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第9部 夢の先にあるもの
4-1沢山たべると自分もみんなも幸せな気分になるのはなぜだろう?
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私は〈新南区〉に来ていた。普段は、絶対に来ない場所だ。人が多いところに来ると、気分が悪くなる。でも、今日は特別。なぜなら、私の大好きなイベントが、開催中だからだ。
〈グリュンノア〉では、毎月、何かしらのイベントがある。五月は『グルメ・フェスタ』だ。昔は『食豊祭』と言われ、食べ物に感謝するお祭りだった。でも、今は、おいしい物を、いっぱい食べるお祭りだ。
色々あるイベントの中でも、特に大好き。食べるのが目的のお祭りだから、どんなに食べても、誰にも文句を言われないし。来ている人たちも、みんな、食べまくっている。
唯一のネックは、人が多くて、ごちゃごちゃしてること。普段でも混んでるのに、イベントになると、たくさん観光客がくるので、とんでもなく混雑する。でも、おいしいものを食べるには、忍耐力も必要だ。
もともと《新南区》には、世界中の、あらゆる食べ物が集まっている。そのため『グルメの聖地』とも言われており、世界中から、グルメファンたちが訪れていた。
今日は、普段はない、特別な出店があったり、普通の店も、特別メニューを出しているところが多い。あと『グルメ・フェスタ』の、特別価格だったり、大盛りにしてる店も、結構ある。
とにかく、周り中が、食べ物だらけ。辺り一面から、おいしい匂いが、ただよって来ている。まるで、天国みたいで、一生ここに居続けたい気分だ。
今日は、水曜日で、仕事が休み。なので、朝早くから〈新南区〉にやって来た。いつもなら、昼まで、ぐっすり寝てるけど。今朝は、しっかり目が覚めた。私にとっては、それほど、大事なイベントだ。妹のクリスも、一緒に来ている。
先ほどから、二人で屋台を回っていた。気になるものを見つけるたびに、片っ端から、買い食いしている。おいしい店を、探そうと思ったけど。結局、どれもおいしいので、隅から隅まで、全ての店で買っている。
クリスも、人の多いところは苦手で、来る時は、凄く緊張してたけど。ここに来て、買い食いを始めてからは、ずっと幸せそうな顔をしていた。相変わらず、食べてる時は、とてもいい表情をする。
彼女と一緒にいると、物凄く落ち着く。無口だから、無理に話す必要がないし。私と、ほぼ同じペースで、たくさん食べるから、合わせる必要もない。
私が、本気で食べると、たいていの人は、驚いたり、引いたりする。でも、クリスは、全く気にしていない。だから、気兼ねなく、本気で食べ歩きができる。
事前に、イベントの打ち合わせした時。『新南区の全ての店の料理を、コンプリートする』と、私が言ったら、彼女は、目をキラキラさせていた。私の意気込みを分かってくれるのも、彼女だけだ。
先ほどから、全ての店で買い食いしてるけど、彼女は、黙々と食べ続けていた。食べるスピードは、私よりも、ちょっと遅いけど。でも、本当に、おいしそうに食べている。
「クリス、大丈夫? ペース、早くない?」
ちょっと、飛ばし過ぎではないかと思い、一応、声を掛けた。
「全然……大丈夫です」
「そっか。きつかったら、言って」
「まだまだ――平気。全部……行けます」
特に、問題なさそうだ。クリスは、普段から、いっぱい食べてるけど。物凄く、弱々しく見えるから、ちょっと心配になる。
「あ、ここは、通には超有名な店。この町で、一番おいしい」
「うわぁー」
簡単に説明すると、クリスは、目を輝かせた。
この屋台は、知る人ぞ知る、ホットドッグの名店だ。普段は〈北地区〉の、目立たない場所で、ひっそりとやっている。にもかかわらず、いつも、たくさんの人が来ていた。
