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第4部 理想と現実
4-7牧場のソフトクリームなんて美味しいに決まってる
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軽い昼食を終えた午後。私は〈北地区〉の上空を飛んでいた。〈北地区〉は、あまり練習飛行には来ないけど、今日は大事な目的があった。実は、ソフトクリームを食べに来たんだよね。
先日、会社の事務所を掃除していたら、お客様の待合スペースで、ある雑誌に目がとまった。そこには、グリュンノアの『ご当地スイーツ特集』が載っていた。甘いもの好きの私が、激しく気になったのは、言うまでもない。
休憩時間にじっくり読んでみると、とある牧場の『プレミアム濃厚ソフト』が紹介されていた。滅茶苦茶、おいしそうだったので、見た瞬間、心が奪われてしまった。
しかし、値段を見た瞬間、絶望した。『五百八十ベル』と、プレミアム価格だったのだ。私の食費、二食分もする。ソフトクリーム1個にこれは、流石にぜいたく過ぎて、手が出ない。
ただ、人気スイーツって『観光客価格』になってる場合が、割と多いんだよね。中には、千ベルを超えるスイーツもあるし……。
でも、記事をよくよく見ていたら、月に一度『スペシャルデー』があるらしい。この日に限って『百ベル』で食べられるのだ。そんなの、もちろん食べに行くに決まってる! でもって、今日がその『スペシャルデー』だ。
ソフトクリームを、美味しくいただくために、昼食もパン一個で我慢した。もし、美味しかったら『二つ食べちゃおうかなー』なんて思ってる。甘いものなら、いくらでも食べられるからね。
もちろん、フィニーちゃんとナギサちゃんにも、声は掛けた。しかし、二人そろって都合が悪く、一緒には来れなかった。
ナギサちゃんは『また今度』と言ってたけど、フィニーちゃんは『仕事やめたい』とか、心底、残念がっていた。もちろん、辞めちゃ困るから、断固として止めたけどね――。
まぁ〈北地区〉だから、いつでも行けるし。『スペシャルデー』は毎月あるから、また今度、三人で来ればいいもんね。そんなわけで、今日は私一人で、下見に来ることにした。
〈北地区〉の住宅街を、真っ直ぐに抜けて行くと、やがて農業エリアが見えて来る。辺り一面、畑だらけだ。その田園風景の中に、牧場も点在している。
今回行く〈レインボー・ファーム〉は、住宅街から、かなり離れていた。徒歩で行くには遠すぎるし。乗り物に乗っても、かなり時間のかかる距離なので、観光客は来ないと思う。
そもそも、牧場に観光に行く人は、あまりいない。この町は、他にもたくさんの、観光名所や娯楽施設があるもんね。だから、地元の人向けの、穴場スイーツみたいな感じかな。
しばらく、真っ直ぐ飛んでいくと、目的の牧場が見えてきた。距離はあるけど、メインストリートに面しているので、分かりやすい。入り口には、七色の虹を描いた、大きな看板が立っていた。
私は少し高度を落とすと、駐車場に向かった。あまり人がいないかと思いきや、駐車場には、エア・カートやエア・ドルフィンが、かなり沢山とまっていた。空いてるスペースを見つけると、ゆっくり着陸する。
「へぇー、牧場に来る人って、結構いるんだね。しかも、平日なのに」
私は、上空から見ることはあっても、実際に農場に来ることはない。以前、道に迷っていた老紳士を、送って行ったことが有るぐらいだ。普段は、特に用がないもんね。
エア・ドルフィンを降りて、少し歩いて行くと、案内の空中モニターが表示されていた。そこには『プレミアム濃厚ソフト』の情報も書いてある。
「ふむふむ。次の十字路を右折して、五十メートル先の建物ね」
どうやら、牧場内に『直売所』があるみたい。牧場でとれた物とか、各種お土産を売っている建物だ。
私は意気揚々と軽い足取りで進み、十字路を右に曲がった。すると、だいぶ先のほうに、建物が見えた。ここから見る限り、かなり大きい。
道端には『お土産』『採れたてスイーツ』などの旗が立っているので、あそこで間違いなさそうだ。でも、その建物の道の途中で、女性がしゃがみ込んでいるのが目に入った。
こんな所で、どうしたんだろう? もしかして、具合が悪いとか?
