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第5部 厳しさにこめられた優しい想い
1-1目が覚めたら真っ白な世界にフワフワと浮いていた
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私は、頬にかすかな風を感じ、目を開けた。何だか、体がふわふわと、妙に軽くなった気がする。まるで、無重力空間にいるようだ。ここは、真っ白で、何もない世界。上も白、下も白。太陽はないのに、物凄く明るかった。
全てが真っ白で、空も地面も見えない。それどころか、何一つ、見当たらなかった。ただ、真っ白なだけの世界。以前『ノア・マラソン』の時に見た、真っ暗な不思議空間とは、完全に真逆だった。私はそこに、フワフワと浮かんでいた。
「何だろう、ここ……?」
以前と違って、ちゃんと声は出る。試しに、手を握ったり開いたりするが、普通に動くし、腕も足も正常だった。
「生きてる? いや、死んじゃったのかな――?」
浮かんだまま、色々考えてみるが、何一つ思い出せない。直前に、何か起こったような、気がするんだけど……。
しばらくの間、風を浴びながら、静かに浮かんでいた。まるで、波の上を漂っているみたいで、とても気持ちがいい。ずっと、このままでも、いいかも――。
でも、しばらくすると、
「やっぱ、飽きてきた」
落ち着きのない私が、長時間、じっとしていられる訳がなかった。
「とりえあえず移動して、ここがどこだか、調べてみよう。細かいことは、その時、考えればいいよね」
私は、腕をグルグル動かし、足をバタバタさせた。『クロールすれば、移動できるかなぁー』なんて思ったので……。
だが、いくらジタバタしても、全く前に進まない。その代わりに、足が何かに触れた感覚があった。足の裏に意識を向けてみると、いつの間にか、私は地面の上に立っていた。
「あ、あれっ? どうなってるの、コレ――?」
地面というのは、正確じゃないかもしれない。なぜなら、しっかりとした感触はあるのに、真っ白なだけで、何も見えないからだ。手で触ると、何か地面らしき、硬いものを感じる。
「それにしても、驚きの白さだよね。何もかもが、真っ白って」
私は、地面の感触を確かめながら、周囲を見回した。でも、本当に何もない。もちろん、誰もいない。見回している内に、ちょっぴり、不安になってきた。
「やっぱ、天国なのかな、ここ? でも、誰もいないってのも、おかしいよね? プライベート・ビーチ的な、プライベート天国? 今の時代は、パーソナル・スペースって、大事だもんねぇー」
私は、ブツブツとつぶやきなら、ゆっくり歩き始めた。くだらないことを言ってるのは、自分でも分かっている。でも、誰もいないと寂しいので、つい……。
そういえば、先ほどから、体に心地よい風を感じている。何もないのに、どこから、風が吹いて来ているんだろうか?
私は目を閉じ、五感を研ぎ澄ませ、風の流れを感じ取る。風は、色んな方向から吹いていた。まるで、私の周りで、グルグル回るかのように。
この感じって、以前もどこかで――。
そういえば、フィニーちゃんと、初めて会った日。〈風車丘陵〉に、連れて行ってもらったんだった。
その時『マナライン』が、複数交差している場所で、こんな風が吹いていた。まるで、風がダンスでもしているような、不思議な感覚だったのを思い出す。
私は、ゆっくりと目を開いた。すると、何か透き通ったものが、目の前を横切って行った。目を凝らしてみると、そこら中に、同じものが見える。透明な何かが、不規則に宙を舞っていた。
しばらく眺めていると、段々ハッキリと見えて来る。それは、透き通った体をした、女性の姿だった。よく見ると、辺り一面に、数え切れなほど、たくさん飛び回っていた。通り過ぎる度に、柔らかな風が、体をなでて行く。
「これって、風の精霊……?」
私は、その不思議な光景に目を奪われ、ボーッと立ち尽くしていた。
「キレイ――それに、凄く気持ちいい。風の精霊って、本当にいたんだね。でも、そうすると、ここは天国じゃないのかな? まぁ、いっか……」
風がとても心地よいので、心が穏やかになって行く。私は、再び目を閉じて、風に身をゆだねた。
しばらくの間、心地よい風を楽しんでいると、遠くから、何かが聞こえてきた。歌声――かな? ん、歌声って?