普段は、行列が出来ていることも多いけど。今日は、店が物凄くたくさんあるので、人が分散して、あまり混んでいない。すぐ買えるのは、とてもラッキーだ。
「どれも、おいしいから、私は、全種類、一個ずつ食べる。一つだけ選ぶなら『チリドッグ』が、おすすめ」
「私も――全部、食べます」
彼女からは、予想通りの答が返って来た。
「じゃあ、全種類、二個ずつで」
「はいよ。相変わらず、いい食べっぷりだね、お嬢ちゃん」
よく行くので、ここの店主とは、顔見知りだ。
彼は、手際よく、流れるように作って行く。全く無駄のない動きで、作るのが滅茶苦茶、速い。流石は、四十年以上、毎日、作ってるだけあって、見事な職人技だ。
袋を受け取ると、私たちは、近くにあったテーブルに行き、でき立てのホットドッグに、かぶりつく。ふわふわのパンに、シャキッとしたソーセージが、たまらなくおいしい。焼き加減と味付けも、絶妙だ。
『クラシック』『サルサ』『マヨ』『チーズ』『シーフード』『ミート』『チリ』の七種類。どれも、滅茶苦茶、おいしい。でも、やっぱり、チリドッグが、一番すきだ。
私は、あっという間に、全種類を平らげた。ちょっと遅れて、クリスも、全てを食べ終える。
「じゃあ、次いこうか」
私が声を掛けると、彼女は、クイッと、私の袖を引っ張った。
「ん……どうした?」
「――あれ」
彼女が指さした先には、ポスターが貼ってある。
『グルメ・フェスタ・チャレンジ
ハンバーガー大食い選手権』
主催は、有名なハンバーガー・チェーンの『エクセレント・バーガー』だ。あそこのハンバーガーは、私も超大好き。
「おぉー、食べ放題! 出たいの?」
「その……クッション――欲しいです」
よく見ると、優勝賞品は、商品券とハンバーガー型のクッションらしい。しかも、そのクッションは、特大サイズだ。非売品なので、ここでしか手に入らない。
「分かった。任せて」
私が答えると、クリスは、とても嬉しそうな表情をする。
そんなわけで、私たちは、引き続き買い食いをしながら、食べ放題のイベント会場に向かうのだった……。
******
時間は、十二時ちょっと前。私たちは、大きな広場に来ていた。ここで、十二時から『ハンバーガー大食い選手権』が行われる。参加者は、三十二名。中には、有名なフード・ファイターも、何人かいる。
私は、長いテーブルの前に立ち、スタンバイしていた。目の前には、大きなお皿が置かれ、その上には、ハンバーガーの包みが、山積みになっていた。一皿で十個。しかも、ビッグサイズで、通常の物よりも、一回り大きい。
観客も、物凄くたくさん集まっており、中には『大食い妖精』とか『翠玉の妖精』の名で、私を応援している人たちもいる。上位階級になってからは、私を知っている人が、かなり増えた。
周りを見ると、緊張している参加者たちも、結構いるようだ。でも、私は、早く食べたくて、ワクワクしていた。午前中は、出店で食べまくって、腹ごなしも完璧。いつでも行ける、臨戦態勢になっている。
しばらく待って、十二時になると、開始のブザーが鳴り響いた。私は、待ってましたとばかりに、包みを開けると、勢いよく、ハンバーガーにかぶりついた。
私は、ハンバーガーが、超大好物。なんでも好きだけど、一番は、ハンバーガー。理由は、よく分かんないけど。食べると、とても幸せな気分になるのだ。
ハッキリ言って、ハンバーガーなら、無限に食べられる。でも、普段は自重して、ほどほどの数で、我慢していた。だから、いくつでも食べていいなんて、最高にハッピーだ。
「さぁ、全員、一斉に食べ始めました! 皆、物凄い勢いで、食べ進めます。流石は、食欲自慢の選手たちです」
スタート直後から、司会者が解説を始めた。それと同時に、観客たちからは、大歓声が上がる。