万一、体調不良だったら大変ので、私は走って女性の元に向かった。
「どうされましたか?」
声を掛けると、老婦人は、ゆっくりこちらに向き直る。
「大事なペンダントを、落としてしまったようで……」
あぁ、調子が悪かったんじゃないのね。私は、ちょっとホッとした。
「私もお手伝いします。どこら辺で落としたのか、覚えていませんか?」
「それが、よく分からないの。あそこの直売店で買い物をして、その帰り道で、無くしてしまったことに気が付いて――」
彼女は、とても不安そうな表情で答える。
落とし物って、どこで落としたか分からないから、やっかいなんだよね。でも、この敷地内で落とした可能性は、十分にあると思う。
よし、ここは、全力でお手伝いしよう!
困った人を見つけたら、全力で手助けするのが、私のポリシーだ。いつも、助けられてばかりだから、こういう機会に、しっかりお返ししないとね。それに、シルフィードって、昔は人を助けるのが仕事だったみたいだし。
「だとすると、お店の中で、落としたかもしれませんね。私ちょっと見て来ます」
私は小走りで、直売所に向かった。
中に入ると、想像以上に大きな建物だった。広々して、色んな商品が置いてある。乳製品・ジャム・お菓子など。あとベーカリーがあって、焼き立てのパンも売っていた。
入ってすぐ左側には、何やら長蛇の列ができている。その行列の先頭を見ると『プレミアム濃厚ソフト』を販売していた。ざっと、三十人以上は並んでいる。
「うわっ、こんなに人いるの?!」
あまりの大盛況に、ビックリした。もっと、人少ないと思ってたのに。
って、違う違う。今は、落とし物を探さないと。床に落ちていたら、万一、踏まれてしまっては大変だ。
私は商品が並んでいる棚の前を歩きながら、床をくまなくチェックしていく。全ての棚の前を歩き、一通り見える部分は探してみた。でも、それらしきものは見つからない。
一応、スタッフの人に、落し物がなかった訊いてみる。しかし、ペンダントの落し物は、届いていないらしかった。
うーむ……店の中にないってことは、やっぱり外なのかな? いったん戻って、合流しよう。
私は、再び小走りで、老婦人の元に向かった。かがみ込んで探している彼女を見つけると、そっと声を掛けた。
「店内は、一通り探してみたんですけど、見つかりませんでした。店員さんにも訊いてみましたが、落し物は届いていないみたいです」
「そう。じゃあ、ここ以外で落としてしまったのかしら――?」
彼女は顔を曇らせながら答える。
「駐車場から、ここに来られたんですよね?」
「えぇ、エア・カートを停めてから、直売所に歩いて行ったの」
なるほど、なら駐車場付近の、可能性もあるかも。駐車場も、割と落とし物しやすい場所なんだよね。乗物から降りた瞬間に、落としちゃうこともあるんで。
「分かりました。じゃあ、駐車場からここまでの道を、見て来ますので。どんなカートか、教えていただけますか?」
これだけ一生懸命、探しているということは、とても大事なものに違いない。それに、落とし物をした時って、物凄く悲しい気分になるからね。何とかして、見つけてあげないと。
「それは、とても嬉しいのだけど。シルフィードのお仕事は、大丈夫なの? お忙しいのでしょ?」
「いいえ、それは問題ありません。私はまだ見習いなので、練習中ですし。今日は、ソフトクリームを食べに来ただけですので」
私は彼女を安心させるため、笑顔で元気一杯に答えた。
とはいえ、遊びに来たわけではないからね。人気のスイーツを食べるのも、ゆくゆくは、お客様を案内する時の勉強だから。ま、本音を言えば、単に食べたかっただけなんだけど……。
「あら、そうだったの。なら、お願いしようかしら」
「はい、お任せください。探し物は得意ですから」
普段、練習飛行中に、地上を観察する訓練は、探し物にも凄く役立つ。実際、シルフィードの仕事を始めてから、探し物が得意になったからね。
私は駐車場に走って向かうと、教えてもらったナンバーから、赤いエア・カートの機体を見つけ出した。まずは、機体の周辺から慎重にチェックしていく。他の機体の間なども、慎重に探していった。
駐車場内は、一通り回ってみたが、それらしきものは見つからない。なので、今度は直売所に続く道を探していく。歩いたであろう場所を確認しながら、十字路を右折して、再び先ほどの道に入った。
うーん、ここまでの間には、どこにもなかったよね。となると、やっぱりこの道のどこかに有るのかな――?