「これ、何度か聴いたことある……」
私は、パッと目を開くと、歌声の聞こえてくる方向を探す。
以前、向こうの世界にいた時、何度か『風の歌』を聴いたことがある。誰も信じてくれなかったし、気のせいかと思ってた。でも、間違いなく、あの時と同じ歌声が、ハッキリと聞こえてくるのだ。
しかし、周りが真っ白で、何の目印も無いので、どこから聞こえて来ているのか、まったく分からない。
「どこ――どこにいるの……?」
私は、キョロキョロしながら、声の主を必死に探す。なぜだかは、分からない。けど、どうしても、会ってみたい気持ちに、強く駆られていた。
その時、私の目の前で、一人の風の精霊が、クルリと宙返りをする。そのあと、ゆっくり前に進むと、私のほうに向き直った。まるで『ついて来て』とでも、言っているようだった。私は、彼女のあとについて、ゆっくり歩き始める。
歩き始めてすぐに、目の前に道が現れた。光の筋が、真っ直ぐ前に伸びている。しかも、不規則に飛んでいた風の精霊たちが、全員、光の先のほうに進み始めた。
前に進み続けると、かなり先のほうに、ひときわ明るい光が見えて来る。凄く明るいけど、眩しくはなかった。少し緑がかった、とても柔らかな光だ。もしかすると、この世界を明るく照らし出している、光源かも知れない。
光に近付くにつれ、風の精霊の数が、どんどん増えて行く。突然、風の精霊たちが、私の周りをグルグルと回り始めた。私は宙に浮き、物凄いスピードで飛んでいった。
やがて、ピタッと止まると、ゆっくり地面に着地する。目の前には、大きな椅子に座った、一人の女性がいた。体が物凄く大きい。座っていても、三メートル以上はありそうだ。
他の精霊たちと違い、体は透けていない。パッと見、体の大きさ以外は、人間と変わらなかった。でも、言葉では言い表せない、神秘的な容姿だ。
緑の長い髪、緑の瞳、透き通るような白い肌に、整った顔立ち。とても美しい女性だった。全身からは、緑色の光を発している。
「神様……? いや、シルフィード――?」
私がつぶやくと、彼女は、優し気な微笑みを浮かべた。
あぁ、間違いない……。この人が『蒼空の女王』シルフィードなんだ。でも、まさか、本当にいただなんて。ただの、伝承じゃなかったんだ――。
彼女はゆっくりと、私の後方を指さした。私が振り向いてみると、そこには黒い穴のようなものが、ぽっかりと開いている。
次の瞬間、私の体は、再び浮き上がると、黒い穴のほうに飛んで行く。私は、手足を動かして、ジタバタと抵抗するが、とても強い力で、穴の中に吸い込まれていった……。
******
私は、暗闇の中を漂っていた。何もない、真っ暗なだけの世界。でも、少し先に、ほんの小さな光が見えた。私は、その光に向かって、必死に手を伸ばす。次の瞬間、誰かに手を取られた。
温かくて、柔らかくて、優しい手。なんだろう? 私はこの手を、よく知っている気がする。私はその手を、強く握り返した。すると、目の前が急に明るくなり、視界が広がっていく。
「……」
瞬きしてよく見ると、天井には、マナ・イルミネーションの、白く明るい光が浮かんでいた。光が眩しくて、一瞬、目を閉じる。
――ん? 天井? 何で……?
