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第8部 分かたれる道
1-9超盛大な昇進パーティーで決意を新たにする
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夜、七時過ぎ。今日の営業を、全て終えたあと。私は、大型クルーザーの〈ホワイト・キャッスル〉の船内にいた。私にしては珍しく、高価なドレスを着て、ネックレスやイヤリングなども身につけ、妙にオシャレをしている。
これらは全て、ユメちゃんのお母さんが、用意してくれたものだ。着付けや、化粧などは、専属のメイドさんたちが、全てやってくれた。
ちなみに、今乗っている〈ホワイト・キャッスル〉は、超豪華なクルーザーだ。船内には、大きなシャンデリアがあったり、高そうなじゅうたんに、様々な装飾品。また、四百人も乗れる、物凄い大きさだった。
このクルーザーは、ユメちゃんのお父さんの所有物で、無料で貸し出してくれた。さらには、とても豪華なパーティーも、全て、ただで用意してくれたのだ。準備は、ユメちゃんの家の、執事さんやメイドさんが、総出でやってくれた。
私は、最初、その申し出を辞退した。気持ちは、とても嬉しいんだけど。あまりにも、豪華すぎたからだ。
リリーシャさんたち、三人の『シルフィード・クイーン』の、昇進祝いだって、会社でひっそりやったのに。私一人の、プリンセスの昇進祝いで、これは、流石にやり過ぎだと思う。
でも、頑固なユメちゃんは『ファン1号として、当然の義務』と言って、引いてくれず。ユメちゃんのご両親も『いつもお世話になっているので、ささやかなお礼です』なんて感じで、結局、押し切られてしまった。
ただ、私は、お世話するようなこと、何もしてないんだよね。むしろ、ユメちゃんには、常連客として、お世話になってるし。それに、全然、ささやかじゃないし。あまりにも盛大すぎて、申し訳なさすぎる……。
でも、やると決まってしまったからには、仕方がない。心から感謝して、楽しむことにしよう。それに『何人でも呼んでいい』と、言われたので、知っている人たち全てに、招待状を渡しに行った。
通常は、郵送で送るんだけど。せっかくなので、世間話とお礼のついでに、一人一人に、手渡しで回って行った。でも、行った先々で、みんな、大喜びしてくれた。中には、感動して涙を流してくれる人もいて、私も思わず、もらい泣きしてしまった。
そんなこんなで、船内のメインホールには、たくさんの人たちが集まっていた。また、ホールのテーブルには、高級レストラン並の、超豪華な料理が、大量に並べられている。
見習いのころなら、真っ先に飛びついて、モリモリ食べてたところだけど。流石に、今は、そうはいかない。上位階級としての立場があるし。今日は、大事なお披露目会だ。
とても賑やかで、楽しい雰囲気が漂っている中。私は、滅茶苦茶、緊張していた。自分の立場と重責を、改めて感じさせられる。
ホールでは、ユメちゃんの家で働いている、メイドさんや執事さん。あと、以前、お手伝いに行った〈アクアリウム〉のスタッフたちも、メイド姿で、せわしなく動き回っていた。
本当は、お客様として、招待したんだけど。店長のアディ―さんに、招待状を渡しに行ったら『そういうことなら、私に任せなさい』と、今回のパーティーを、仕切ってくれたのだ。
流石に、アディ―さんが仕切っているだけあって、実に手際がいい。しかも、飾りつけも料理も、物凄く本格的だった。事前に、全スタッフと、綿密な打ち合わせをし、かなり時間を掛けて、準備してくれたらしい。
なお、私が、招待状を渡しに行ったのは、顔見知りの人、全員だ。まず、最初に誘ったのは、シルフィードの知り合いたちだった。
リリーシャさん、ツバサさん、メイリオさん、ミラージュさん、カナリーゼさんたち、先輩方。もちろん、ノーラさんや、ナギサちゃんのお母さん、マリアさんたち、大先輩も。
ノーラさんたちは、大御所だけあって、渡す時は、超緊張したけど。三人とも、快く、招待を受けてくれた。
あとは、私の同期の、大切な友達たちだ。ナギサちゃん、フィニーちゃん、キラリスちゃん。アンジェリカちゃん、カレンティアちゃん、リスティーちゃん。あと、ナギサちゃんと、フィニーちゃんの、会社の同僚たちも、多数、参加している。
次に、回ったのが〈東地区商店街〉の人たちだ。見習い時代から、大変お世話になっているし、みんな顔見知りだ。なので、商店街の人たちに、片っ端から、招待状を配って行った。しかも、嬉しいことに、全員、参加してくれている。
招待状を渡しに行って、最も盛り上がったのが〈東地区商店街〉の人たちだった。みんな、滅茶苦茶、喜んでくれて、心から祝福してくれた。ここの人たちは、凄く優しい上に、家族のような存在だ。
加えて、私がよく通っている、お店の御主人や女将さん、ご縁のあった人たち。〈北地区〉にある〈レモンハウス〉〈宿り木〉〈マーカス・グリーンファーム〉など。〈南地区〉の喫茶店〈水晶亭〉にも行って来た。
あと〈東地区〉の孤児院の〈あおぞら学園〉の子供たちと、園長先生。子供たちは『学園にスカイ・プリンセスがやって来た!』と、物凄く興奮して、大喜び。全員、元気一杯に祝福してくれた。やっぱり、子供って、可愛くていいよね。
他にも、連絡先を知っている、お客様もご招待した。ちなみに、大陸にいる、写真家のエヴァンシェールさんに連絡したところ、一発返事でOK。しかも『パーティーの写真撮影なら任せて!』と、撮影係を引き受けてくれた。
最初は、数人で、小規模にやる予定だったんだけど。調子に乗って、声を掛けまくったら、三百人以上が集まる、超大型パーティーになってしまった。
アディ―さんたちや、ユメちゃんの家の、執事さんたちがいなければ、絶対に、回らなかったと思う。手伝ってくれた、スタッフの方たちには、本当に、感謝の気持ちでいっぱいだ。
賑やかに盛り上がっている、豪華な大ホールの中。私は、一人ずつ、あいさつに回って行く。どの人たちも、とても大事な存在で、今の私のがあるのも、みんなのお蔭と言える。なので、心を込めて、感謝の言葉を伝えていく。
