私異世界で成り上がる!! ~家出娘が異世界で極貧生活しながら虎視眈々と頂点を目指す~

春風一

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第4部 理想と現実

1-8超豪華メンバーが結集した打ち上げパーティー

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 一日の仕事を終えた夕方。私はノーラさんの部屋に、夕食に招かれていた。しかし、今回はいつもとは違う。ナギサちゃんとフィニーちゃんに加え、リリーシャさんまで一緒だからだ。

 実は、今朝ノーラさんに出会った時に『査問会が無事終わったので、軽い打ち上げをしよう』と、提案してくれた。しかも、友人も呼んでいいということで、いつも通りのメンバーになった。

 あと、リリーシャさんにも声を掛けたら、一発返事でOKしてくれた。リリーシャさんとノーラさんって、仲がいいもんね。

 大人数での夕飯なんて、久しぶりなので、すっごく楽しみ。基本、いつもは、一人で寂しく、パンをかじってるので。やっぱ、ご飯はみんなで食べたほうが、美味しいよね。

 でも、何でノーラさんが『査問会』のこと知ってたんだろ? やっぱ、リリーシャさんから聴いたのかな?

 キッチンでは、リリーシャさんが、ノーラさんを手伝って、盛り付けや料理を運んだりしている。私たち三人は、その様子をじっと見守っていた。

 ナギサちゃんは、何やら神妙な表情で。フィニーちゃんは、期待一杯に目を輝かせながら。私は、じっとしてるのが苦手なので、少しうずうずしながら待機中だった。

 新人の私が、何もしないで座ってるのも悪いので、もちろん手伝おうとした。でも『邪魔だからじっとしてな』と、ノーラさんに、あっさり断れらてしまった。

 うーむ、この扱いの差はなに? 私とリリーシャさんに対する態度が、ずいぶん違う気がするんですけど。そりゃ、私と違って、リリーシャさんは、家事も完璧だけど。ちょっと、塩対応すぎない? やる気は充分あるのに……。

 とか何とか考えている内に、あっという間にテーブルの上は、料理で埋め尽くされて行った。本当に、二人は手際がよく、息もピッタリ合っている。

 いやー、相変わらずだけど、ノーラさんの手料理は、本格的で美味しそう。しかも、ボリュームが凄い。フィニーちゃんは、先ほどから早く食べたくて、ソワソワしっぱなしだ。

 ナギサちゃんも、別の意味で落ちつかない様子だった。現役の『スカイ・プリンセス』に加え『元シルフィード・クイーン』と同席するとあって、かなり緊張している様子だ。

 来た時も、しっかり手土産を持参したうえに『お招きいただき、大変光栄です』なんて、凄く堅苦しいあいさつをしていた。昼間、ノーラさんの正体を話した時は、ナギサちゃん固まってたし。かなり気合を入れて来たみたい――。

 まぁ、私はいつも会ってるから、普通の会社の先輩と、アパートの大家さんって感覚なんだけどね。

 もちろんフィニーちゃんは、いつも通り、何も気にした様子はない。というか、単に食べ物に、つられて来ただけな感じだ。本当に、ブレないよねぇ。

 全ての準備ができ、全員が着席すると、
「食事の前に、まずは、風歌から一言」
 ノーラさんが、私に声を掛けてきた。

「えぇっ、私ですか?!」
「今回は、お前が主役なんだ。何か言うことあるだろ?」

 確かに、色々と迷惑を掛けてしまったし。でも、いきなり振らずに、事前に言っておいて欲しいんですけど……。

「えー、今回は、色々とご迷惑をおかけいたしました。特に、リリーシャさん。会社にまで、ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」
 私は深々と頭を下げた。

「いいえ、迷惑だなんて、全く思っていないわ。丸く収まって、本当に良かった」
 リリーシャさんは、優しい笑顔で答える。

「ナギサちゃんも、今回は、色々協力してくれて、本当にありがとう」
「べ、別に、私は何もしてないわよ」
 私がお礼を言うと、例のごとく、サッと顔を背けてしまった。

「ノーラさんも、わざわざ打ち上げを開いてくださって、ありがとうございます」
「今回の件に懲りて、しばらくは大人しくしてな」
「はい、そうします――」

 流石に、あんなのはもう、コリゴリだ。今後はよく考えて、自重しながら行動しようと思う。

「フィニーちゃんは……いつも友達でいてくれて、ありがとう」
「問題ない」
 フィニーちゃんは、ビシッと親指を立てて答える。

「さて、面倒なのはこれぐらいにして、食事にするか。そこの嬢ちゃんが、待ちきれなさそうだからな」
「おぉっ!」

 待ってましたとばかりに、フィニーちゃんは、勢いよくフォークを手に取った。

「ちょっと、フィニーツァ。食前のお祈りぐらいしなさいよ」
「いいさ、好きに食べな。今日は、内々の気軽なパーティーだからな」

 フィニーちゃんは、さっそくモグモグと料理を食べ始めた。リリーシャさんとナギサちゃんは、ちゃんと食前のお祈りをする。

「いただきます!」
 私は元気よく、いただきますをすると、スプーンを手に取った。まずは、目の前のスープを飲み始める。

 んー、美味しー!! すっごくクリーミーで、コーンも美味しー!

