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出港
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スカハ王室船襲撃事件、としてちょっとした話題となった出来事から一三ヶ月。当時のスカハ王国の政情を知る誰もが、派閥争いに起因するテロではないかと疑ったが、調査の結果、単なる海賊事件として片付けられてしまった。何ら特殊な証拠は発見されなかったからだ。
当時、指導者候補と目されていた王女を襲われた財閥派が、陰謀であると声高に主張しても不思議ではないはずだったが、事件後に急遽決定された王女の「進路」に関する問題があり、財閥派は混乱を極めていたので、そのような余裕もなかった。
現在、スカハ王国の政情は民衆派の勢力がやや優勢な状態で安定している。まとめ上げる指導者のいない財閥派は精彩を欠き、様々な利権をズルズルと民衆派に奪われている状況だった。もっとも、こんな辺境の小国の国内事情を気にかける者などほとんどおらず、王国の政治情勢は極めてニュースバリューの低い情報だった。銀河は概ね平穏とはいえ、あちこちでちょっとした武力衝突や発覚した陰謀などが起きており、人々が関心を持つべき対象は他にいくらでもあった。
そんな辺境から遙かに離れた帝国中枢部、アレクサンドリア星系の軍港に〈ユキカゼ〉は入港していた。ここにはアレクサンドリア鎮守府が置かれ、工廠や兵団なども存在する一大軍都である。その〈ユキカゼ〉は、つい先日まで工廠に入渠して定期点検を受けていたのだった。幾つかの装備は新型のものに取り替えられ、ソフトウェアもアップデートされた。主機も徹底的に整備されて、生態金属合金にも補充と再加熱が為された。今の〈ユキカゼ〉は非常に機嫌が良さそうである。
〈ユキカゼ〉の入渠中に、乗組員達には休暇が与えられていた。航宙中の休みもまとめて与えられる、宇宙軍独特の長期休暇。おまけに〈ユキカゼ〉の下士官兵には、中原家から私的な「手当」も与えられている。妾に対する待遇の仕方である。その金で旅行に行く者、趣味に没頭する者、家族を養う者など、様々であった。下層民出身の若い兵士の家族の中には、帰省した娘が貴族の「お手付き」になったと喜ぶ者もいた。
その休暇も終わり、再び長征に旅立つ日がやって来た。全乗員、遅刻なく集結する。
鎮守府の講堂を借りて、〈ユキカゼ〉はささやかな集会を開いた。艦長の和幸が壇上で簡単な訓辞を述べてから、次に先任将校、砲術長、航宙長などが短く喋る。退屈な儀式であるが、娑婆に染まった体を軍隊のものへと切り替える役割を果たす。学校の長期休暇明けの全校集会のようなものである。
新人乗組員の紹介もあった。今回の航宙で同行する拓務省調査局から派遣されてきた調査班の科学者たちの他に、下士官兵が数名、そして兵学校を出たばかりの少尉候補生が一人。
敢えて〈ユキカゼ〉に少尉候補生が配属されるのは異例であった。それも、練習航海すらスキップしており、かなり特殊な事情で彼女は配属されたのだ。一一ヶ月の兵学校での教育を経て、真新しい第一種軍装に袖を通して、少尉候補生の階級章を着けた彼女は、乗員達の前で元気に挨拶した。
集会が終わって、艦長公室で和幸は新たに仲間に加わった少尉候補生を歓待した。兵学校での教育中も時々会っていたので、あまり「久しぶり」という感じはしない。
「どうぞ、掛けて」
と椅子を勧める。身分差はあるが、和幸が上官である。そういう態度で臨めば良かった。
「無事卒業できたようで何よりだ」
「和幸さまの……艦長のおかげですわ」
と、マルグレーテ王女は両手を合わせて嬉しそうに言った。
凄惨な王族同士の殺し合いに発展しかねないスカハ王国の政争から、マルグレーテ王女を救い出すために和幸が考えた方法が、彼女を帝国に引き取ってしまうことだった。何らかの理由を付けて帝国に留学させてしまえば、王国の民衆派はもちろん、財閥派の連中も王女に手を出すことはできない。そしてその留学先として選んだのが、帝国の宇宙軍兵学校であった。
王族の人間が軍に入隊するのは別に珍しくもないし、帝国宇宙軍は過去にも外国王族を受け容れている。彼女の兵学校入りには何の問題も無かった。
受け入れ先に兵学校を選んだのは、そこが一番政治から遠い場所だからだった。大学などでは政治運動も行われるが、その中でスカハ王国に関する政治的対立に巻き込まれる可能性がないわけではない。軍であれば、少なくとも大っぴらにそういう活動が認められているわけではないので、本人が望まなければ政治的問題に関わってしまう可能性は低い。そういう理由に加えて、もちろん、和幸が彼女の手助けをしやすいという理由もあった。兵学校卒業後に〈ユキカゼ〉へ引き取ってしまえば、より強固に彼女を守ることができる。