真っ先に向かったのが、ユメちゃんの所だ。お父さんのジークハルトさんと、お母さんのエリザベートさんも、一緒に参加している。流石に、本物の上流階級だけあって、とても上品で洗練されていた。
今日は、珍しく、ユメちゃんも、綺麗なドレスで正装している。いつも、Tシャツに短パンとかだから、全然、別人のようだった。でも、本来は、生粋のお嬢様なんだよね。
「ジークハルト様、ごきげんよう。本日は、お忙しいところ、ご足労いただき、大変、光栄です。また、このような素敵な船をお貸しいただき、誠にありがとうございます。お蔭様で、とても素晴らしいパーティーを、開催できました」
私は、スカートの両端をつまむと、丁寧にあいさつをした。
ユメちゃんのお父さんは、アッシュフィールド財閥の現当主で、政財界では、知らない人がいないぐらいの、強い影響力を持っている。本来なら、一般人は、話すことができないほど、凄い人だ。
「これは、ご丁寧なご挨拶、痛み入ります。『天使の翼』の昇進祝いに参加できて、私こそ、光栄の極みです」
彼は、素敵な笑顔で答えてくれた。本当は、滅茶苦茶、偉い人なんだけど。ユメちゃんに似て、かなり気さくな人だ。
「天使の羽、ご機嫌よう。そのドレス、本当に、お似合いですね。まるで、本物の天使が、舞い降りて来たようですわ」
ユメちゃんのお母さんの、エリザベートさんは、とても優雅に、話し掛けてきた。
「今回は、衣装や、高価な装飾品まで、お貸しくださって、本当に、ありがとうございました」
私は、頭を下げて、心からお礼をする。
今着ているドレスは、もちろんのこと。身につけている宝飾品は、どれも、数百万ベルはする、超高価な物ばかり。私は、衣装も装飾品も、何も持っていなかったので、エリザベートさんの私物を、快く貸してくれたのだ。
「娘が、いつもお世話に、なっておりますから。これぐらいは、当然ですわ」
「えぇ、この程度。ユーメリアを救ってくれた、ご恩に比べれば、足りないぐらいです」
二人とも、笑顔で答える。
なんか、ユメちゃんのご両親には、会うたびに、感謝の言葉を掛けられていた。私は、友人として、当たり前の行動をしただけで。別に、大したことをしたとは、思っていない。なので、過度の感謝は、少々心苦しい気もする。
「もう、二人とも、堅苦しい話は、それぐらいにしてよ。風ちゃんは、私の親友なんだからね」
途中で、ユメちゃんが、割り込んできた。
「何度も言ったけど。改めて、昇進おめでとう! 私、超超超うれしいよ!! 私が、世界で一番、風ちゃんの昇進を、祝福してるからね!」
ユメちゃんは、私の両手を握ると、ブンブンと大きく振った。
「うん、ありがとう。私も、超超超うれしい!! 真っ先に、ユメちゃんに、祝福して欲しかったから。最高に、幸せだよ!」
ユメちゃんは、私がこの世界に来て、初めてできた友達。しかも、まだ、無名の新人時代から、私のファンだと言ってくれた、正真正銘の『ファン1号』だ。本当に、彼女には、数え切れないほど、心の支えになって貰って来た。
しばらく、ユメちゃんと、思い出話などで盛り上がる。でも、他も回らないとならないので、ちょっと残念そうなユメちゃんを尻目に、私は別の場所に移動した。
次に向かったのは、大御所シルフィードのところだ。一ヶ所だけ、空気の違う場所があり、すぐに、目的の人物を発見した。三人で、ワイングラスを片手に、談笑中だった。
『疾風の剣』のノーラさん。『白金の薔薇』のローゼリカさん。『聖なる光』のマリアさんだ。やはり、大先輩だけあって、風格が違う。気になって、視線を向ける人はいるが、話し掛ける人は、ほとんどいない。大物過ぎて、話し掛け辛いのだろう。
「ごきげんよう。本日は、お忙しいところ、ご足労、誠にありがとうございます」
私は、静かに近づいて行くと、丁寧にあいさつをする。
「お招き、ありがとうございます、天使の翼。これほど盛大な、昇進パーティーは、初めてです。準備が、大変だったのでは?」
ローゼリカさんが、静かに声を掛けてきた。
「それが、友人のご両親が、全て手配してくれまして。このクルーザーも、快く貸してくださいました」
「もしかして、ジークハルト氏と、知り合いなのですか?」
「はい。友人のお父様で、色々とご縁がありまして」
「なるほど。財界のトップと人脈があるとは、流石ですね。人脈は、強力な武器です。大事になさい」
ローゼリカさんは、小さく微笑む。
まぁ、偶然、ユメちゃんのお父さんが、超大物だっただけで。私は、何の努力もしてないんだけどね……。
「昇進、おめでとうございます、天使の翼。私のような者まで、お招き下さり、大変、光栄です」
隣にいたマリアさんが、とても穏やかな声で、話し掛けてきた。
「とんでもありません。私こそ、物凄く光栄です。マリアさんほどの方に、ご出席いただけるなんて」
彼女は、相変わらず、物凄く腰が低い。でも、かつて『次期グランド・エンプレスに最も近い存在』と言われ、ドキュメンタリー映画まで作られた、超有名人だ。目の病気さえなければ、本当に、エンプレスに、なっていたかもしれない。
「どうか、あなたの進む道に、光と幸運があらんことを」
「ありがとうございます。さらに、精進いたします」
彼女は、両手を組んで、祈りを捧げてくれた。流石は『聖女』と呼ばれる人だ。慈愛に満ちた言葉は、心が洗われるようだった。
「それにしても『馬子にも衣装』とは、よく言ったものだな」
すぐ横にいた、ノーラさんも声を掛けて来る。
「ちょっ――それは、言わないで下さいよ。私だって『全然、似合ってないなぁ』って、自覚してるんですから。でも、礼儀作法とかも、ちゃんと、勉強してきたんですよ。どこか、間違ってましたか?」
「付け焼刃感が凄いが、一応、合格点だな」
「んがっ……。き、厳し過ぎる――」
ノーラさんは、ゲラゲラと笑う。
「でも、ま、よくやったな、風歌。だが、まだ、夢の途中なんだから、絶対に、途中で立ち止まるなよ」
「はいっ! 今まで以上に、全力で頑張ります」
物言いは厳しいけど、ノーラさんは、今まで、ずっと私を支え続けてくれた。本当に、色んな意味での、私の恩人だ。ただ、上位階級になったので、毎度いじるのは、止めて欲しいんだけど……。
彼女たちと少し世間話したあと、次に向かったのは、いつもお世話になっている、先輩たちだ。やはり、人気シルフィードだけあって、物凄く目立っている。先ほどから、沢山の人に声を掛けられ、握手やサインを求められていた。