両側は畑になっており、柵が立っている。その柵の下には、草が生い茂っていた。もしかしたら、草の中に落ちてるかもしれない。
だとしたら、一つずつ、手探りで確認して行かないと……。ちょっと大変だけど、ここまで来たら、絶対に見つけないとね。
私はかがみ込むと、草の中に手を突っ込んで、ペンダントを探し始めた。直売所までの距離が長いので、物凄く根気のいる作業だ。かがみながらなので、膝や腰にも負担が掛かって、かなり大変だ。
でも、日ごろ、雑用や掃除で鍛えているのは、伊達じゃない。それに、こういう地道に体を動かす作業は、嫌いじゃなかった。
手探りしながら、ゆっくりと前に進んで行く。普通に歩けば、大した距離じゃない。でも、ちょっとずつしか進めないので、物凄く遠く感じる。黙々と、手を動かしていると、後ろから声を掛けられた。
「シルフィードさん、迷惑をかけて、ごめんなさいね。残念だけど、もう、これぐらいにしましょうか。ここにあるかも、分からないし」
「でも、大事な物なんですよね?」
大事な物じゃなきゃ、ここまで真剣に探さないはずだ。それに、どこなく悲しそうな表情をしているのが、凄く気になった。
「えぇ、とても大事な、想い出の物なんだけど――」
「なら、何としてでも、見つけないとですね。もう少しだけ探しましょう。私、頑張りますので!」
私は拳を握りしめると、彼女を励ますように、大きな声で答えた。
乗り掛かった船だし、このまま終わってしまったら、私自身も、消化不良でスッキリしない。私、中途半端なのって、嫌なんだよね。それに、諦めるのは、超大嫌いなので。
結局、その後も草の中を、地道に探して行くが、中々見つからなかった。手に取るのは、石ころばかり。それ以外の物は、何も落ちていない。
もしかしたら、本当にここの敷地内には、無いんじゃないだろうか……? そんなことを考え始めた時、指先にひものようなものが引っ掛かった。
私はそのひもを掴んで、ゆっくり引っ張ってみる。すると、金色のチェーンの先に、楕円形の石がついている、ペンダントらしきものが出てきた。チェーンが二つに分かれているので、切れてしまったのだと思う。
持ち上げてじっくり見ると、黒みがかった石の中に、赤・黄・緑・青などの色が、複雑に入り混じっていた。まるで、石の中で、花火でも上がっているような、とても鮮やかな色彩だ。
「うわぁー、すっごく綺麗な石。って、見とれてる場合じゃないや」
あまりの美しさに、一瞬、見とれてしまった。だが、すぐに老婦人の所に向かう。
「ペンダントって、もしかして、コレのことですか?」
「まぁ、それで間違いないわ!! 本当に見つけてくれるなんて! 何とお礼を言っていいか――」
ペンダントを差し出すと、彼女の顔が一気に明るくなった。
「それにしても、凄く綺麗な石ですね。私こんなの初めて見ました」
「これは、ブラックオパールなの。でも、全てがこんなに綺麗な訳じゃなくて。これは特別に、色合いが綺麗な石なのよね」
へぇー、名前は聞いたこと有るけど、見るのは初めてだ。宝石なんて、私には全く縁がないからね。
「やっぱり、宝石だったんですね。ということは、結構、お高いのでは……?」
「そうね、エア・カート数台分の値段はするわね」
彼女の言葉を聞いて、一瞬、固まった。せいぜい、数万ベルだと思っていたので、桁が違い過ぎて、すぐに計算できなかったからだ。
「って、えぇぇー?! そんな高価な物だったんですか? なら、見つかって本当によかったです」
私は胸に手を当てながら、フーッと息を吐きだした。心臓に悪すぎるよ――。
ちなみに、エア・カートって、一台で『三百万ベル』ぐらいするはずだ。それが数台分って……。もし、見つからなかったらと思うと、冷や汗が出る。
「高価なのもあるけど。でも、これは生前、主人が私にくれた、とても大事なものなの。だから、本当に見つかってよかったわ」
彼女は、両手でペンダントを大事に握りしめ、頬に寄せた。
話を詳しく聴いてみると、今日はご主人の、命日だったそうだ。お墓参りに行く前に、ご主人が大好きだった、ここのお菓子を買いに来て、その際に落としちゃったみたい。
そんな特別な日に、大事な想い出の品をなくしちゃったら、大変なことだよね。しかも、四十年前にもらって、ずっと大事にしてきたんだって。