「大食いぞろいですが、中でも注目の選手は四名。数々の大食い大会を、戦い抜いて来た、歴戦の猛者たちです」
「まずは『アイアン・ストマック』の、ダイアン選手。続いて『ブラックホール・イーター』の、アンガス選手。あと『暴食魔人』の、ケイシー選手。いずれも、様々な大会での、優勝実績を持った、ベテランの選手です』
「さて、最後の一人は、今大会の紅一点かつ、最年少。あらゆるチャレンジ・メニューを制覇してきた『大食い妖精』こと、フィーニツァ選手。彼女は『翠玉の妖精』の二つ名を持つ、大人気のスカイ・プリンセスでもあります」
私の名前が紹介されると、ひときわ大きな歓声があがった。
「さあ、早くも上位選手たちは、一皿目を、食べ終わろうとしています。現在トップは、ダイアン選手。僅差で、アンガス選手とケイシー選手が続いています。フィニーツァ選手は、やや遅れていますが、彼女は、後半で追い込むタイプです」
私は、別に、後半追い込んだりとか、ペース配分は、全く考えていない。最初のうちは、じっくりと、味わって食べたいだけだ。それで、ある程度、味わったら、徐々にスピードアップしていく。
やっぱり『エクセレント・バーガー』は、滅茶苦茶おいしい。この店のハンバーガーは、他の店に比べて、味付けが物凄く濃厚。特に、トマトソースの味が、絶品だ。
『味が濃すぎる』『こってりし過ぎ』という人もいるけど。私は、味が濃いのとか、こってりしてるのが、超大好き。いくらでも、食べられる。
一皿目は、じっくり味わって食べて、二皿目に突入した。マイペースで食べ進めるけど、今日は、好きなだけ食べられる。なので、できるだけいっぱい、食べて行こう。
「速い速い! 開始から二十分を待たずに、上位選手たちは、二皿目を完食! 流石は、歴戦のプロ選手たち。フィニーツァ選手も、三個差で、しっかり、ついて来ています」
場内からは、大きな歓声が上がった。『翠玉の妖精、頑張ってー!』という声も、結構、聞こえて来る。でも、私は、頑張らない。食事とは、頑張ってするものではなく、楽しんでするものだからだ。
ただ、周りの人たちは、必死になって食べている。あんな食べ方で、おいしさが、分かるんだろうか? 何かもったいない。私は、あくまでも、おいしく楽しく食べるだけだ。私は、いつもと同じペースで、黙々と食べ続ける。
「ただいま、時間は、三十分を経過しました。上位選手たちは、四皿目と格闘中。現在、三十三個で、ダイアン選手が一歩リード。次いで、アンガス選手とケイシー選手が、三十二個」
「注目のフィニーツァ選手は、現在、三十個目。おっと、フィ二―ツァ選手、たった今、三皿目を完食! ついに、四皿目に突入して、上位三名に、くらいついて行きます!」
再び、周囲から、大歓声があがった。でも、私は、気にせず、黙々と食べ続ける。滅茶苦茶、幸せ。できれば、永遠に食べ続けたい。でも、残り時間は、あと三十分。まだ、お腹は、全然、余裕。
私は、勝敗には、全くこだわらない。おいしく食べられれば、それで満足。でも、今回は、クリスのために、バーガー・クッションを、もらわなければならない。だから、ほんのちょっとだけ、頑張る。
先ほどからクリスは、ちょっと、心配そうな表情で、こちらを見つめていた。相変わらず、心配症だ。
「さあ、四十分が経過。上位陣も、ちょっと、ペースが落ちて来たか? 通常よりも大きいサイズのうえに、こってりしたソースが、胃に直撃します。果たして、どこまで、記録を伸ばせるのか?」
「現在トップは、ダイアン選手の、四十二個。アンガス選手が、四十個。ケーシー選手が三十九個。皆、苦しそうな表情になってきました。今、アンガス選手が、立ち上がった。胃から下に落とす作戦か?」
私は、ひたすら食べ続ける。今のところ、腹三分ぐらい。まだ、全然、物足りない感じだ。ただ、時間が、残り少しだし。そろそろ、本気、出そうかな。私は、ちょっぴり、ペースアップする。