私の向かう先には、リリーシャさん、ツバサさん、メイリオさん、ミラージュさんが、四人で固まって話をしている。
元々、リリーシャさん、ツバサさん、メイリオさんは、後輩の私たちが、仲がいいので、イベントの際などには、仲良くしていたらしい。ミラージュさんは、野球の交流試合以降、親しくなったようだ。
「ごきげんよう。本日は、お忙しいところ、ご足労、ありがとうございます」
私は、リリーシャさんたちの前に立つと、スカートのすそを持ち上げ、丁寧にあいさつした。
「やぁ、風歌ちゃん、お招きありがとう。あと、昇進おめでとう! 見習い時代から、知っているから、物凄く嬉しいよ。リリーの大事な後輩は、僕にとっても、妹のようなものだからね」
ツバサさんは、最高に爽やかな笑顔で、祝福してくれる。
「ありがとうございます。これも、ツバサさんたち、先輩方のご指導の賜物です」
リリーシャさんの、幼馴染みということもあり、ツバサさんにも、今まで、色々よくして貰って来た。
同じ体育会系で、話が合うし。しばしば、元気づけて貰っていた。リリーシャさんが姉だとすると、ツバサさんは兄的な存在だ。
「そのドレス姿、超カワイイね! 今夜は、お持ち帰りしちゃおうかなぁ」
「あははっ――それは、ちょっと」
ツバサさんは、こういうセリフを、サラッと言ってくる。でも、カッコイイから、様になってるんだよね。
「風歌ちゃん、改めておめでとう。これからは、イベントなどでも、一緒に仕事が出来るわね」
「はいっ、物凄く楽しみです!」
リリーシャさんは、いつにもまして、優しい笑顔で声を掛けてくれた。
私が昇進して、一番、嬉しく感じるのは、リリーシャさんといる時間が、さらに増えることだ。上位階級になると、シルフィード関連のイベントや式典は、全て強制参加の義務がある。
今までは、毎回、留守番で、ちょっと寂しかったけど。これからは、いつも一緒に、参加することが出来る。リリーシャさんと、一緒に仕事できることが、私にとっては、最高の幸せだ。
「風歌ちゃん、昇進おめでとう。『天使の翼』は、とても素敵な二つ名ね。これからも、大きく羽ばたいて行ってね」
「はい。さらに上を目指して、頑張ります」
メイリオさんも、とても穏やかな表情で、声を掛けてくれた。やっぱり、リリーシャさんと並んでると、マイナスイオンが半端ない。
「こないだの『ノア・グランプリ』は、実にいい勝負だったな。『絶対に勝つ』という、熱い闘志が、MVを通じて伝わって来たぞ」
「あの時は、もう『何が何でも負けられない!』って、無我夢中でしたので。僅差でしたが、なんとか勝てました」
「あれは、僅差じゃない。明らかに差があった。ここの違いさ、分かるか?」
ミラージュさんは、ポンと、私の胸を軽く小突いた。
「えーと……心、ですか?」
「そう、心の強さの問題だ。勝負ってのは、たいていは、心の強さで決まる。あの時は、お前のほうが、明らかに心が強かった」
確かに、そうかもしれない。私は、必死の覚悟だったけど、フィニーちゃんは、そこまでじゃなかったと思う。
「シルフィードは、上品な仕事だが。俺は、どんなことも、強い心が大事だと思う。これからも、強い心と意思で頑張れよ」
「はいっ。全身全霊で頑張ります!」
ミラージュさんが、拳を突き出して来たので、私も拳を作って、コツンと当てる。
流石は『金剛の戦乙女』の二つ名を持つ人だ。やっぱり、カッコイイなぁー。私、こういう熱いノリって、超大好きなんだよね。
次に向かったのが〈東地区商店街〉の人たちが、集まっている場所だ。家族連れで参加している人が多く、大きな集団になっているので、とても分かりやすい。しかも、物凄く賑やかだ。
私が近づいて行くと、みんなから、大歓声が上がった。上品に楽しんでいる人が多い中、ここだけ、何か雰囲気が違う。いつも、商店街の集まりをやっている時と、全く同じで、ホッとする。私は、こういう、肩が凝らない雰囲気のほうが好きだ。
「おぉー、我らがヒーローが来たぞ!」
「いよっ、東地区商店街の星!」
「プリンセス昇進、おめでとう!」
「風歌ちゃん、ばんざーい! ばんざーい!」
滅茶苦茶、盛り上がっていて、いきなり万歳が始まった。嬉しいは、嬉しいんだけど。流石に、これは目立ち過ぎだ。周囲の視線が、一斉に注がれる。
「あ――ありがとうございます。ただ、そんなに、大げさなものでは、ありませんので。まだ、これからですし」
「何言ってるんだ、凄い大出世じゃないか」
「そうだよ。東地区商店街から、念願のプリンセスが登場したんだから」
「それなら、リリーシャさんだって、同じじゃないですか?」
ちなみに、リリーシャさんは『エア・マスター』になってすぐに、スピード昇進している。まぁ、シルフィード校を首席卒業の上に、母親が『グランド・エンプレス』だったので。そうとう、注目されていたんだと思う。
「でも、リリーちゃんは、あっさり昇進したからなぁ」
「そうそう。あの子は、ずば抜けて優秀な子だったから、当たり前な感じだし」
「風歌ちゃんが昇進したからこそ、感動なんだよ」
「それじゃ、私がまるで、ダメな子みたいじゃないですか?」
この言葉で、みんなから、一斉に笑いが巻き起こった。
うー、みんなの私の評価って……。確かに、リリーシャさんと比較すると、欠点だらけなのは、事実なんだけど。
その時、メイズさんが、前に進み出て来た。
「許してやっておくれ。みんな、嬉しくてたまらないのさ。リリーちゃんには、アリーシャちゃんがいたけど。風歌ちゃんは、一人だったから。みんな、自分の娘のように思ってるのさ。娘が偉くなって、喜ばない親なんていないだろ?」
「本当に、よくここまで頑張ったね。風歌ちゃんは、私たちのヒーローで、最高に親孝行な娘だよ。あんたの成長が見守れて、物凄く幸せさ」
メイズさんは、私を抱きしめて、背中をポンポンと、軽くたたいてくれた。その瞬間、私は、思わず、目頭が熱くなってしまった。
「はい――。みんなの応援のお蔭です。異世界人のよそ者なのに、いつも、家族のように、優しくしてくれて。本当に……本当に、心から感謝しています」