ゆっくり、横に顔を向けると、そこには、リリーシャさんがいた。私の手を、しっかりと握りしめ、心配そうに私を見つめている。
あぁ、この手の感触。リリーシャさんの手だったんだ――。
「風歌ちゃん、気付いたのね? 体はどう? 痛いところとか、おかしな感じはない?」
リリーシャさんの、手を握る力が、少し強くなった。
「あぁ……はい。特には」
今一つ、状況がつかめていない。でも、体に痛みなどは、全くなかった。
そもそも私、どうしたんだっけ? 意識がボーッとしていて、全然、頭が回らない。
「そう、よかった――本当に、よかった」
リリーシャさんは、私の手を持ち上げ、両手でギュッと握りしめる。よく見ると、彼女の目は、少し涙ぐんでいた。
リリーシャさん、何でそんな顔を? 何か、あったんだよね? また、何か、迷惑をかけちゃったのかな? でも、何も思い出せない……。
必死に思い出そうとする、私の意思に反して、頭が全く動いてくれなかった。無理に思い出そうとすると、頭にズキズキした痛みが走る。
私は、状況を確かめるために、体を起こそうとした。だが、
「ダメよ、まだ起きちゃ。三日間も、眠ったままだったのだから」
すぐに、リリーシャさんに止められた。
「え――三日間も? いったい……何があったんですか?」
「何も、覚えていないの――?」
「……すいません。何か、頭がボーッとしていて。何も考えられなくて」
三日間も寝ていたなんて。どうりで、頭が重いわけだ。
「今は、無理に思い出さなくてもいいわ。今、お医者様を呼ぶから、そのまま、じっとしていてね」
リリーシャさんは、そう言うと、ナースコールで呼び出しを行なう。
どうやらここは、病院らしい。となると、三日間、このベッドで、寝てたってこと? じゃあ、リリーシャさんも、ずっとそばに、いてくれたんだろうか?
視線を横を向けると、窓の外は真っ暗だった。部屋の時計を見ると、二十一時を回っている。
私、いったい、何をやったんだろう? それに、何か変な夢を、見ていたような――。うーん、でも、どうしても思い出せない。まるで、頭が思い出すことを、拒絶しているようだった。
とても、大事な内容の夢だったような、気もするんだけど……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『見えないはずの光が見えるのは記憶障害のせいだろうか?』
月の光は彫刻で、日の光は絵画である
全てが真っ白で、空も地面も見えない。それどころか、何一つ、見当たらなかった。ただ、真っ白なだけの世界。以前『ノア・マラソン』の時に見た、真っ暗な不思議空間とは、完全に真逆だった。私はそこに、フワフワと浮かんでいた。
「何だろう、ここ……?」
以前と違って、ちゃんと声は出る。試しに、手を握ったり開いたりするが、普通に動くし、腕も足も正常だった。
「生きてる? いや、死んじゃったのかな――?」
浮かんだまま、色々考えてみるが、何一つ思い出せない。直前に、何か起こったような、気がするんだけど……。
しばらくの間、風を浴びながら、静かに浮かんでいた。まるで、波の上を漂っているみたいで、とても気持ちがいい。ずっと、このままでも、いいかも――。
でも、しばらくすると、
「やっぱ、飽きてきた」
落ち着きのない私が、長時間、じっとしていられる訳がなかった。
「とりえあえず移動して、ここがどこだか、調べてみよう。細かいことは、その時、考えればいいよね」
私は、腕をグルグル動かし、足をバタバタさせた。『クロールすれば、移動できるかなぁー』なんて思ったので……。
だが、いくらジタバタしても、全く前に進まない。その代わりに、足が何かに触れた感覚があった。足の裏に意識を向けてみると、いつの間にか、私は地面の上に立っていた。
「あ、あれっ? どうなってるの、コレ――?」
地面というのは、正確じゃないかもしれない。なぜなら、しっかりとした感触はあるのに、真っ白なだけで、何も見えないからだ。手で触ると、何か地面らしき、硬いものを感じる。
「それにしても、驚きの白さだよね。何もかもが、真っ白って」
私は、地面の感触を確かめながら、周囲を見回した。でも、本当に何もない。もちろん、誰もいない。見回している内に、ちょっぴり、不安になってきた。
「やっぱ、天国なのかな、ここ? でも、誰もいないってのも、おかしいよね? プライベート・ビーチ的な、プライベート天国? 今の時代は、パーソナル・スペースって、大事だもんねぇー」
私は、ブツブツとつぶやきなら、ゆっくり歩き始めた。くだらないことを言ってるのは、自分でも分かっている。でも、誰もいないと寂しいので、つい……。
そういえば、先ほどから、体に心地よい風を感じている。何もないのに、どこから、風が吹いて来ているんだろうか?
