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第6部 飛び立つ勇気
5-5今度は私の番だから必ず親友を救って見せる
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私は、ずっと色んなことを思い返していた。この世界に来てから、今まで起こった出来事。過去にELで話した、ユメちゃんとの様々な会話。毎回、色々アドバイスしてくれたり、元気づけてもらったりして、物凄く楽しかったこと。
昨晩も、ELで普通にやり取りしてたし、いつも通り、明るく会話をしていた。インドアなのは、知っていたけど、彼女は、とても明るく前向きな性格だ。心の病を持っているようには、全く見えなかった。
でも、よくよく考えて見ると、何となく思い当たる節もある。今まで、イベントのたびに会話してたけど、どこかに参加した、という話は聴いていない。いつも、部屋で本を読んでいる話ばかりだった。
あと、毎日、色んな写真を送ってあげると、物凄く喜んでいた。普通に、外に出ていれば、そこまで珍しいものでは無いと思う。
家に引きこもること自体は、そんなに珍しくはない。向こうの世界でも、引きこもりは、年々増加しており、社会問題にもなっていた。だから、特に隠すようなことではないと思う。
ユメちゃんは、何で、今まで黙っていたのだろうか? 引きこもりの件は、置いとくとして。事故に巻き込まれた、当事者なのだから。〈ホワイト・ウイング〉のことは、誰よりも知っているはずだ。
事故を思い出したくなければ、私と関わりを持たないのが、一番だと思う。なのに、最初に声を掛けてくれたのは、ユメちゃんからだった。
私がスピに、毎日、練習飛行中に撮った、街の風景写真をのせていたら、ユメちゃんがコメントを付けてくれたのだ。それがキッカケで、ELで話すようになった。
私は、スピのプロフィールに、シルフィードをやっていることも〈ホワイト・ウイング〉に所属しているのも、書いてある。だから、最初から、全て知っていたはずだ。
ELを始めたあと、彼女は、いつも楽しそうで、とても優しくて。この世界で、初めてできた友達で。私にとって、かけがえのない存在だった。
いつも明るくて、ポジティブで、時々凄くハイになって。まるで影がなく、太陽のような存在で、よいイメージしかない。
でも、先ほど見たユメちゃんは、完全に別人だった。まるで明るさがなく、深い闇を抱えている感じだった。
考えれば考えるほど、彼女のことが、分からなくなって行く……。
「もう少し、詳しく教えていただいても、いいですか? 事故に巻き込まれたあと、何があったのかも――」
あまり、立ち入って訊いていい話ではない。でも、私の考えだけでは、分からないことが多すぎる。それに、どんなに重く辛い過去でも、知っておかないと、彼女の力にはなれないと思う。
リチャードさんは、小さく頷くと、静かに話し始めた。
「あの事故は、とても大変なものでした。ゴンドラに乗っていた方々は、全員、亡くなられてしまいました。お嬢様を助けてくださった、アリーシャ様も、非常に残念なことに……」
リチャードさんが、静かに視線を向けてくると、私は、無言で頷いた。私も、初めて話を聴いた時は、激しく動揺したけど、今はしっかり受け止めている。
「お嬢様は、奇跡的に助かりましたが、ゴンドラの下敷きになった左足は、複雑骨折。最悪、足を切断しなければならないほどの、重症でした。しかし、一流の名医に見ていただいたことも有り、奇跡的に回復したのです」
「その後、リハビリも行い、普通に歩けるまでに、回復しました。しかし、どうしても、治らない問題もあったのです――」
彼の表情が、一層、深刻的になる。
「お嬢様は、病院に運ばれ目覚めたあと、先ほどのような、錯乱状態を繰り返していました。鎮静剤を打ったり、カウンセリングを受けて、一応は落ち着きましたが。あの事故以来、空への恐怖心が、拭い去れなくなってしまったのです」
「外に出ることはおろか、窓から空を眺めることすら、出来なくなりました。部屋にいる時も、カーテンを閉め、けっして、窓際には近づかなくなったのです」
私は、ふと、先ほど部屋に入った時の、妙な違和感を思い出した。
「じゃあ、部屋の半分にしか、物が置いてなかったのは……?」
「はい。窓際を避けて、全て壁際に置いてあるのです」
なるほど、そういう事だったんだ――。単なる、引きこもりとか、そんな簡単な問題じゃなかった。今もまだ、深く深く傷ついているんだ。
しかも、自分が死に掛けただけでなく、沢山の人の死を、目の当たりにしている。私だって、アリーシャさん一人の、死を受け止めるだけで、時間が掛かったのに。
それが、現場にいて、目の前で起こって。しかも、何人もの人が、命を落としたとしたら、私よりも年下の少女が受け止めるには、あまりに辛すぎる……。
あぁ――。私は、また気付けなかった。リリーシャさんの件で、人の気持ちを、よく考えるようにしようと思ったのに……。
私は、ユメちゃんのこと、何も気づいてあげられなかった。それどころか、私のほうが、いつも助けられてばかりだ――。
いったい、どうすれば、彼女を心を救ってあげられるのだろうか……?