商店街の人たちには、どれほど、助けられてきたことか。みんなが、優しく受け入れてくれたから。私は、異世界人であることを、すっかり忘れ、この世界に、なじむことが出来た。
どんなに辛くても〈東地区商店街〉という、ホームがあったからこそ、頑張って来れたのだ。私のホームであり、シルフィードのスタート地点。第二の故郷でもあり、もう一つの、実家のようなものだ。もう、ここ無しでは、何も語れない。
「風歌ちゃん、私たちは全員、本物の家族だよ」
「そうそう。一緒にいて楽しければ、それはもう、家族なんだから」
町内会長さんと、その孫のユキさんも、優しい笑顔で答えてくれる。
「はい。これからも、家族のために頑張りますので、応援よろしくお願いします」
再び、歓声と万歳コールが巻き起こった。
そのあと、一人一人に挨拶して、世間話をする。やっぱり、ここの人たちは、物凄く温かい。まるで、親戚のおじちゃん、おばちゃんと、話している感覚だ。
次に向かったのは、よく行くお店の、ご主人や女将さんたち。あと、何度か、ご利用してくださった、お客様。また、ひょんなことで知り合った、ご縁のある人たち。
メイドカフェで知り合った、二人組の男性も、しっかり、来てくれていた。二人とも大興奮しながら、私を祝福してくれた。聴けば、シルフィード名鑑の更新って、二人がやってくれていたんだって。
もう一人、大事な友人が来てくれていた。洋菓子店〈ウインドベル〉の娘さんの、ロゼちゃんだ。彼女は、仕事が忙しい中、わざわざ、このパーティのために、大陸から来てくれたのだった。
プレゼントに、手作りの服を、何着も持ってきてくれた。また、祝福してくれたと同時に『物凄く勇気をもらったので、私も頑張ります』と、熱く語った。やはり、夢を追う者同士、熱量が高く、とても気が合う。
あと、写真家のエヴァさんは、パーティ前に、空港に迎えに行ったら『いつかやると思ってたよー!』と、涙を流しながら、抱き着いて来た。相変わらず、喜怒哀楽が激しく、楽しい人だ。
このあと、会場に向かう間中、滅茶苦茶、たくさん写真を撮ってくれた。今も、ホールの中を動き回って、片っ端から、写真を撮影している。
次に、友達のシルフィードたちを、一人一人、回って行く。皆、心から祝福してくれて『お互いに頑張ろうね!』と、励まし合った。みんな、他社なうえに、ライバルなのに。本当に、優しくいい子ばかりだ。
キラリスちゃんは、お酒が入っていたせいか『クフフッ、流石は、我が認めた魂の友よ!』と、変なポーズをとりながら、昔の感じに戻っていた。まぁ、楽しんでくれているようで、何よりだ。
会場中の人たちに、一通り挨拶を終えると。最後に向かったのは、いつもの二人のところだった。
ナギサちゃんは、ワイングラスを片手に、上品に。フィニーちゃんは、山盛りの料理の皿と、格闘中だった。ドレスで着飾ってはいるが、この二人は、いつもと、全く雰囲気が変わらない。二人のそばに近付くと、安心して、ホッと一息ついた。
やっぱり、このメンバーが、一番、落ち着くなぁー。見習い時代から、何も変わってないし……。
「二人とも、お疲れ様」
「おつかれ」
「風歌こそ、お疲れ様。挨拶、大変だったでしょ?」
「そうでもないよ。みんなと改めて話せて、とても楽しかった。凄く祝福してくれたし。『この世界に来てよかったなぁー』って、改めて思ったよ」
「でも、本当に、一番よかったのは、二人と友達になれたこと。ここまで、やってこれたのも、二人のお蔭だよ。いつも、本当に、ありがとうね」
私は、二人に向かって、軽く頭を下げた。
「って、何よ、今さら改まって。別に、何もしてないし。全ては、風歌の努力の賜物でしょ」
ナギサちゃんは、サッと顔を背けてしまう。
でも、見習い時代から、ずっと助けてくれていた。知識や常識を、色々教えてくれて。試験勉強の時も、査問会の時も、昇進の面接の時も。ナギサちゃんがいなければ、どうなっていたか、分からない。
「風歌は、だいじな友達。一緒にいるのも、助け合うのも、あたりまえ」
フィニーちゃんは、食べる手を止め、静かに答える。
フィニーちゃんは、無口で自由気ままだけど。一緒に居るだけで、心が安らぐし。落ち込んでいる時、色々と励ましてもらった。この町の素晴らしさや、風のこと、美味しい食べ物など。彼女からも、多くのことを学んだ。
「初めて、昇進した時、ちょっと不安だったんだ。二人との関係が、終わってしまうんじゃないかって。でも、こうして今も、親友を続けられている。これからも、大丈夫だよね――?」
見習い時代から、三人でいるのが当り前で、かけがえのない親友だ。他にも、たくさん友達はいるけど、彼女たちは、特別だった。いつだって、私の心の支えで。言いたいことを、本音で言える、数少ない存在だ。
だから、昇進の度に『疎遠になってしまうのでは?』と、少し心配になる。特に、今回は、私一人だけが、少し先に進んでしまった。そもそも、一番、最初に昇進するのは、ナギサちゃんだと思ってたので……。
「当然でしょ。そもそも、風歌は、頼りないんだから。最後まで、ちゃんと、面倒を見るわよ。それに、私もすぐに昇進するから、待ってなさい」
「風歌のこと、好き。だから、ずっと友達。いつでも、おいしいもの、一緒に食べに行く」
二人とも、ごく当然のように答えてくれる。私の心配は、杞憂のようだった。やっぱり、持つべきは、親友だよね。
ただ、このあと、どちらが先に昇進するかで、ナギサちゃんとフィニーちゃんが、口論になったんだけど。これもまた、いつも通りの、平和な光景だった。
時間になると、私は改めて、みんなの前で、お礼のあいさつをした。場内からは、盛大な拍手と、祝福の歓声が上がった。こうして、楽しい昇進パーティーは、無事に終了した。
私は、改めて、どれだけ多くの人に、支えられてきたかを認識した。自分の努力もあったけど。結局、一人の力では、限界がある。昔は、何でも一人で出来ると、軽く考えていたけど。あれは、ただの思い上がりだった。
これからも、きっと、たくさんの人たちに、支えられながら、前に進んで行くのだと思う。
常に、感謝の気持ちを忘れずに。私自身も、たくさんの人の支えになれるように、頑張って行こう。笑顔で、参加者の人たちを見送りながら、新たな決意を、胸に秘めるのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『プレゼントで大事なのは相手を想う気持ちだよね』
