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第1部 家出して異世界へ
4-6雨が降ると窓を眺める回数が多くなるんだよね
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私は会社の事務所でマギコンを起動し、頭から煙を出しながら、必死に勉強中だった。勉強は、相変わらず苦手なので、中々やる気にはなれない。家でやるのはまだしも、仕事中にまで勉強だなんて……。
でも、今日は朝からずっと雨だった。小雨だから『行けるかなぁ』なんて期待しながら、チラチラ外の様子を見ていた。しかし『留守番よろしくね』と、リリーシャさんに、やんわりとした笑顔で、釘を刺されてしまった。
外に出たくてウズウズしてるの、完全に見透かされてるよね。そういえば以前、雨の日の私って、外に出たがってる室内犬みたいだって、リリーシャさんに言われたっけ……。
普段なら、雨の日はリリーシャさんと一緒に過ごせるので、結構、嬉しかったりする。でも、今日は協会の仕事で、出社後すぐに出かけてしまったのだ。
ただでさえ、雨でブルーな気分なのに、リリーシャさんまでいなくなって、一気にテンションが下がったのは言うまでもない。もちろん、仕事は真面目にやるけどね……。
でも、留守番と言っても、特にやることはない。常連のお客様は、直接リリーシャさんに連絡するし、雨の日は、まず予約の通信やメールは来ないからだ。
それに〈ホワイト・ウイング〉は小さな会社なので、飛び込み依頼は受けていない。『完全予約制』なので、それ以外でお客様が来ることもなかった。
つまり、掃除が終わってしまうと、何もやることがないのだ。正直、雨の日は、私がいる意味がない気もする。
はぁ――風を思いっきり浴びたい。それに、一人だとちょっぴり寂しい……。
雨が降り続ける灰色の空を、窓越しにじっと眺めながら、私は大きなため息をついた。
私はこの町に来てから、風を浴びないと、生きていけない体質になったようだ。あと、じっとしているのと、静かな所に一人でいるのが苦手なのは、昔から変わらなかった。
「とりあえず、お茶でも淹れようかなぁー」
椅子から立ち上がると同時に、マギコンに新着メッセージのアイコンが表示された。私は即行で確認する。
「おぉ、ユメちゃんからだ!」
実にナイスなタイミングで、嬉々として声を上げた。私は急いで『EL』を起動する。
『風ちゃん、今お仕事中?』
『今日は事務所で一人でお留守番だから、全然、平気。というか、超ひまー』
『ならよかった。雨の日って、一人でいると気分が沈むから、誰かとお話ししたくて』
『分かる分かる! 私もちょうど今、誰かと話したかったんだー』
どうやら、雨で気分が下がるのは、私だけじゃなかったみたい。
『やっぱり、雨の日は飛ばないの?』
『リトル・ウイッチ以上にならないと、雨天は飛んじゃいけない規則だからね。私はまだ見習いだから、飛べないの(涙)』
見習いで辛いのは、雑用なんかが有ることじゃない。雨の日に飛べないのが、最大の問題だ。
『へぇー、そんなルールがあるんだね。雨の日は何やってるの?』
『掃除が終わったら、昇給試験の勉強だね。でも、普段はリリーシャさんがいて、色々お話できるけど、今日は協会に行っちゃってて』
最近は、協会に行くことが非常に多く、会える時間がますます減っていた。お客様の予約で出ている時はいいんだけど、外部に行っていると、取り残されたみたいな感じで、何か寂しいんだよね……。
『もしかして、魔法祭の準備?』
『そう、それそれ。スカイ・プリンセス以上の人たちは、強制参加だから』
リリーシャさん自身は、もう慣れてる感じで、協会の手伝いも嫌な顔一つせずに、テキパキこなしていた。あと、ツバサさんとも会えるらしく、割と楽しそうだ。
『そっかぁ、偉くなると大変だね』
『だねー。私はまだ、当分関係なさそうだけど』
次の階級に昇級できるかすら、かなり危うい感じだ。まだ覚えきれていない知識も多く、今試験を受けたら、確実に落ちると思う……。
そもそも、みんなはシルフィードの専門学校に行ってる訳だし、その分の遅れを取り戻すところから、始めなければならない。それに、こっちの世界の、一般常識も覚えなきゃだから、学ぶことが多すぎる。
『えぇー? 風ちゃんだって、すぐに偉くなるよ』
ユメちゃんは、こうやっていつも励ましてくれた。例えお世辞だとしても、凄く嬉しいし励みになる。
『うーん、どうだろ?(笑) ところで、衣装はもう完成した?』
『うん、一応、完成してるよ。見る?』
『見る見る!』
『準備するから、ちょっと待っててね』
ユメちゃんが、どんな衣装を着るのか、すっごく楽しみ。そもそも、他の人が仮装しているの、実際に見たことないからね。
数分後、ユメちゃんから写真が届いた。でも、期待してたのと、ちょっと違う。彼女が直接、着るのではなく、マネキンに着せてあったのだ。
ピンク色で、ヒラヒラも付いていて、腰の後ろには大きなリボンが付いている。魔法使いの衣装というより、魔法少女のコスプレぽっい。でも、よく出来ていて、超カワイイ。
『おぉー、すっごくカワイイね! いかにも、女の子の衣装って感じ』
『ありがとう。風ちゃんのはどんな感じ?』
『んー、私のは全く飾りっ気がない、すごく普通の衣装だよ。色も白で地味だし』
『でも、白なら、式典とか公式の場にも着て行けるから、便利だと思うよ』
『そっかー、だから初めてなら白がいいって、お勧めされたのかな』
この町では、公式な場では、魔法使いの衣装を着ることも多い。この世界での魔法使いの衣装は、私がいた世界の『和服』のようなものだ。今風に決めるならスーツ。古風に行くなら、魔法使いの衣装を着る。
『私も初めて作った時は、白だったよ。他の人達も、みんなそうみたい』
『そうなんだぁ。出来のほうは微妙なんだけど、魔法祭でこれを着るのが、今から凄く楽しみー!』
縫い目とかは、かなり雑だった。でも、着てしまえば、大して目立たないと思う。ナギサちゃんが、最低限、着れるレベルには手直ししてくれたし。
『やっぱり、初参加だと楽しそうでいいねぇ』
『ユメちゃんは、楽しみじゃないの?』
『うーん、正直私は、面倒に感じてるかなぁ』
やっぱり、毎年、参加してると飽きちゃうのかな? まぁ、子供のころからだと、十年以上、参加していることになるから。特別、物珍しくはないもんね。
ちなみに、私はお祭りが超大好きだ。なので、何回参加しても飽きないし、毎年、お祭りシーズンは、滅茶苦茶テンション上がってた。
『準備とかで、町中が盛り上がってるし、みんな楽しみにしてるのかと思ってた』
『もちろん、楽しみにしてる人は多いよ。でも、私は人の多いところ苦手だから』
『あー、そういうことね。当日は、物凄く人が多いみたいだもんねぇー』
ユメちゃんは元々、本を読むのが大好きな、大人しく知的な文学少女だ。確かに、人が多いところは苦手かもしれない。私の場合は、静かな所とか、じっとしてるのが苦手なので、真逆の性格だよね。
『多いなんてもんじゃないよー。お祭りの期間中は、人口が数倍になるから。お祭りよりも、人を見に行くみたいな感じ』
『あははっ、そうなんだ。でも、私は賑やかなの大好きだから、人が一杯来るの楽しみだなぁー』
私は基本、人が沢山いるのは大好きだ。だって、色んな人に会えて楽しいし。それに、周りに人が一杯いると、物凄く元気を分けてもらえるから。だから『人が沢山いると疲れる』って感覚が、私にはよく分からない。
『いいなぁ、そういうの。やっぱ風ちゃんは、シルフィードに向いているんだね』
『んー、そうかな?』
向き不向きという点で言えば、どちらかと言うと、向いてないほうだと思う。上品さとか、女子力とか、知識とか、全然ないし。
『私は結構、人見知りするほうだから、知らない人が沢山いるの苦手なんだ。風ちゃんは、人見知りとかしないでしょ?』
『んー、そうだね。誰とでも、すぐに仲良くなる感じかなぁ』
一度でも会ったことのある人とは、だいたい仲良しになる。
『風ちゃんの、そういうところ、凄くうらやましい』
人にうらやましがられるのは、初めてだ。別に、特別なことをやってる訳じゃないんだよね。ただ、人と仲良くなるのが好きなだけで。
あと、私って結構、寂しがり屋なので、一人でいるのって、ダメなんだよね。たまーに、一人になりたい時もあるけど、すぐ寂しくなってくる。
