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第三章
目撃
しおりを挟む「ここまででいいよ?」
「いや家まで送るよっ」
「ううん。あたしここで買いたいものあるからさ!」
「そっか。じゃまたな!」
大きな買い物袋を預かり、太陽が行ったのを確認してスーパーに入ろうとした、その時。
「もぅ。慎也わかってるくせにぃ」
「覚えてねぇもん」
聞き覚えのある声に体がビクッと反応した。
慎也……?
慎也って…まさか、関村?
声のした方へ振り返る。
聞き間違えなんかじゃない。
あれは…関村だ。
隣の子は…誰?
さらさらのロングヘアをなびかせ関村の腕に絡みつく、スタイルのいいキレイな人。
楽しそうに笑う彼らは美男美女でお似合いのカップルに見えた。
「あ、今日泊まりだし、ご飯作ってあげるからスーパーで買い物してこーよ」
「いいけど、お前料理とかできんの?」
「つくれるよぉ。女だもん!」
「ふーん。お前一人じゃ危なっかしいから俺も手伝うか」
「えー?やっさしい!」
2人がスーパーに入ったのを確認してあたしは物陰から出た。
…どういうこと?
泊まりって…あの人誰?
昨日あたしが誘った時に用事があるって断ったのはあの人と会うためだったってこと…?
鼓動が早くなり、頭がぼーっとする。
この状況についていけてない。
もう一度こっそり二人を見てみたけど、紛れもなくあれは関村だ。
…ありえない。
なんであたしがこんなコソコソ隠れなきゃいけないのよ。
なんで…?意味わかんないよ。
涙で霞む視界。
何度見返しても関村に変わりはなかった。
通行人があたしのことを変な目で見る。
こんなコソコソして馬鹿みたい。
あたし、あいつの彼女だよ?
そうか。
そうだったんだ。
あたしだけじゃなくて他の人にも優しくしてたんだ。
あたしは特別なんかじゃなかったんだ。
そりゃそうかっ!
だってあんなイケメンでモテモテの人があたしなんか本気にするわけないじゃん。
隣にいた女の人の方が…お似合いに決まってるじゃん。
なにも買わずにそのまま帰宅した。
携帯を開いてメール作成画面を開く。
『今なにしてるの?』
これを今送ったら、なんて返信が来るんだろう。
答えを知ってて送るのは勇気がいる。
送信ボタンをなかなか押せない。
でも…もしかしたらあれはあいつのお姉さんかもしれないじゃん!
そんな安易な考えも浮かんできて。
だって…ありえないでしょ?
あたしがいるんだよ?
あたしは関村の彼女なんだよ?
そうじゃないとしたらあたしは…彼にとって一体何なの?
結局、送信できないまま携帯をベットにぶん投げた。
あれはきっと見間違い。
だって関村はあたしの彼氏だもん。
そう自分に言い聞かせるしか無かった。
「…関村」
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