プレゼントより、君の友達でいれるほうがうれしいよ
これらは全て、ユメちゃんのお母さんが、用意してくれたものだ。着付けや、化粧などは、専属のメイドさんたちが、全てやってくれた。
ちなみに、今乗っている〈ホワイト・キャッスル〉は、超豪華なクルーザーだ。船内には、大きなシャンデリアがあったり、高そうなじゅうたんに、様々な装飾品。また、四百人も乗れる、物凄い大きさだった。
このクルーザーは、ユメちゃんのお父さんの所有物で、無料で貸し出してくれた。さらには、とても豪華なパーティーも、全て、ただで用意してくれたのだ。準備は、ユメちゃんの家の、執事さんやメイドさんが、総出でやってくれた。
私は、最初、その申し出を辞退した。気持ちは、とても嬉しいんだけど。あまりにも、豪華すぎたからだ。
リリーシャさんたち、三人の『シルフィード・クイーン』の、昇進祝いだって、会社でひっそりやったのに。私一人の、プリンセスの昇進祝いで、これは、流石にやり過ぎだと思う。
でも、頑固なユメちゃんは『ファン1号として、当然の義務』と言って、引いてくれず。ユメちゃんのご両親も『いつもお世話になっているので、ささやかなお礼です』なんて感じで、結局、押し切られてしまった。
ただ、私は、お世話するようなこと、何もしてないんだよね。むしろ、ユメちゃんには、常連客として、お世話になってるし。それに、全然、ささやかじゃないし。あまりにも盛大すぎて、申し訳なさすぎる……。
でも、やると決まってしまったからには、仕方がない。心から感謝して、楽しむことにしよう。それに『何人でも呼んでいい』と、言われたので、知っている人たち全てに、招待状を渡しに行った。
通常は、郵送で送るんだけど。せっかくなので、世間話とお礼のついでに、一人一人に、手渡しで回って行った。でも、行った先々で、みんな、大喜びしてくれた。中には、感動して涙を流してくれる人もいて、私も思わず、もらい泣きしてしまった。
そんなこんなで、船内のメインホールには、たくさんの人たちが集まっていた。また、ホールのテーブルには、高級レストラン並の、超豪華な料理が、大量に並べられている。
見習いのころなら、真っ先に飛びついて、モリモリ食べてたところだけど。流石に、今は、そうはいかない。上位階級としての立場があるし。今日は、大事なお披露目会だ。
とても賑やかで、楽しい雰囲気が漂っている中。私は、滅茶苦茶、緊張していた。自分の立場と重責を、改めて感じさせられる。
ホールでは、ユメちゃんの家で働いている、メイドさんや執事さん。あと、以前、お手伝いに行った〈アクアリウム〉のスタッフたちも、メイド姿で、せわしなく動き回っていた。
本当は、お客様として、招待したんだけど。店長のアディ―さんに、招待状を渡しに行ったら『そういうことなら、私に任せなさい』と、今回のパーティーを、仕切ってくれたのだ。
流石に、アディ―さんが仕切っているだけあって、実に手際がいい。しかも、飾りつけも料理も、物凄く本格的だった。事前に、全スタッフと、綿密な打ち合わせをし、かなり時間を掛けて、準備してくれたらしい。
なお、私が、招待状を渡しに行ったのは、顔見知りの人、全員だ。まず、最初に誘ったのは、シルフィードの知り合いたちだった。
リリーシャさん、ツバサさん、メイリオさん、ミラージュさん、カナリーゼさんたち、先輩方。もちろん、ノーラさんや、ナギサちゃんのお母さん、マリアさんたち、大先輩も。
ノーラさんたちは、大御所だけあって、渡す時は、超緊張したけど。三人とも、快く、招待を受けてくれた。
あとは、私の同期の、大切な友達たちだ。ナギサちゃん、フィニーちゃん、キラリスちゃん。アンジェリカちゃん、カレンティアちゃん、リスティーちゃん。あと、ナギサちゃんと、フィニーちゃんの、会社の同僚たちも、多数、参加している。
次に、回ったのが〈東地区商店街〉の人たちだ。見習い時代から、大変お世話になっているし、みんな顔見知りだ。なので、商店街の人たちに、片っ端から、招待状を配って行った。しかも、嬉しいことに、全員、参加してくれている。
招待状を渡しに行って、最も盛り上がったのが〈東地区商店街〉の人たちだった。みんな、滅茶苦茶、喜んでくれて、心から祝福してくれた。ここの人たちは、凄く優しい上に、家族のような存在だ。
加えて、私がよく通っている、お店の御主人や女将さん、ご縁のあった人たち。〈北地区〉にある〈レモンハウス〉〈宿り木〉〈マーカス・グリーンファーム〉など。〈南地区〉の喫茶店〈水晶亭〉にも行って来た。
あと〈東地区〉の孤児院の〈あおぞら学園〉の子供たちと、園長先生。子供たちは『学園にスカイ・プリンセスがやって来た!』と、物凄く興奮して、大喜び。全員、元気一杯に祝福してくれた。やっぱり、子供って、可愛くていいよね。
他にも、連絡先を知っている、お客様もご招待した。ちなみに、大陸にいる、写真家のエヴァンシェールさんに連絡したところ、一発返事でOK。しかも『パーティーの写真撮影なら任せて!』と、撮影係を引き受けてくれた。
最初は、数人で、小規模にやる予定だったんだけど。調子に乗って、声を掛けまくったら、三百人以上が集まる、超大型パーティーになってしまった。
アディ―さんたちや、ユメちゃんの家の、執事さんたちがいなければ、絶対に、回らなかったと思う。手伝ってくれた、スタッフの方たちには、本当に、感謝の気持ちでいっぱいだ。
賑やかに盛り上がっている、豪華な大ホールの中。私は、一人ずつ、あいさつに回って行く。どの人たちも、とても大事な存在で、今の私のがあるのも、みんなのお蔭と言える。なので、心を込めて、感謝の言葉を伝えていく。
真っ先に向かったのが、ユメちゃんの所だ。お父さんのジークハルトさんと、お母さんのエリザベートさんも、一緒に参加している。流石に、本物の上流階級だけあって、とても上品で洗練されていた。
今日は、珍しく、ユメちゃんも、綺麗なドレスで正装している。いつも、Tシャツに短パンとかだから、全然、別人のようだった。でも、本来は、生粋のお嬢様なんだよね。
