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異世界で新たな一歩目を!

第十二話 『俺のプライバシー?』

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「どうしたの?」

 何が起きたのかを葉山も聞いてくるが、俺も状況が飲み込めていないので何も答えられない。

『オイラは、ミリエル様の従者の一人であるクルトさ。』

 え、ミリエルさんから送られてきたの?
 そういえば、最後の方にミリエルさんの従者らしき小人が俺の方に飛んできてたっけ。
 あの時は、長時間ダンジョンに潜り続けるという慣れないことをしたせいで、疲労によりすぐさま寝てしまった。
 が、地球では絶対に起こりえない摩訶不思議な現象を今まで忘れていたとは、なんとも不甲斐ない。
 肩を見ると、拳ぐらいの小人が、いや何となく妖精と言った方がしっくり来るな。
 拳くらいの妖精が普通に座っていた。

『ミリエル様には、キヨハラ様が過去に転移したり、ダンジョンに潜ろうとしたら報告をするようにと命令されているのさ。それで、どうせならリニューアルされたダンジョンをキヨハラ様に紹介しといてと言われたのさ。』
 
 よくしゃべるな。
 というか、クルトの声は聞こえるというより、伝わってくると言った方が正しいかもしれない。
 なにせ、クルトの声は耳から聞こえるというより脳内に直接伝わってくるのだ。
 だが、こいつの正体は大体理解できた。
 一応、葉山を安心させるために今起きたことを説明しておこうか。
 というか、全然ダンジョンに潜れない。

「葉山、こいつは昨日俺がこのダンジョンを潜った時に出会ったこのダンジョンの管理者の従者だよ。」

 俺は、肩に乗るクルトを指さしながら言う。
 だが、なるべく簡潔な説明を心掛けたつもりだったが、葉山はあまり理解できないような感じだった。

「つまり、」
「あ、あの清原君、こいつってどういう意味?もしかしてそこに誰かいるの?」
「ん?」

 な~んか会話が噛み合って無い気がするのは俺だけか?

『オイラの存在は、キヨハラ様かミリエル様が許可した人物しか見ることが出来ないようになっているのさ。』

 ラノベとかではよくそういうキャラクターは居るけれど、現実で見ると茶番にしか見えない。
 あと、逆に俺とクルトの話が噛み合い過ぎている気がするんだよな。
 もしかしてだけど、

『そうさ、オイラはキヨハラ様の思考を読めるのさ。』

 やっぱりな。

「は~~ぁ」

 俺は一度深いため息をついてから、改めて思う。

(俺のプライバシーは?)

 意味が無いとはわかっていながらも、俺はどうしても心の中でミリエルさんに文句を言わずにはいられなかった。


「ね、ねえ清原君、何が起きているの?」

 葉山は不安そうに尋ねてくる。
 説明は一応しようとは思うけれど、クルトの姿が見えないのならば信憑性が無いと思う。
 まあ、方法がない訳じゃない。
 今クルトが、『僕の存在は、キヨハラ様かミリエル様が許可した人物しか見ることが出来ないようになっているのさ。』と言っていたように、俺が許可を出せばいいのではないだろうか。
 ミリエルさんやクルトのことを、そうべらべらと話すのはどうかとは思うけれど、今回限りだ。

「クルト、葉山にもお前の存在が認識出来るようにしてくれ。」
『了解したのさ。』

 第三者視点から見れば、何もないところに話しかけているヤバいやつだと思われること受けあいだ。
 だが、そう思われないためには、何もないところに話しかけないといけない。
 まさにジレンマと言えるな。
 何となくそんな阿保らしいことを思っていると、葉山が急に「ひゃっ、」と驚いたような声を上げた後、

「そ、そこに何か猿みたいな妖精がいるように見えるんだけど。」
『やあやあ初めまして、オイラはミリエル様の従者の一人であるクルトさ。よろしく。』
「しゃ、しゃべった!?」

 この数分間で二つも、地球では起こりえないまさにファンタジックな出来事を見せられた葉山は、数秒事態を飲み込もうとした後、現実逃避気味にこう言った。

「よろしくね、クルト君。」
『なんか葉山様が何かを悟ったかの表情をオイラに向けているのさ。』

 笑顔で言い切った葉山だが、俺もその顔から若干理解からの諦めを感じられる。
 というか、クルトの奴何で葉山の名前知ってんだよ。

(やっぱり、俺の思考読まれてんだよなぁ。)

 俺も、何となくため息をついてしまった。

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