******
私は、ユメちゃんの部屋の扉の前にいた。先ほどまで、リチャードさんから、詳しく話を聴いていたけど、心の傷は、相当に深いようだ。あと、ユメちゃんは、かなり頑固なところがあるらしい。
先ほど取り乱た様子を考えると、普通に話すのは、難しそうだ。それ以前に、もう二度と、私とは、口をきいてくれないかもしれない。
だとしても、私にとってユメちゃんは、大切な親友だ。一番つらい時期に、ずっと支え続けてくれたのは彼女だった。私の人生の中で、最も大事な親友かもしれない。
だから、例えどんなに嫌われようとも、絶対に、放ってはおけない。今度は、私が彼女を支える番だ。
私は、大きく深呼吸したあと、マギコンを取り出し、ELを起動した。怖くて、一瞬、指が止まる。でも、意を決して、少し震える指で、メッセージを打ち込ん行く。
怖い……怖い……。
親友に嫌われてしまうのも、親友の心の傷に触れるのも。何より、彼女を、より傷つけてしまうかもしれないのが、とんでもなく怖かった。上手く話せる自信が、全くない――。
怖い……怖い……物凄く怖い……。
何てメッセージを書くべきか、必死に考える。でも、あえて、先ほどの話題には触れず、いつも通りのノリで送ることにした。私、馬鹿だから、気の利いた言葉なんて、何も思いつかない――。
『ユメちゃん、こんにちは。元気?』
はたから見たら、とんでもなく、無神経な内容かもしれない。どう考えたって、元気なはずが無いんだから。でも、変に気遣った内容は、逆効果だと思ったからだ。
ユメちゃんは、けっして、同情して欲しい訳じゃないと思う。相手が、友達であれば、なおさらだ。友達に同情されるのは、逆に、辛い場合もあるから……。
いつもなら、送った瞬間に、メッセージが返って来ていた。でも、今日は、返信が来なかった。こうなることは、最初から想像していたけど、やっぱり辛い。もう、二度と、返信してくれないのだろうか――?