「ジークハルト様、ごきげんよう。本日は、お忙しいところ、ご足労いただき、大変、光栄です。また、このような素敵な船をお貸しいただき、誠にありがとうございます。お蔭様で、とても素晴らしいパーティーを、開催できました」
私は、スカートの両端をつまむと、丁寧にあいさつをした。
ユメちゃんのお父さんは、アッシュフィールド財閥の現当主で、政財界では、知らない人がいないぐらいの、強い影響力を持っている。本来なら、一般人は、話すことができないほど、凄い人だ。
「これは、ご丁寧なご挨拶、痛み入ります。『天使の翼』の昇進祝いに参加できて、私こそ、光栄の極みです」
彼は、素敵な笑顔で答えてくれた。本当は、滅茶苦茶、偉い人なんだけど。ユメちゃんに似て、かなり気さくな人だ。
「天使の羽、ご機嫌よう。そのドレス、本当に、お似合いですね。まるで、本物の天使が、舞い降りて来たようですわ」
ユメちゃんのお母さんの、エリザベートさんは、とても優雅に、話し掛けてきた。
「今回は、衣装や、高価な装飾品まで、お貸しくださって、本当に、ありがとうございました」
私は、頭を下げて、心からお礼をする。
今着ているドレスは、もちろんのこと。身につけている宝飾品は、どれも、数百万ベルはする、超高価な物ばかり。私は、衣装も装飾品も、何も持っていなかったので、エリザベートさんの私物を、快く貸してくれたのだ。
「娘が、いつもお世話に、なっておりますから。これぐらいは、当然ですわ」
「えぇ、この程度。ユーメリアを救ってくれた、ご恩に比べれば、足りないぐらいです」
二人とも、笑顔で答える。
なんか、ユメちゃんのご両親には、会うたびに、感謝の言葉を掛けられていた。私は、友人として、当たり前の行動をしただけで。別に、大したことをしたとは、思っていない。なので、過度の感謝は、少々心苦しい気もする。
「もう、二人とも、堅苦しい話は、それぐらいにしてよ。風ちゃんは、私の親友なんだからね」
途中で、ユメちゃんが、割り込んできた。
「何度も言ったけど。改めて、昇進おめでとう! 私、超超超うれしいよ!! 私が、世界で一番、風ちゃんの昇進を、祝福してるからね!」
ユメちゃんは、私の両手を握ると、ブンブンと大きく振った。
「うん、ありがとう。私も、超超超うれしい!! 真っ先に、ユメちゃんに、祝福して欲しかったから。最高に、幸せだよ!」
ユメちゃんは、私がこの世界に来て、初めてできた友達。しかも、まだ、無名の新人時代から、私のファンだと言ってくれた、正真正銘の『ファン1号』だ。本当に、彼女には、数え切れないほど、心の支えになって貰って来た。
しばらく、ユメちゃんと、思い出話などで盛り上がる。でも、他も回らないとならないので、ちょっと残念そうなユメちゃんを尻目に、私は別の場所に移動した。
次に向かったのは、大御所シルフィードのところだ。一ヶ所だけ、空気の違う場所があり、すぐに、目的の人物を発見した。三人で、ワイングラスを片手に、談笑中だった。
『疾風の剣』のノーラさん。『白金の薔薇』のローゼリカさん。『聖なる光』のマリアさんだ。やはり、大先輩だけあって、風格が違う。気になって、視線を向ける人はいるが、話し掛ける人は、ほとんどいない。大物過ぎて、話し掛け辛いのだろう。
「ごきげんよう。本日は、お忙しいところ、ご足労、誠にありがとうございます」
私は、静かに近づいて行くと、丁寧にあいさつをする。
「お招き、ありがとうございます、天使の翼。これほど盛大な、昇進パーティーは、初めてです。準備が、大変だったのでは?」
ローゼリカさんが、静かに声を掛けてきた。
「それが、友人のご両親が、全て手配してくれまして。このクルーザーも、快く貸してくださいました」
「もしかして、ジークハルト氏と、知り合いなのですか?」
「はい。友人のお父様で、色々とご縁がありまして」
「なるほど。財界のトップと人脈があるとは、流石ですね。人脈は、強力な武器です。大事になさい」
ローゼリカさんは、小さく微笑む。
まぁ、偶然、ユメちゃんのお父さんが、超大物だっただけで。私は、何の努力もしてないんだけどね……。
「昇進、おめでとうございます、天使の翼。私のような者まで、お招き下さり、大変、光栄です」
隣にいたマリアさんが、とても穏やかな声で、話し掛けてきた。
「とんでもありません。私こそ、物凄く光栄です。マリアさんほどの方に、ご出席いただけるなんて」
彼女は、相変わらず、物凄く腰が低い。でも、かつて『次期グランド・エンプレスに最も近い存在』と言われ、ドキュメンタリー映画まで作られた、超有名人だ。目の病気さえなければ、本当に、エンプレスに、なっていたかもしれない。
「どうか、あなたの進む道に、光と幸運があらんことを」
「ありがとうございます。さらに、精進いたします」
彼女は、両手を組んで、祈りを捧げてくれた。流石は『聖女』と呼ばれる人だ。慈愛に満ちた言葉は、心が洗われるようだった。
「それにしても『馬子にも衣装』とは、よく言ったものだな」
すぐ横にいた、ノーラさんも声を掛けて来る。
「ちょっ――それは、言わないで下さいよ。私だって『全然、似合ってないなぁ』って、自覚してるんですから。でも、礼儀作法とかも、ちゃんと、勉強してきたんですよ。どこか、間違ってましたか?」
「付け焼刃感が凄いが、一応、合格点だな」
「んがっ……。き、厳し過ぎる――」
ノーラさんは、ゲラゲラと笑う。
「でも、ま、よくやったな、風歌。だが、まだ、夢の途中なんだから、絶対に、途中で立ち止まるなよ」
「はいっ! 今まで以上に、全力で頑張ります」
物言いは厳しいけど、ノーラさんは、今まで、ずっと私を支え続けてくれた。本当に、色んな意味での、私の恩人だ。ただ、上位階級になったので、毎度いじるのは、止めて欲しいんだけど……。
彼女たちと少し世間話したあと、次に向かったのは、いつもお世話になっている、先輩たちだ。やはり、人気シルフィードだけあって、物凄く目立っている。先ほどから、沢山の人に声を掛けられ、握手やサインを求められていた。
私の向かう先には、リリーシャさん、ツバサさん、メイリオさん、ミラージュさんが、四人で固まって話をしている。
元々、リリーシャさん、ツバサさん、メイリオさんは、後輩の私たちが、仲がいいので、イベントの際などには、仲良くしていたらしい。ミラージュさんは、野球の交流試合以降、親しくなったようだ。