「ここで、フィニーツァ選手、四皿目を完食! ついに、四十一個目に突入。徐々に、トップとの差が詰まって来たぞ! その様子を見たダイアン選手が、再び食べ始めた。さあ、勝利の栄冠は誰の手に!」
私の食べるペースが上がるのと同時に、観客たちの応援も、どんどん、ヒートアップしていく。
「ダイアン選手、水で一気に流し込んで、四十五目を完食! だが、少し遅れて、フィニーツァ選手も、四十五個目を完食。ついに並んだー!! これは、勝負の行方が、分からなくなって来たぞー!」
私は、どんどん口を動かし、胃袋に収めていく。私にとって、ハンバーガーは飲み物だ。おいしいハンバーガーは、本当に、するすると飲み込める。だから、私は、水は飲まない。
他の選手たちは、いっぱい水を飲んでるけど。私は、一度も、水を飲んでいなかった。だって、味が薄くなって、もったいないから。
「さぁ、両者、激しいデッドヒート! ダイアン選手、水を飲んで、必死に押し込んでいる。ちょっと苦しいか? おおっと、ここで、フィニーツァ選手、四十八個目に突入! ついに、ダイアン選手を追い抜いて、トップに立ったー!!」
場内から、盛大な歓声が沸き上がった。私は、さらに、スピードアップして、どんどん吸い込むように食べていく。普段は、こんなに食べられないから、超幸せ。だから、一個でも多く、食べためておかないと。
「いよいよ、残り時間は、あと三分。途中までトップを走っていた、三人の選手は、すでに、ペースダウン。フィニーツァ選手だけが、ペースが変わらず、完全に、独走状態だっ!! さぁ、どこまで、記録が伸ばせるのか?」
残りが、十秒になったところで、カウントダウンが始まる。終了のブザーが鳴る直前で、最後の一個を飲み込んだ。終了のブザーと共に、周囲から、大きな拍手と大歓声が巻き起こった。
ふぅー、超おいしかったー。でも、まだまだ、行ける。余ってるの、もらえないかな……?
******
競技が終わると、運営スタッフたちで、素早くセットが片づけられる。表彰台が置かれ、すぐに、結果発表が行われた。
『それでは、結果発表と、表彰を行いたいと思います。第三位、四十七個、アンガス選手。第二位、五十二個、ダイアン選手』
発表が行われるたびに、拍手が巻き起こる。
『さて、それでは、いよいよ一位の発表です。栄光の第一位は、六十五個、フィニーツァ選手!! 後半のラストスパートで、ぶっちぎりの優勝です!!』
周囲から、ひときわ大きな拍手と『翠玉の妖精』コールが始まった。
ふぅー、七十個は、行けると思ったんだけど。ちょっと、前半で味わいすぎたかも。でも、いっか。エクセレント・バーガーの商品券、一万ベル分と、特大バーガー・クッションもらったし。
クリスに、賞品のクッションを渡すと、滅茶苦茶、幸せそうな表情をしていた。ついでに、大会運営の人に『余ってるハンバーガーもらえない?』と訊いたら、袋いっぱいに詰めたバーガーを、ただで分けてくれた。なので、私も、超大満足。
「しょっぱいの食べたから、甘いの欲しくなった。特大パフェでも、食べに行かない?」
「うん――食べたいです。でも……大丈夫?」
クリスは、クッションを大事そうに抱きしめながら、少し心配そうな表情で、訊ねて来る。
「全然、よゆう。大食い大会、もう一つぐらい、出られそう」
私が答えると、彼女は、キラキラした目で見つめて来た。私は、そっと彼女の頭をなでる。
やっぱ『グルメ・フェスタ』は最高だ。ただ、おいしく食べてるだけなのに、みんな、幸せそうな表情になってくれる。このイベント、毎月、やってもいいと思う。そしたら、私も、みんなも、もっと、いっぱい幸せになれるのに。
さて、前半戦は終了したし。後半戦も、もっとたくさん、おいしいもの食べよう……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『伝統を打ち破らないと明るい未来は訪れない』
