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「えーっと…」

あたしの目の前には気まずそうな顔をしたユウ君と彼の腕にしがみつく女の子。

「すみません。女性と出かけるって話したら行くってきかなくて…」

なんか見覚えあるなぁと思ったらさっきのお花屋さんの子か。

「そっか。あたしは何も気にしないよ~。はじめまして、ナナミです」

ニコッとその子に挨拶するが彼女は鬼の形相で睨んでくる。

…監視役かな?

「ユウが女と出かけるなんて言うからどんな人かと思えば、ケバいおばさんじゃん」

「ケバいおばさん…」

「…本当すみません」

「ユウのこと誑かしてるんでしょ!どういうつもりで誘ったわけ?」

「えーっと、ユウ君にはこないだ危ないところを助けてもらったの。だから今日はお詫びさせてもらいたくてカフェで甘いものでもご馳走したいなぁーって」

甘いものと言うと、彼女の顔が一瞬緩んだ気がした。

女の子は甘いもの好きだよね~。

仕方ない、ユウ君と2人で会うにはまずこの子の警戒心を解くか。

「名前教えてもらっていいかな?」

「…コノミ」

「可愛い名前だねっ。あたしはナナミ。ユウ君は甘いものとか大丈夫?」

「はい」

「じゃあ行こっか」

あたしとユウ君の間を確保しながらコノミちゃんも少し楽しそうについてくる。

なんか…可愛いらしい子だなぁ。

行きつけのカフェに連れて行くと、コノミちゃんは嬉しそうにメニューを見ている。

「俺だけじゃなくて、コノミまですみません」

「全然いいよ~。コノミちゃん、ここのおすすめはこのイチゴの特大パフェだよ」

「…これ頼んでもいいの?」

「いいよ?好きなもの食べてっ」

運ばれてきたパフェを口いっぱいに頬張る彼女は子供みたいで可愛い。

高校生の子がこんなに幼く見えるなんてあたしも年取ったなぁ…。

「コノミ、それ食べたら帰れよ」

「えー!なんで!やだ!」

「わがまま言うな」

「だってこんなお姉さんと2人でいたら好きになっちゃうかもしれないじゃん!」

「はぁ…」

いつも、こんな感じなんだろうか。
確かにこの子が側に居たら女の子は寄ってこないだろうな…。

ユウ君がお手洗いに立った隙にコノミちゃんに聞いてみる。

「ユウ君のこと好き?」

「へ!?な、なんでそれを…」

「バレバレだよ~。告白とかしないの?」

「…ユウはあたしのこと幼馴染としか見てないの。小さい頃から側にいたし。ユウがお母さんの病気で落ち込んでた時だって、あたしが側にいてあげた」

「うんうん」

「告白して…今の関係を壊したくない。ユウにとってあたしが一番に頼れる存在でいたいの。好きなんて…言えないけど、誰かに取られるのは嫌」

…難しい問題だなぁ。
こんなにわかりやすい子なのに、ユウ君はきっとこの子の気持ち気付いてないんだろうなぁ。

「だからっ、あたしからユウを取らないで!」

「えっと…、あたしはユウ君のこと恋愛対象としてみてないから大丈夫だよ。だけど、勇気出して告白した方が後悔しないと思うなぁ。あんなにかっこいいんだから、誰かに取られちゃっても文句言えないよ?」

「…ナナミさんには、わかんないよ。幼馴染で産まれたあたしの気持ちなんて」

あれ…やばい、コノミちゃん泣きそう。
あたしの言葉選びが悪かったな。

「ご、ごめんコノミちゃん。とりあえず今日はたくさん食べよ!」

「…帰る」

「えっ」

「あれ、コノミ?」

戻ってきたユウ君の横を、彼女は俯いて通り過ぎる。

どうしよう。
ここであたしが追いかけるのはきっと違うよな。

状況を把握できていない彼は不思議そうに首を傾げていたので、すかさず声をかけた。

「ごめんっ、あたしのせいなんだけど、とりあえず彼女のこと家に送ってあげてほしい」

「あ、はい。すみませんご馳走様でした。また後で連絡します」

そう言って走る彼女の後を追いかけていく。

…恋する女の子を泣かせるなんて最低なことをしてしまった。

幼馴染かぁ。
あたしにそう言う存在は居ないから気持ちはわからないけど…うん。

あんな優しくてかっこいい男の子が近くにいたら、そりゃ好きになっちゃうよなぁ。


女心って難しい。

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