その目論見は成功した。マルグレーテ王女は無事兵学校を卒業し、少尉候補生として〈ユキカゼ〉に配属となった。故国の政争からは完全に隔離されている。
和幸はエレンとの約束を守ったのだ。
「卒業は君の実力さ。兵学校は身分を見てテストをパスさせるなんてことは絶対しないからな」
「厳しく鍛えられました」
そう言うマルグレーテは、嬉しそうに顔を綻ばせた。厳格な兵学校の生活も、彼女からすると楽しかったらしい。王族の窮屈な生活に比べれば、規則で雁字搦めな兵学校もそれ程に息苦しくは感じなかったのかもしれない。
「先も言ったが、艦では副電戦士として職務に当たってくれ。……貴方の得意分野が活かせることを祈っていますよ、殿下」
「はい!」
電戦士は電子戦を担当する役職だった。AIとの協力が欠かせない仕事なので、マルグレーテには向いていると思われた。
マルグレーテを王国から「奪い去った」ことで、和幸は財閥派、民衆派の両方から恨みを買っている。財閥派は、自分達の指導者になり得た王族を連れ去られたことで怒り狂い、民衆派は、いざという場合に王国に干渉できるような手駒を手の内に収めておく中原家の狡猾さを罵った。
一方で政争には直接的に関わりの薄い国民達からすると、マルグレーテ王女が流血の内戦から逃れることができたのは喜ばしい結果に見えていた。若い王女は国民に人気があったからだ。熱心なファンの中には、和幸を、佞臣が跳梁跋扈する宮廷から王女を救い出した白馬の騎士のように褒め称える者までいた。もちろんそれは極少数の特殊な事例であり、大半の国民は、王女の無事には安堵しながら、介入してきた中原家の私生児に対しては腹立たしい思いを抱いていた。外国人が何の権利で、我らの指導者争いに口を出すのか。汚い手で俺達の姫様に触れやがって、と。
白馬の騎士のお伽噺は、お姫様を救い出したところで終わるものだ。しかし和幸にはその続きがあった。姫様をベッドに連れ込むという、童話作家が敢えて描かなかった部分。
話が終わると、和幸は立ち上がった。マルグレーテも立ち上がる。部屋の中央まで進む。
かつてドレスを着て艦内にいた彼女は、今は帝国宇宙軍の軍服に身を包んでいた。少尉候補生ながら、胸元にはやたらと高位の勲章が輝いている。王族が成人した際に授与されるものであった。今日の集会で吊っていた長剣も、王家の儀式用のものだった。歴史ある文化財というわけではないが、素晴らしい飾り付けをされた逸品であった。
そういう高貴な香りを揺曳させて、マルグレーテは今和幸の前に立っている。
和幸が手を伸ばして、マルグレーテの頬に触れると、彼女は首を傾けてその手に顔を擦り付け、両手で和幸の腕に手をかけ、嬉しそうに目を細めた。和幸の顔を見上げる。そして、待ち構えるように目を瞑った。和幸はそっと体を屈めて、その唇に接吻をした。
「んっ――ああっ! 和幸さまっ! 和幸さまっ!」
艦長私室の広いベッドの上で、マルグレーテは乱れていた。和幸は細いが筋肉の付いた両腕で体を支え、腰を動かして、マルグレーテの中にペニスを出し入れする。撓められた竹が強ばって反り返るように、和幸の腰が前に送り出されるたびに、マルグレーテは甲高い欣びの声を上げた。
マルグレーテの美しい容は、一三ヶ月を経て、その身分を単なる王族から少尉候補生へと改めても、何ら変わらないどころか、やや作り物めいた感のあった表情がより自然になり、目元に力が生まれて、女としてさらに魅力的に見えていた。肉体的には、抗老化処置の働きで、この先三〇年経っても同様の体を維持できるだろうから、たった一年強で何かが変わるわけがない。彼女の変化は内面的なものだった。
その変わり方を、和幸は、柵から解放されたことによる気持ちの変化だろうと考えていた。概ね間違っていなかった。
「あっ……ああっ! だめ、だめです……何か……何か来ます……! 和幸さま……っ!」
シーツを握りしめ、胸を突き出してそのささやかな乳房を揺らし、目を見開いてマルグレーテは震えた。膣が強く絞まる。お腹に力が入り、愛液が噴き出す。
「あっ、ああぁぁ――」
マルグレーテはだらしなく緩んだ顔を和幸に見せて、幸福に溺れながら失禁した。
従兵ボットにシーツを替えさせて、再び横になったベッドの上で、もうしばらく楽しんだ後で、二人はゆっくりと休んでいた。
和幸はマルグレーテを抱き締めている。和幸の腕の中で、マルグレーテは、長い睫を整えて伏せ、頬を胸板に擦りつけていた。