私は、扉の前に、静かに座り込む。今、私にできるのは、待つことだけだ。でも、待つだけって、本当に辛い。私は、膝を抱えて、じっと待ち続ける。
扉の前に座り込んでから、三十分が経過した。『もう、ダメなのかな……?』と、半ばあきらめかけた時、メッセージの着信音が鳴った。私は、慌ててメッセージを確認する。
『全然、元気じゃない。死にたい気分』
いつも明るいユメちゃんからは、考えられない内容で、まるで別人のようだった。それでも、返信してくれたことが、凄く嬉しい。
『ゴメンね。私が急に行ったから、嫌な気分にさせちゃって。まさか、相手がユメちゃんだなんて、全然、知らなかったから』
全く、一ミリも、想像できなかった。だって、余りにも、イメージと正反対すぎて。結びつく要素が、何一つなかったからだ。
『風ちゃんは、全然、悪くない。リチャードが、全て悪いんだから。私も、聴いてなかったし』
『サプライズだったみたいだよ。ユメちゃんを、喜ばせようとして』
『サプライズって――。確かに、超驚いたけど、やり過ぎだよ。私、心臓が止まるかと思ったもん』
『私も、最近の中で、一番、驚いたよ』
もっとも、私は、ユメちゃんを見たことないから、リチャードさんに、話を聴いてから、初めて驚いたんだけど。でも、ユメちゃんは、MVで私を見て知っていたから、そうとう驚いたはずだ。
『ごめんね。嫌な姿、見せちゃって……』
『へーき、へーき。あれぐらい、私だってやるもん』
『そうなの?』
『家出した時の大喧嘩なんて、あんなレベルじゃなかったよ。感情的になって、滅茶苦茶、酷いセリフを、怒鳴り散らしてたし。それで、実家に帰り辛かったんだ――』
人って感情的になると、とんでもないことを、平気で口にするよね。
『風ちゃんでも、怒ったりするんだ?』
『そりゃ、怒るよ。そもそも私、凄く感情的な人間だもん』
それから、しばらくの間、メッセージが途絶えた。何かを、考えているのかもしれない。私は、次の言葉をじっと待ち続けた。
数分後……。
『風ちゃん、ゴメンね。今まで、色々嘘をついちゃって』
新しいメッセージが、送られて来る。
『いいって、そんなの。私は、毎日、楽しくお話ししてたし。ユメちゃんが元気なら、それだけで十分だよ。学校、行かなくたって、ユメちゃん頭いいし』
ユメちゃんは、本当に、物知りで頭がいい。だから、学校に行っていることを、疑いもしなかった。毎日、学校に行ってた私より、頭がいいんだから――。
『ううん、そっちじゃなくて、事故のこと。隠してて、本当にごめんなさい……』
『何で、そんなこと気にするの? 別に、わざわざ、言うことでもないんじゃない?』
再び、メッセージが途切れた。
いくら友達だからって、全てを話さなければ、ならない訳じゃない。わざわざ、過去の嫌な話を、出す必要はないもんね。私が家出の話をしなかったのも、重くしたくなかったからだ。
『――だって、私のせいで、アリーシャさんが、死んじゃったんだよ。私を助けなければ、アリーシャさんは生きてたんだよ。私が死んでいれば、あんな大事件には、ならなかったのに……』
えぇっ?! ユメちゃん、そんな風に考えてたの――?
『本当は、最初から、ちゃんと言うべきだった。風ちゃんから、あの事件の話が出た時だって、言おうと思えば、言えたのに。怖くて、言えなかった……。ゴメンね、本当に、ゴメンね――』
まるで、ユメちゃんの心の痛みが、直接、伝わって来るようなメッセージだった。私の心まで、ズキズキと痛み始めた。
『何で謝るの? ユメちゃんは、何一つ悪くないよ。ただの被害者なんだから。それに、そんな悲しいこと言わないで。私は、ユメちゃんが生きてくれていて、物凄く嬉しいよ』
『アリーシャさんには、申しわけないけど。私は、ユメちゃんが生きてくれていて、本当に良かった。そうじゃなきゃ、大事な親友に、出会えなかったんだから』
これは、偽りのない、私の本心だった。どちらか一人しか選べないなら、私は迷わず、ユメちゃんを選ぶだろう。
『本当に……そう思う? みんなは「助けるべきじゃなかった」って言ってるよ。どう考えたって、生き残るべきは、アリーシャさんのほうだったでしょ? だって、誰からも愛され、尊敬されていた、伝説のシルフィードなんだから』
『私なんか、いなくなったって、誰も悲んだりなんかしないし。もし、私が死んでいたとしたら、とっくに忘れられてたよ――』
そうじゃない……そうじゃないよ、ユメちゃん――。
『違うっ!! 絶対にそんなことないよ! 悲しむ人はいるよ。ご家族も、リチャードさんも。それに、そんなことを言ったら、アリーシャさんが、一番、悲しむよ』
『えっ?! アリーシャさんが?』
『そんな考えじゃ、命がけでユメちゃんを助けた、アリーシャさんは、浮かばれないよ。もちろん、アリーシャさんの、優しさや勇敢さもあると思う。でも、きっと、ユメちゃんの、未来を守りたかったんだよ』
『私の……未来?』
もちろん、あの咄嗟の瞬間に、そこまで考えていたかは分からない。でも――。
『アリーシャさんの、夢や未来は、ユメちゃんに託されたんじゃないのかな? だから、そんな悲しい考えをしたら、アリーシャさんだって悲しいよ。ユメちゃんの命は、二人分なんだから……』
アリーシャさんが、体を張ったおかげで、ユメちゃんは、奇跡的に助かった。だから、ユメちゃんの命は、アリーシャさんのものでもあると思う。もちろん、それを、どう受け止めるかは、ユメちゃん自身なんだけど――。
再び、メッセージが途切れた。私はELの画面をボーっと眺めながら、冷静に考える。
ちょっと、言い過ぎてしまっただろうか? 彼女は死の恐怖を味わい、外に一歩も出られなくなるぐらい、深く心が傷ついている。現実を認識させるより、温かい言葉を掛けたほうが、良かったのだろうか……?
