8 / 57
第二章
あいつも学級委員!?
しおりを挟む「えーっとあそこの席は…田中さんっと」
やっぱり雑用ですよね。
外からは部活をしている生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。
…気になる。
「ちょっと休憩♪」
窓際に立ってグランドを眺めてみた。
サッカー部だ!
……楽しそうだなぁ。
面倒だし放課後遊べないもん、とか言っていままで部活入らなかったけど
人生に1度は入っとけばよかったかなぁって思ってたりもする。
「あ…!」
栗色の綺麗な髪の毛の子
あの子……屋上で会った子だ!
えーっと、なんだっけ名前。
忘れてしまった。
「おっ!」
その子が蹴ったボールが
きれいにゴールに入った。
おー、うまいじゃん!
嬉しそうにハイタッチする彼はあの時と変わらない無邪気な笑顔をしていて
「…かわいいなぁ」
くっきり二重の童顔。
笑うとできる目じりのシワが彼の性格の良さを滲み出してる。
自分では言いたくないけどなんだか女子のあたしよりも可愛くない…?
ムキィィィィィ!!
なんか腹立ってきた!
「こんなことしてる場合じゃない!やらなきゃ」
あー…でも。
「気になる」
あ、そうだ。
資料とか全部こっちに持ってきて、この窓側の席でやればいいじゃないか!
あたしったら頭いい!
さっそく大量の資料を持って窓側の席へと移動した。
「よし」
ー…1時間後
「…ちょっとやばいね」
あまりにも見ることに夢中になりすぎて手を動かしてなかった。
もうこんなに時間経ってるのに全然減ってないじゃん!
よし、まじめにまじめに…。
「…えーっと?あそこ誰だっけ」
って、あたしの隣の席の子じゃん!
さすがに忘れちゃだめでしょ!
「えーっと…たしか高橋大輔だ!」
「高橋雄輔」
「あぁ!そうだそうだヨウスケ…」
ん!?
バッと振り返るとドアによしかかるあいつ、関村がいた。
「うわ…」
最悪…。
なんであいつがいるのよ…。
「クラスのやつの名前くらい覚えろよ。2年になってから3ヶ月は経ってるぞ」
「…うるさいなぁ。まだ馴染んでないんだから仕方ないでしょ?」
「ふーん」
「ふーんって…興味無いなら聞かないでもらえます?」
「おじゃましまーす」
なんか教室入ってきたし!
ていうかなんでこの人あたしの前にちょくちょく姿を表すわけ?
誰もいない教室に関村の足音が響く。
なんか…ドキドキしてきた。
そばまで来たと思ったらひょこっとボードを覗き込んで目を見開いた。
「うわー、まだそれだけなの?」
「はい?」
「遅っ」
遅い言うな!!
「うっさいなぁ、あんたに関係ないでしょ」
まったく…。
バカにしに来たんだったら帰ってほしいんですけど。
すっごい迷惑なんですけどっー。
そんなことを思いながら手を動かしてると、関村は前の席のイスをくるっと回転させてむかえに座ってきた。
急に近くなった距離。
「な、なに」
「いーから。はやくやれよ」
「う、うん」
なんか微妙に近いし…っ!
自分の呼吸が聞こえそうで鼻から息を吸って…吐いて…。
ってなに意識してんだよあたし!
「てか、クラスの奴らの名前書いた座席表もらってないの?」
「え、あるのそんなの?もらってないけど」
「あそこにあるの、それじゃね?」
関村が指差す方を見てみると、たしかに教卓の上になにやら白い紙が置いてある。
…まさか。
もしほんとにそれがそうだとしたらあたしのこの1時間の苦労はいったいなんだったの!?
席を立ち、紙をとって戻ってきたあいつがあたしに前にそれをかざした。
「はい、どんまい」
ガーン…。
「ショック受けてる暇ないよ。さっさとやれよ」
「あ、はい」
よくわかんないけど叱られたのでとりあえず手を動かす。
「鮎沢さんの字違う」
机一個分の距離はやっぱり近くて集中できませーん。
「ていうか、あんたはなんでこんな時間まで残ってるの?」
「俺も学級委員に選ばれたから」
「えっ、じゃこれもう終わらせたってこと?」
「そうそう」
「はやっ!」
「お前とは違うから」
「なっ、鼻で笑うな!」
もー。聞かなきゃよかった!
「おっサッカー部じゃん」
そういって窓を眺めた。
「関村は部活入ってないの?」
「入ってないよ、めんどくせーし。女と遊べないから」
「はぁ?そんな理由とか…ばかみたい」
「冗談だよ」
イケメンのあんたが言うから冗談に聞こえないのはあたしだけだろうか。
モテる男は黙ってても色んな女の子が寄ってくるんだろうなぁ。
…でもこの人、チャラそうってイメージではないし遊んでる感じも特にないな。
なんか…見た目が怖いから
遠くからキャー!って言われてる王子様的な存在か?
こいつめ親に感謝しろ!