その頭に顎を触れさせて花の香りを嗅ぎながら、和幸は、自分は女を抱いていると感じていた。
どの女でも、そこに違いはなかった。王族だろうが下層階級だろうが、和幸が抱く時、その肉は女の肉だった。
そういう「考え」を抱いてしまっている自分に気付き、和幸はまた、思考に沈んでいることを自覚した。だがセックスは終わり、マルグレーテは大海から押し寄せる波のような余韻を楽しんでいる。和幸の心は海原の月のように寂しかった。
エレンのことを思い出した。マルグレーテ王女の警備主任。彼女が、王女を助け出してくれと望んだ時、和幸は彼女を売国奴であると断定した。
だってそうだろう。和幸は考える。王女を助けるために、彼女は帝国軍の士官に助けを求めたのだ。帝国の介入を望んだのだ。一個の主権国家の、王室を護る役目を負った人間が、その主権を毀損するような申し出をしてきたのだ。それを売国と呼ばずに何と呼ぼうか。彼女が護ろうとしたものは、国でもなく、王室でもなく、マルグレーテただ個人だった。それは、良いだろう。マルグレーテ王女に仕える護衛としては当然だ。だがその代償に差し出すものが、国なのか? 馬と引き換えに王国を差し出すような愚かさがそこにはあった。
少し政治介入されたくらいで国家は揺るがない、というのは冷静な意見だ。そもそもスカハ王国の立ち位置は帝国の属国のようなものであり、今更内政に介入されたところで問題があるのか、というのは現実主義者の見方だろう。だが、実際に和幸が王女を連れ去ったことで多くの国民が憤った通り、国家の主権というのは、この時代においても充分な神聖さを纏っているものなのだ。苟も王室警備の任にあるような者が、国の権威よりも王族個人の命を優先するとは。
こういう和幸の、身分ある者に対する厳しい視線を培ったのは、彼の兄の在り方だった。和幸にとって兄は貴族の範であり、政治家の鑑であった。敢えて高貴なる義務などという言葉を持ち出すまでもない。国運と、自家と、自分自身とを同一視して、公私の別なく目に見えるもの全てを巻き込んで前進する人間。それが兄だった。倫理や正義もそこでは関係が無かった。和幸は彼の兄が、政治的目標のために大勢の人民を犠牲にし、また少なからぬ官僚や政治家を追い落として、自殺者も出していることを知っている。恐らくもっと後ろ暗い策略にも手を染めていることだろう。そしてそれ以上に、自分の支持者達へ還元していることも理解していた。それでいながらセクショナリズムに陥ることもなく、帝国を力強く導いている、というより、自分の派閥の利益と帝国の利益とを一致させて憚らない。公人には、真空の宇宙に音を立てるようなエネルギーが必要なのだった。
翻って、目の前の女はどうだろう。あのエレンはどうだろう。
……と、和幸は考えざるを得ない。比較するものではないと理解していても、嫌悪感と憤りが布を染み通るように湧き出してくる。マルグレーテはあまりにもただの人間であり、一人の女だった。エレンはそんなただの人に執着する小人物だった。
だがそういう他人に対する批判精神を叱りつけるように、すぐに、今度はその嫌悪の矛先を自分自身へと向ける心の動きが発生する。
じゃあ、そういう俺はどうなんだ?
自省する。そして自己嫌悪と、いつもの自嘲。
兄というあまりにも高すぎるハードルを前に置いている以上、それは平等に、自分の脛をもしたたかに打つのだ。
俺だって同じだ。しょうもない一人の人間だ。
和幸は〈ユキカゼ〉の特務駆逐艦長を拝命した際のことを思い出す。正確には、その話が進行している最中の、宇宙軍大学校の研究員に任じられていた時期だ。その時、彼には二つの選択肢があった。その任を受け容れ、官製ハーレムの主として、辺境でゆったりと暮らす毎日。つまり、実際に和幸が選んだ道だ。
そしてもう一つ。先んじて自ら動き、軍部での権力争いに身を投じる道だ。それは茨の道であったが、意義は大きいはずだった。そして決して無謀でもなかった。軍部の非主流派を、中原家の政治力を利用して糾合することはできただろうし、それに期待する若手将校も多かった。彼らの統制は困難を極めたであろうが、やってみる価値はあった。もしそれが成功すれば、政府に強い影響力を持つ兄の右腕として、和幸が軍部を抑えて、帝国に於ける中原家の権力をより強固にすることができたはずだった。そして帝国を、その手で導いていけたかもしれない……。
その政治闘争の道を切り捨てて、和幸は安穏とした毎日を選んだのだった。
何の事はない。マルグレーテと同じじゃないか。誰も見ていないのをいいことに、和幸は顔を歪めて笑った。俺は逃げ出したんだ、戦うことから。色々な理由を付けて。