でも、このままじゃ、ユメちゃんは、一生、部屋にこもったままだ。どこかで、現実に目を向けて、一歩前に、進まなければならない。
アリーシャさんを失って、一番ショックを受けたリリーシャさんだって、しっかり立ち直って、前に進み始めたのだから。ユメちゃんだって、きっと立ち直って、前に進めるはずだ。ユメちゃんは、賢い子だから、絶対にできると信じている。
刻一刻と、時間が過ぎて行く。途中、リチャードさんが、様子を見に来たけど、私は軽く笑みを浮かべて頷くと、彼は察して、静かに立ち去って行った。
すでに、先ほどのメッセージから、二十分以上が経過している。やっぱり、先ほどのセリフは失言だったのでは? 二人分の命だなんて、単にプレッシャーを与えてしまっただけではないだろうか?
時間が経つにつれ、少しずつ、不安が大きくなって行く。元々私は、ボキャブラリが少ないし、人を説得するのには、向いてない。私の言い方のせいで、余計に傷つけてしまったのでは――?
悶々と考え込んでいると、私が寄りかかっていた扉とは、反対側の扉が、ほんの少しだけ開いた。そのスキマからは、小さな顔が覗いている。彼女の目は、真っ赤になっていた。
「まだ、帰らずにいてくれたんだ……」
ユメちゃんの声は、少し涙声でかすれていた。
「うん。ユメちゃんに追い出されるまで、ずっといるよ」
「こんな、情けない私なのに。まだ、見捨てないでいてくれるの――?」
「何言ってるの。情けないのは、私のほうだよ。今までだって、いつも助けられてたの、私のほうじゃない。それに、私たち親友でしょ?」
私が、こちらの世界に来て、誰も知り合いがいなかったころ。真っ先に、友達になってくれたのが、ユメちゃんだった。
ELを始めて以来、私の愚痴を聴いてくれたり、色んなアドバイスをしてくれたり。どれほど救われてきたことか。
「でも、偉そうなことを言ってた割りに、こんな体たらくだもん。メッキがはがれて、幻滅したでしょ?」
「そんなことないよ。ユメちゃんは、ユメちゃんだもん。今までと、何も変わらないよ。そもそも、私なんて、メッキすらないからね」
「やっぱり、風ちゃんは、風ちゃんだね。私が、一番、大好きで。一番、尊敬する、最高のシルフィード。本当に、風ちゃんに出会えてよかった」
「私もだよ。私も、ユメちゃんに出会えてよかった。アリーシャさんに感謝だね」
暗く沈んでいたユメちゃんの顔に、ようやく笑顔が浮かんだ。
「ねぇ、風ちゃん。私を助けてくれる――? 私、もう一度、外に出たい」
「もちろん。どこにだって、連れ出してあげるよ」
私は、扉の隙間に手を入れると、彼女の白く小さな手を、ギュッと握り締めるのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『明るい世界への最初の一歩を踏み出す勇気』
この一歩はすごく広い世界につながってるんだ
昨晩も、ELで普通にやり取りしてたし、いつも通り、明るく会話をしていた。インドアなのは、知っていたけど、彼女は、とても明るく前向きな性格だ。心の病を持っているようには、全く見えなかった。
でも、よくよく考えて見ると、何となく思い当たる節もある。今まで、イベントのたびに会話してたけど、どこかに参加した、という話は聴いていない。いつも、部屋で本を読んでいる話ばかりだった。
あと、毎日、色んな写真を送ってあげると、物凄く喜んでいた。普通に、外に出ていれば、そこまで珍しいものでは無いと思う。
家に引きこもること自体は、そんなに珍しくはない。向こうの世界でも、引きこもりは、年々増加しており、社会問題にもなっていた。だから、特に隠すようなことではないと思う。
