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第8部 分かたれる道
3-4僕の一番の願いは彼女が笑顔になることだけだ
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時間は、十九時過ぎ。僕は、エア・カートに乗って〈東地区〉の上空を飛んでいた。後部座席には、大量の袋や箱、ビンが置いてある。つい先ほどまで〈南地区〉の〈シルフィード・モール〉で、買い物をしていたからだ。
待ち合わせは、十八時だったけど。買い物をしていたら、すっかり、遅くなってしまった。最初は、軽く済ますつもりだったけど、つい熱中してしまったのだ。
僕は、あまり、選ぶのに時間を掛けない。気のおもむくままに、どんどん手を伸ばして行く。だから、つい衝動買いで、余計な物まで、買っちゃうんだよね。でも、ストレス解消には、最高だ。
結局、目に付いた、美味しそうなものを、買えるだけ買い込んで来た。どう見ても、一日では、食べ切れない量だ。でも、今日は、特別な日だから、いいよね。きっと、リリーも、許してくれるはずだ。
しばらく飛んでいくと、見慣れた家の屋根が見えてきた。ゆっくりと、敷地の中に降りていく。僕は、エア・カートを降りると、後部座席の荷物を、必死になって、全部、引っ張り出す。
両腕に、袋をいくつも引っ掛け、腕にも、大きな箱を抱え込む。流石に今日は、買い過ぎたかもしれない。奮発して、高価な物も、たくさん買ったので、かなりの出費だった。
しかし、リリーが喜んでくれるなら、安いものだ。彼女が、笑ってくれるなら、僕は、何だってやるつもりだから。
ただ、今日は、果たして、笑ってくれるだろうか? あんなことが、あったばかりだし。リリーは、物凄く繊細だからなぁ。
僕は、人を笑わせたり、楽しませるのが、大好きだ。アリーシャさんが、そういう人だったから。いつも一緒にいて、自然に、身についたのかもしれない。そう考えると、アリーシャさんは、僕の先生だよね。
子供のころから、人を楽しませるのは得意で、自信があった。でも、唯一、リリーの時だけは、ちょっと、緊張するんだよね。おそらく、僕が知っている中で、一番、笑わせるのが、難しい相手だ。
愛想笑いが多くて、心から笑うことは、滅多にないし。何といっても、真面目すぎる。あの楽天的で、大雑把なアリーシャさんから、何で、リリーみたいな子が生まれたのか、いまだに謎だ。まぁ、真面目な子は好きだから、いいんだけどね。
僕は、扉の前に立つと、呼び出しパネルにタッチした。すると、すぐに、リリーの声が聞こえて来る。
「はい」
「ゴメン、遅くなって。手がふさがってるから、扉開けてくれる?」
ほどなくして、扉が開き、リリーが顔を出す。僕を見た瞬間、驚きの表情に変わった。
「えっ?! どうしたのそれ……? 全部、買ってきたの?」
「いやー、つい熱中しちゃってね。でも、リリーが大好きなの、一杯あるよ」
「それは、ありがたいけれど。いくらなんでも、買いすぎじゃない?」
「まぁ、いいじゃん。特別な日だし。三人分なら、ちょうどいい量でしょ?」
「三人分――? えぇ、そうね……」
僕は、リリーに少し荷物を持ってもらい、家の中に入って行く。
やっぱり、ここに来ると、ホッとするなぁ。子供のころから、来慣れてるから、実家のようなものだ。
リビングに向かうと、すでに、テーブルの上には、たくさんの料理が並んでいた。全てリリーの手作りで、とても美味しそうだ。
僕は、キッチンに行くと、持っていた荷物を、全て置いた。袋から取り出しながら、リリーに声を掛ける。
「リリーの手料理が多すぎて、全部は、テーブルにのらないかなぁ」
「だって、ツバサちゃん、たくさん食べるでしょ? それに、そんなに買ってくるとは、思わなかったから」
「でも、アリーシャさんがいたら、余裕で完食するよね」
「ウフフッ、そうね」
リリーは、楽しそうに笑顔を浮かべた。
どうやら、機嫌はいいようだ。その様子を見て、僕は、ホッと一息ついた。