『ユメちゃんだって、普通に話せてるんじゃない? いつも、話しててとても楽しいし』
『ELは、相手の顔が見えないから。それに、風ちゃんは話も合うし、優しいもん』
『えー、そんなことないよー。ユメちゃんこそ、凄く優しいじゃない』
『そんなこと、全然ないから。というか、この話題は恥ずかしいから、ストーップ!』
『あははっ、そだね(笑)』
ユメちゃんは褒めたりすると、すぐ照れる。ま、そこがカワイイんだけどね。私は褒められると、調子に乗るだけなんで……。
『そういえば、ユメちゃん、今日は学校ないの?』
『もう、夏休みだよー』
『あぁ、そっかー。もう、そんな時期だもんね』
去年までは、普通に夏休みを満喫してたのに、今では遠い過去のように感じる。あの当時は、とても楽しかったけど、けっして有意義な過ごし方だったとは思えない。
部活やお出掛けとかしない日は、1日中ゴロゴロして、テレビや漫画見てたし。今でもそうだけど、私って、休みの日の使い方、超下手なんだよね。趣味とか、何もないから……。
『風ちゃんは、夏休みないの?』
『シルフィードって、みんながお休みの時が、書き入れ時だからね。お休みは、シーズンオフになってからかな。夏休み中は、どこの会社も忙しいと思うよ』
『そっかー、大変だね』
『もう慣れちゃったから、全然、平気』
土日出勤も今では普通だし、慣れれば、なんてこと無いんだよね。休みがあっても、特にすることないし。やることが決まっている仕事のほうが、むしろ楽なぐらい。
『お仕事、頑張ってね』
『ありがとー、頑張るよ』
『私これから、親と買い物行かないといけないんだぁ。また、連絡するね』
『いてらー、またねー』
『うん、またねー』
ELを閉じると、私は大きく伸びをする。
先ほどまで、気分が沈んでいたけど、いつのまにか凄く元気になっていた。これも全て、ユメちゃんのお陰だね。やっぱ誰かと話していると、元気が湧いてくる。
「よーし、気合を入れ直して、頑張りまっしょい!」
私は頬を軽く叩くとファイルを開き、勉強を再開するのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『姉妹は「タイが曲がっていてよ」的なことするのかな?』
おちょくると、グーで殴りますよ
でも、今日は朝からずっと雨だった。小雨だから『行けるかなぁ』なんて期待しながら、チラチラ外の様子を見ていた。しかし『留守番よろしくね』と、リリーシャさんに、やんわりとした笑顔で、釘を刺されてしまった。
外に出たくてウズウズしてるの、完全に見透かされてるよね。そういえば以前、雨の日の私って、外に出たがってる室内犬みたいだって、リリーシャさんに言われたっけ……。
普段なら、雨の日はリリーシャさんと一緒に過ごせるので、結構、嬉しかったりする。でも、今日は協会の仕事で、出社後すぐに出かけてしまったのだ。
ただでさえ、雨でブルーな気分なのに、リリーシャさんまでいなくなって、一気にテンションが下がったのは言うまでもない。もちろん、仕事は真面目にやるけどね……。
でも、留守番と言っても、特にやることはない。常連のお客様は、直接リリーシャさんに連絡するし、雨の日は、まず予約の通信やメールは来ないからだ。
それに〈ホワイト・ウイング〉は小さな会社なので、飛び込み依頼は受けていない。『完全予約制』なので、それ以外でお客様が来ることもなかった。
つまり、掃除が終わってしまうと、何もやることがないのだ。正直、雨の日は、私がいる意味がない気もする。
はぁ――風を思いっきり浴びたい。それに、一人だとちょっぴり寂しい……。
雨が降り続ける灰色の空を、窓越しにじっと眺めながら、私は大きなため息をついた。
私はこの町に来てから、風を浴びないと、生きていけない体質になったようだ。あと、じっとしているのと、静かな所に一人でいるのが苦手なのは、昔から変わらなかった。
「とりあえず、お茶でも淹れようかなぁー」
椅子から立ち上がると同時に、マギコンに新着メッセージのアイコンが表示された。私は即行で確認する。
「おぉ、ユメちゃんからだ!」
実にナイスなタイミングで、嬉々として声を上げた。私は急いで『EL』を起動する。