ユメちゃんは、何で、今まで黙っていたのだろうか? 引きこもりの件は、置いとくとして。事故に巻き込まれた、当事者なのだから。〈ホワイト・ウイング〉のことは、誰よりも知っているはずだ。
事故を思い出したくなければ、私と関わりを持たないのが、一番だと思う。なのに、最初に声を掛けてくれたのは、ユメちゃんからだった。
私がスピに、毎日、練習飛行中に撮った、街の風景写真をのせていたら、ユメちゃんがコメントを付けてくれたのだ。それがキッカケで、ELで話すようになった。
私は、スピのプロフィールに、シルフィードをやっていることも〈ホワイト・ウイング〉に所属しているのも、書いてある。だから、最初から、全て知っていたはずだ。
ELを始めたあと、彼女は、いつも楽しそうで、とても優しくて。この世界で、初めてできた友達で。私にとって、かけがえのない存在だった。
いつも明るくて、ポジティブで、時々凄くハイになって。まるで影がなく、太陽のような存在で、よいイメージしかない。
でも、先ほど見たユメちゃんは、完全に別人だった。まるで明るさがなく、深い闇を抱えている感じだった。
考えれば考えるほど、彼女のことが、分からなくなって行く……。
「もう少し、詳しく教えていただいても、いいですか? 事故に巻き込まれたあと、何があったのかも――」
あまり、立ち入って訊いていい話ではない。でも、私の考えだけでは、分からないことが多すぎる。それに、どんなに重く辛い過去でも、知っておかないと、彼女の力にはなれないと思う。
リチャードさんは、小さく頷くと、静かに話し始めた。
「あの事故は、とても大変なものでした。ゴンドラに乗っていた方々は、全員、亡くなられてしまいました。お嬢様を助けてくださった、アリーシャ様も、非常に残念なことに……」
リチャードさんが、静かに視線を向けてくると、私は、無言で頷いた。私も、初めて話を聴いた時は、激しく動揺したけど、今はしっかり受け止めている。
「お嬢様は、奇跡的に助かりましたが、ゴンドラの下敷きになった左足は、複雑骨折。最悪、足を切断しなければならないほどの、重症でした。しかし、一流の名医に見ていただいたことも有り、奇跡的に回復したのです」
「その後、リハビリも行い、普通に歩けるまでに、回復しました。しかし、どうしても、治らない問題もあったのです――」
彼の表情が、一層、深刻的になる。
「お嬢様は、病院に運ばれ目覚めたあと、先ほどのような、錯乱状態を繰り返していました。鎮静剤を打ったり、カウンセリングを受けて、一応は落ち着きましたが。あの事故以来、空への恐怖心が、拭い去れなくなってしまったのです」
「外に出ることはおろか、窓から空を眺めることすら、出来なくなりました。部屋にいる時も、カーテンを閉め、けっして、窓際には近づかなくなったのです」
私は、ふと、先ほど部屋に入った時の、妙な違和感を思い出した。
「じゃあ、部屋の半分にしか、物が置いてなかったのは……?」
「はい。窓際を避けて、全て壁際に置いてあるのです」
なるほど、そういう事だったんだ――。単なる、引きこもりとか、そんな簡単な問題じゃなかった。今もまだ、深く深く傷ついているんだ。
しかも、自分が死に掛けただけでなく、沢山の人の死を、目の当たりにしている。私だって、アリーシャさん一人の、死を受け止めるだけで、時間が掛かったのに。
それが、現場にいて、目の前で起こって。しかも、何人もの人が、命を落としたとしたら、私よりも年下の少女が受け止めるには、あまりに辛すぎる……。
あぁ――。私は、また気付けなかった。リリーシャさんの件で、人の気持ちを、よく考えるようにしようと思ったのに……。
私は、ユメちゃんのこと、何も気づいてあげられなかった。それどころか、私のほうが、いつも助けられてばかりだ――。
いったい、どうすれば、彼女を心を救ってあげられるのだろうか……?