 下手に声に出すと、表現力のなさを、ナギサちゃんに突っ込まれそうなので、心の声で我慢する。

 隣では、リリーシャさんが、ノーラさんのグラスにワインを注いでいた。流石はリリーシャさん、どんな時でも気配り上手だ。私も何かしたいんだけど、下手に手を出すと、ノーラさんに怒られるので――。

 フィニーちゃんが勢いよく食べている隣では、ナギサちゃんが、フォークとナイフを使って、上品に魚料理を切り分けていた。口に料理を入れた瞬間、驚きの表情に変わる。

 まぁ、そうだよね。ノーラさんの料理って、お店で出してもおかしくないぐらい、凄く美味しいもん。リリーシャさんは分かるけど、ノーラさんが、何でこんなに料理が上手いのかは謎だ。

 シルフィードの現役時代も、かなり豪快な人だったみたいだし。どちらかと言うと、私みたく、体育会系だからね。

「あの、ノーラさん、一つ訊いてもいいですか?」
「何だい、改まって?」 
「ノーラさんって、何でこんなに料理が上手なんですか?」

 前からずっと、疑問に思ってたんだよね。だって、上手いと言っても、家庭料理レベルじゃなくて、プロ級なんだもん。

「料理をやるようには、見えないってことかい?」
「いえいえ、そうじゃなくて。あまりにも本格的なので、どうやって覚えたのかと思いまして」

 不機嫌そうに答えるノーラさんに、私は慌ててフォローを入れる。確かに、料理やるようには、見えないのも事実なんだけど……。

「ノーラさんのおばあさまは、物凄い料理名人だったのよ。ご実家が、有名なレストランだったから」
 隣にいたリリーシャさんが、笑顔で説明してくれる。

「じゃあ、この料理って――?」
「全部、祖母から教わったものさ。でも、有名なレストランじゃなくて、小さな個人店だ。まぁ、味は中々のもので、地元では人気だったようだがな」

 ノーラさんは、言い終えると、ワインをグッと飲み干した。

「なるほど、それでこの味なのですね。どれもとても美味しいですし、高級レストランの味にも、負けていないと思います」

 静かに食事していたナギサちゃんが、話に加わって来る。ナギサちゃんって、相当な辛口評価だから、素直に褒めるなんて、かなり珍しい。

「高級レストランは、ほめ過ぎだろ。私はプロの料理人じゃないんだから」
「でも、本当に美味しいです。これなら、毎日でも食べたいぐらいです」 
「私は、三食たべたい」

 ひたすら食べ続けていたフィニーちゃんも、賛同する。私もその意見には、激しく同意。こんな料理、毎食たべられたら幸せ過ぎる。でも、フィニーちゃんは、基本、何を食べても、美味しいって言うんだけどね。 

「そういえば、リリーシャんの料理と、ちょっと似てる感じがしますね」

 以前、リリーシャさんの家で、お世話になっていた時。作ってもらった料理が、どこなく似ている気がする。

「それは、ノーラさんが、私の料理の師匠だからよ」
「ええっ?! そうだったんですか? どうりで、味が似てるわけですね」 

 リリーシャさんも、相当に料理が上手だ。だけど、まさかノーラさんが師匠だったとは……。

「風歌ちゃんも、ノーラさんに教えて貰ったら? 何でも作れるようになるわよ」
「おぉー、それ、いいかもしれないですね」 

 私も少しは、料理を覚えておかないと。一人暮らしだと、自炊は必須だもんね。

「フッ、誰がお前みたいな、ポンコツに教えるか。米の炊き方すら、知らなかったくせに」

「んがっ――。ポンコツは言いすぎですよぅ。今はちゃんと、お米を研いだりとか、できるようになったし」

 と言っても、ノーラさんに教わったんだけどね。

「風歌は、シルフィードのことだけじゃなく、一般常識も知らないのよね……」
 ナギサちゃんが、ため息交じりにつぶやく。

「ナギサちゃんまで酷い――。って、ナギサちゃんは、ご飯炊けるの?」
「当然でしょ。そんなの、小さな子供だって出来るわよ」
 ナギサちゃんは、冷たく言い放つ。

 うーむ、私の家事能力って、小さな子供以下ってこと……? でも、ナギサちゃんって、パンしか食べないのかと思ってた。だって、いつもサンドイッチばかり食べてるから。

 ワイワイ盛り上がっていると、チャイムの音が鳴った。荷物でも届いたのかな?