過去は生きる力。未来は生きるためのエネルギー
〈グリュンノア〉では、毎月、何かしらのイベントがある。五月は『グルメ・フェスタ』だ。昔は『食豊祭』と言われ、食べ物に感謝するお祭りだった。でも、今は、おいしい物を、いっぱい食べるお祭りだ。
色々あるイベントの中でも、特に大好き。食べるのが目的のお祭りだから、どんなに食べても、誰にも文句を言われないし。来ている人たちも、みんな、食べまくっている。
唯一のネックは、人が多くて、ごちゃごちゃしてること。普段でも混んでるのに、イベントになると、たくさん観光客がくるので、とんでもなく混雑する。でも、おいしいものを食べるには、忍耐力も必要だ。
もともと《新南区》には、世界中の、あらゆる食べ物が集まっている。そのため『グルメの聖地』とも言われており、世界中から、グルメファンたちが訪れていた。
今日は、普段はない、特別な出店があったり、普通の店も、特別メニューを出しているところが多い。あと『グルメ・フェスタ』の、特別価格だったり、大盛りにしてる店も、結構ある。
とにかく、周り中が、食べ物だらけ。辺り一面から、おいしい匂いが、ただよって来ている。まるで、天国みたいで、一生ここに居続けたい気分だ。
今日は、水曜日で、仕事が休み。なので、朝早くから〈新南区〉にやって来た。いつもなら、昼まで、ぐっすり寝てるけど。今朝は、しっかり目が覚めた。私にとっては、それほど、大事なイベントだ。妹のクリスも、一緒に来ている。
先ほどから、二人で屋台を回っていた。気になるものを見つけるたびに、片っ端から、買い食いしている。おいしい店を、探そうと思ったけど。結局、どれもおいしいので、隅から隅まで、全ての店で買っている。
クリスも、人の多いところは苦手で、来る時は、凄く緊張してたけど。ここに来て、買い食いを始めてからは、ずっと幸せそうな顔をしていた。相変わらず、食べてる時は、とてもいい表情をする。
彼女と一緒にいると、物凄く落ち着く。無口だから、無理に話す必要がないし。私と、ほぼ同じペースで、たくさん食べるから、合わせる必要もない。
私が、本気で食べると、たいていの人は、驚いたり、引いたりする。でも、クリスは、全く気にしていない。だから、気兼ねなく、本気で食べ歩きができる。
事前に、イベントの打ち合わせした時。『新南区の全ての店の料理を、コンプリートする』と、私が言ったら、彼女は、目をキラキラさせていた。私の意気込みを分かってくれるのも、彼女だけだ。
先ほどから、全ての店で買い食いしてるけど、彼女は、黙々と食べ続けていた。食べるスピードは、私よりも、ちょっと遅いけど。でも、本当に、おいしそうに食べている。
「クリス、大丈夫? ペース、早くない?」
ちょっと、飛ばし過ぎではないかと思い、一応、声を掛けた。
「全然……大丈夫です」
「そっか。きつかったら、言って」
「まだまだ――平気。全部……行けます」
特に、問題なさそうだ。クリスは、普段から、いっぱい食べてるけど。物凄く、弱々しく見えるから、ちょっと心配になる。
「あ、ここは、通には超有名な店。この町で、一番おいしい」
「うわぁー」
簡単に説明すると、クリスは、目を輝かせた。
この屋台は、知る人ぞ知る、ホットドッグの名店だ。普段は〈北地区〉の、目立たない場所で、ひっそりとやっている。にもかかわらず、いつも、たくさんの人が来ていた。
普段は、行列が出来ていることも多いけど。今日は、店が物凄くたくさんあるので、人が分散して、あまり混んでいない。すぐ買えるのは、とてもラッキーだ。
「どれも、おいしいから、私は、全種類、一個ずつ食べる。一つだけ選ぶなら『チリドッグ』が、おすすめ」
「私も――全部、食べます」
彼女からは、予想通りの答が返って来た。