******
私は、ユメちゃんの部屋の扉の前にいた。先ほどまで、リチャードさんから、詳しく話を聴いていたけど、心の傷は、相当に深いようだ。あと、ユメちゃんは、かなり頑固なところがあるらしい。
先ほど取り乱た様子を考えると、普通に話すのは、難しそうだ。それ以前に、もう二度と、私とは、口をきいてくれないかもしれない。
だとしても、私にとってユメちゃんは、大切な親友だ。一番つらい時期に、ずっと支え続けてくれたのは彼女だった。私の人生の中で、最も大事な親友かもしれない。
だから、例えどんなに嫌われようとも、絶対に、放ってはおけない。今度は、私が彼女を支える番だ。
私は、大きく深呼吸したあと、マギコンを取り出し、ELを起動した。怖くて、一瞬、指が止まる。でも、意を決して、少し震える指で、メッセージを打ち込ん行く。
怖い……怖い……。
親友に嫌われてしまうのも、親友の心の傷に触れるのも。何より、彼女を、より傷つけてしまうかもしれないのが、とんでもなく怖かった。上手く話せる自信が、全くない――。
怖い……怖い……物凄く怖い……。
何てメッセージを書くべきか、必死に考える。でも、あえて、先ほどの話題には触れず、いつも通りのノリで送ることにした。私、馬鹿だから、気の利いた言葉なんて、何も思いつかない――。
『ユメちゃん、こんにちは。元気?』
はたから見たら、とんでもなく、無神経な内容かもしれない。どう考えたって、元気なはずが無いんだから。でも、変に気遣った内容は、逆効果だと思ったからだ。
ユメちゃんは、けっして、同情して欲しい訳じゃないと思う。相手が、友達であれば、なおさらだ。友達に同情されるのは、逆に、辛い場合もあるから……。
いつもなら、送った瞬間に、メッセージが返って来ていた。でも、今日は、返信が来なかった。こうなることは、最初から想像していたけど、やっぱり辛い。もう、二度と、返信してくれないのだろうか――?