私は目を閉じ、五感を研ぎ澄ませ、風の流れを感じ取る。風は、色んな方向から吹いていた。まるで、私の周りで、グルグル回るかのように。
この感じって、以前もどこかで――。
そういえば、フィニーちゃんと、初めて会った日。〈風車丘陵〉に、連れて行ってもらったんだった。
その時『マナライン』が、複数交差している場所で、こんな風が吹いていた。まるで、風がダンスでもしているような、不思議な感覚だったのを思い出す。
私は、ゆっくりと目を開いた。すると、何か透き通ったものが、目の前を横切って行った。目を凝らしてみると、そこら中に、同じものが見える。透明な何かが、不規則に宙を舞っていた。
しばらく眺めていると、段々ハッキリと見えて来る。それは、透き通った体をした、女性の姿だった。よく見ると、辺り一面に、数え切れなほど、たくさん飛び回っていた。通り過ぎる度に、柔らかな風が、体をなでて行く。
「これって、風の精霊……?」
私は、その不思議な光景に目を奪われ、ボーッと立ち尽くしていた。
「キレイ――それに、凄く気持ちいい。風の精霊って、本当にいたんだね。でも、そうすると、ここは天国じゃないのかな? まぁ、いっか……」
風がとても心地よいので、心が穏やかになって行く。私は、再び目を閉じて、風に身をゆだねた。
しばらくの間、心地よい風を楽しんでいると、遠くから、何かが聞こえてきた。歌声――かな? ん、歌声って?
「これ、何度か聴いたことある……」
私は、パッと目を開くと、歌声の聞こえてくる方向を探す。
以前、向こうの世界にいた時、何度か『風の歌』を聴いたことがある。誰も信じてくれなかったし、気のせいかと思ってた。でも、間違いなく、あの時と同じ歌声が、ハッキリと聞こえてくるのだ。
しかし、周りが真っ白で、何の目印も無いので、どこから聞こえて来ているのか、まったく分からない。
「どこ――どこにいるの……?」
私は、キョロキョロしながら、声の主を必死に探す。なぜだかは、分からない。けど、どうしても、会ってみたい気持ちに、強く駆られていた。
その時、私の目の前で、一人の風の精霊が、クルリと宙返りをする。そのあと、ゆっくり前に進むと、私のほうに向き直った。まるで『ついて来て』とでも、言っているようだった。私は、彼女のあとについて、ゆっくり歩き始める。
歩き始めてすぐに、目の前に道が現れた。光の筋が、真っ直ぐ前に伸びている。しかも、不規則に飛んでいた風の精霊たちが、全員、光の先のほうに進み始めた。
前に進み続けると、かなり先のほうに、ひときわ明るい光が見えて来る。凄く明るいけど、眩しくはなかった。少し緑がかった、とても柔らかな光だ。もしかすると、この世界を明るく照らし出している、光源かも知れない。
光に近付くにつれ、風の精霊の数が、どんどん増えて行く。突然、風の精霊たちが、私の周りをグルグルと回り始めた。私は宙に浮き、物凄いスピードで飛んでいった。
やがて、ピタッと止まると、ゆっくり地面に着地する。目の前には、大きな椅子に座った、一人の女性がいた。体が物凄く大きい。座っていても、三メートル以上はありそうだ。
他の精霊たちと違い、体は透けていない。パッと見、体の大きさ以外は、人間と変わらなかった。でも、言葉では言い表せない、神秘的な容姿だ。
緑の長い髪、緑の瞳、透き通るような白い肌に、整った顔立ち。とても美しい女性だった。全身からは、緑色の光を発している。
「神様……? いや、シルフィード――?」
私がつぶやくと、彼女は、優し気な微笑みを浮かべた。
あぁ、間違いない……。この人が『蒼空の女王』シルフィードなんだ。でも、まさか、本当にいただなんて。ただの、伝承じゃなかったんだ――。