『風ちゃん、今お仕事中?』
『今日は事務所で一人でお留守番だから、全然、平気。というか、超ひまー』
『ならよかった。雨の日って、一人でいると気分が沈むから、誰かとお話ししたくて』
『分かる分かる! 私もちょうど今、誰かと話したかったんだー』
どうやら、雨で気分が下がるのは、私だけじゃなかったみたい。
『やっぱり、雨の日は飛ばないの?』
『リトル・ウイッチ以上にならないと、雨天は飛んじゃいけない規則だからね。私はまだ見習いだから、飛べないの(涙)』
見習いで辛いのは、雑用なんかが有ることじゃない。雨の日に飛べないのが、最大の問題だ。
『へぇー、そんなルールがあるんだね。雨の日は何やってるの?』
『掃除が終わったら、昇給試験の勉強だね。でも、普段はリリーシャさんがいて、色々お話できるけど、今日は協会に行っちゃってて』
最近は、協会に行くことが非常に多く、会える時間がますます減っていた。お客様の予約で出ている時はいいんだけど、外部に行っていると、取り残されたみたいな感じで、何か寂しいんだよね……。
『もしかして、魔法祭の準備?』
『そう、それそれ。スカイ・プリンセス以上の人たちは、強制参加だから』
リリーシャさん自身は、もう慣れてる感じで、協会の手伝いも嫌な顔一つせずに、テキパキこなしていた。あと、ツバサさんとも会えるらしく、割と楽しそうだ。
『そっかぁ、偉くなると大変だね』
『だねー。私はまだ、当分関係なさそうだけど』
次の階級に昇級できるかすら、かなり危うい感じだ。まだ覚えきれていない知識も多く、今試験を受けたら、確実に落ちると思う……。
そもそも、みんなはシルフィードの専門学校に行ってる訳だし、その分の遅れを取り戻すところから、始めなければならない。それに、こっちの世界の、一般常識も覚えなきゃだから、学ぶことが多すぎる。
『えぇー? 風ちゃんだって、すぐに偉くなるよ』
ユメちゃんは、こうやっていつも励ましてくれた。例えお世辞だとしても、凄く嬉しいし励みになる。
『うーん、どうだろ?(笑) ところで、衣装はもう完成した?』
『うん、一応、完成してるよ。見る?』
『見る見る!』
『準備するから、ちょっと待っててね』
ユメちゃんが、どんな衣装を着るのか、すっごく楽しみ。そもそも、他の人が仮装しているの、実際に見たことないからね。
数分後、ユメちゃんから写真が届いた。でも、期待してたのと、ちょっと違う。彼女が直接、着るのではなく、マネキンに着せてあったのだ。
ピンク色で、ヒラヒラも付いていて、腰の後ろには大きなリボンが付いている。魔法使いの衣装というより、魔法少女のコスプレぽっい。でも、よく出来ていて、超カワイイ。
『おぉー、すっごくカワイイね! いかにも、女の子の衣装って感じ』
『ありがとう。風ちゃんのはどんな感じ?』
『んー、私のは全く飾りっ気がない、すごく普通の衣装だよ。色も白で地味だし』
『でも、白なら、式典とか公式の場にも着て行けるから、便利だと思うよ』
『そっかー、だから初めてなら白がいいって、お勧めされたのかな』
この町では、公式な場では、魔法使いの衣装を着ることも多い。この世界での魔法使いの衣装は、私がいた世界の『和服』のようなものだ。今風に決めるならスーツ。古風に行くなら、魔法使いの衣装を着る。
『私も初めて作った時は、白だったよ。他の人達も、みんなそうみたい』
『そうなんだぁ。出来のほうは微妙なんだけど、魔法祭でこれを着るのが、今から凄く楽しみー!』
縫い目とかは、かなり雑だった。でも、着てしまえば、大して目立たないと思う。ナギサちゃんが、最低限、着れるレベルには手直ししてくれたし。
『やっぱり、初参加だと楽しそうでいいねぇ』
『ユメちゃんは、楽しみじゃないの?』
『うーん、正直私は、面倒に感じてるかなぁ』
やっぱり、毎年、参加してると飽きちゃうのかな? まぁ、子供のころからだと、十年以上、参加していることになるから。特別、物珍しくはないもんね。
ちなみに、私はお祭りが超大好きだ。なので、何回参加しても飽きないし、毎年、お祭りシーズンは、滅茶苦茶テンション上がってた。
『準備とかで、町中が盛り上がってるし、みんな楽しみにしてるのかと思ってた』
『もちろん、楽しみにしてる人は多いよ。でも、私は人の多いところ苦手だから』
『あー、そういうことね。当日は、物凄く人が多いみたいだもんねぇー』
ユメちゃんは元々、本を読むのが大好きな、大人しく知的な文学少女だ。確かに、人が多いところは苦手かもしれない。私の場合は、静かな所とか、じっとしてるのが苦手なので、真逆の性格だよね。
『多いなんてもんじゃないよー。お祭りの期間中は、人口が数倍になるから。お祭りよりも、人を見に行くみたいな感じ』
『あははっ、そうなんだ。でも、私は賑やかなの大好きだから、人が一杯来るの楽しみだなぁー』
私は基本、人が沢山いるのは大好きだ。だって、色んな人に会えて楽しいし。それに、周りに人が一杯いると、物凄く元気を分けてもらえるから。だから『人が沢山いると疲れる』って感覚が、私にはよく分からない。
『いいなぁ、そういうの。やっぱ風ちゃんは、シルフィードに向いているんだね』
『んー、そうかな?』
向き不向きという点で言えば、どちらかと言うと、向いてないほうだと思う。上品さとか、女子力とか、知識とか、全然ないし。
『私は結構、人見知りするほうだから、知らない人が沢山いるの苦手なんだ。風ちゃんは、人見知りとかしないでしょ?』
『んー、そうだね。誰とでも、すぐに仲良くなる感じかなぁ』
一度でも会ったことのある人とは、だいたい仲良しになる。
『風ちゃんの、そういうところ、凄くうらやましい』
人にうらやましがられるのは、初めてだ。別に、特別なことをやってる訳じゃないんだよね。ただ、人と仲良くなるのが好きなだけで。
あと、私って結構、寂しがり屋なので、一人でいるのって、ダメなんだよね。たまーに、一人になりたい時もあるけど、すぐ寂しくなってくる。
『ユメちゃんだって、普通に話せてるんじゃない? いつも、話しててとても楽しいし』
『ELは、相手の顔が見えないから。それに、風ちゃんは話も合うし、優しいもん』
『えー、そんなことないよー。ユメちゃんこそ、凄く優しいじゃない』
『そんなこと、全然ないから。というか、この話題は恥ずかしいから、ストーップ!』
『あははっ、そだね(笑)』
ユメちゃんは褒めたりすると、すぐ照れる。ま、そこがカワイイんだけどね。私は褒められると、調子に乗るだけなんで……。
『そういえば、ユメちゃん、今日は学校ないの?』
『もう、夏休みだよー』
『あぁ、そっかー。もう、そんな時期だもんね』
去年までは、普通に夏休みを満喫してたのに、今では遠い過去のように感じる。あの当時は、とても楽しかったけど、けっして有意義な過ごし方だったとは思えない。
部活やお出掛けとかしない日は、1日中ゴロゴロして、テレビや漫画見てたし。今でもそうだけど、私って、休みの日の使い方、超下手なんだよね。趣味とか、何もないから……。
『風ちゃんは、夏休みないの?』
『シルフィードって、みんながお休みの時が、書き入れ時だからね。お休みは、シーズンオフになってからかな。夏休み中は、どこの会社も忙しいと思うよ』
『そっかー、大変だね』
『もう慣れちゃったから、全然、平気』
土日出勤も今では普通だし、慣れれば、なんてこと無いんだよね。休みがあっても、特にすることないし。やることが決まっている仕事のほうが、むしろ楽なぐらい。
『お仕事、頑張ってね』
『ありがとー、頑張るよ』
『私これから、親と買い物行かないといけないんだぁ。また、連絡するね』
『いてらー、またねー』
『うん、またねー』
ELを閉じると、私は大きく伸びをする。
先ほどまで、気分が沈んでいたけど、いつのまにか凄く元気になっていた。これも全て、ユメちゃんのお陰だね。やっぱ誰かと話していると、元気が湧いてくる。
「よーし、気合を入れ直して、頑張りまっしょい!」
私は頬を軽く叩くとファイルを開き、勉強を再開するのだった……。
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次回――
『姉妹は「タイが曲がっていてよ」的なことするのかな?』
おちょくると、グーで殴りますよ
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