テーブルに、並べられるだけ並べると、二人で席について、乾杯する。グラスに入っているのは、リリーが用意してくれた、赤ワインだ。
香りを楽しんだあと、一口、含んでみる。芳醇な香りが、口いっぱいに広がり、スーッと、喉を通り抜けて行く。流石に、ワインにうるさい、リリーが選んだだけあって、物凄く美味しい。
「リリー、今日は、お疲れ様。とても、素晴らしいスピーチだったよ。天国の人たちや、来ていた全ての人たちの心に、届いたんじゃないかな」
「そう? 緊張していて、あまり、覚えていないのだけど。本当に、上手くできていたかしら?」
「涙を流しながら、聴いている人もいたよ。リリーの言葉は、とても響くからね」
「別に、そんなに力強い言葉では、なかったと思うけど――」
リリーは、とても穏やかで、話し方も柔らかだ。だから、力強さはない。でも、その優しく静かな声は、心にじんわりと響く。
「言葉は、力だけが大事じゃないよ。優しさや想いのある言葉は、心に染み込んでくるから。今日のリリーの言葉には、強い想いがあったからね。だから、みんなの心に、響いたんだよ」
「聴いた人たちの印象に、深く残って、勇気や希望の種になったと思う。僕も『前に進まなきゃ』って、強く思ったし。他の人たちも、同じ気持ちだったはずだよ」
僕は、今でも、無性に寂しくなることがある。アリーシャさんは、僕の大好きな人だったから。一緒にいた時間も長く、もう一人の、母親みたいな感じだ。
だから、彼女がいなくなった時のショックは、言葉では、いい表せないほどの大きさだった。でも、一番、悲しいのは、リリーなのを、よく理解しているから。僕は、彼女の前では、努めて、明るく振る舞っていた。
それに、悲しんでいても、何も変わらない。なので、悲しみは、夢や希望に、変えて行かなければならないのだ。
「少しでも、皆の力になれたのなら、いいのだけれど……」
リリーは、手にしたグラスを、静かに見つめながら答える。
「でも、驚いたよ。まさか、リリーが、スピーチを引き受けるとは。今まで、ずっと断ってたのに」
毎回、オファーは、来ていたようだ。でも、リリーは、心の整理が、ついていなかったのだと思う。慰霊祭に出るだけでも、リリーにとっては、死ぬほど辛いはずだ。嫌でも、悲しい過去と心の痛みを、思い出してしまうのだから――。
「そうね……。でも、もうそろそろ、前に進まないと。風歌ちゃんも、昇進して、どんどん成長しているし。それに、彼女の友達も、壇上に立つことを決意したから」
「あの、ユーメリアという子だね? アリーシャさんが、命懸けで助けた――」
あの子が、リリーの隣に立っている姿を見て、とても、複雑な気分になった。アリーシャさんが、命を落とす、原因になった子だから。リリーは、平気だったのだろうか……?
「えぇ。少し、お話ししたけど、とても、素直でいい子よ。開口一番で『申し訳ありませんでした』って、謝られて。物凄く、困ってしまったわ。謝ることなんて、何もしていないのに――」
「そう……。なら、いいんだ。アリーシャさんの件で、特に、あの子に、わだかまりは無いんだね?」
「当然よ。彼女は、ただの被害者だもの。それに、あの子を救う決断をしたのは、母の意思よ。私は、その意思を尊重するわ」
リリーの言葉に、迷いはなかった。ちゃんと、彼女を、受け入れることが出来たのだろう。
「――そうだよね。僕も、アリーシャさんの決断を、支持するよ。そのお蔭で、一人の貴重な命が、救われたのだから」
「でも、やっぱり、アリーシャさんは、かっこいいよなぁ。同じ状況になって、墜落して来るゴンドラに、迷わず、突っ込んで行ける人なんて、他にいないと思うよ」
『グランド・エンプレス』とは、神聖な存在で、聖女のようなものだ。でも、アリーシャさんは、聖女というより、ヒーローに近い感じだった。
楽天的な癖に、曲がったことは大嫌いで、正義感が強かったし。人一倍、明るくて、太陽のような性格で、とても眩しかった。僕も、あの人のようになりたいと、ずっと思っていたのだ。
僕もリリーも、二人そろって、アリーシャさんに憧れ、背中を追い掛けていた。でも、目指す方向性が、全く別だった。
