃のなごりなのかは分からない。
「ふぅ~、今日はこの位にしておこうかな」
ホクトが工具を片付け始める。
「ホクト君達は夏季休暇はどうするの?」
「そうですね。実家に帰ったり、装備を新しくしたり色々ですね」
夏季休暇の予定をシェスター教授に聞かれたホクトだが、ダンジョンへ行く事は言わなかった。シェスター教授にバレると何故か面倒な事になりそうだと、ホクトの第六感が訴えていた。
「夏季休暇は長いから寂しくなるね~。休みなんていらないのにね~」
シェスター教授は学園で研究している時間だけが楽しい時間らしい。
片付けを終えて本来なら次の授業へと向かうのだが、ホクトとサクヤは免除されている授業だったので、何時もの様に図書館へと向かった。夏季休暇に入ると長い期間図書館を利用出来ないので、最近は時間があると図書館へ通っている。
「夏季休暇楽しみだね」
「そうだな。サクヤもエヴァさんとバグスさんに会えるしな」
ホクトにとって初めてと言っていい、宿業から解き放たれて過ごす学生生活。
決して平和な世界ではないが、それを乗り越える力を授かり過ごす満ち足りた日々が楽しかった。
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