「ごきげんよう。本日は、お忙しいところ、ご足労、ありがとうございます」
私は、リリーシャさんたちの前に立つと、スカートのすそを持ち上げ、丁寧にあいさつした。
「やぁ、風歌ちゃん、お招きありがとう。あと、昇進おめでとう! 見習い時代から、知っているから、物凄く嬉しいよ。リリーの大事な後輩は、僕にとっても、妹のようなものだからね」
ツバサさんは、最高に爽やかな笑顔で、祝福してくれる。
「ありがとうございます。これも、ツバサさんたち、先輩方のご指導の賜物です」
リリーシャさんの、幼馴染みということもあり、ツバサさんにも、今まで、色々よくして貰って来た。
同じ体育会系で、話が合うし。しばしば、元気づけて貰っていた。リリーシャさんが姉だとすると、ツバサさんは兄的な存在だ。
「そのドレス姿、超カワイイね! 今夜は、お持ち帰りしちゃおうかなぁ」
「あははっ――それは、ちょっと」
ツバサさんは、こういうセリフを、サラッと言ってくる。でも、カッコイイから、様になってるんだよね。
「風歌ちゃん、改めておめでとう。これからは、イベントなどでも、一緒に仕事が出来るわね」
「はいっ、物凄く楽しみです!」
リリーシャさんは、いつにもまして、優しい笑顔で声を掛けてくれた。
私が昇進して、一番、嬉しく感じるのは、リリーシャさんといる時間が、さらに増えることだ。上位階級になると、シルフィード関連のイベントや式典は、全て強制参加の義務がある。
今までは、毎回、留守番で、ちょっと寂しかったけど。これからは、いつも一緒に、参加することが出来る。リリーシャさんと、一緒に仕事できることが、私にとっては、最高の幸せだ。
「風歌ちゃん、昇進おめでとう。『天使の翼』は、とても素敵な二つ名ね。これからも、大きく羽ばたいて行ってね」
「はい。さらに上を目指して、頑張ります」
メイリオさんも、とても穏やかな表情で、声を掛けてくれた。やっぱり、リリーシャさんと並んでると、マイナスイオンが半端ない。
「こないだの『ノア・グランプリ』は、実にいい勝負だったな。『絶対に勝つ』という、熱い闘志が、MVを通じて伝わって来たぞ」
「あの時は、もう『何が何でも負けられない!』って、無我夢中でしたので。僅差でしたが、なんとか勝てました」
「あれは、僅差じゃない。明らかに差があった。ここの違いさ、分かるか?」
ミラージュさんは、ポンと、私の胸を軽く小突いた。
「えーと……心、ですか?」
「そう、心の強さの問題だ。勝負ってのは、たいていは、心の強さで決まる。あの時は、お前のほうが、明らかに心が強かった」
確かに、そうかもしれない。私は、必死の覚悟だったけど、フィニーちゃんは、そこまでじゃなかったと思う。
「シルフィードは、上品な仕事だが。俺は、どんなことも、強い心が大事だと思う。これからも、強い心と意思で頑張れよ」
「はいっ。全身全霊で頑張ります!」
ミラージュさんが、拳を突き出して来たので、私も拳を作って、コツンと当てる。
流石は『金剛の戦乙女』の二つ名を持つ人だ。やっぱり、カッコイイなぁー。私、こういう熱いノリって、超大好きなんだよね。
次に向かったのが〈東地区商店街〉の人たちが、集まっている場所だ。家族連れで参加している人が多く、大きな集団になっているので、とても分かりやすい。しかも、物凄く賑やかだ。
私が近づいて行くと、みんなから、大歓声が上がった。上品に楽しんでいる人が多い中、ここだけ、何か雰囲気が違う。いつも、商店街の集まりをやっている時と、全く同じで、ホッとする。私は、こういう、肩が凝らない雰囲気のほうが好きだ。
「おぉー、我らがヒーローが来たぞ!」
「いよっ、東地区商店街の星!」
「プリンセス昇進、おめでとう!」
「風歌ちゃん、ばんざーい! ばんざーい!」
滅茶苦茶、盛り上がっていて、いきなり万歳が始まった。嬉しいは、嬉しいんだけど。流石に、これは目立ち過ぎだ。周囲の視線が、一斉に注がれる。
「あ――ありがとうございます。ただ、そんなに、大げさなものでは、ありませんので。まだ、これからですし」
「何言ってるんだ、凄い大出世じゃないか」
「そうだよ。東地区商店街から、念願のプリンセスが登場したんだから」
「それなら、リリーシャさんだって、同じじゃないですか?」
ちなみに、リリーシャさんは『エア・マスター』になってすぐに、スピード昇進している。まぁ、シルフィード校を首席卒業の上に、母親が『グランド・エンプレス』だったので。そうとう、注目されていたんだと思う。
「でも、リリーちゃんは、あっさり昇進したからなぁ」
「そうそう。あの子は、ずば抜けて優秀な子だったから、当たり前な感じだし」
「風歌ちゃんが昇進したからこそ、感動なんだよ」
「それじゃ、私がまるで、ダメな子みたいじゃないですか?」
この言葉で、みんなから、一斉に笑いが巻き起こった。
うー、みんなの私の評価って……。確かに、リリーシャさんと比較すると、欠点だらけなのは、事実なんだけど。
その時、メイズさんが、前に進み出て来た。
「許してやっておくれ。みんな、嬉しくてたまらないのさ。リリーちゃんには、アリーシャちゃんがいたけど。風歌ちゃんは、一人だったから。みんな、自分の娘のように思ってるのさ。娘が偉くなって、喜ばない親なんていないだろ?」
「本当に、よくここまで頑張ったね。風歌ちゃんは、私たちのヒーローで、最高に親孝行な娘だよ。あんたの成長が見守れて、物凄く幸せさ」
メイズさんは、私を抱きしめて、背中をポンポンと、軽くたたいてくれた。その瞬間、私は、思わず、目頭が熱くなってしまった。
「はい――。みんなの応援のお蔭です。異世界人のよそ者なのに、いつも、家族のように、優しくしてくれて。本当に……本当に、心から感謝しています」
商店街の人たちには、どれほど、助けられてきたことか。みんなが、優しく受け入れてくれたから。私は、異世界人であることを、すっかり忘れ、この世界に、なじむことが出来た。
どんなに辛くても〈東地区商店街〉という、ホームがあったからこそ、頑張って来れたのだ。私のホームであり、シルフィードのスタート地点。第二の故郷でもあり、もう一つの、実家のようなものだ。もう、ここ無しでは、何も語れない。