リリーは、とても、清廉なシルフィードを目指した。きっと、アリーシャさんのことを、神格化して、見ていたのだと思う。でも、アリーシャさんは、真っ白で、純粋な心を持っていた。
僕は、明るく行動的なシルフィードを目指した。明るさ、行動力、正義感など、アリーシャさんの、人間味のある部分に、僕は憧れていたからだ。
結局、白き翼の『白』の部分はリリーが。『翼』の部分は、僕が受け継いだ訳だ。その両方を持っていたアリーシャさんは、やっぱり、凄い人だったんだよね。
「そうね……。同じ状況だったら、私には、絶対に無理だわ。きっと、足がすくんで、一歩も動けないと思うもの。でも、ツバサちゃんなら、助けに行くのでしょ?」
「うーん、そうだね。たぶん、助けようとは、すると思うよ。でも、一瞬、迷って、その間に事故が起こってしまうかも。その一瞬の迷いが、あるか無いかが、僕とアリーシャさんの、決定的な違いなんだよね」
本当に、即断即決。何をやるにも、迷わない。あんなに思い切りのいい人は、今までに、見たことがない。ただ一人を、除いては――。
「でも、それが、普通だと思うわ。そもそも、私には、何事にも、命を懸けるほどの勇気は、持っていないから……」
「それは、僕も同じだよ。自分の身が安全なら、何でも、してあげるけどね。命懸けとなると、そうそう出来はしないよ。ただ、命懸けでも、平気で動いちゃいそうな子が、すぐ傍にいるじゃない?」
「えっ――?」
リリーは、一瞬、驚いた表情を浮かべたあと、考え込む。しばらくして、表情を緩めると、静かに答えた。
「……風歌ちゃんね」
「きっと、彼女が、同じ状況にいたら、迷わず、突っ込んで行くだろうね。自分の命も、一切、顧みずに」
明るく前向きで、ずば抜けた、行動力と勇気。真っ白で純粋で、真っ直ぐな性格。初めて会った時から、彼女が気になっていたのは、きっと、アリーシャさんに、似ていたからだと思う。
「そうね――。どんな、危ないことでも、平気でやっちゃうし。あの子の成長を妨げてしまうから、下手に止められないし。でも、そのせいで、気の小さい私は、いつも、ハラハラしっぱなしだけど」
「本音を言えば、私は『ノア・グランプリ』の出場だって、反対だったの。結果的には優勝して、昇進に繋がったけど。できれば、危険なことは、一切やって欲しくないわ。ただ、毎日、素敵な笑顔を見せてくれれば、それだけでいいの」
リリーは、心配そうな表情で答えた。
「でも、彼女の笑顔は、その無茶な行動が、あるからじゃない?」
「そうなのよね……。本当に、困ったものだわ。母と同じで、無鉄砲だから」
二人で、くすくすと笑う。
「ただ、僕は思うんだ。風歌ちゃんが、リリーの所に来たのは、運命だったんじゃないかって。だって、彼女が家出したのって『三月二十一日』だった訳だし。まるで、アリーシャさんが、導いたみたいじゃん?」
以前、風歌ちゃんに、アリーシャさんのことを話した時に、そう言っていた。僕も、それを聴いた時は、滅茶苦茶、驚いたのを覚えている。よりによって、アリーシャさんの命日に、家を飛び出して来たのだから。
「本当に、そうかも知れないわね。私が、風歌ちゃんと出会った日も。普段は、全く行かない河原に、急に行きたくなって。彼女の後姿を見たら、なぜか、妙に気になったのよね」
「普段だったら、通り過ぎていたと思うけど。気付いたら、自然に、声を掛けていたの。まだ、ふさぎ込んでいて、他人とは、あまり、関わりたくなかったのに――」
リリーは、ワイングラスを片手に、思い出しながら、静かに語る。
確かに、リリーの性格を考えれば、そうだろう。彼女は、子供のころから、かなりの人見知りだし。必要以上に、他人に関わろうとはしなかった。見ず知らずの人間に、自分から声を掛けるようなことは、絶対にしない。
「でもね、一緒にいて、不思議と心地がよかったの。家に招いて、一緒に食事をしたら、人見知りの私が、すぐに打ち解けて。結局、一晩、一緒にいただけで、うちの会社にも、誘ってしまったし」
「彼女が入社後は、毎日が、とても楽しくて。一緒にいるのが、当たり前になってしまったわ。不思議な縁……というよりも、ここまでいくと、完全に運命よね。過保護なのは、分かっているけど。もう二度と、大事な人を、失いたくないから――」
