比翼連理の異世界旅

小狐丸

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迷宮都市編

ドラゴニュートの戦士

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一台の馬車が、東へと走る。
通常の馬車の倍程のスピードが出ているが、ヴァルスはまだまだ余裕が有りそうだ。
ベタントスの街から2日、周りの景色が草原から荒涼とした景色に変わって来た。


「少し遠いけど、誰か戦ってるね。」
「急ぎましょ。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドガァーーーーン!
地龍の爪が大地を削る。
ブゥーン!続けて尻尾が襲いかかる。
ガンッ !!!!
それを大盾で受け流す。

「爺ジー!頑張れー!」
「ルー!離れておくんじゃ!」

ブゥーン!ハルバートを地龍に叩き込む。
フルプレートの鎧を着て左手に大盾を持ち右手にハルバートを装備した男が地龍と戦っていた。
8mは、有りそうな地龍を独りで押さえ込んでいた。

「…このままでは不味いのォ。」
ルーと呼ばれた小さな女の子を背に護りながらの戦いは、見た目よりも余裕がなかった。

「キャーーー!」
ルーと呼ばれた女の子が悲鳴をあげる。

男が振り返るとワイバーンが急降下して女の子に襲いかかる。

「ルーーーー!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ヴァルスのスピードを上げ少し走ると砂煙が舞い上がり、その中に地龍と戦うひとりの男が見えた。
索敵に大きな気配が引っかかる。
ワイバーンが、小さな女の子を狙って急降下して来ていた。
その瞬間、ユートが飛び出した。
ワイバーンに向かって全速力で走る。

「ルーーーー!」

男が叫ぶ。
女の子がワイバーンの爪の餌食になる寸前。

シュン! ドガァーン!

弾丸の様に跳んだユートが、空中で刀を一閃。
ワイバーンの首を斬り落とし、勢いのままワイバーンの胴体を蹴り上げる。
着地したユートが地龍と戦う男に声を掛ける。

「助け立ちします!」
「かたじけない!」

バァーーーン!

地龍の横腹にマリアがエアハンマーを放つ。
体勢を崩した地龍にサツキのファイヤーランスが連続して突き刺さる。

GAOOOOOON !!!!

堪らず悲鳴をあげる地龍に男がハルバートを叩き込む。
地龍が最後の抵抗と男に咬みつこうと襲いかかるが、男は大盾で受け止める。
その瞬間、地龍がビクッと振るえ動きを止め崩れ堕ちた。男が見ると地龍の首に突き刺さる刀をユートが引き抜き鞘に収めていた。

「助かった、助け立ち感謝する。」
「爺ジー!」
女の子が駆け寄って来て男に跳びつき男が盾を手放し抱き上げる。
「ルー、無事であったか。」

ユートが地龍の頭から飛び降りる。

「儂はアラゴス、この子はルーじゃ。」
「僕はユート、こっちがマリアで彼女はサツキです。」

お互いに、挨拶を交わしてユートはアラゴスをみる。
アラゴスと名のった男は、2mを超す身長にガッシリとした体躯白い髭をはやした顔には、頬から首にかけて鱗があり額から短い角が二本生えていた。

「失礼ですが、アラゴスさんはドラゴニュートですか?」
「おぉ、その通りじゃ。」この辺りじゃ珍しかろう。と豪快に笑う。
「それで、どうしてこんな何もない場所でルーちゃんを連れて地龍と戦っていたんですか?」

ヴァルスの足でも一番近い街であるベタントス迄2日かかる、しかもアラゴスさんは徒歩だ。
ユートの疑問に、

「実はの、儂らドラゴニュートは未開地奥地に集落を作って暮しておるのじゃが、儂は少し変わり者での街へでて傭兵や冒険者として暮していたんじゃがの。」

アラゴスさんがルーちゃんを見る。

「久し振りに集落へ帰ったんじゃが、息子夫婦が亡くなっておっての……。」ルーちゃんは息子さん夫婦の忘形見か。

「集落で育てることも考えたがの、儂には畑を耕すことは出来んからの。」

確かにアラゴスさんに狩人や農夫は似合いそうにないけど。

「そこで、ルーを連れて迷宮都市ベタントスに行って、儂がダンジョンに潜って稼ごうと思ってな。ベタントスには、教会が孤児院をやっとるからルーを預かってくれるしの。」

そういや、ベタントスで教会はまだ行ってなかったな。

「イヤァ、しかし参ったわい。こんな所で地龍に襲われるとはのぉ、独りじゃまだ何とかなったかもしれんが、ルーを護りながらでは危なかった。」

しかも、ワイバーンまで出て来るとわのぉ。
アラゴスさんが、重ねて感謝を伝えてきた。

「それで、お主らは何故こんな所におったのじゃ。」
依頼かの?アラゴスさんが聞いてきた。

「僕達の用事はもう済みましたから。」

ユートがワイバーンを指差しながら答える。

「ワイバーンの素材が欲しかったんですよ。」
「なるほど、儂等は幸運じゃったの!」

アラゴスさんは、豪快に笑いながらバンバンユートの背中を叩く。

「マリア!ワイバーンを収納しといて。」
「えぇ、分かったわ。」

マリアが、アイテムボックスにワイバーンを収納する。それを見てアラゴスさんがビックリしているがルーちゃんは、スゴォーイとはしゃいでる。

「アラゴスさん、こっちの地龍はどうします。ひとまず収納しておきましょうか、どうせ僕達もベタントスに帰りますから。ルーちゃんもいる事ですし馬車に乗って行って下さい。」
「重ね重ね済まんの、助かる。」

ユートが地龍を収納してヴァルスを呼ぶ。

「爺ジ、大っきいおウマさん!」
「これは、魂消た。スプレイニルか聖獣ではないか!」
「ルーちゃん、ヴァルスっていう名前なんだ。ヴァルって呼んであげてね。」
「ヴァルちゃん足がイッパイ!」
「さぁ、乗って下さい。」

ヴァルスに声をかけ、ベタントスに帰る。
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