「じゃあ、全種類、二個ずつで」
「はいよ。相変わらず、いい食べっぷりだね、お嬢ちゃん」
よく行くので、ここの店主とは、顔見知りだ。
彼は、手際よく、流れるように作って行く。全く無駄のない動きで、作るのが滅茶苦茶、速い。流石は、四十年以上、毎日、作ってるだけあって、見事な職人技だ。
袋を受け取ると、私たちは、近くにあったテーブルに行き、でき立てのホットドッグに、かぶりつく。ふわふわのパンに、シャキッとしたソーセージが、たまらなくおいしい。焼き加減と味付けも、絶妙だ。
『クラシック』『サルサ』『マヨ』『チーズ』『シーフード』『ミート』『チリ』の七種類。どれも、滅茶苦茶、おいしい。でも、やっぱり、チリドッグが、一番すきだ。
私は、あっという間に、全種類を平らげた。ちょっと遅れて、クリスも、全てを食べ終える。
「じゃあ、次いこうか」
私が声を掛けると、彼女は、クイッと、私の袖を引っ張った。
「ん……どうした?」
「――あれ」
彼女が指さした先には、ポスターが貼ってある。
『グルメ・フェスタ・チャレンジ
ハンバーガー大食い選手権』
主催は、有名なハンバーガー・チェーンの『エクセレント・バーガー』だ。あそこのハンバーガーは、私も超大好き。
「おぉー、食べ放題! 出たいの?」
「その……クッション――欲しいです」
よく見ると、優勝賞品は、商品券とハンバーガー型のクッションらしい。しかも、そのクッションは、特大サイズだ。非売品なので、ここでしか手に入らない。
「分かった。任せて」
私が答えると、クリスは、とても嬉しそうな表情をする。
そんなわけで、私たちは、引き続き買い食いをしながら、食べ放題のイベント会場に向かうのだった……。
******
時間は、十二時ちょっと前。私たちは、大きな広場に来ていた。ここで、十二時から『ハンバーガー大食い選手権』が行われる。参加者は、三十二名。中には、有名なフード・ファイターも、何人かいる。
私は、長いテーブルの前に立ち、スタンバイしていた。目の前には、大きなお皿が置かれ、その上には、ハンバーガーの包みが、山積みになっていた。一皿で十個。しかも、ビッグサイズで、通常の物よりも、一回り大きい。
観客も、物凄くたくさん集まっており、中には『大食い妖精』とか『翠玉の妖精』の名で、私を応援している人たちもいる。上位階級になってからは、私を知っている人が、かなり増えた。
周りを見ると、緊張している参加者たちも、結構いるようだ。でも、私は、早く食べたくて、ワクワクしていた。午前中は、出店で食べまくって、腹ごなしも完璧。いつでも行ける、臨戦態勢になっている。
しばらく待って、十二時になると、開始のブザーが鳴り響いた。私は、待ってましたとばかりに、包みを開けると、勢いよく、ハンバーガーにかぶりついた。
私は、ハンバーガーが、超大好物。なんでも好きだけど、一番は、ハンバーガー。理由は、よく分かんないけど。食べると、とても幸せな気分になるのだ。
ハッキリ言って、ハンバーガーなら、無限に食べられる。でも、普段は自重して、ほどほどの数で、我慢していた。だから、いくつでも食べていいなんて、最高にハッピーだ。
「さぁ、全員、一斉に食べ始めました! 皆、物凄い勢いで、食べ進めます。流石は、食欲自慢の選手たちです」
スタート直後から、司会者が解説を始めた。それと同時に、観客たちからは、大歓声が上がる。
「大食いぞろいですが、中でも注目の選手は四名。数々の大食い大会を、戦い抜いて来た、歴戦の猛者たちです」
「まずは『アイアン・ストマック』の、ダイアン選手。続いて『ブラックホール・イーター』の、アンガス選手。あと『暴食魔人』の、ケイシー選手。いずれも、様々な大会での、優勝実績を持った、ベテランの選手です』
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私の名前が紹介されると、ひときわ大きな歓声があがった。
