上 下
121 / 129

第120話 新たな展開の幕開け

しおりを挟む
 一方、アキは苺琳と桃琳の元へと走り、特待生として許可された事を2人に伝えていた。

「学園長が、特待生として認めてくれたのよっ!」
苺琳と桃琳の手を取り、大喜びするアキ。

「良かったネ・・・」
同じような境遇で育って来たカトリーナの頬を涙が伝う。

「本当カ?」
「ココに居て良いのカ?」
信じられないという顔をする苺琳と桃琳の目にも涙が溢れる。

「うんっ! じゃあ、先ず自己紹介ね。わたしは温水アキ」
「ワタシは、カトリーナ・カーン。インドから留学して来たノ」
汐音・涼香・七瀬・圭・穂波・優奈、そして、車椅子に乗ったままの萌も続いて自己紹介をする。

「わいは、大塩八郎や。ぺっぴんさんは何人増えてもええなぁ」
早速、鼻の下を伸ばす八郎。

「僕は、鈴木二郎。しかし、お二人とも美人ですねぇ」
八郎に負けず、デレデレする二郎。

「俺は、早瀬渡」
相変わらずぶっきらぼうな挨拶だ。

(早瀬・・・?  確か、孫会長が・・・)
桃琳が苺琳へと視線を移すが。苺琳は黙って首を軽く振る。
幸いに誰も気付いていないようだ。

「さぁ、今度はあんたらの番やでぇ」
八郎の目尻は下がりっぱなしである。

苺琳と桃琳は互いに顔を見合わせて大きく頷いた。

そして・・・

2人同時に並んで、ウィッグを外し、胸元からパットを取り出す。

「えっ、えぇぇぇぇぇっ!」
「まっ、まさかぁ・・・」
「うっそぉぉぉぉっ!」

大絶叫がこだました。


「ごめんなサイ。実は、僕達・・・。男兄弟ネ。 本当の名前は王龍麗(ワン・リュウレイ)」
隣に居た桃琳も・・・

「王龍麗(ワン・リンレイ)デス・・・」
2人が揃って、ペコリと頭を下げる。

男とは、とても思えない位にきめの細かい透き通った白い肌。
やや彫りの深みのある端正な顔立ち、はっきり言ってかなりのイケメンである。

龍麗と鈴麗は、孫の指示で少女として女装しアイドル甲子園に出場させられていたのだった。


「あかん・・・。わい・・・、熱が出て来たわ・・・」
皆が驚いた中、もっともショックを受けたのは・・・
やはり、八郎であった。

「いや・・・、でも・・・。こっちもこっちで良いかも・・・」
反対にうっとりと見つめる二郎。

そして・・・
(うわっ! これこそ本物のBL・・・)
複雑な視線を送っていたのは、萌である。



龍麗と鈴麗が揃ってアキの前にかしづく。

「アリガトウ・・・。アキ」
「こんなに優しくされたノ・・・。初めてダカラ・・・」
そんな2人に手を差しだすアキ。

「龍麗、鈴麗。 わたし達、もう友達だよ。 ここにいる皆もね」
アキの屈託のない笑顔に2人の心は癒される。
差し出されたアキの手の温かさを感じる龍麗と鈴麗。

(ダガ・・・。紅蘭様ガ・・・)
安堵の地に辿り着いた兄弟、しかしその運命は更に過酷な使命を帯びさせる事になる。



熱戦から一夜明けたDoDoTV局内――

「凄い一日でしたねぇ」
「全くだ・・・」
すずと岩田が眠そうな目を擦りながら歩いている。
「そう言えば、三橋さん・・・。昇進決まったんですよね?」
「あぁ、DoDoTVの取締役になるらしい・・・」
「何だか、雲の上の人って感じ・・・」
「いや・・・、そうでもないぜ」
「どうしてですか?」
「あの人は大人しくデスクに座ってるなんて出来る訳が無い・・・。直ぐに取材のお誘いが来るさ」
「そうですね。あれっ、三波さんは?」
「んっ、三橋さんの所へでも行ったんじゃないか? あの開運グッズを片付けに・・・」