確かに、リリーの、風歌ちゃんに対する感情は、先輩後輩を域を越えている。まるで、娘を溺愛する、母親みたいな感じだった。でも、それほどまでに、大切な存在なのだ。リリーの心の大きな穴を、風歌ちゃんが、塞いでくれたのだから。
「でも、風歌ちゃんも、上位階級になったんだし。もう、束縛はできないんじゃない? ただでさえ、行動力があるんだから。自分の道を、行くんじゃないかな?」
「えぇ、それは、分かっているわ。だから、私も、自分の道を行かないと。今日のスピーチも、その決意表明のようなものなの。母とも、風歌ちゃんとも、別の道を進んで行くって……」
「そっか。ようやく、本当の意味で、前に進めるんだね」
僕は、グラスを差し出すと、再び、リリーと乾杯する。
リリーは、子供のころから、誰かの後ろに、くっついている性格だった。よく言えば、素直で謙虚。悪く言えば、全く主体性のない性格で、常に、誰かに依存していた。
でも、その彼女が、ようやく前を向いて、自分の足で、道を切り開こうとしている。誰かに憧れたって、同じ道は歩けない。結局、最後は、自分で道を見つけるしかないのだ。
それでも、リリーが、ガラスのように繊細で、傷つきやすい心を持っているのは、変わらない。これからも、たくさん傷つくことがあるだろうし。いろいろと、背負い込んでしまうだろう。
だから、例え彼女が、どんな道に進もうとも。どんなに、面倒な状況になろうとも。これからも、僕がリリーのことを、全力で支えて行こうと思う。
アリーシャさんとの、約束もあるけど。結局、僕は、こんな面倒な性格のリリーが、どうしようもなく、大好きなのだから……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『変わるためには過去を捨てなきゃダメなんだろうか?』
古い自分を脱ぎ捨てるのは、きっと今!
待ち合わせは、十八時だったけど。買い物をしていたら、すっかり、遅くなってしまった。最初は、軽く済ますつもりだったけど、つい熱中してしまったのだ。
僕は、あまり、選ぶのに時間を掛けない。気のおもむくままに、どんどん手を伸ばして行く。だから、つい衝動買いで、余計な物まで、買っちゃうんだよね。でも、ストレス解消には、最高だ。
結局、目に付いた、美味しそうなものを、買えるだけ買い込んで来た。どう見ても、一日では、食べ切れない量だ。でも、今日は、特別な日だから、いいよね。きっと、リリーも、許してくれるはずだ。
しばらく飛んでいくと、見慣れた家の屋根が見えてきた。ゆっくりと、敷地の中に降りていく。僕は、エア・カートを降りると、後部座席の荷物を、必死になって、全部、引っ張り出す。
両腕に、袋をいくつも引っ掛け、腕にも、大きな箱を抱え込む。流石に今日は、買い過ぎたかもしれない。奮発して、高価な物も、たくさん買ったので、かなりの出費だった。
しかし、リリーが喜んでくれるなら、安いものだ。彼女が、笑ってくれるなら、僕は、何だってやるつもりだから。
ただ、今日は、果たして、笑ってくれるだろうか? あんなことが、あったばかりだし。リリーは、物凄く繊細だからなぁ。
僕は、人を笑わせたり、楽しませるのが、大好きだ。アリーシャさんが、そういう人だったから。いつも一緒にいて、自然に、身についたのかもしれない。そう考えると、アリーシャさんは、僕の先生だよね。
子供のころから、人を楽しませるのは得意で、自信があった。でも、唯一、リリーの時だけは、ちょっと、緊張するんだよね。おそらく、僕が知っている中で、一番、笑わせるのが、難しい相手だ。
愛想笑いが多くて、心から笑うことは、滅多にないし。何といっても、真面目すぎる。あの楽天的で、大雑把なアリーシャさんから、何で、リリーみたいな子が生まれたのか、いまだに謎だ。まぁ、真面目な子は好きだから、いいんだけどね。
僕は、扉の前に立つと、呼び出しパネルにタッチした。すると、すぐに、リリーの声が聞こえて来る。
「はい」
「ゴメン、遅くなって。手がふさがってるから、扉開けてくれる?」