本当に、見つかってくれてよかった。私は、まるで自分のことのように、心の底からホッとした。
「シルフィードさん。ちょっと、ここで待っていてね」
そういうと、彼女は直売所に向かって行った。
しばらくすると、両手に紙袋を下げて戻って来る。
「これ、お礼にどうぞ。どれも、主人が大好きだったお菓子なの」
彼女は紙袋を、三つも差し出してきた。どの袋にも、お菓子の箱が、いくつも入っている。
「いえ、私そんなつもりで、探した訳ではありませんので」
人助けは、喜んで貰いたいから、やっているだけだ。無事に解決した時の、素敵な笑顔が見られるだけで、私は幸せだから。
「どうか、受け取ってちょうだい。想い出の地で出会ったこの縁は、偶然じゃないと思うの。もしかしたら、主人が私たちを、出会わせてくれたのかも」
笑顔で言う彼女に、
「だとしたら、とても素敵な出会いですね」
私も微笑みながら答え、そっと袋を受け取った。
彼女は、何度も何度もお礼を言うと、お墓参りに行くために、静かに立ち去って行った。私は彼女の姿が見えなくなるまで、ずっと見送り続けた。
「さて、どうしよう? お菓子、一杯もらっちゃったし。ソフトクリームは、また今度、みんなで一緒に来ればいっか。フィニーちゃんも、超来たそうだったし」
私は伸びをして深呼吸したあと、軽やかな足取りで、駐車場に向かった。
出会いが偶然じゃないとしたら、今まで出会った人たち全てが、運命の出会いだったのだろうか?
偶然か必然かは、私にはよく分からない。けど、これからも、人との出会いは、大切にして行こうと思う……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『華麗とカレーって似てると思うの私だけ?』
やはりここは、華麗に美しく正面突破
先日、会社の事務所を掃除していたら、お客様の待合スペースで、ある雑誌に目がとまった。そこには、グリュンノアの『ご当地スイーツ特集』が載っていた。甘いもの好きの私が、激しく気になったのは、言うまでもない。
休憩時間にじっくり読んでみると、とある牧場の『プレミアム濃厚ソフト』が紹介されていた。滅茶苦茶、おいしそうだったので、見た瞬間、心が奪われてしまった。
しかし、値段を見た瞬間、絶望した。『五百八十ベル』と、プレミアム価格だったのだ。私の食費、二食分もする。ソフトクリーム1個にこれは、流石にぜいたく過ぎて、手が出ない。
ただ、人気スイーツって『観光客価格』になってる場合が、割と多いんだよね。中には、千ベルを超えるスイーツもあるし……。
でも、記事をよくよく見ていたら、月に一度『スペシャルデー』があるらしい。この日に限って『百ベル』で食べられるのだ。そんなの、もちろん食べに行くに決まってる! でもって、今日がその『スペシャルデー』だ。
ソフトクリームを、美味しくいただくために、昼食もパン一個で我慢した。もし、美味しかったら『二つ食べちゃおうかなー』なんて思ってる。甘いものなら、いくらでも食べられるからね。
もちろん、フィニーちゃんとナギサちゃんにも、声は掛けた。しかし、二人そろって都合が悪く、一緒には来れなかった。
ナギサちゃんは『また今度』と言ってたけど、フィニーちゃんは『仕事やめたい』とか、心底、残念がっていた。もちろん、辞めちゃ困るから、断固として止めたけどね――。
まぁ〈北地区〉だから、いつでも行けるし。『スペシャルデー』は毎月あるから、また今度、三人で来ればいいもんね。そんなわけで、今日は私一人で、下見に来ることにした。
〈北地区〉の住宅街を、真っ直ぐに抜けて行くと、やがて農業エリアが見えて来る。辺り一面、畑だらけだ。その田園風景の中に、牧場も点在している。
今回行く〈レインボー・ファーム〉は、住宅街から、かなり離れていた。徒歩で行くには遠すぎるし。乗り物に乗っても、かなり時間のかかる距離なので、観光客は来ないと思う。
そもそも、牧場に観光に行く人は、あまりいない。この町は、他にもたくさんの、観光名所や娯楽施設があるもんね。だから、地元の人向けの、穴場スイーツみたいな感じかな。
しばらく、真っ直ぐ飛んでいくと、目的の牧場が見えてきた。距離はあるけど、メインストリートに面しているので、分かりやすい。入り口には、七色の虹を描いた、大きな看板が立っていた。