「さあ、早くも上位選手たちは、一皿目を、食べ終わろうとしています。現在トップは、ダイアン選手。僅差で、アンガス選手とケイシー選手が続いています。フィニーツァ選手は、やや遅れていますが、彼女は、後半で追い込むタイプです」
私は、別に、後半追い込んだりとか、ペース配分は、全く考えていない。最初のうちは、じっくりと、味わって食べたいだけだ。それで、ある程度、味わったら、徐々にスピードアップしていく。
やっぱり『エクセレント・バーガー』は、滅茶苦茶おいしい。この店のハンバーガーは、他の店に比べて、味付けが物凄く濃厚。特に、トマトソースの味が、絶品だ。
『味が濃すぎる』『こってりし過ぎ』という人もいるけど。私は、味が濃いのとか、こってりしてるのが、超大好き。いくらでも、食べられる。
一皿目は、じっくり味わって食べて、二皿目に突入した。マイペースで食べ進めるけど、今日は、好きなだけ食べられる。なので、できるだけいっぱい、食べて行こう。
「速い速い! 開始から二十分を待たずに、上位選手たちは、二皿目を完食! 流石は、歴戦のプロ選手たち。フィニーツァ選手も、三個差で、しっかり、ついて来ています」
場内からは、大きな歓声が上がった。『翠玉の妖精、頑張ってー!』という声も、結構、聞こえて来る。でも、私は、頑張らない。食事とは、頑張ってするものではなく、楽しんでするものだからだ。
ただ、周りの人たちは、必死になって食べている。あんな食べ方で、おいしさが、分かるんだろうか? 何かもったいない。私は、あくまでも、おいしく楽しく食べるだけだ。私は、いつもと同じペースで、黙々と食べ続ける。
「ただいま、時間は、三十分を経過しました。上位選手たちは、四皿目と格闘中。現在、三十三個で、ダイアン選手が一歩リード。次いで、アンガス選手とケイシー選手が、三十二個」
「注目のフィニーツァ選手は、現在、三十個目。おっと、フィ二―ツァ選手、たった今、三皿目を完食! ついに、四皿目に突入して、上位三名に、くらいついて行きます!」
再び、周囲から、大歓声があがった。でも、私は、気にせず、黙々と食べ続ける。滅茶苦茶、幸せ。できれば、永遠に食べ続けたい。でも、残り時間は、あと三十分。まだ、お腹は、全然、余裕。
私は、勝敗には、全くこだわらない。おいしく食べられれば、それで満足。でも、今回は、クリスのために、バーガー・クッションを、もらわなければならない。だから、ほんのちょっとだけ、頑張る。
先ほどからクリスは、ちょっと、心配そうな表情で、こちらを見つめていた。相変わらず、心配症だ。
「さあ、四十分が経過。上位陣も、ちょっと、ペースが落ちて来たか? 通常よりも大きいサイズのうえに、こってりしたソースが、胃に直撃します。果たして、どこまで、記録を伸ばせるのか?」
「現在トップは、ダイアン選手の、四十二個。アンガス選手が、四十個。ケーシー選手が三十九個。皆、苦しそうな表情になってきました。今、アンガス選手が、立ち上がった。胃から下に落とす作戦か?」
私は、ひたすら食べ続ける。今のところ、腹三分ぐらい。まだ、全然、物足りない感じだ。ただ、時間が、残り少しだし。そろそろ、本気、出そうかな。私は、ちょっぴり、ペースアップする。
「ここで、フィニーツァ選手、四皿目を完食! ついに、四十一個目に突入。徐々に、トップとの差が詰まって来たぞ! その様子を見たダイアン選手が、再び食べ始めた。さあ、勝利の栄冠は誰の手に!」
私の食べるペースが上がるのと同時に、観客たちの応援も、どんどん、ヒートアップしていく。
「ダイアン選手、水で一気に流し込んで、四十五目を完食! だが、少し遅れて、フィニーツァ選手も、四十五個目を完食。ついに並んだー!! これは、勝負の行方が、分からなくなって来たぞー!」
