【完結】ハロウィンパーティーで出会った狼獣人にとろとろに愛されてしまいました!

関日向海

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獣人と交わるということ

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ハロウィンパーティーから遡ること数日。
ルイスは店内の奥にあるオーナー専用室にいた。
ジェフリーはルイスの執務机にコーヒーを置き、そのまま控えている。
ルイスはシフト表を眺めながら、ジェフリーに尋ねた。

「ジェフリーは番の存在を信じてるのか?」
「……聞いてどうする?」

相変わらず表情筋が仕事をしていない。
だから「賭け」をしようとすると輩がわいてくるのだ。もっとも、ルイスも一枚噛んでいるので表立っては言わないけれど。
この男が誰かに感情を揺らす日は来るのだろうか?

「君がハロウィンパーティーの日にシフトに入るなんて初めてだからさ、どういった心境の変化だと思ってね」
「今年は出ないといけないと思った」

それだけだ、と、従業員兼幼なじみは言った。
この時点で予兆はあったのだ。
彼の最愛の番との出会いが。



――――――――――――――――――――――――

 
人間の住む世界と獣人の住む世界は完全に交わっている訳ではない。
世界のあちこちに接点があり、そここら密かに交流が図られているからだ。
人間側から言わせると『神隠し』とか言うらしいが、獣人側からしたら『迷い人』として保護の対象となる。
獣人による虐待や犯罪を抑制するために、各地の接点には保護兼交流施設を設けるようになった。

このplace of fateもそのひとつだ。

人間界で言うハロウィンは獣人の力が数倍に跳ね上がり、番を求める衝動が著しく高まる日。
番相手である人間や獣人を襲い、攫う事例が多発する日でもあるため、それを監視・管理するためにイベントを催すのが管理人たちのルールとなっていた。

ジェフリーは狼獣人の両親から生まれたが、父親が「運命の番に出会った」と言い残して妻と子を捨てて出て行ってしまって以来、番という言葉を嫌っているのをルイスは知っている。

彼との出会いは8歳の頃。
いじめられたジェフリーが父の運営する施設に逃げ込んできたのだ。
片親であること、しかも片親になった原因が運命の番であることを揶揄われ、いじめられるのが常態化していたらしい。
それを知った父は何らかの手を打ったらしい。
その日以降、母親と一緒に時々顔を見せに来るようになった。
成長すると恩を返すためと称してバイトを始めたジェフリーを、ルイスが独立した時に引き抜いた。

見目麗しい狼獣人はとにかくモテる。
見事に客を引き寄せてくれて、店の経営は軌道に乗った。

しかし毎年ハロウィンパーティーの日だけは頑なに出勤を拒んだので、その度にどうやって客を呼び込むかに苦労したものである。

そもそもこの接点、誰でも渡れるものではない。
獣人の番、もしくはそれに準じる存在でなければそもそも接点に辿り着くことすら叶わないのだ。
それは獣人も同様であり、もっと言ってしまえば悪意をもって利用しようとすると即座に締め出される。これは人も獣人も変わらない。

自分が手を出さなくても世界のことわりが自然と悪意ある者を淘汰してくれるのだとルイスは解釈していた。

先日のハロウィンでは招かれざる客がふたりほどいたが、ジェフリーの威嚇によって退かれたし、それ以降店の界隈には入ることすら出来ていない。
あの店はどこだ?!と彷徨い歩く薄汚い男女が徘徊しているという報告がルイスの元に届いていた。

ジェフリーの番の関係者だったようだが、狼獣人の威嚇に加えて番本人から二発もビンタを食らっているのに、まだ自分に未練があると思っている時点でバカとしか言いようがない。
一緒にいる女も同レベルだし、お似合いなのだからそのまま諦めればいいのに。

周囲に迷惑をかける前に対処しないと……とルイスはため息をついた。
 
あの日以来、ジェフリーは店に出勤していない。
狼獣人の番への執着は獣人の中でも強い方だ。
番を得てからの蜜月は数日から一か月に及ぶこともあるため、当分来ないだろうことは予想済み。
シフト調整は既に済ませてあるから問題はないのだが、あるとしたら……番である人間の方だろう。

何しろ執拗で、念入りで、悪い言い方をすればねちっこい愛情表現をするのが狼獣人である。
今頃はこれでもかとばかりに番にマーキングを施し、全身全霊をもってどろどろになるまで愛し尽くしているだろう。
 
それだけたったひとりの番を大切にしている証でもあるのだが、人間の体力ではどこまでついて行けるか……。
色々と拗らせている幼なじみがやらかしてないかの方が心配である。

ふたりが居る部屋は亜空間にあり、外部から簡単にアクセス出来ないようになっている。自分以外に番を見せたくないという独占欲の強い獣人のためだが、一部の好事家以外は他人の情事なんぞ聞きたくないし見たくないだろうという理由もあった。

ジェフリーが良くても番には人間としての生活があるのだから、配慮してくれないと困る。

(もう少ししたら、様子見に行くかな……)

ルイスは管理人権限でマスターキーを持っているのでトラブル防止のために定期的に巡回しているが、出来れば最中に踏み込むのは避けたい。
それこそジェフリーに殺されかねない。

ようやく幸せを手にした幼なじみ。
きちんと祝ってやりたい。
思った以上に賭け金が上がったから、いい酒と美味い飯を食べに連れて行こう。もちろん番となった優しくて可憐な女性も一緒に。
 
(番にべったりなジェフリーを見るのが楽しみだな)

ジェフリーに聞かれたら間違いなく威嚇されるだろうことを考えてニヤニヤするルイスは、喜々として賭けの分配金の計算を始めるのであった。
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