俺達は似たもの同士だ、と、マルグレーテの頭を撫でながら思う。そんな和幸の気持ちを知らないマルグレーテは、愛する男に撫でられて、和幸の胸に爪を立て、口付けをして悦びを表現した。
こんな自己分析を、エレンを抱いている間にも行っていた。だからこそ和幸は、マルグレーテ王女を救い出す気になったのだ。それは贖罪のような殊勝なものではなく、憐憫や同情でもなかった。敢えていうならば自傷行為であった。和幸はマルグレーテを通して自分を見つめようとしたのだ。
王女をスカハ王国へと帰す前に、和幸はエレンによく言い聞かせた。
「一ヶ月、それだけの間、何としても王女殿下をお守りしてください。必ずお助けしますから」
他に頼るものを持たないエレンは、縋るような目で頷いた。
そうして和幸は、兄に交渉を頼み、マルグレーテ王女の帝国留学、兵学校への入学を取り付けたのだった。スカハ王国の王室庁でも、王族の身が危険に晒されるような事態には危機感を覚えていたから、利害が一致し、交渉はすぐにまとまった。その間、エレンはよく王女を護ったが、帝国が動いたことで警戒した民衆派は、そもそも何ら行動に出ることはなかった。財閥派には行動を起こすような余裕すら無かった。
簡単に話が進んだように見えるが、とんでもない、王族一人の留学をほとんど準備期間も無しに決定するなど、尋常ではなかった。ひとえに中原政務次官の突出した政治力がそれを可能にしたのだ。何より、中原孝幸閣下程の人物がわざわざ動いた、という事実自体が強烈な強制力を有していた。
和幸は大笑いしたい気分だった。
結局全部、兄さんの力じゃないか! 王女殿下! 我々二人は何もかも人任せで、こうしてここで抱き合っているわけです!
自嘲は和幸の宿痾だった。
客観的に見ればそれは、優秀な兄を持った弟の劣等感でしかなかったが、和幸本人にとっては、人生を左右する世界観の基である。
彼の行動は全てここを泉源にしていた。異様な好色と女に対する丁寧な奉仕も、夜毎に膝を抱く寂しがり屋な性格も、戦場での狂気じみた勇敢さも。
*
「先任将校、状況知らせ」
「物品の固定は完了しております。艦内各システム、異常なし」
アイシャは艦内の質量マップを睨みながら応じる。副長の役割の一つに艦内の重量バランスの維持がある。船が地球の海の上に浮かんでいた頃から大切な業務であったが(偏った重量バランスをしていたら船がひっくり返ってしまうのだから)、船が宇宙空間を進むようになっても、不測の事態に備えて艦内の物品を適切に配置する作業の重要さは変わらない。
「機関長、調子はどうか」
『主機、副機ともに問題なし。いい音だ!』
主機の甲高い音と共に機関長の声が聞こえた。
「電脳長、準備は良いか」
「主電算機動作良好。ベンチマークの結果はオールグリーンです」
「電測、電戦、どうか」
「レーダーの動作は良好ですぅ」
「ドライ・ラン正常です。AIを暖気中」
エンリカとマルグレーテが答える。今回の改装ではソフトウェア、ハードウェア共に載せ替えがあったので、特に念入りに確認が必要だった。マルグレーテは初めて扱うその軍用計算機と軍用AIを、電子科分隊の先輩たちに教えを受けながら丁寧に点検していた。真剣な表情だが、楽しんでいるようにも見える。
「砲術長、良いか?」
「問題ありません」
グレースが短く答える。
「航宙長、信号まだか?」
「まだですね……あ、来ました。進路開きました」
「よし、抜錨せよ。出港準備」
和幸の号令の下、全艦が動き出す。
乗員が集結してから既に二週間が経っていた。公試を行っていたからだ。電脳公試と武器公試とを終え、〈ユキカゼ〉は期待通りの性能を発揮できると認められた。今日はいよいよ本来の任務のために――未開領域調査の任務のために出港するのだ。艦には食料や各種物資が満載され、さらに調査班の人員も同乗していた。数ヶ月は戻ってこない。
『機関、出力正常』
「前進微速」
「港を出たら原速まで増速せよ」
それだけ命じて、和幸は艦内の情報、部下の状態に気を配った。
ちらりと、隣のアイシャを見る。彼女は僅かな艦のバランスの乱れも見逃さないように、集中してディスプレイを見つめていた。カナエを見る。操舵員に事細かに指示を出し、港内の狭い領域を正確に進ませている。エンリカはパッシヴの電波を港内図と並べて見比べている。そしてマルグレーテは、緊張した面持ちで画面を見つめて自分のやるべきことを再確認していたが、ふと和幸の視線に気付いて、艦長の方を見て微笑んだ。
和幸は口許に笑みを浮かべる。