ほどなくして、扉が開き、リリーが顔を出す。僕を見た瞬間、驚きの表情に変わった。
「えっ?! どうしたのそれ……? 全部、買ってきたの?」
「いやー、つい熱中しちゃってね。でも、リリーが大好きなの、一杯あるよ」
「それは、ありがたいけれど。いくらなんでも、買いすぎじゃない?」
「まぁ、いいじゃん。特別な日だし。三人分なら、ちょうどいい量でしょ?」
「三人分――? えぇ、そうね……」
僕は、リリーに少し荷物を持ってもらい、家の中に入って行く。
やっぱり、ここに来ると、ホッとするなぁ。子供のころから、来慣れてるから、実家のようなものだ。
リビングに向かうと、すでに、テーブルの上には、たくさんの料理が並んでいた。全てリリーの手作りで、とても美味しそうだ。
僕は、キッチンに行くと、持っていた荷物を、全て置いた。袋から取り出しながら、リリーに声を掛ける。
「リリーの手料理が多すぎて、全部は、テーブルにのらないかなぁ」
「だって、ツバサちゃん、たくさん食べるでしょ? それに、そんなに買ってくるとは、思わなかったから」
「でも、アリーシャさんがいたら、余裕で完食するよね」
「ウフフッ、そうね」
リリーは、楽しそうに笑顔を浮かべた。
どうやら、機嫌はいいようだ。その様子を見て、僕は、ホッと一息ついた。
テーブルに、並べられるだけ並べると、二人で席について、乾杯する。グラスに入っているのは、リリーが用意してくれた、赤ワインだ。
香りを楽しんだあと、一口、含んでみる。芳醇な香りが、口いっぱいに広がり、スーッと、喉を通り抜けて行く。流石に、ワインにうるさい、リリーが選んだだけあって、物凄く美味しい。
「リリー、今日は、お疲れ様。とても、素晴らしいスピーチだったよ。天国の人たちや、来ていた全ての人たちの心に、届いたんじゃないかな」
「そう? 緊張していて、あまり、覚えていないのだけど。本当に、上手くできていたかしら?」
「涙を流しながら、聴いている人もいたよ。リリーの言葉は、とても響くからね」
「別に、そんなに力強い言葉では、なかったと思うけど――」
リリーは、とても穏やかで、話し方も柔らかだ。だから、力強さはない。でも、その優しく静かな声は、心にじんわりと響く。
「言葉は、力だけが大事じゃないよ。優しさや想いのある言葉は、心に染み込んでくるから。今日のリリーの言葉には、強い想いがあったからね。だから、みんなの心に、響いたんだよ」
「聴いた人たちの印象に、深く残って、勇気や希望の種になったと思う。僕も『前に進まなきゃ』って、強く思ったし。他の人たちも、同じ気持ちだったはずだよ」
僕は、今でも、無性に寂しくなることがある。アリーシャさんは、僕の大好きな人だったから。一緒にいた時間も長く、もう一人の、母親みたいな感じだ。
だから、彼女がいなくなった時のショックは、言葉では、いい表せないほどの大きさだった。でも、一番、悲しいのは、リリーなのを、よく理解しているから。僕は、彼女の前では、努めて、明るく振る舞っていた。
それに、悲しんでいても、何も変わらない。なので、悲しみは、夢や希望に、変えて行かなければならないのだ。
「少しでも、皆の力になれたのなら、いいのだけれど……」
リリーは、手にしたグラスを、静かに見つめながら答える。
「でも、驚いたよ。まさか、リリーが、スピーチを引き受けるとは。今まで、ずっと断ってたのに」
毎回、オファーは、来ていたようだ。でも、リリーは、心の整理が、ついていなかったのだと思う。慰霊祭に出るだけでも、リリーにとっては、死ぬほど辛いはずだ。嫌でも、悲しい過去と心の痛みを、思い出してしまうのだから――。
「そうね……。でも、もうそろそろ、前に進まないと。風歌ちゃんも、昇進して、どんどん成長しているし。それに、彼女の友達も、壇上に立つことを決意したから」
「あの、ユーメリアという子だね? アリーシャさんが、命懸けで助けた――」
あの子が、リリーの隣に立っている姿を見て、とても、複雑な気分になった。アリーシャさんが、命を落とす、原因になった子だから。リリーは、平気だったのだろうか……?
「えぇ。少し、お話ししたけど、とても、素直でいい子よ。開口一番で『申し訳ありませんでした』って、謝られて。物凄く、困ってしまったわ。謝ることなんて、何もしていないのに――」
「そう……。なら、いいんだ。アリーシャさんの件で、特に、あの子に、わだかまりは無いんだね?」
「当然よ。彼女は、ただの被害者だもの。それに、あの子を救う決断をしたのは、母の意思よ。私は、その意思を尊重するわ」
リリーの言葉に、迷いはなかった。ちゃんと、彼女を、受け入れることが出来たのだろう。
「――そうだよね。僕も、アリーシャさんの決断を、支持するよ。そのお蔭で、一人の貴重な命が、救われたのだから」
「でも、やっぱり、アリーシャさんは、かっこいいよなぁ。同じ状況になって、墜落して来るゴンドラに、迷わず、突っ込んで行ける人なんて、他にいないと思うよ」
『グランド・エンプレス』とは、神聖な存在で、聖女のようなものだ。でも、アリーシャさんは、聖女というより、ヒーローに近い感じだった。
楽天的な癖に、曲がったことは大嫌いで、正義感が強かったし。人一倍、明るくて、太陽のような性格で、とても眩しかった。僕も、あの人のようになりたいと、ずっと思っていたのだ。
僕もリリーも、二人そろって、アリーシャさんに憧れ、背中を追い掛けていた。でも、目指す方向性が、全く別だった。
リリーは、とても、清廉なシルフィードを目指した。きっと、アリーシャさんのことを、神格化して、見ていたのだと思う。でも、アリーシャさんは、真っ白で、純粋な心を持っていた。
僕は、明るく行動的なシルフィードを目指した。明るさ、行動力、正義感など、アリーシャさんの、人間味のある部分に、僕は憧れていたからだ。
結局、白き翼の『白』の部分はリリーが。『翼』の部分は、僕が受け継いだ訳だ。その両方を持っていたアリーシャさんは、やっぱり、凄い人だったんだよね。
「そうね……。同じ状況だったら、私には、絶対に無理だわ。きっと、足がすくんで、一歩も動けないと思うもの。でも、ツバサちゃんなら、助けに行くのでしょ?」
「うーん、そうだね。たぶん、助けようとは、すると思うよ。でも、一瞬、迷って、その間に事故が起こってしまうかも。その一瞬の迷いが、あるか無いかが、僕とアリーシャさんの、決定的な違いなんだよね」
本当に、即断即決。何をやるにも、迷わない。あんなに思い切りのいい人は、今までに、見たことがない。ただ一人を、除いては――。
「でも、それが、普通だと思うわ。そもそも、私には、何事にも、命を懸けるほどの勇気は、持っていないから……」
「それは、僕も同じだよ。自分の身が安全なら、何でも、してあげるけどね。命懸けとなると、そうそう出来はしないよ。ただ、命懸けでも、平気で動いちゃいそうな子が、すぐ傍にいるじゃない?」
「えっ――?」
リリーは、一瞬、驚いた表情を浮かべたあと、考え込む。しばらくして、表情を緩めると、静かに答えた。
「……風歌ちゃんね」
「きっと、彼女が、同じ状況にいたら、迷わず、突っ込んで行くだろうね。自分の命も、一切、顧みずに」
明るく前向きで、ずば抜けた、行動力と勇気。真っ白で純粋で、真っ直ぐな性格。初めて会った時から、彼女が気になっていたのは、きっと、アリーシャさんに、似ていたからだと思う。
「そうね――。どんな、危ないことでも、平気でやっちゃうし。あの子の成長を妨げてしまうから、下手に止められないし。でも、そのせいで、気の小さい私は、いつも、ハラハラしっぱなしだけど」
「本音を言えば、私は『ノア・グランプリ』の出場だって、反対だったの。結果的には優勝して、昇進に繋がったけど。できれば、危険なことは、一切やって欲しくないわ。ただ、毎日、素敵な笑顔を見せてくれれば、それだけでいいの」
リリーは、心配そうな表情で答えた。
「でも、彼女の笑顔は、その無茶な行動が、あるからじゃない?」
「そうなのよね……。本当に、困ったものだわ。母と同じで、無鉄砲だから」
二人で、くすくすと笑う。
「ただ、僕は思うんだ。風歌ちゃんが、リリーの所に来たのは、運命だったんじゃないかって。だって、彼女が家出したのって『三月二十一日』だった訳だし。まるで、アリーシャさんが、導いたみたいじゃん?」
以前、風歌ちゃんに、アリーシャさんのことを話した時に、そう言っていた。僕も、それを聴いた時は、滅茶苦茶、驚いたのを覚えている。よりによって、アリーシャさんの命日に、家を飛び出して来たのだから。
