好きなんて、ウソつき。

春茶

文字の大きさ
上 下
2 / 57
第一章

イケメンとの出会い

しおりを挟む




「やばいやばいやばい…」

新学期早々遅刻なんて…!

みんな仲のいい人たちでグループ作ってたら後から輪の中に入れる自信ないよぉ。
どうしよう…。

んもー!あたしのばかっ!
昨日の夜に徹夜で逆立ちの練習なんかしてたからだ…。

時間が無いながらも整えた髪型なんてもうお構いなしに全速力で走った。

よし、近道を通ろう!

テストの点数が悪すぎて、前も見ずとぼとぼ歩いて帰った時にたまたま見つけた通り道。

急げー!!

散歩中のおじいさんの横を風のごとく走り抜け、突き当たりを右に曲がろうとした


その時

視界に現れた自転車の影。


「えっ…」

「うおっ…」

ぶ、ぶつかる!

「ぎゃゃゃゃゃゃゃゃ!」

キキィー…!

ドンッ!

激しいブレーキ音が響き渡ると同時に腰にとてつもない激痛が走り、あたしは地面に叩きつけられた。

「ぐはっ…」

吉岡未菜
新学期早々自転車にひかれました。

…って、あれ?
さっきまで腰に感じてた痛みがない。

え…もしかしてあたし、死んだの!?
うそだ~…ついてなさすぎる…。

最初で最後のテレビ出演が自転車にひかれて死ぬニュースだなんて…
こんなことになるんだったらもっと大好物のプリン、食べておけばよかったなぁ。
お母さんが買ってきてくれた今朝のパンも美味しそうだったなぁ…。

あ、あとせめて将来のイッケメンな旦那さんの顔を拝みたかったですはい。
あたしの短い人生…さよなら。

「ー…もしもーし。死んだ?」

すると突然、耳元で低い男の人の声がした。

だれの声?
そっと目を開くと。
目の前には心配そうにあたしの顔を覗き込むチョーーーイケメンの謎の男。

高身長…180センチはあるか?
黒髪で細長い綺麗な目
ワイシャツ越しにでもわかる引き締まった体。

そしてその近くには倒れた自転車が。
ほぅほぅ、なるほど。
こいつが私を自転車で引きやがった真犯人…
って、い、イケメン!!!

「うわ!」

おいお前!顔近すぎだろっ!!
朝から刺激が強すぎるわ!
とっさに恥ずかしくて顔を手で覆った。

「…あーのさ、顔隠すよりパンツ隠したら」

…は。え。
   
「んー、さすがにヒヨコはねぇな」

おそるおそる自分の下半身を見てかたまる。

「ぎゃゃゃゃゃゃゃや!」

慌ててスカートを抑えて起き上がると。

ゴンッ。

「いったぁ…い」

ズキズキする頭を撫でて、目の前の男を見つめた。
謎のイケメンも痛そうに額を抑えている。

あちゃ…。

慌てて起き上がった時に、あたしを見下ろしてた彼の額に衝突したみたい。

「あ…ごめんなさ」

「いってぇなぁ」

おっ、睨まれた。
ちょっと怖いぞ。
とっさにあたしもできる限りのしわを寄せて睨み返す。

「っ。まぢついてねぇわ」

…おい、舌打ちしたね!?

ついてない?
それはこっちのセリフだ。
衝突したくてしたわけじゃないし、むしろ怪我したのはこっちな!?
自動車に轢かれてるんだよこっちは!

って自分の体を見回したけど、かすり傷すらなかった。

それにしても不機嫌そうな顔。

うっ……。

「…ごめんなさい」

ぐすっ。
あたしだって、悪気はなかったんだよ?
まさか曲がり角でこんなイケメンが出てくると思わないじゃん。
分かってたらもっと可愛く走ってたよ…。

俯いて彼の言葉を待っていると。

「ったく、気をつけろよ。ばか女」

………はい?
今、ばかっていった?
ゆっくり顔を上げると冷たい視線があたしを突き刺した。

「とろくせぇやつ」

カッチーン

「とろくさい?だいたい突っ込んできたのはそっちでしょ!?仮に私が悪かったとしても自転車で女の子轢いといてその態度はなんですか!男として…人としてどうなのよ!
それに…っ初対面の人にあたしのこととやかく言われる筋合いないし!
しかもこんなっ…こんな意味わかんないやつにばか呼ばわりされるほどばかじゃないわぁぁぁぁ!!」

と、心の中で叫びながら
そいつに向かって反抗しようとしたんだけれど。

「ほら」

「…えっ?あ。どーも」

あたしが脳内で怒り狂ってる間に散乱していた教科書たちをキレイにカバン入れてくれていたらしい。

…ちゃっかり拾ってくれたりして、
案外いいやつなのかも?