「浮標を通過……港を出ます」
そのアイシャの言葉を聞いて和幸は頷くと、略帽を阿弥陀に被り直して、背筋を伸ばして正面を向く。はっきりと響く声で宣言する。
「――特務駆逐艦〈ユキカゼ〉、出港する」
当時、指導者候補と目されていた王女を襲われた財閥派が、陰謀であると声高に主張しても不思議ではないはずだったが、事件後に急遽決定された王女の「進路」に関する問題があり、財閥派は混乱を極めていたので、そのような余裕もなかった。
現在、スカハ王国の政情は民衆派の勢力がやや優勢な状態で安定している。まとめ上げる指導者のいない財閥派は精彩を欠き、様々な利権をズルズルと民衆派に奪われている状況だった。もっとも、こんな辺境の小国の国内事情を気にかける者などほとんどおらず、王国の政治情勢は極めてニュースバリューの低い情報だった。銀河は概ね平穏とはいえ、あちこちでちょっとした武力衝突や発覚した陰謀などが起きており、人々が関心を持つべき対象は他にいくらでもあった。
そんな辺境から遙かに離れた帝国中枢部、アレクサンドリア星系の軍港に〈ユキカゼ〉は入港していた。ここにはアレクサンドリア鎮守府が置かれ、工廠や兵団なども存在する一大軍都である。その〈ユキカゼ〉は、つい先日まで工廠に入渠して定期点検を受けていたのだった。幾つかの装備は新型のものに取り替えられ、ソフトウェアもアップデートされた。主機も徹底的に整備されて、生態金属合金にも補充と再加熱が為された。今の〈ユキカゼ〉は非常に機嫌が良さそうである。
〈ユキカゼ〉の入渠中に、乗組員達には休暇が与えられていた。航宙中の休みもまとめて与えられる、宇宙軍独特の長期休暇。おまけに〈ユキカゼ〉の下士官兵には、中原家から私的な「手当」も与えられている。妾に対する待遇の仕方である。その金で旅行に行く者、趣味に没頭する者、家族を養う者など、様々であった。下層民出身の若い兵士の家族の中には、帰省した娘が貴族の「お手付き」になったと喜ぶ者もいた。
その休暇も終わり、再び長征に旅立つ日がやって来た。全乗員、遅刻なく集結する。
鎮守府の講堂を借りて、〈ユキカゼ〉はささやかな集会を開いた。艦長の和幸が壇上で簡単な訓辞を述べてから、次に先任将校、砲術長、航宙長などが短く喋る。退屈な儀式であるが、娑婆に染まった体を軍隊のものへと切り替える役割を果たす。学校の長期休暇明けの全校集会のようなものである。
新人乗組員の紹介もあった。今回の航宙で同行する拓務省調査局から派遣されてきた調査班の科学者たちの他に、下士官兵が数名、そして兵学校を出たばかりの少尉候補生が一人。
敢えて〈ユキカゼ〉に少尉候補生が配属されるのは異例であった。それも、練習航海すらスキップしており、かなり特殊な事情で彼女は配属されたのだ。一一ヶ月の兵学校での教育を経て、真新しい第一種軍装に袖を通して、少尉候補生の階級章を着けた彼女は、乗員達の前で元気に挨拶した。
集会が終わって、艦長公室で和幸は新たに仲間に加わった少尉候補生を歓待した。兵学校での教育中も時々会っていたので、あまり「久しぶり」という感じはしない。
「どうぞ、掛けて」
と椅子を勧める。身分差はあるが、和幸が上官である。そういう態度で臨めば良かった。
「無事卒業できたようで何よりだ」
「和幸さまの……艦長のおかげですわ」
と、マルグレーテ王女は両手を合わせて嬉しそうに言った。
凄惨な王族同士の殺し合いに発展しかねないスカハ王国の政争から、マルグレーテ王女を救い出すために和幸が考えた方法が、彼女を帝国に引き取ってしまうことだった。何らかの理由を付けて帝国に留学させてしまえば、王国の民衆派はもちろん、財閥派の連中も王女に手を出すことはできない。そしてその留学先として選んだのが、帝国の宇宙軍兵学校であった。
王族の人間が軍に入隊するのは別に珍しくもないし、帝国宇宙軍は過去にも外国王族を受け容れている。彼女の兵学校入りには何の問題も無かった。
受け入れ先に兵学校を選んだのは、そこが一番政治から遠い場所だからだった。大学などでは政治運動も行われるが、その中でスカハ王国に関する政治的対立に巻き込まれる可能性がないわけではない。軍であれば、少なくとも大っぴらにそういう活動が認められているわけではないので、本人が望まなければ政治的問題に関わってしまう可能性は低い。そういう理由に加えて、もちろん、和幸が彼女の手助けをしやすいという理由もあった。兵学校卒業後に〈ユキカゼ〉へ引き取ってしまえば、より強固に彼女を守ることができる。
その目論見は成功した。マルグレーテ王女は無事兵学校を卒業し、少尉候補生として〈ユキカゼ〉に配属となった。故国の政争からは完全に隔離されている。