私は、扉の前に、静かに座り込む。今、私にできるのは、待つことだけだ。でも、待つだけって、本当に辛い。私は、膝を抱えて、じっと待ち続ける。
扉の前に座り込んでから、三十分が経過した。『もう、ダメなのかな……?』と、半ばあきらめかけた時、メッセージの着信音が鳴った。私は、慌ててメッセージを確認する。
『全然、元気じゃない。死にたい気分』
いつも明るいユメちゃんからは、考えられない内容で、まるで別人のようだった。それでも、返信してくれたことが、凄く嬉しい。
『ゴメンね。私が急に行ったから、嫌な気分にさせちゃって。まさか、相手がユメちゃんだなんて、全然、知らなかったから』
全く、一ミリも、想像できなかった。だって、余りにも、イメージと正反対すぎて。結びつく要素が、何一つなかったからだ。
『風ちゃんは、全然、悪くない。リチャードが、全て悪いんだから。私も、聴いてなかったし』
『サプライズだったみたいだよ。ユメちゃんを、喜ばせようとして』
『サプライズって――。確かに、超驚いたけど、やり過ぎだよ。私、心臓が止まるかと思ったもん』
『私も、最近の中で、一番、驚いたよ』
もっとも、私は、ユメちゃんを見たことないから、リチャードさんに、話を聴いてから、初めて驚いたんだけど。でも、ユメちゃんは、MVで私を見て知っていたから、そうとう驚いたはずだ。
『ごめんね。嫌な姿、見せちゃって……』
『へーき、へーき。あれぐらい、私だってやるもん』
『そうなの?』
『家出した時の大喧嘩なんて、あんなレベルじゃなかったよ。感情的になって、滅茶苦茶、酷いセリフを、怒鳴り散らしてたし。それで、実家に帰り辛かったんだ――』
人って感情的になると、とんでもないことを、平気で口にするよね。
『風ちゃんでも、怒ったりするんだ?』
『そりゃ、怒るよ。そもそも私、凄く感情的な人間だもん』
それから、しばらくの間、メッセージが途絶えた。何かを、考えているのかもしれない。私は、次の言葉をじっと待ち続けた。
数分後……。
『風ちゃん、ゴメンね。今まで、色々嘘をついちゃって』
新しいメッセージが、送られて来る。
『いいって、そんなの。私は、毎日、楽しくお話ししてたし。ユメちゃんが元気なら、それだけで十分だよ。学校、行かなくたって、ユメちゃん頭いいし』
ユメちゃんは、本当に、物知りで頭がいい。だから、学校に行っていることを、疑いもしなかった。毎日、学校に行ってた私より、頭がいいんだから――。
『ううん、そっちじゃなくて、事故のこと。隠してて、本当にごめんなさい……』
『何で、そんなこと気にするの? 別に、わざわざ、言うことでもないんじゃない?』
再び、メッセージが途切れた。
いくら友達だからって、全てを話さなければ、ならない訳じゃない。わざわざ、過去の嫌な話を、出す必要はないもんね。私が家出の話をしなかったのも、重くしたくなかったからだ。
『――だって、私のせいで、アリーシャさんが、死んじゃったんだよ。私を助けなければ、アリーシャさんは生きてたんだよ。私が死んでいれば、あんな大事件には、ならなかったのに……』
えぇっ?! ユメちゃん、そんな風に考えてたの――?
『本当は、最初から、ちゃんと言うべきだった。風ちゃんから、あの事件の話が出た時だって、言おうと思えば、言えたのに。怖くて、言えなかった……。ゴメンね、本当に、ゴメンね――』
まるで、ユメちゃんの心の痛みが、直接、伝わって来るようなメッセージだった。私の心まで、ズキズキと痛み始めた。
『何で謝るの? ユメちゃんは、何一つ悪くないよ。ただの被害者なんだから。それに、そんな悲しいこと言わないで。私は、ユメちゃんが生きてくれていて、物凄く嬉しいよ』
『アリーシャさんには、申しわけないけど。私は、ユメちゃんが生きてくれていて、本当に良かった。そうじゃなきゃ、大事な親友に、出会えなかったんだから』
これは、偽りのない、私の本心だった。どちらか一人しか選べないなら、私は迷わず、ユメちゃんを選ぶだろう。
『本当に……そう思う? みんなは「助けるべきじゃなかった」って言ってるよ。どう考えたって、生き残るべきは、アリーシャさんのほうだったでしょ? だって、誰からも愛され、尊敬されていた、伝説のシルフィードなんだから』
『私なんか、いなくなったって、誰も悲んだりなんかしないし。もし、私が死んでいたとしたら、とっくに忘れられてたよ――』
そうじゃない……そうじゃないよ、ユメちゃん――。
『違うっ!! 絶対にそんなことないよ! 悲しむ人はいるよ。ご家族も、リチャードさんも。それに、そんなことを言ったら、アリーシャさんが、一番、悲しむよ』
『えっ?! アリーシャさんが?』
『そんな考えじゃ、命がけでユメちゃんを助けた、アリーシャさんは、浮かばれないよ。もちろん、アリーシャさんの、優しさや勇敢さもあると思う。でも、きっと、ユメちゃんの、未来を守りたかったんだよ』
『私の……未来?』
もちろん、あの咄嗟の瞬間に、そこまで考えていたかは分からない。でも――。
『アリーシャさんの、夢や未来は、ユメちゃんに託されたんじゃないのかな? だから、そんな悲しい考えをしたら、アリーシャさんだって悲しいよ。ユメちゃんの命は、二人分なんだから……』
アリーシャさんが、体を張ったおかげで、ユメちゃんは、奇跡的に助かった。だから、ユメちゃんの命は、アリーシャさんのものでもあると思う。もちろん、それを、どう受け止めるかは、ユメちゃん自身なんだけど――。
再び、メッセージが途切れた。私はELの画面をボーっと眺めながら、冷静に考える。
ちょっと、言い過ぎてしまっただろうか? 彼女は死の恐怖を味わい、外に一歩も出られなくなるぐらい、深く心が傷ついている。現実を認識させるより、温かい言葉を掛けたほうが、良かったのだろうか……?
でも、このままじゃ、ユメちゃんは、一生、部屋にこもったままだ。どこかで、現実に目を向けて、一歩前に、進まなければならない。
アリーシャさんを失って、一番ショックを受けたリリーシャさんだって、しっかり立ち直って、前に進み始めたのだから。ユメちゃんだって、きっと立ち直って、前に進めるはずだ。ユメちゃんは、賢い子だから、絶対にできると信じている。
刻一刻と、時間が過ぎて行く。途中、リチャードさんが、様子を見に来たけど、私は軽く笑みを浮かべて頷くと、彼は察して、静かに立ち去って行った。
すでに、先ほどのメッセージから、二十分以上が経過している。やっぱり、先ほどのセリフは失言だったのでは? 二人分の命だなんて、単にプレッシャーを与えてしまっただけではないだろうか?
時間が経つにつれ、少しずつ、不安が大きくなって行く。元々私は、ボキャブラリが少ないし、人を説得するのには、向いてない。私の言い方のせいで、余計に傷つけてしまったのでは――?
悶々と考え込んでいると、私が寄りかかっていた扉とは、反対側の扉が、ほんの少しだけ開いた。そのスキマからは、小さな顔が覗いている。彼女の目は、真っ赤になっていた。
「まだ、帰らずにいてくれたんだ……」
ユメちゃんの声は、少し涙声でかすれていた。
「うん。ユメちゃんに追い出されるまで、ずっといるよ」
「こんな、情けない私なのに。まだ、見捨てないでいてくれるの――?」
「何言ってるの。情けないのは、私のほうだよ。今までだって、いつも助けられてたの、私のほうじゃない。それに、私たち親友でしょ?」
私が、こちらの世界に来て、誰も知り合いがいなかったころ。真っ先に、友達になってくれたのが、ユメちゃんだった。
ELを始めて以来、私の愚痴を聴いてくれたり、色んなアドバイスをしてくれたり。どれほど救われてきたことか。
「でも、偉そうなことを言ってた割りに、こんな体たらくだもん。メッキがはがれて、幻滅したでしょ?」
「そんなことないよ。ユメちゃんは、ユメちゃんだもん。今までと、何も変わらないよ。そもそも、私なんて、メッキすらないからね」
「やっぱり、風ちゃんは、風ちゃんだね。私が、一番、大好きで。一番、尊敬する、最高のシルフィード。本当に、風ちゃんに出会えてよかった」
「私もだよ。私も、ユメちゃんに出会えてよかった。アリーシャさんに感謝だね」
暗く沈んでいたユメちゃんの顔に、ようやく笑顔が浮かんだ。
「ねぇ、風ちゃん。私を助けてくれる――? 私、もう一度、外に出たい」
「もちろん。どこにだって、連れ出してあげるよ」
私は、扉の隙間に手を入れると、彼女の白く小さな手を、ギュッと握り締めるのだった……。
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次回――
『明るい世界への最初の一歩を踏み出す勇気』
この一歩はすごく広い世界につながってるんだ
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大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
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異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
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・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
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追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
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前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
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