東京テルマエ学園

案 只野温泉 / 作・小説 和泉はじめ

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第115話 かつての好敵手と仲間達

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 東京・【ベティのケチャップ】――

すっかりと片付けも終わり、リニューアルオープンまであと少しとなった店内。
新しく設置された大型テレビから、アイドル甲子園の模様が大音量で流れている。
店内の防音設備が整っている事もあり、ドアの外は静かだ。

「【ムーラン・ルージュ】、大丈夫かしら・・・」
「心配する事無いわよっ!」
心配そうに呟くサヤカにジュンコが応えた。

「そうそう、勝つに決まってるじゃないっ!」
相槌を打ったのは、ミチルだ。

「マンゴローブママ、見守ってあげてね・・・」

ヒカルの独り言が皆の耳に届き、フォトスタンドに飾られたマンゴローブの写真を一斉に見つめる。

〈大丈夫・・・。心配ないわ。あの娘達なら・・・〉

「ママっ!?」
マンゴローブの声が聞こえたような気がした4人が同時に振り返った。



山口・【ぱふぱふパッファー】――

「下ノ関さぁん。早く早く、もうすぐ【ムーラン・ルージュ】が出てきますよっ!」
観光協会の面々と市役所の職員が集まっている。
遅れて入ってきた下ノ関陶子・・・

「頑張ってねっ! 【ムーラン・ルージュ】! 勝たなきゃダメよっ!」
おフグさんの着ぐるみを横に置き応援を始める。



青森・【津軽あっぷる娘】――

津軽三味線が綺麗に整頓された民謡教室の広間。
そこに置かれたテレビの前に、二人の少女がずっと座っている。
弘前凪沙と五所川原千聖である。

「いよいよ、決勝戦ね・・・」
二人の少女を後ろから抱き締める女性・・・

「先生・・・」
「お姉ちゃん達、大丈夫だよね・・・」
心配そうな二人の視線を受け止めた女性が優しく応える。

「大丈夫・・・。きっと勝つわ・・・」
その言葉を聞き、凪沙と千聖は互いの顔を見合わせ大きく頷き合った。

「頑張れーっ!」
「【ムーラン・ルージュ】のお姉ちゃん達―っ!」
二人は揃ってテレビ画面へ声援を送る。



福岡・【めんたいシスターズ】――

「ヤバい相手・・・だね」
宗像ナオミが呟いた。

【ダイナマイト・ガールズ】を見て直感的に感じるものがあったのだろう。
【めんたいシスターズ】のメンバーも黙って頷く。

「だけど、あの娘達なら・・・。きっと、やってくれる」
強い意志で言い切るナオミ。

「ここから私達も応援しているからねっ!」
メンバー皆が同じ気持ちで見つめていた。



東京・【シュシュ・ラピーヌ】――

レッスン場で舞香達4人が踊っていた。

その横で手を叩きリズムを取っているのは高等部生である、
踊りのレッスンを続けながらも、モニターには、アイドル甲子園の様子が映し出されている。

(お姉様方、絶対に勝ってくださいっ!)
ただ、黙って見ている事の出来ない舞香達は敢えてレッスンを申し出ていたのだ。
だが、ここにアイドル甲子園の中継を観る為のモニターがあるのは、高等部生達の思いやりであった。

(精一杯、踊りなさい。そして、精一杯応援しなさい)
【シュシュ・ラピーヌ】の願い、そして高等部生達の想いはきっとアキ達に届く事であろう。



大阪・【Konamon18】――

新しいプロモーションビデオの撮影中であった【Konamon18】もこの時ばかりは手を止める。
心斎橋にあるスタジオのメインスクリーンには、アイドル甲子園決勝の中継が流れている。


「【ダイナマイト・ガールズ】、うちらやったら負けとったな・・・」
うららの呟く声。

「神奈川代表なんかに、負けるなっ!」
しずくが気を吐く。

「ひな・・・」
「大丈夫・・・やんな・・・」
かえでとめいが、ひなを見る。

「大丈夫や。うちらに勝ったあの娘らやで・・・。負ける訳があれへんっ!」
ひなの声に皆が大きく頷き・・・

「行っけぇぇぇっ! 【ムーラン・ルージュ】っ!」
【Konamon18】の声が響いた。



【ムーラン・ルージュ】と戦って奇しくも敗退した好敵手達・・・
彼女達の願いは唯一つ、【ムーラン・ルージュ】の優勝である。



そして、もう一人・・・
決勝戦の舞台に萌が登場し。優奈と穂波に両脇から支えられて歌う姿を見て号泣する男がいた。

「萌ちゃん~! ホンマに良かったわ~」
萌の事故で【スケボー・万歳!!】が急遽中止となり気落ちしていた山上信二である。

「俺、萌ちゃんはいつか必ず復帰するって信じてたんやで~」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにする信二。

「また一緒に、【スケボー・万歳!!】やろうな~。【ムーラン・ルージュ】も応援してるでぇ。頑張ってやぁ~」
きっと萌も信二と同じ思いであろう。



この時、NASAの地上観測衛星が地球上のあらゆる所でこれまで感知した事の無いエネルギー波を検知していた。
世界の各地から様々な人の想いを乗せたエネルギーが、光となって東京へと集まる。

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