和幸はエレンとの約束を守ったのだ。
「卒業は君の実力さ。兵学校は身分を見てテストをパスさせるなんてことは絶対しないからな」
「厳しく鍛えられました」
そう言うマルグレーテは、嬉しそうに顔を綻ばせた。厳格な兵学校の生活も、彼女からすると楽しかったらしい。王族の窮屈な生活に比べれば、規則で雁字搦めな兵学校もそれ程に息苦しくは感じなかったのかもしれない。
「先も言ったが、艦では副電戦士として職務に当たってくれ。……貴方の得意分野が活かせることを祈っていますよ、殿下」
「はい!」
電戦士は電子戦を担当する役職だった。AIとの協力が欠かせない仕事なので、マルグレーテには向いていると思われた。
マルグレーテを王国から「奪い去った」ことで、和幸は財閥派、民衆派の両方から恨みを買っている。財閥派は、自分達の指導者になり得た王族を連れ去られたことで怒り狂い、民衆派は、いざという場合に王国に干渉できるような手駒を手の内に収めておく中原家の狡猾さを罵った。
一方で政争には直接的に関わりの薄い国民達からすると、マルグレーテ王女が流血の内戦から逃れることができたのは喜ばしい結果に見えていた。若い王女は国民に人気があったからだ。熱心なファンの中には、和幸を、佞臣が跳梁跋扈する宮廷から王女を救い出した白馬の騎士のように褒め称える者までいた。もちろんそれは極少数の特殊な事例であり、大半の国民は、王女の無事には安堵しながら、介入してきた中原家の私生児に対しては腹立たしい思いを抱いていた。外国人が何の権利で、我らの指導者争いに口を出すのか。汚い手で俺達の姫様に触れやがって、と。
白馬の騎士のお伽噺は、お姫様を救い出したところで終わるものだ。しかし和幸にはその続きがあった。姫様をベッドに連れ込むという、童話作家が敢えて描かなかった部分。
話が終わると、和幸は立ち上がった。マルグレーテも立ち上がる。部屋の中央まで進む。
かつてドレスを着て艦内にいた彼女は、今は帝国宇宙軍の軍服に身を包んでいた。少尉候補生ながら、胸元にはやたらと高位の勲章が輝いている。王族が成人した際に授与されるものであった。今日の集会で吊っていた長剣も、王家の儀式用のものだった。歴史ある文化財というわけではないが、素晴らしい飾り付けをされた逸品であった。
そういう高貴な香りを揺曳させて、マルグレーテは今和幸の前に立っている。
和幸が手を伸ばして、マルグレーテの頬に触れると、彼女は首を傾けてその手に顔を擦り付け、両手で和幸の腕に手をかけ、嬉しそうに目を細めた。和幸の顔を見上げる。そして、待ち構えるように目を瞑った。和幸はそっと体を屈めて、その唇に接吻をした。
「んっ――ああっ! 和幸さまっ! 和幸さまっ!」
艦長私室の広いベッドの上で、マルグレーテは乱れていた。和幸は細いが筋肉の付いた両腕で体を支え、腰を動かして、マルグレーテの中にペニスを出し入れする。撓められた竹が強ばって反り返るように、和幸の腰が前に送り出されるたびに、マルグレーテは甲高い欣びの声を上げた。
マルグレーテの美しい容は、一三ヶ月を経て、その身分を単なる王族から少尉候補生へと改めても、何ら変わらないどころか、やや作り物めいた感のあった表情がより自然になり、目元に力が生まれて、女としてさらに魅力的に見えていた。肉体的には、抗老化処置の働きで、この先三〇年経っても同様の体を維持できるだろうから、たった一年強で何かが変わるわけがない。彼女の変化は内面的なものだった。
その変わり方を、和幸は、柵から解放されたことによる気持ちの変化だろうと考えていた。概ね間違っていなかった。
「あっ……ああっ! だめ、だめです……何か……何か来ます……! 和幸さま……っ!」
シーツを握りしめ、胸を突き出してそのささやかな乳房を揺らし、目を見開いてマルグレーテは震えた。膣が強く絞まる。お腹に力が入り、愛液が噴き出す。
「あっ、ああぁぁ――」
マルグレーテはだらしなく緩んだ顔を和幸に見せて、幸福に溺れながら失禁した。
従兵ボットにシーツを替えさせて、再び横になったベッドの上で、もうしばらく楽しんだ後で、二人はゆっくりと休んでいた。
和幸はマルグレーテを抱き締めている。和幸の腕の中で、マルグレーテは、長い睫を整えて伏せ、頬を胸板に擦りつけていた。
その頭に顎を触れさせて花の香りを嗅ぎながら、和幸は、自分は女を抱いていると感じていた。
どの女でも、そこに違いはなかった。王族だろうが下層階級だろうが、和幸が抱く時、その肉は女の肉だった。