「本当に、そうかも知れないわね。私が、風歌ちゃんと出会った日も。普段は、全く行かない河原に、急に行きたくなって。彼女の後姿を見たら、なぜか、妙に気になったのよね」
「普段だったら、通り過ぎていたと思うけど。気付いたら、自然に、声を掛けていたの。まだ、ふさぎ込んでいて、他人とは、あまり、関わりたくなかったのに――」
リリーは、ワイングラスを片手に、思い出しながら、静かに語る。
確かに、リリーの性格を考えれば、そうだろう。彼女は、子供のころから、かなりの人見知りだし。必要以上に、他人に関わろうとはしなかった。見ず知らずの人間に、自分から声を掛けるようなことは、絶対にしない。
「でもね、一緒にいて、不思議と心地がよかったの。家に招いて、一緒に食事をしたら、人見知りの私が、すぐに打ち解けて。結局、一晩、一緒にいただけで、うちの会社にも、誘ってしまったし」
「彼女が入社後は、毎日が、とても楽しくて。一緒にいるのが、当たり前になってしまったわ。不思議な縁……というよりも、ここまでいくと、完全に運命よね。過保護なのは、分かっているけど。もう二度と、大事な人を、失いたくないから――」
確かに、リリーの、風歌ちゃんに対する感情は、先輩後輩を域を越えている。まるで、娘を溺愛する、母親みたいな感じだった。でも、それほどまでに、大切な存在なのだ。リリーの心の大きな穴を、風歌ちゃんが、塞いでくれたのだから。
「でも、風歌ちゃんも、上位階級になったんだし。もう、束縛はできないんじゃない? ただでさえ、行動力があるんだから。自分の道を、行くんじゃないかな?」
「えぇ、それは、分かっているわ。だから、私も、自分の道を行かないと。今日のスピーチも、その決意表明のようなものなの。母とも、風歌ちゃんとも、別の道を進んで行くって……」
「そっか。ようやく、本当の意味で、前に進めるんだね」
僕は、グラスを差し出すと、再び、リリーと乾杯する。
リリーは、子供のころから、誰かの後ろに、くっついている性格だった。よく言えば、素直で謙虚。悪く言えば、全く主体性のない性格で、常に、誰かに依存していた。
でも、その彼女が、ようやく前を向いて、自分の足で、道を切り開こうとしている。誰かに憧れたって、同じ道は歩けない。結局、最後は、自分で道を見つけるしかないのだ。
それでも、リリーが、ガラスのように繊細で、傷つきやすい心を持っているのは、変わらない。これからも、たくさん傷つくことがあるだろうし。いろいろと、背負い込んでしまうだろう。
だから、例え彼女が、どんな道に進もうとも。どんなに、面倒な状況になろうとも。これからも、僕がリリーのことを、全力で支えて行こうと思う。
アリーシャさんとの、約束もあるけど。結局、僕は、こんな面倒な性格のリリーが、どうしようもなく、大好きなのだから……。
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次回――
『変わるためには過去を捨てなきゃダメなんだろうか?』
古い自分を脱ぎ捨てるのは、きっと今!
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最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
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帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
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※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
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それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
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加筆修正しました。
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