私は少し高度を落とすと、駐車場に向かった。あまり人がいないかと思いきや、駐車場には、エア・カートやエア・ドルフィンが、かなり沢山とまっていた。空いてるスペースを見つけると、ゆっくり着陸する。
「へぇー、牧場に来る人って、結構いるんだね。しかも、平日なのに」
私は、上空から見ることはあっても、実際に農場に来ることはない。以前、道に迷っていた老紳士を、送って行ったことが有るぐらいだ。普段は、特に用がないもんね。
エア・ドルフィンを降りて、少し歩いて行くと、案内の空中モニターが表示されていた。そこには『プレミアム濃厚ソフト』の情報も書いてある。
「ふむふむ。次の十字路を右折して、五十メートル先の建物ね」
どうやら、牧場内に『直売所』があるみたい。牧場でとれた物とか、各種お土産を売っている建物だ。
私は意気揚々と軽い足取りで進み、十字路を右に曲がった。すると、だいぶ先のほうに、建物が見えた。ここから見る限り、かなり大きい。
道端には『お土産』『採れたてスイーツ』などの旗が立っているので、あそこで間違いなさそうだ。でも、その建物の道の途中で、女性がしゃがみ込んでいるのが目に入った。
こんな所で、どうしたんだろう? もしかして、具合が悪いとか?
万一、体調不良だったら大変ので、私は走って女性の元に向かった。
「どうされましたか?」
声を掛けると、老婦人は、ゆっくりこちらに向き直る。
「大事なペンダントを、落としてしまったようで……」
あぁ、調子が悪かったんじゃないのね。私は、ちょっとホッとした。
「私もお手伝いします。どこら辺で落としたのか、覚えていませんか?」
「それが、よく分からないの。あそこの直売店で買い物をして、その帰り道で、無くしてしまったことに気が付いて――」
彼女は、とても不安そうな表情で答える。
落とし物って、どこで落としたか分からないから、やっかいなんだよね。でも、この敷地内で落とした可能性は、十分にあると思う。
よし、ここは、全力でお手伝いしよう!
困った人を見つけたら、全力で手助けするのが、私のポリシーだ。いつも、助けられてばかりだから、こういう機会に、しっかりお返ししないとね。それに、シルフィードって、昔は人を助けるのが仕事だったみたいだし。
「だとすると、お店の中で、落としたかもしれませんね。私ちょっと見て来ます」
私は小走りで、直売所に向かった。
中に入ると、想像以上に大きな建物だった。広々して、色んな商品が置いてある。乳製品・ジャム・お菓子など。あとベーカリーがあって、焼き立てのパンも売っていた。
入ってすぐ左側には、何やら長蛇の列ができている。その行列の先頭を見ると『プレミアム濃厚ソフト』を販売していた。ざっと、三十人以上は並んでいる。
「うわっ、こんなに人いるの?!」
あまりの大盛況に、ビックリした。もっと、人少ないと思ってたのに。
って、違う違う。今は、落とし物を探さないと。床に落ちていたら、万一、踏まれてしまっては大変だ。
私は商品が並んでいる棚の前を歩きながら、床をくまなくチェックしていく。全ての棚の前を歩き、一通り見える部分は探してみた。でも、それらしきものは見つからない。
一応、スタッフの人に、落し物がなかった訊いてみる。しかし、ペンダントの落し物は、届いていないらしかった。
うーむ……店の中にないってことは、やっぱり外なのかな? いったん戻って、合流しよう。
私は、再び小走りで、老婦人の元に向かった。かがみ込んで探している彼女を見つけると、そっと声を掛けた。
「店内は、一通り探してみたんですけど、見つかりませんでした。店員さんにも訊いてみましたが、落し物は届いていないみたいです」
「そう。じゃあ、ここ以外で落としてしまったのかしら――?」
彼女は顔を曇らせながら答える。
「駐車場から、ここに来られたんですよね?」
「えぇ、エア・カートを停めてから、直売所に歩いて行ったの」
なるほど、なら駐車場付近の、可能性もあるかも。駐車場も、割と落とし物しやすい場所なんだよね。乗物から降りた瞬間に、落としちゃうこともあるんで。
「分かりました。じゃあ、駐車場からここまでの道を、見て来ますので。どんなカートか、教えていただけますか?」