私は、どんどん口を動かし、胃袋に収めていく。私にとって、ハンバーガーは飲み物だ。おいしいハンバーガーは、本当に、するすると飲み込める。だから、私は、水は飲まない。
他の選手たちは、いっぱい水を飲んでるけど。私は、一度も、水を飲んでいなかった。だって、味が薄くなって、もったいないから。
「さぁ、両者、激しいデッドヒート! ダイアン選手、水を飲んで、必死に押し込んでいる。ちょっと苦しいか? おおっと、ここで、フィニーツァ選手、四十八個目に突入! ついに、ダイアン選手を追い抜いて、トップに立ったー!!」
場内から、盛大な歓声が沸き上がった。私は、さらに、スピードアップして、どんどん吸い込むように食べていく。普段は、こんなに食べられないから、超幸せ。だから、一個でも多く、食べためておかないと。
「いよいよ、残り時間は、あと三分。途中までトップを走っていた、三人の選手は、すでに、ペースダウン。フィニーツァ選手だけが、ペースが変わらず、完全に、独走状態だっ!! さぁ、どこまで、記録が伸ばせるのか?」
残りが、十秒になったところで、カウントダウンが始まる。終了のブザーが鳴る直前で、最後の一個を飲み込んだ。終了のブザーと共に、周囲から、大きな拍手と大歓声が巻き起こった。
ふぅー、超おいしかったー。でも、まだまだ、行ける。余ってるの、もらえないかな……?
******
競技が終わると、運営スタッフたちで、素早くセットが片づけられる。表彰台が置かれ、すぐに、結果発表が行われた。
『それでは、結果発表と、表彰を行いたいと思います。第三位、四十七個、アンガス選手。第二位、五十二個、ダイアン選手』
発表が行われるたびに、拍手が巻き起こる。
『さて、それでは、いよいよ一位の発表です。栄光の第一位は、六十五個、フィニーツァ選手!! 後半のラストスパートで、ぶっちぎりの優勝です!!』
周囲から、ひときわ大きな拍手と『翠玉の妖精』コールが始まった。
ふぅー、七十個は、行けると思ったんだけど。ちょっと、前半で味わいすぎたかも。でも、いっか。エクセレント・バーガーの商品券、一万ベル分と、特大バーガー・クッションもらったし。
クリスに、賞品のクッションを渡すと、滅茶苦茶、幸せそうな表情をしていた。ついでに、大会運営の人に『余ってるハンバーガーもらえない?』と訊いたら、袋いっぱいに詰めたバーガーを、ただで分けてくれた。なので、私も、超大満足。
「しょっぱいの食べたから、甘いの欲しくなった。特大パフェでも、食べに行かない?」
「うん――食べたいです。でも……大丈夫?」
クリスは、クッションを大事そうに抱きしめながら、少し心配そうな表情で、訊ねて来る。
「全然、よゆう。大食い大会、もう一つぐらい、出られそう」
私が答えると、彼女は、キラキラした目で見つめて来た。私は、そっと彼女の頭をなでる。
やっぱ『グルメ・フェスタ』は最高だ。ただ、おいしく食べてるだけなのに、みんな、幸せそうな表情になってくれる。このイベント、毎月、やってもいいと思う。そしたら、私も、みんなも、もっと、いっぱい幸せになれるのに。
さて、前半戦は終了したし。後半戦も、もっとたくさん、おいしいもの食べよう……。
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次回――
『伝統を打ち破らないと明るい未来は訪れない』
過去は生きる力。未来は生きるためのエネルギー
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彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?
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