好きなんて、ウソつき。

春茶

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第二章

あいつも学級委員!?

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「えーっとあそこの席は…田中さんっと」

やっぱり雑用ですよね。

外からは部活をしている生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。

…気になる。

「ちょっと休憩♪」

窓際に立ってグランドを眺めてみた。

サッカー部だ!

……楽しそうだなぁ。
面倒だし放課後遊べないもん、とか言っていままで部活入らなかったけど
人生に1度は入っとけばよかったかなぁって思ってたりもする。

「あ…!」

栗色の綺麗な髪の毛の子
あの子……屋上で会った子だ!

えーっと、なんだっけ名前。
忘れてしまった。

「おっ!」

その子が蹴ったボールが
きれいにゴールに入った。

おー、うまいじゃん!

嬉しそうにハイタッチする彼はあの時と変わらない無邪気な笑顔をしていて

「…かわいいなぁ」

くっきり二重の童顔。
笑うとできる目じりのシワが彼の性格の良さを滲み出してる。

自分では言いたくないけどなんだか女子のあたしよりも可愛くない…?

ムキィィィィィ!!

なんか腹立ってきた! 

「こんなことしてる場合じゃない!やらなきゃ」

あー…でも。

「気になる」

あ、そうだ。
資料とか全部こっちに持ってきて、この窓側の席でやればいいじゃないか!

あたしったら頭いい!
さっそく大量の資料を持って窓側の席へと移動した。

「よし」

ー…1時間後

 「…ちょっとやばいね」

あまりにも見ることに夢中になりすぎて手を動かしてなかった。

もうこんなに時間経ってるのに全然減ってないじゃん!
よし、まじめにまじめに…。

「…えーっと?あそこ誰だっけ」

って、あたしの隣の席の子じゃん!
さすがに忘れちゃだめでしょ!

「えーっと…たしか高橋大輔だ!」

「高橋雄輔」

「あぁ!そうだそうだヨウスケ…」

ん!?

バッと振り返るとドアによしかかるあいつ、関村がいた。

「うわ…」

最悪…。
なんであいつがいるのよ…。

「クラスのやつの名前くらい覚えろよ。2年になってから3ヶ月は経ってるぞ」

「…うるさいなぁ。まだ馴染んでないんだから仕方ないでしょ?」

「ふーん」

「ふーんって…興味無いなら聞かないでもらえます?」

「おじゃましまーす」

なんか教室入ってきたし!

ていうかなんでこの人あたしの前にちょくちょく姿を表すわけ?

誰もいない教室に関村の足音が響く。

なんか…ドキドキしてきた。

そばまで来たと思ったらひょこっとボードを覗き込んで目を見開いた。

「うわー、まだそれだけなの?」

「はい?」

「遅っ」

遅い言うな!!

「うっさいなぁ、あんたに関係ないでしょ」

まったく…。 
バカにしに来たんだったら帰ってほしいんですけど。
すっごい迷惑なんですけどっー。

そんなことを思いながら手を動かしてると、関村は前の席のイスをくるっと回転させてむかえに座ってきた。

急に近くなった距離。

「な、なに」

「いーから。はやくやれよ」

「う、うん」

なんか微妙に近いし…っ!
自分の呼吸が聞こえそうで鼻から息を吸って…吐いて…。

ってなに意識してんだよあたし!

「てか、クラスの奴らの名前書いた座席表もらってないの?」

「え、あるのそんなの?もらってないけど」

「あそこにあるの、それじゃね?」

関村が指差す方を見てみると、たしかに教卓の上になにやら白い紙が置いてある。

…まさか。
もしほんとにそれがそうだとしたらあたしのこの1時間の苦労はいったいなんだったの!?

席を立ち、紙をとって戻ってきたあいつがあたしに前にそれをかざした。

「はい、どんまい」

ガーン…。

「ショック受けてる暇ないよ。さっさとやれよ」

「あ、はい」

よくわかんないけど叱られたのでとりあえず手を動かす。

「鮎沢さんの字違う」

机一個分の距離はやっぱり近くて集中できませーん。

「ていうか、あんたはなんでこんな時間まで残ってるの?」

「俺も学級委員に選ばれたから」

「えっ、じゃこれもう終わらせたってこと?」

「そうそう」

「はやっ!」

「お前とは違うから」

「なっ、鼻で笑うな!」

もー。聞かなきゃよかった!

「おっサッカー部じゃん」

そういって窓を眺めた。

「関村は部活入ってないの?」

「入ってないよ、めんどくせーし。女と遊べないから」

「はぁ?そんな理由とか…ばかみたい」

「冗談だよ」

イケメンのあんたが言うから冗談に聞こえないのはあたしだけだろうか。

モテる男は黙ってても色んな女の子が寄ってくるんだろうなぁ。

…でもこの人、チャラそうってイメージではないし遊んでる感じも特にないな。
なんか…見た目が怖いから
遠くからキャー!って言われてる王子様的な存在か?

こいつめ親に感謝しろ!

関村の手があたしのペンを持ってる方の手に触れたのはその時だ。

おもわず書く手が止まる。

「えっ…」

「今日、ひま?」

「ひまだけど…」

「じゃ、終わったら俺と遊びにいこっか」

「……は⁉︎」


「これ終わらせたらね」


「な、なんであたしがあんたなんかと…」


「別にいいじゃん。お前といると楽しいし」


ドキッ…ー。

外を眺める彼の横顔がオレンジ色に少し染められて

なんだかやけにかっこよく見えたのは見間違いなんかじゃない。

…うん。ずるいよ。
確かにかっこいいよ。

「…まぁ、いいよ?仕方ないから」

「なに照れてんの」

「は?照れてないし!」

「俺のこと意識してんの?」

その言葉に
恥ずかしいほど体の体温が上がっていく。

「そんなわけないでしょ!?」

「すーぐ顔赤くなる。可愛いな」

そっと伸びてきた手。

えっ…。

どこか一点を見つめる彼の視線がなんだか恥ずかしくて。

「ちょ、さわんないで!」

パシッ…ー!

あ…。

恥ずかしさのあまり
反射的に彼の手を振り払ってしまった。

行き場をなくしたようにあたしの目の前で固まっている彼の手。

関村もまさか振り払われるとは思っていなかったらしく目を少し見開いた。

「あ…その、ごめん違くてっ」

そんなあたしを見てため息をつき
そのままガタンと席を立ち上がった。

うそ。怒っちゃった…?

「え、ちょっと待ってよっ」

彼はどんどんドアの方に向かっていってしまう。

うそ、もしかして帰っちゃうの?

「ねぇ!…待てばか!」

すると、ドアに手をかけた関村がはピタッと止まった。

「さっきはその…嫌いとかじゃなくて。びっくりしたってゆーか…ほら、あの」

あぁーうまく言えない!!

「そう、反射的に!ほら、人間って追いかけられたら逃げたくなるでしょ?だからそういう…」

「なにいってんの?」

「…え?」

顔を上げると、彼はいつもと変わらない表情であたしを見ていた。

怒ってない…?

「便所、いきたいんだけど」

「へ?」

と、トイレ?

「そんな必死にならなくても、また戻ってくるよ。ばーか」

ふっ。と優しく笑って行ってしまった。

わ、笑われた…。
あたしったら何言っちゃってんよ!

やだやだやだ。

なに焦ってんの?
もー、バカみたいっ。
あんなに必死になっちゃって。
まるで…あたしがあいつのこと、好きみたいじゃん。

もう!
早く終わらせよう!


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