彼女はゆっくりと、私の後方を指さした。私が振り向いてみると、そこには黒い穴のようなものが、ぽっかりと開いている。
次の瞬間、私の体は、再び浮き上がると、黒い穴のほうに飛んで行く。私は、手足を動かして、ジタバタと抵抗するが、とても強い力で、穴の中に吸い込まれていった……。
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私は、暗闇の中を漂っていた。何もない、真っ暗なだけの世界。でも、少し先に、ほんの小さな光が見えた。私は、その光に向かって、必死に手を伸ばす。次の瞬間、誰かに手を取られた。
温かくて、柔らかくて、優しい手。なんだろう? 私はこの手を、よく知っている気がする。私はその手を、強く握り返した。すると、目の前が急に明るくなり、視界が広がっていく。
「……」
瞬きしてよく見ると、天井には、マナ・イルミネーションの、白く明るい光が浮かんでいた。光が眩しくて、一瞬、目を閉じる。
――ん? 天井? 何で……?
ゆっくり、横に顔を向けると、そこには、リリーシャさんがいた。私の手を、しっかりと握りしめ、心配そうに私を見つめている。
あぁ、この手の感触。リリーシャさんの手だったんだ――。
「風歌ちゃん、気付いたのね? 体はどう? 痛いところとか、おかしな感じはない?」
リリーシャさんの、手を握る力が、少し強くなった。
「あぁ……はい。特には」
今一つ、状況がつかめていない。でも、体に痛みなどは、全くなかった。
そもそも私、どうしたんだっけ? 意識がボーッとしていて、全然、頭が回らない。
「そう、よかった――本当に、よかった」
リリーシャさんは、私の手を持ち上げ、両手でギュッと握りしめる。よく見ると、彼女の目は、少し涙ぐんでいた。
リリーシャさん、何でそんな顔を? 何か、あったんだよね? また、何か、迷惑をかけちゃったのかな? でも、何も思い出せない……。
必死に思い出そうとする、私の意思に反して、頭が全く動いてくれなかった。無理に思い出そうとすると、頭にズキズキした痛みが走る。
私は、状況を確かめるために、体を起こそうとした。だが、
「ダメよ、まだ起きちゃ。三日間も、眠ったままだったのだから」
すぐに、リリーシャさんに止められた。
「え――三日間も? いったい……何があったんですか?」
「何も、覚えていないの――?」
「……すいません。何か、頭がボーッとしていて。何も考えられなくて」
三日間も寝ていたなんて。どうりで、頭が重いわけだ。
「今は、無理に思い出さなくてもいいわ。今、お医者様を呼ぶから、そのまま、じっとしていてね」
リリーシャさんは、そう言うと、ナースコールで呼び出しを行なう。
どうやらここは、病院らしい。となると、三日間、このベッドで、寝てたってこと? じゃあ、リリーシャさんも、ずっとそばに、いてくれたんだろうか?
視線を横を向けると、窓の外は真っ暗だった。部屋の時計を見ると、二十一時を回っている。
私、いったい、何をやったんだろう? それに、何か変な夢を、見ていたような――。うーん、でも、どうしても思い出せない。まるで、頭が思い出すことを、拒絶しているようだった。
とても、大事な内容の夢だったような、気もするんだけど……。
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次回――
『見えないはずの光が見えるのは記憶障害のせいだろうか?』
月の光は彫刻で、日の光は絵画である
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