そういう「考え」を抱いてしまっている自分に気付き、和幸はまた、思考に沈んでいることを自覚した。だがセックスは終わり、マルグレーテは大海から押し寄せる波のような余韻を楽しんでいる。和幸の心は海原の月のように寂しかった。
エレンのことを思い出した。マルグレーテ王女の警備主任。彼女が、王女を助け出してくれと望んだ時、和幸は彼女を売国奴であると断定した。
だってそうだろう。和幸は考える。王女を助けるために、彼女は帝国軍の士官に助けを求めたのだ。帝国の介入を望んだのだ。一個の主権国家の、王室を護る役目を負った人間が、その主権を毀損するような申し出をしてきたのだ。それを売国と呼ばずに何と呼ぼうか。彼女が護ろうとしたものは、国でもなく、王室でもなく、マルグレーテただ個人だった。それは、良いだろう。マルグレーテ王女に仕える護衛としては当然だ。だがその代償に差し出すものが、国なのか? 馬と引き換えに王国を差し出すような愚かさがそこにはあった。
少し政治介入されたくらいで国家は揺るがない、というのは冷静な意見だ。そもそもスカハ王国の立ち位置は帝国の属国のようなものであり、今更内政に介入されたところで問題があるのか、というのは現実主義者の見方だろう。だが、実際に和幸が王女を連れ去ったことで多くの国民が憤った通り、国家の主権というのは、この時代においても充分な神聖さを纏っているものなのだ。苟も王室警備の任にあるような者が、国の権威よりも王族個人の命を優先するとは。
こういう和幸の、身分ある者に対する厳しい視線を培ったのは、彼の兄の在り方だった。和幸にとって兄は貴族の範であり、政治家の鑑であった。敢えて高貴なる義務などという言葉を持ち出すまでもない。国運と、自家と、自分自身とを同一視して、公私の別なく目に見えるもの全てを巻き込んで前進する人間。それが兄だった。倫理や正義もそこでは関係が無かった。和幸は彼の兄が、政治的目標のために大勢の人民を犠牲にし、また少なからぬ官僚や政治家を追い落として、自殺者も出していることを知っている。恐らくもっと後ろ暗い策略にも手を染めていることだろう。そしてそれ以上に、自分の支持者達へ還元していることも理解していた。それでいながらセクショナリズムに陥ることもなく、帝国を力強く導いている、というより、自分の派閥の利益と帝国の利益とを一致させて憚らない。公人には、真空の宇宙に音を立てるようなエネルギーが必要なのだった。
翻って、目の前の女はどうだろう。あのエレンはどうだろう。
……と、和幸は考えざるを得ない。比較するものではないと理解していても、嫌悪感と憤りが布を染み通るように湧き出してくる。マルグレーテはあまりにもただの人間であり、一人の女だった。エレンはそんなただの人に執着する小人物だった。
だがそういう他人に対する批判精神を叱りつけるように、すぐに、今度はその嫌悪の矛先を自分自身へと向ける心の動きが発生する。
じゃあ、そういう俺はどうなんだ?
自省する。そして自己嫌悪と、いつもの自嘲。
兄というあまりにも高すぎるハードルを前に置いている以上、それは平等に、自分の脛をもしたたかに打つのだ。
俺だって同じだ。しょうもない一人の人間だ。
和幸は〈ユキカゼ〉の特務駆逐艦長を拝命した際のことを思い出す。正確には、その話が進行している最中の、宇宙軍大学校の研究員に任じられていた時期だ。その時、彼には二つの選択肢があった。その任を受け容れ、官製ハーレムの主として、辺境でゆったりと暮らす毎日。つまり、実際に和幸が選んだ道だ。
そしてもう一つ。先んじて自ら動き、軍部での権力争いに身を投じる道だ。それは茨の道であったが、意義は大きいはずだった。そして決して無謀でもなかった。軍部の非主流派を、中原家の政治力を利用して糾合することはできただろうし、それに期待する若手将校も多かった。彼らの統制は困難を極めたであろうが、やってみる価値はあった。もしそれが成功すれば、政府に強い影響力を持つ兄の右腕として、和幸が軍部を抑えて、帝国に於ける中原家の権力をより強固にすることができたはずだった。そして帝国を、その手で導いていけたかもしれない……。
その政治闘争の道を切り捨てて、和幸は安穏とした毎日を選んだのだった。
何の事はない。マルグレーテと同じじゃないか。誰も見ていないのをいいことに、和幸は顔を歪めて笑った。俺は逃げ出したんだ、戦うことから。色々な理由を付けて。
俺達は似たもの同士だ、と、マルグレーテの頭を撫でながら思う。そんな和幸の気持ちを知らないマルグレーテは、愛する男に撫でられて、和幸の胸に爪を立て、口付けをして悦びを表現した。