「あ、あのさ!きみ名前は?」
 
「うっせ」

うん。
いいやつって言ったの撤回ね。
あたしの学校と同じ制服を着ているところを見ると…同じ学校の生徒か。
こんなイケメンいたかなぁ…。

「あ、ちょっと!」

考え込んでるあたしを置いて自転車で走り出そうとする彼を思いっきり掴んだ。

「うぉっ」

「ちょっと置いてかないでよ!」

「早くしないと、遅刻するよ?怪力女」

ふっと、鼻で笑い
じゃーなーっと、凄まじいスピードで行ってしまった。

「は」

もう遅刻するのわかってるんだからあたしも乗せていけよ!

俺は自転車だからまだ間に合うとでも言いたげなあのバカにした笑い方!
お前どんくせぇからがんばれよ!
とでも思ってそうなあの憎たらしい口調!

このやろー!

「あー、もうっ!」
   
スカートについていた砂ぼこりを払ってまた全速力で走る。

急がなきゃ……っ!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

嫁にするなら訳あり地味子に限る!

登夢
恋愛
ブランド好きの独身エリートの主人公にはほろ苦い恋愛の経験があった。ふとしたことがきっかけで地味な女子社員を部下にまわしてもらったが、地味子に惹かれた主人公は交際を申し込む。悲しい失恋をしたことのある地味子は躊躇するが、公私を分けてデートを休日に限る約束をして交際を受け入れる。主人公は一日一日を大切にしたいという地味子とデートをかさねてゆく。

恋に焦がれて鳴く蝉よりも

橘 弥久莉
恋愛
大手外食企業で平凡なOL生活を送っていた蛍里は、ある日、自分のデスクの上に一冊の本が置いてあるのを見つける。持ち主不明のその本を手に取ってパラパラとめくってみれば、タイトルや出版年月などが印刷されているページの端に、「https」から始まるホームページのアドレスが鉛筆で記入されていた。蛍里は興味本位でその本を自宅へ持ち帰り、自室のパソコンでアドレスを入力する。すると、検索ボタンを押して出てきたサイトは「詩乃守人」という作者が管理する小説サイトだった。読書が唯一の趣味といえる蛍里は、一つ目の作品を読み終えた瞬間に、詩乃守人のファンになってしまう。今まで感想というものを作者に送ったことはなかったが、気が付いた時にはサイトのトップメニューにある「御感想はこちらへ」のボタンを押していた。数日後、管理人である詩乃守人から返事が届く。物語の文章と違わず、繊細な言葉づかいで返事を送ってくれる詩乃守人に蛍里は惹かれ始める。時を同じくして、平穏だったOL生活にも変化が起こり始め………恋に恋する文学少女が織りなす、純愛ラブストーリー。 ※表紙画像は、フリー画像サイト、pixabayから選んだものを使用しています。 ※この物語はフィクションです。

恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~

泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の 元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳  ×  敏腕だけど冷徹と噂されている 俺様部長 木沢彰吾34歳  ある朝、花梨が出社すると  異動の辞令が張り出されていた。  異動先は木沢部長率いる 〝ブランディング戦略部〟    なんでこんな時期に……  あまりの〝異例〟の辞令に  戸惑いを隠せない花梨。  しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!  花梨の前途多難な日々が、今始まる…… *** 元気いっぱい、はりきりガール花梨と ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

スパダリ外交官からの攫われ婚

花室 芽苳
恋愛
「お前は俺が攫って行く――」  気の乗らない見合いを薦められ、一人で旅館の庭に佇む琴。  そんな彼女に声をかけたのは、空港で会った嫌味な男の加瀬 志翔。  継母に決められた将来に意見をする事も出来ず、このままでは望まぬ結婚をする事になる。そう呟いた琴に、志翔は彼女の身体を引き寄せて ―――― 「私、そんな所についてはいけません!」 「諦めろ、向こうではもう俺たちの結婚式の準備が始められている」  そんな事あるわけない! 琴は志翔の言葉を信じられず疑ったままだったが、ついたパリの街で彼女はあっという間に美しい花嫁にされてしまう。  嫌味なだけの男だと思っていた志翔に気付けば溺愛され、逃げる事も出来なくなっていく。  強引に引き寄せられ、志翔の甘い駆け引きに琴は翻弄されていく。スパダリな外交官と純真無垢な仲居のロマンティック・ラブ! 表紙イラスト おこめ様 Twitter @hakumainter773

推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜

湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」 「はっ?」 突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。 しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。 モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!? 素性がバレる訳にはいかない。絶対に…… 自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。 果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。

冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました

せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜 神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。 舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。 専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。 そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。 さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。 その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。 海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。 会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。 一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。 再会の日は……。

処理中です...