その三橋だが・・・
全国から集めた開運グッズに取り囲まれて呆然としている。
「この企画・・・。成功するかは正直、賭けだったが何とかなったか・・・」


コンコン コンコン

「入りますよっ!」
「何だ、三波か」
「何だ、じゃないですよ。昨日の後片づけとか大変なんですよ、少しは手伝って下さいよ」
「あぁ、すまんすまん。今度ゆっくりと温泉取材でも行くか・・・。っ!?」
「どうしたんですか?」
「いや・・・。今、ふと思ったんだけど・・・」
「何です?」
「あの娘達・・・」
「【ムーラン・ルージュ】の?」
「揃いも揃って、皆が温泉旅館の娘だったなぁ。何か不思議な気がするぜ」


「あっ、やっばりここにっ!」
「何だ? 岩田と堀井か・・・。なぁ、お前らも思わないか?」
「何がです?」
顔を見合わせる、岩田とすず。

「【ムーラン・ルージュ】が皆、温泉旅館の生まれだって事・・・」
懐かしむような口調の三橋。

「あれ、私も温泉旅館の娘ですよ。言ってませんでした?」
三波の言葉に思わず振り返る三橋。

「へーっ、何処なんです?」
すずは無邪気に三波に問いかけているが・・・

(なぜだ・・・。何だか聞いちゃいけないような気がしてならねぇ・・・)
三橋の背筋に悪寒が走った。

「俺も興味あるなぁ」
(頼む・・・。岩田、堀井・・・。それを聞かないでおいてくれ・・・)
三橋の祈りも空しく、三波が口を開いた。

「和歌山・・・。龍神温泉・・・」
なぜか三波の顔に一瞬、影が走ったように見えた三橋・・・

「和歌山って・・・、高野山・・・。龍神・・・。はははっ!」
うわ言のように呟くと、白目を剥いて口から泡を吹き出す。

「うわっ!」
「大丈夫ですかっ?」
岩田とすずが三橋に駆け寄る。

「あーぁ・・・」
失神している三橋を見て肩を竦める岩田とすず。

その傍らでは・・・

(敢えて言わなかったんですけどねぇ・・・)
三波がニヤリと笑った。

その瞬間・・・

ドドドドッ!

積み上げられていた開運グッズが音を立てて崩れ落ちた。

「あら・・・。まぁ・・・」
怪しく微笑む三波であった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

笑い話オリジナルジョーク集

合高なな央
大衆娯楽
気分転換にいいですよ

中島と暮らした10日間

だんご
大衆娯楽
妹が連れて来た『中島』との衝撃的な出会いとのおっかなビックリの生活。 仕事に悩み、飲み仲間とワチャワチャしつつも毎日が続き、ほぼ手探りで『中島』と暮らしていくのだが…… 大嫌いな『中島』 だけど気になる『中島』 『中島』に対する自分が、少し変わったかも?と言うお話 ※虫が出てくるので、苦手な人はご遠慮ください ※自分も虫は苦手です

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

荷車尼僧の回顧録

石田空
大衆娯楽
戦国時代。 密偵と疑われて牢屋に閉じ込められた尼僧を気の毒に思った百合姫。 座敷牢に食事を持っていったら、尼僧に体を入れ替えられた挙句、尼僧になってしまった百合姫は処刑されてしまう。 しかし。 尼僧になった百合姫は何故か生きていた。 生きていることがばれたらまた処刑されてしまうかもしれないと逃げるしかなかった百合姫は、尼寺に辿り着き、僧に泣きつく。 「あなたはおそらく、八百比丘尼に体を奪われてしまったのでしょう。不死の体を持っていては、いずれ心も人からかけ離れていきます。人に戻るには人魚を探しなさい」 僧の連れてきてくれた人形職人に義体をつくってもらい、日頃は人形の姿で人らしく生き、有事の際には八百比丘尼の体で人助けをする。 旅の道連れを伴い、彼女は戦国時代を生きていく。 和風ファンタジー。 カクヨム、エブリスタにて先行掲載中です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

海に漂う亡霊

一宮 沙耶
大衆娯楽
会社でおきた恐怖体験。夜1人でお読みください。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...