こんな自己分析を、エレンを抱いている間にも行っていた。だからこそ和幸は、マルグレーテ王女を救い出す気になったのだ。それは贖罪のような殊勝なものではなく、憐憫や同情でもなかった。敢えていうならば自傷行為であった。和幸はマルグレーテを通して自分を見つめようとしたのだ。
王女をスカハ王国へと帰す前に、和幸はエレンによく言い聞かせた。
「一ヶ月、それだけの間、何としても王女殿下をお守りしてください。必ずお助けしますから」
他に頼るものを持たないエレンは、縋るような目で頷いた。
そうして和幸は、兄に交渉を頼み、マルグレーテ王女の帝国留学、兵学校への入学を取り付けたのだった。スカハ王国の王室庁でも、王族の身が危険に晒されるような事態には危機感を覚えていたから、利害が一致し、交渉はすぐにまとまった。その間、エレンはよく王女を護ったが、帝国が動いたことで警戒した民衆派は、そもそも何ら行動に出ることはなかった。財閥派には行動を起こすような余裕すら無かった。
簡単に話が進んだように見えるが、とんでもない、王族一人の留学をほとんど準備期間も無しに決定するなど、尋常ではなかった。ひとえに中原政務次官の突出した政治力がそれを可能にしたのだ。何より、中原孝幸閣下程の人物がわざわざ動いた、という事実自体が強烈な強制力を有していた。
和幸は大笑いしたい気分だった。
結局全部、兄さんの力じゃないか! 王女殿下! 我々二人は何もかも人任せで、こうしてここで抱き合っているわけです!
自嘲は和幸の宿痾だった。
客観的に見ればそれは、優秀な兄を持った弟の劣等感でしかなかったが、和幸本人にとっては、人生を左右する世界観の基である。
彼の行動は全てここを泉源にしていた。異様な好色と女に対する丁寧な奉仕も、夜毎に膝を抱く寂しがり屋な性格も、戦場での狂気じみた勇敢さも。
*
「先任将校、状況知らせ」
「物品の固定は完了しております。艦内各システム、異常なし」
アイシャは艦内の質量マップを睨みながら応じる。副長の役割の一つに艦内の重量バランスの維持がある。船が地球の海の上に浮かんでいた頃から大切な業務であったが(偏った重量バランスをしていたら船がひっくり返ってしまうのだから)、船が宇宙空間を進むようになっても、不測の事態に備えて艦内の物品を適切に配置する作業の重要さは変わらない。
「機関長、調子はどうか」
『主機、副機ともに問題なし。いい音だ!』
主機の甲高い音と共に機関長の声が聞こえた。
「電脳長、準備は良いか」
「主電算機動作良好。ベンチマークの結果はオールグリーンです」
「電測、電戦、どうか」
「レーダーの動作は良好ですぅ」
「ドライ・ラン正常です。AIを暖気中」
エンリカとマルグレーテが答える。今回の改装ではソフトウェア、ハードウェア共に載せ替えがあったので、特に念入りに確認が必要だった。マルグレーテは初めて扱うその軍用計算機と軍用AIを、電子科分隊の先輩たちに教えを受けながら丁寧に点検していた。真剣な表情だが、楽しんでいるようにも見える。
「砲術長、良いか?」
「問題ありません」
グレースが短く答える。
「航宙長、信号まだか?」
「まだですね……あ、来ました。進路開きました」
「よし、抜錨せよ。出港準備」
和幸の号令の下、全艦が動き出す。
乗員が集結してから既に二週間が経っていた。公試を行っていたからだ。電脳公試と武器公試とを終え、〈ユキカゼ〉は期待通りの性能を発揮できると認められた。今日はいよいよ本来の任務のために――未開領域調査の任務のために出港するのだ。艦には食料や各種物資が満載され、さらに調査班の人員も同乗していた。数ヶ月は戻ってこない。
『機関、出力正常』
「前進微速」
「港を出たら原速まで増速せよ」
それだけ命じて、和幸は艦内の情報、部下の状態に気を配った。
ちらりと、隣のアイシャを見る。彼女は僅かな艦のバランスの乱れも見逃さないように、集中してディスプレイを見つめていた。カナエを見る。操舵員に事細かに指示を出し、港内の狭い領域を正確に進ませている。エンリカはパッシヴの電波を港内図と並べて見比べている。そしてマルグレーテは、緊張した面持ちで画面を見つめて自分のやるべきことを再確認していたが、ふと和幸の視線に気付いて、艦長の方を見て微笑んだ。
和幸は口許に笑みを浮かべる。
「浮標を通過……港を出ます」
そのアイシャの言葉を聞いて和幸は頷くと、略帽を阿弥陀に被り直して、背筋を伸ばして正面を向く。はっきりと響く声で宣言する。
「――特務駆逐艦〈ユキカゼ〉、出港する」
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