「ようやく、スペシャル・ゲストが来たようだな」
 ノーラさんは、言いながら入り口に向かう。

「あれっ、他にも誰か呼んでたんだ。誰だろ――?」
 全員シルフィードの集まりだから、ノーラさんの知り会いかな?

 部屋に入って来た人物を見て、私は驚いて心臓が飛び跳ねた。

 だが、私より先に、
「お母様?! なぜ、こちらに?」
 ナギサちゃんが、ガタッと立ち上がった。

「あら、ナギサも来ていたのね。『疾風の剣』ゲイルソードに、お招きいただいたのよ」
「あの……お二人は、知り合いだったのですか?」
 ナギサちゃんは、驚きの表情を浮かべながら尋ねる。

「現役時代に、イベントやら会議やらで、割と顔を合わせる機会が多くてな」 
「かなり前から、ご懇意にさせていただいているのよ。ただ、ここ数年は、お会いする機会がなかったけれど」

 ほへぇー。やっぱり、上位階級の人同士って、お付き合いがあるんだねぇ。

 彼女はノーラさんに勧められ、一番奥の上座に着く。歩くのも、座るのも、動作が物凄く気品にあふれている。

「今回は、急に無理なお願いをして、すまなかったな」
「いえ、疾風の剣のたっての頼みとあれば、お断りできませんわ」
「もう、私は引退した身だ。その呼び方は止めてくれ、白金の薔薇プラチナローズ

 大物二人の会話を、私は緊張しながら聴いていた。目の前にいるのに、何か凄く遠く感じる。ナギサちゃんも、唖然とした表情で見つめている。

「それなら私も、とうの昔に引退していますが?」
「あんたは、協会で理事をやってるだろ。それは現役と同じことさ」
 二人は、リリーシャさんが注いだワイングラスで、乾杯した。

「でも、結局、あなたからの口添えが無かったとしても、結果は変わらなったでしょうね。私は、公正に判断するだけですから」
 白金の薔薇は、私に意味ありげな視線を向けて来る。

「えーと――何のお話ですか?」
 何のことだか、私にはサッパリ分からない。

「あら、聴いていなかったの? 査問会の前日に『あなたのことを頼む』と、疾風の剣から、連絡をいただいたのよ」
「えぇー?! ノーラさんが、私のことを……?」

 全く聴いていない。というか、そもそも二人が知り合いなんて、全然しらなかったんですけど。

「大げさだな。ただの保険だよ保険。どうせ、大したことにはならないと、最初から思ってたからな」

 ノーラさんは、一気にワインを飲み干すと、リリーシャさんの前にグラスを差し出した。

「それにしても、あなたが新人の子に、そこまで熱を入れるとは、意外ですね」
「アパートの大家として、預かってる責任があるだろ。こんなお馬鹿な子でも、何かあったら、親御さんに合わせる顔がないからな」

 ノーラさんは、リリーシャさんに注いでもらったワインに、再び口をつける。

「頭悪いのは認めますけど、みんながいる所で、お馬鹿なんて言わなくても――」
「ふんっ、お馬鹿は一生死ぬまで、お馬鹿なんだよ」
「んがっ!」

 ノーラさん、お酒のペースが速い。まさか、酔ってるんじゃないよね?

「疾風の剣から、連絡がきたことも驚いたけど。それと同じことを言いに、ナギサが訪ねて来たのには、もっと驚いたわ」
「えっ……ナギサちゃんも、頼んでくれたの?」

「ち、違うわよっ! 保険よ保険」
 ナギサちゃんは、頬を紅くすると、プイッとそっぽを向いてしまった。

「フフッ、風歌ちゃんは、みんなから愛されているわね。この縁は、これからも大事にしないと」
 リリーシャさんが、私に柔らかな笑顔を向けて来る。

「はいっ、もちろんです!」
 私は元気いっぱいに答えた。

『元シルフィード・クイーン』二名と、現役の『スカイ・プリンセス』一名が参加する、超豪華メンバーのパーティー。普通なら、見習いの私が、参加できるような場所じゃない。

 でも、色々あって、こうして縁ができた。誰一人、知り合いのいなかった異世界で、これは大きな奇跡だと思う。私って、凄い幸せ者だよね。

 結局、パーティーは大いに盛り上がって、夜遅くまで続いたのだった。フィニーちゃんが、テーブルの上の料理を、全て平らげてしまったこと。あと、お酒の入った、ナギサちゃんのお母さんに、色々とお説教されたのは、また別の話――。

 今回は、本当にみんなには、感謝の気持ちで一杯だ。これからは、自分のことだけじゃなく、周りの人たちのことも考えて、もっと自重して行動しないとね……。


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次回――
『一日中机の前でお勉強って滅茶苦茶つらいんですけど……』

 勉強して発明するんだ。勉強しなくても頭のよくなる機械を
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