「風歌ちゃん、私たちは全員、本物の家族だよ」
「そうそう。一緒にいて楽しければ、それはもう、家族なんだから」
町内会長さんと、その孫のユキさんも、優しい笑顔で答えてくれる。
「はい。これからも、家族のために頑張りますので、応援よろしくお願いします」
再び、歓声と万歳コールが巻き起こった。
そのあと、一人一人に挨拶して、世間話をする。やっぱり、ここの人たちは、物凄く温かい。まるで、親戚のおじちゃん、おばちゃんと、話している感覚だ。
次に向かったのは、よく行くお店の、ご主人や女将さんたち。あと、何度か、ご利用してくださった、お客様。また、ひょんなことで知り合った、ご縁のある人たち。
メイドカフェで知り合った、二人組の男性も、しっかり、来てくれていた。二人とも大興奮しながら、私を祝福してくれた。聴けば、シルフィード名鑑の更新って、二人がやってくれていたんだって。
もう一人、大事な友人が来てくれていた。洋菓子店〈ウインドベル〉の娘さんの、ロゼちゃんだ。彼女は、仕事が忙しい中、わざわざ、このパーティのために、大陸から来てくれたのだった。
プレゼントに、手作りの服を、何着も持ってきてくれた。また、祝福してくれたと同時に『物凄く勇気をもらったので、私も頑張ります』と、熱く語った。やはり、夢を追う者同士、熱量が高く、とても気が合う。
あと、写真家のエヴァさんは、パーティ前に、空港に迎えに行ったら『いつかやると思ってたよー!』と、涙を流しながら、抱き着いて来た。相変わらず、喜怒哀楽が激しく、楽しい人だ。
このあと、会場に向かう間中、滅茶苦茶、たくさん写真を撮ってくれた。今も、ホールの中を動き回って、片っ端から、写真を撮影している。
次に、友達のシルフィードたちを、一人一人、回って行く。皆、心から祝福してくれて『お互いに頑張ろうね!』と、励まし合った。みんな、他社なうえに、ライバルなのに。本当に、優しくいい子ばかりだ。
キラリスちゃんは、お酒が入っていたせいか『クフフッ、流石は、我が認めた魂の友よ!』と、変なポーズをとりながら、昔の感じに戻っていた。まぁ、楽しんでくれているようで、何よりだ。
会場中の人たちに、一通り挨拶を終えると。最後に向かったのは、いつもの二人のところだった。
ナギサちゃんは、ワイングラスを片手に、上品に。フィニーちゃんは、山盛りの料理の皿と、格闘中だった。ドレスで着飾ってはいるが、この二人は、いつもと、全く雰囲気が変わらない。二人のそばに近付くと、安心して、ホッと一息ついた。
やっぱり、このメンバーが、一番、落ち着くなぁー。見習い時代から、何も変わってないし……。
「二人とも、お疲れ様」
「おつかれ」
「風歌こそ、お疲れ様。挨拶、大変だったでしょ?」
「そうでもないよ。みんなと改めて話せて、とても楽しかった。凄く祝福してくれたし。『この世界に来てよかったなぁー』って、改めて思ったよ」
「でも、本当に、一番よかったのは、二人と友達になれたこと。ここまで、やってこれたのも、二人のお蔭だよ。いつも、本当に、ありがとうね」
私は、二人に向かって、軽く頭を下げた。
「って、何よ、今さら改まって。別に、何もしてないし。全ては、風歌の努力の賜物でしょ」
ナギサちゃんは、サッと顔を背けてしまう。
でも、見習い時代から、ずっと助けてくれていた。知識や常識を、色々教えてくれて。試験勉強の時も、査問会の時も、昇進の面接の時も。ナギサちゃんがいなければ、どうなっていたか、分からない。
「風歌は、だいじな友達。一緒にいるのも、助け合うのも、あたりまえ」
フィニーちゃんは、食べる手を止め、静かに答える。
フィニーちゃんは、無口で自由気ままだけど。一緒に居るだけで、心が安らぐし。落ち込んでいる時、色々と励ましてもらった。この町の素晴らしさや、風のこと、美味しい食べ物など。彼女からも、多くのことを学んだ。
「初めて、昇進した時、ちょっと不安だったんだ。二人との関係が、終わってしまうんじゃないかって。でも、こうして今も、親友を続けられている。これからも、大丈夫だよね――?」
見習い時代から、三人でいるのが当り前で、かけがえのない親友だ。他にも、たくさん友達はいるけど、彼女たちは、特別だった。いつだって、私の心の支えで。言いたいことを、本音で言える、数少ない存在だ。
だから、昇進の度に『疎遠になってしまうのでは?』と、少し心配になる。特に、今回は、私一人だけが、少し先に進んでしまった。そもそも、一番、最初に昇進するのは、ナギサちゃんだと思ってたので……。
「当然でしょ。そもそも、風歌は、頼りないんだから。最後まで、ちゃんと、面倒を見るわよ。それに、私もすぐに昇進するから、待ってなさい」
「風歌のこと、好き。だから、ずっと友達。いつでも、おいしいもの、一緒に食べに行く」
二人とも、ごく当然のように答えてくれる。私の心配は、杞憂のようだった。やっぱり、持つべきは、親友だよね。
ただ、このあと、どちらが先に昇進するかで、ナギサちゃんとフィニーちゃんが、口論になったんだけど。これもまた、いつも通りの、平和な光景だった。
時間になると、私は改めて、みんなの前で、お礼のあいさつをした。場内からは、盛大な拍手と、祝福の歓声が上がった。こうして、楽しい昇進パーティーは、無事に終了した。
私は、改めて、どれだけ多くの人に、支えられてきたかを認識した。自分の努力もあったけど。結局、一人の力では、限界がある。昔は、何でも一人で出来ると、軽く考えていたけど。あれは、ただの思い上がりだった。
これからも、きっと、たくさんの人たちに、支えられながら、前に進んで行くのだと思う。
常に、感謝の気持ちを忘れずに。私自身も、たくさんの人の支えになれるように、頑張って行こう。笑顔で、参加者の人たちを見送りながら、新たな決意を、胸に秘めるのだった……。
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次回――
『プレゼントで大事なのは相手を想う気持ちだよね』
プレゼントより、君の友達でいれるほうがうれしいよ
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