これだけ一生懸命、探しているということは、とても大事なものに違いない。それに、落とし物をした時って、物凄く悲しい気分になるからね。何とかして、見つけてあげないと。
「それは、とても嬉しいのだけど。シルフィードのお仕事は、大丈夫なの? お忙しいのでしょ?」
「いいえ、それは問題ありません。私はまだ見習いなので、練習中ですし。今日は、ソフトクリームを食べに来ただけですので」
私は彼女を安心させるため、笑顔で元気一杯に答えた。
とはいえ、遊びに来たわけではないからね。人気のスイーツを食べるのも、ゆくゆくは、お客様を案内する時の勉強だから。ま、本音を言えば、単に食べたかっただけなんだけど……。
「あら、そうだったの。なら、お願いしようかしら」
「はい、お任せください。探し物は得意ですから」
普段、練習飛行中に、地上を観察する訓練は、探し物にも凄く役立つ。実際、シルフィードの仕事を始めてから、探し物が得意になったからね。
私は駐車場に走って向かうと、教えてもらったナンバーから、赤いエア・カートの機体を見つけ出した。まずは、機体の周辺から慎重にチェックしていく。他の機体の間なども、慎重に探していった。
駐車場内は、一通り回ってみたが、それらしきものは見つからない。なので、今度は直売所に続く道を探していく。歩いたであろう場所を確認しながら、十字路を右折して、再び先ほどの道に入った。
うーん、ここまでの間には、どこにもなかったよね。となると、やっぱりこの道のどこかに有るのかな――?
両側は畑になっており、柵が立っている。その柵の下には、草が生い茂っていた。もしかしたら、草の中に落ちてるかもしれない。
だとしたら、一つずつ、手探りで確認して行かないと……。ちょっと大変だけど、ここまで来たら、絶対に見つけないとね。
私はかがみ込むと、草の中に手を突っ込んで、ペンダントを探し始めた。直売所までの距離が長いので、物凄く根気のいる作業だ。かがみながらなので、膝や腰にも負担が掛かって、かなり大変だ。
でも、日ごろ、雑用や掃除で鍛えているのは、伊達じゃない。それに、こういう地道に体を動かす作業は、嫌いじゃなかった。
手探りしながら、ゆっくりと前に進んで行く。普通に歩けば、大した距離じゃない。でも、ちょっとずつしか進めないので、物凄く遠く感じる。黙々と、手を動かしていると、後ろから声を掛けられた。
「シルフィードさん、迷惑をかけて、ごめんなさいね。残念だけど、もう、これぐらいにしましょうか。ここにあるかも、分からないし」
「でも、大事な物なんですよね?」
大事な物じゃなきゃ、ここまで真剣に探さないはずだ。それに、どこなく悲しそうな表情をしているのが、凄く気になった。
「えぇ、とても大事な、想い出の物なんだけど――」
「なら、何としてでも、見つけないとですね。もう少しだけ探しましょう。私、頑張りますので!」
私は拳を握りしめると、彼女を励ますように、大きな声で答えた。
乗り掛かった船だし、このまま終わってしまったら、私自身も、消化不良でスッキリしない。私、中途半端なのって、嫌なんだよね。それに、諦めるのは、超大嫌いなので。
結局、その後も草の中を、地道に探して行くが、中々見つからなかった。手に取るのは、石ころばかり。それ以外の物は、何も落ちていない。
もしかしたら、本当にここの敷地内には、無いんじゃないだろうか……? そんなことを考え始めた時、指先にひものようなものが引っ掛かった。
私はそのひもを掴んで、ゆっくり引っ張ってみる。すると、金色のチェーンの先に、楕円形の石がついている、ペンダントらしきものが出てきた。チェーンが二つに分かれているので、切れてしまったのだと思う。
持ち上げてじっくり見ると、黒みがかった石の中に、赤・黄・緑・青などの色が、複雑に入り混じっていた。まるで、石の中で、花火でも上がっているような、とても鮮やかな色彩だ。
「うわぁー、すっごく綺麗な石。って、見とれてる場合じゃないや」
あまりの美しさに、一瞬、見とれてしまった。だが、すぐに老婦人の所に向かう。
「ペンダントって、もしかして、コレのことですか?」
「まぁ、それで間違いないわ!! 本当に見つけてくれるなんて! 何とお礼を言っていいか――」
ペンダントを差し出すと、彼女の顔が一気に明るくなった。