関村の手があたしのペンを持ってる方の手に触れたのはその時だ。
おもわず書く手が止まる。
「えっ…」
「今日、ひま?」
「ひまだけど…」
「じゃ、終わったら俺と遊びにいこっか」
「……は⁉︎」
「これ終わらせたらね」
「な、なんであたしがあんたなんかと…」
「別にいいじゃん。お前といると楽しいし」
ドキッ…ー。
外を眺める彼の横顔がオレンジ色に少し染められて
なんだかやけにかっこよく見えたのは見間違いなんかじゃない。
…うん。ずるいよ。
確かにかっこいいよ。
「…まぁ、いいよ?仕方ないから」
「なに照れてんの」
「は?照れてないし!」
「俺のこと意識してんの?」
その言葉に
恥ずかしいほど体の体温が上がっていく。
「そんなわけないでしょ!?」
「すーぐ顔赤くなる。可愛いな」
そっと伸びてきた手。
えっ…。
どこか一点を見つめる彼の視線がなんだか恥ずかしくて。
「ちょ、さわんないで!」
パシッ…ー!
あ…。
恥ずかしさのあまり
反射的に彼の手を振り払ってしまった。
行き場をなくしたようにあたしの目の前で固まっている彼の手。
関村もまさか振り払われるとは思っていなかったらしく目を少し見開いた。
「あ…その、ごめん違くてっ」
そんなあたしを見てため息をつき
そのままガタンと席を立ち上がった。
うそ。怒っちゃった…?
「え、ちょっと待ってよっ」
彼はどんどんドアの方に向かっていってしまう。
うそ、もしかして帰っちゃうの?
「ねぇ!…待てばか!」
すると、ドアに手をかけた関村がはピタッと止まった。
「さっきはその…嫌いとかじゃなくて。びっくりしたってゆーか…ほら、あの」
あぁーうまく言えない!!
「そう、反射的に!ほら、人間って追いかけられたら逃げたくなるでしょ?だからそういう…」
「なにいってんの?」
「…え?」
顔を上げると、彼はいつもと変わらない表情であたしを見ていた。
怒ってない…?
「便所、いきたいんだけど」
「へ?」
と、トイレ?
「そんな必死にならなくても、また戻ってくるよ。ばーか」
ふっ。と優しく笑って行ってしまった。
わ、笑われた…。
あたしったら何言っちゃってんよ!
やだやだやだ。
なに焦ってんの?
もー、バカみたいっ。
あんなに必死になっちゃって。
まるで…あたしがあいつのこと、好きみたいじゃん。
もう!
早く終わらせよう!
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
嫁にするなら訳あり地味子に限る!
登夢
恋愛
ブランド好きの独身エリートの主人公にはほろ苦い恋愛の経験があった。ふとしたことがきっかけで地味な女子社員を部下にまわしてもらったが、地味子に惹かれた主人公は交際を申し込む。悲しい失恋をしたことのある地味子は躊躇するが、公私を分けてデートを休日に限る約束をして交際を受け入れる。主人公は一日一日を大切にしたいという地味子とデートをかさねてゆく。
恋に焦がれて鳴く蝉よりも
橘 弥久莉
恋愛
大手外食企業で平凡なOL生活を送っていた蛍里は、ある日、自分のデスクの上に一冊の本が置いてあるのを見つける。持ち主不明のその本を手に取ってパラパラとめくってみれば、タイトルや出版年月などが印刷されているページの端に、「https」から始まるホームページのアドレスが鉛筆で記入されていた。蛍里は興味本位でその本を自宅へ持ち帰り、自室のパソコンでアドレスを入力する。すると、検索ボタンを押して出てきたサイトは「詩乃守人」という作者が管理する小説サイトだった。読書が唯一の趣味といえる蛍里は、一つ目の作品を読み終えた瞬間に、詩乃守人のファンになってしまう。今まで感想というものを作者に送ったことはなかったが、気が付いた時にはサイトのトップメニューにある「御感想はこちらへ」のボタンを押していた。数日後、管理人である詩乃守人から返事が届く。物語の文章と違わず、繊細な言葉づかいで返事を送ってくれる詩乃守人に蛍里は惹かれ始める。時を同じくして、平穏だったOL生活にも変化が起こり始め………恋に恋する文学少女が織りなす、純愛ラブストーリー。
※表紙画像は、フリー画像サイト、pixabayから選んだものを使用しています。
※この物語はフィクションです。
スパダリ外交官からの攫われ婚
花室 芽苳
恋愛
「お前は俺が攫って行く――」
気の乗らない見合いを薦められ、一人で旅館の庭に佇む琴。
そんな彼女に声をかけたのは、空港で会った嫌味な男の加瀬 志翔。
継母に決められた将来に意見をする事も出来ず、このままでは望まぬ結婚をする事になる。そう呟いた琴に、志翔は彼女の身体を引き寄せて
――――
「私、そんな所についてはいけません!」
「諦めろ、向こうではもう俺たちの結婚式の準備が始められている」
そんな事あるわけない! 琴は志翔の言葉を信じられず疑ったままだったが、ついたパリの街で彼女はあっという間に美しい花嫁にされてしまう。
嫌味なだけの男だと思っていた志翔に気付けば溺愛され、逃げる事も出来なくなっていく。
強引に引き寄せられ、志翔の甘い駆け引きに琴は翻弄されていく。スパダリな外交官と純真無垢な仲居のロマンティック・ラブ!
表紙イラスト おこめ様
Twitter @hakumainter773
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜
湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」
「はっ?」
突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。
しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。
モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!?
素性がバレる訳にはいかない。絶対に……
自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。
果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる