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慌てん坊のサンタクロース
しおりを挟む朝から何回もカレンダーを見て、ウキウキしながら身支度をする。
あと2日後のクリスマスには年に何回かしか帰れない彼氏が帰ってくる。
花丸のついた25日。
朝から買い出しに行って、クリスマス模様の可愛いネイルをして普段は行かない美容院に行った。
甘いものが大好きな彼には手の凝ったいちごのショートケーキを作ろうと、頑張って貯めたバイト代で少し高い買い物をした。
日にちが近づくに連れて、時間が遅く感じる。
早く会いたい。
連絡を見返してみるともう半年は会っていない。
彼も同じ気持ちでいてくれているのか、電話をする度にすごく嬉しそうにクリスマスの予定を話してくる。
はじめての遠距離恋愛で不安とか寂しい気持ちで押し潰されそうになることもあるけど、この会える瞬間がとてつもなく楽しみで幸せに感じられるから頑張れてる。
だからその分
『ごめん、仕事が入って帰れないかも』
このラインを見ると本当に人生って何でこんなに残酷なんだろうと思ってしまう。
じゃあ、次はいつ会えるの?
また半年も待たなきゃいけないの。
まだ分からない先のことを知りたくなる。
誰が悪いとかじゃないのに、誰にぶつけていいか分からない怒りも湧いてきて。
いいの、大丈夫。
仕事だから仕方ないもの。
張り切って予約したネイルも綺麗に染めた髪も、全部あたしのためにしたことだから。
頑張って作ったケーキだって、あたしが食べたくてこんなに奮発したんだ。
大丈夫、大丈夫。
一人だから、声を出して泣いてもいいよね。
外は雪がちらついてる。
真っ白のケーキが涙で濡れる。
もうすぐクリスマスが終わる23時。
急にドアを叩く音が聞こえて。
急いでドアを開けると真っ赤なお鼻のサンタクロースが立っていた。
雪まみれのサンタクロース。
急いでつけたのがバレバレの曲がった白髭。
仕事着が丸見えのサンタさんの赤い服。
大きなプレゼント袋を抱えた彼は、泣き顔のあたしにとびきりの笑顔でこう言った。
『お待たせ!メリークリスマス』
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