「それにしても、凄く綺麗な石ですね。私こんなの初めて見ました」
「これは、ブラックオパールなの。でも、全てがこんなに綺麗な訳じゃなくて。これは特別に、色合いが綺麗な石なのよね」
へぇー、名前は聞いたこと有るけど、見るのは初めてだ。宝石なんて、私には全く縁がないからね。
「やっぱり、宝石だったんですね。ということは、結構、お高いのでは……?」
「そうね、エア・カート数台分の値段はするわね」
彼女の言葉を聞いて、一瞬、固まった。せいぜい、数万ベルだと思っていたので、桁が違い過ぎて、すぐに計算できなかったからだ。
「って、えぇぇー?! そんな高価な物だったんですか? なら、見つかって本当によかったです」
私は胸に手を当てながら、フーッと息を吐きだした。心臓に悪すぎるよ――。
ちなみに、エア・カートって、一台で『三百万ベル』ぐらいするはずだ。それが数台分って……。もし、見つからなかったらと思うと、冷や汗が出る。
「高価なのもあるけど。でも、これは生前、主人が私にくれた、とても大事なものなの。だから、本当に見つかってよかったわ」
彼女は、両手でペンダントを大事に握りしめ、頬に寄せた。
話を詳しく聴いてみると、今日はご主人の、命日だったそうだ。お墓参りに行く前に、ご主人が大好きだった、ここのお菓子を買いに来て、その際に落としちゃったみたい。
そんな特別な日に、大事な想い出の品をなくしちゃったら、大変なことだよね。しかも、四十年前にもらって、ずっと大事にしてきたんだって。
本当に、見つかってくれてよかった。私は、まるで自分のことのように、心の底からホッとした。
「シルフィードさん。ちょっと、ここで待っていてね」
そういうと、彼女は直売所に向かって行った。
しばらくすると、両手に紙袋を下げて戻って来る。
「これ、お礼にどうぞ。どれも、主人が大好きだったお菓子なの」
彼女は紙袋を、三つも差し出してきた。どの袋にも、お菓子の箱が、いくつも入っている。
「いえ、私そんなつもりで、探した訳ではありませんので」
人助けは、喜んで貰いたいから、やっているだけだ。無事に解決した時の、素敵な笑顔が見られるだけで、私は幸せだから。
「どうか、受け取ってちょうだい。想い出の地で出会ったこの縁は、偶然じゃないと思うの。もしかしたら、主人が私たちを、出会わせてくれたのかも」
笑顔で言う彼女に、
「だとしたら、とても素敵な出会いですね」
私も微笑みながら答え、そっと袋を受け取った。
彼女は、何度も何度もお礼を言うと、お墓参りに行くために、静かに立ち去って行った。私は彼女の姿が見えなくなるまで、ずっと見送り続けた。
「さて、どうしよう? お菓子、一杯もらっちゃったし。ソフトクリームは、また今度、みんなで一緒に来ればいっか。フィニーちゃんも、超来たそうだったし」
私は伸びをして深呼吸したあと、軽やかな足取りで、駐車場に向かった。
出会いが偶然じゃないとしたら、今まで出会った人たち全てが、運命の出会いだったのだろうか?
偶然か必然かは、私にはよく分からない。けど、これからも、人との出会いは、大切にして行こうと思う……。
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次回――
『華麗とカレーって似てると思うの私だけ?』
やはりここは、華麗に美しく正面突破
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※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
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【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
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無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
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