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お花屋さんの9割は若い女の人で埋め尽くされている。

「こんなに女がいるけど、やっぱりナナミが一番可愛いな」

「そんなことないよ~」

そんなことどうでもいいからさっさとバック買いに連れてけっ!

「…ーちょっと!さっきの電話また女の子からだったよ!ユウはガードゆるすぎ!」

「はいはい」

「あんたどうでもいいからってなんでもOKするのやめなよ!」

少し遠くから声がして視線を移すと定員らしきエプロンをかけた2人が言い合いをしていた。

…ユウ?
ユウって…。

人が邪魔で男の子の顔が見えない。

「この花ナナミに似合いそうだなぁ」

「え?あ、うん」

そういえば、お花屋さんで働いてるって言ってたけどまさか…。

「せっかくだし、定員さんに選んでもらおーぜ」

「え?」

「すいませーん!」

「ちょっ、」

すると、はーいと返事がして遠くから男の子が歩いてくる。

どうしよう。
今こいつの腕を変に振り払ったら嫌な気持ちにさせるかもしれない。
そうなったらバック買ってもらえないし…。
でもこんな歩く財布みたいなギラギラな男と付き合ってると思われたくない。

やっぱりあたしはこういう男と絡んでるんだとか思われるのは嫌だ。


「…っごめん!やっぱり行こう!」

「えっ!ナナミ!?」

咄嗟に、定員が来る前に彼の手を引いて小走りで店を出た。

「ちょっ、どうした!?」

「ごめんっ…ちょっと具合悪くなっちゃって。お手洗い行ってきてもいい?」

「お、おう。それなら近くの店だから俺先行って買っとくわ」

「うんっ…ごめんね!」

体調の悪いフリをして、すぐそばにあった店のトイレに駆け込んだ。

…あそこのお花屋さんで働いてたんだ。
じゃあ電話に出たのはきっと隣にいた女の子かな。

あのお客さんたちの群れ、お花買いに来てるってよりかは彼を見に来てる人が多かったっぽい。

…自覚のないモテ男ね。
幼馴染の子もきっとユウ君のこと好きなんだろうなぁ。

はぁ、なんであたし1人じゃなかったんだろう。
あいつと一緒じゃなかったら偶然を装って話せたのに。
あそこで働いてるって知ってしまってからだとなんとなく行きずらいんだけど…。

♪~♪~

「あー、もうまだトイレだっつの!」

……えっ。

思いもしなかったユウ君からの電話に心臓が飛び出そうになった。

一旦深呼吸をして、電話に出る。

「も、もしもし」

「あの、さっき電話くれましたか?」

「あ…うん。あたしの番号は教えてなかったのによくわかったね」

「もしかしたらそうかなと思って、かけてみました」

そんな何気ない言葉が嬉しいと思うのは、あたしがこの子を気になってるからなのだろうか。

「そっか。仕事中だった?」

「はい。どうしました?」

「えっと…特に用事はなかったんだけど、せっかく連絡先交換したから一回かけてみようかなぁって」

「なるほど」

「……」

「……」

そりゃそうなるよね!?
用事もないのにかけて来んなって絶対思ってるよね。

「ご、ごめん忙しい時にっ。本当は暇なら少し会えないかなぁと…」

「もう上がりましたよ」

「あ、そうなんだ!お疲れ様」

「今から幼馴染のこと家に送るので、その後なら時間ありますけど」

「そ、そうなの?」

「はい。迎えに行くので、家で待っててもらっていいですか?」

「うんっ、わかった!」

電話が切れたのを確認して急いでトイレを出る。

やばいどうしよう。
てかまずこんな大人臭い服じゃ隣歩けないから着替えなきゃ。

すぐタクシーを拾って家に帰り、クローゼットを漁る。

「どんな服がいいんだろ…」

やっぱり清楚系だよね。
ていうかこんな露出する服しか持ってなかったっけあたし。

もっと大人しめの服もたくさん買っておけばよかった~。
あっ、このワンピースにしよう。
せっかくだし化粧も直して髪も整えて…と。

…あれ?
そういえばあたし誰かと買い物してたっけ。
やべ、そのまま置いてきちゃった。
まぁ、いいや。

後で連絡入れとこーっと。



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