東京テルマエ学園

案 只野温泉 / 作・小説 和泉はじめ

文字の大きさ
上 下
113 / 129

第112話 それぞれの思い

しおりを挟む
(アキちゃん達もそろそろか・・・。頑張ってくれっ!)
武蔵からの連絡を待ち、突入の指揮を取る竜馬。

一瞬、頭に浮かんだ【ムーラン・ルージュ】の事を振り払う。

「総員っ、突入用意っ!」
竜馬の声が夜の中華街に響いた。



「何か気になるのか?」
隼人が隣に居る范に問いかける。

「いえ・・・。何も・・・」
「大丈夫だ」
「えっ!?」
「きっと、【ムーラン・ルージュ】が勝つ・・・」
「陣内警部補・・・」
「竜馬が作った曲をあの娘達が歌って、負ける訳が無い」
「はいっ!」
范の笑顔を見て隼人が言った。

「俺達も負ける訳にはいかないっ!」
隼人の優しさと強さに改めて、孫逮捕の意志を強く固める范であった。



「アキ・・・。お前ならやれるっ!」
二月会本部から如月の乗った車が出発した。

萬度の包囲網の一角を担い、歴史上過去に類を見ない『FoolsFesta』
如月達日本のヤクザの真価が問われているのだ。
愛娘の勝利を信じて、如月が出発した。



(モウ、始マッタ頃カナ・・・)
漆黒の闇の中、フランスへと向かう旅客機の中で目を閉じるケリアン。

(【ムーラン・ルージュ】の皆・・・、頑張ッテ。カトリーナ・・・)
「ねぇねぇ、ケリアン君はどれにするぅ?」
図々しく隣の席から話しかけて来たのはヤミである。

「何ノ話ダ?」
「機内食だよぉ。しばらく日本には来ないだろうから、和食にしとこうかなぁ。あっ! 未羽ちゃんも一緒で良いよねぇ?」
「勝手にしろ・・・」
「はーい。それじゃあ、ここは和食3つねぇ」

ヤミの笑い声が機内に響いていた・・・



その目的地であるフランスでも・・・

「コレが【ムーラン・ルージュ】か。ケリアンの事もあるガ・・・。」
執務室で衛星中継を観ているのは、マシュラングループの総帥 カロロス・ゴールである。

「何よりモ、孫とは馬が合ワン・・・」

そう言うと、リモコンを手にして・・・
「確かに・・・。3つ星レベルだナ」
そう呟いたのであった。



アメリカ合衆国・イリノイ州グレート・レイクス海軍基地――

「Hey!Malia! what looking ? (万莉亜? 何見てるの? の意)」
「These girls(この娘達の意)」
万莉亜の同僚達が集まってきて、衛星中継を覗き込む。

「Wow! Japanese girls?(日本の娘達? の意)」
「Very cute!(とても可愛いの意)」
「They are my sister's best friends (彼女達は私の妹の最高の友達 の意)」
「Well then・・・(それじゃぁ の意)」
「We'll support !(応援してあげなきゃ の意)」
振り返った万莉亜の目には、リモコンを手にした何人かの隊員が映っていた。



ラスベガスーー

「Mr. President(大統領閣下の意)」
電話しているのは、ジェームズ・アデルソンである。

「I don't have time now(今は手が離せません の意)」
そう言って一方的に電話を切る。

そして・・・
衛星中継の画面をじっと見る。

「Do your best!(頑張れ の意)」
審査員の抽選には落ちても、気持ちだけは届くと信じているのだろうか。



多くの人々の期待を受けて、決勝戦はいよいよクライマックスを迎えようとしていタ。



大成金飯店近くの路上に停車した車の中で、竜馬のスマホが着信音を鳴らした。

「俺だっ!」
満を持して待っていた竜馬が画面をスワイプする。

「竜馬っ、拿捕した密輸船から『エス』を押収っ! 孫を押さえろっ!」
待ち続けていた一報である。

「良しっ! 行くぞっ!」
待機していた車から、竜馬達が走り出て駆の居る部屋へと駆け上がる。
大人数に足音が廊下に響き、駆の居る部屋の扉が大きな音を立てて開けられた。

「何ダッ、オ前達ハッ!」
ボディガード達が孫を守るように取り囲む。

「厚生労働省麻薬取締部だっ! 動くなっ! 孫王文っ!」
「麻取ダトッ!」
「ボスッ、コッチへッ!」
リーダー格のボディガードが孫を裏へと誘導し逃げ出し、他のボディガード達が竜馬達の侵入を阻む。

「早瀬ッ! ヤッテクレタナッ!」
捨て台詞を吐きながら孫が逃亡する。

「待てっ!」
追おうとする竜馬達だが、階下に降りた孫は待機させていた車に乗り込み走り去った。
その後ろをパトカーがサイレンを鳴らして追いかける。


「日本ッ! 許サナイッ!」
孫は逃走する車の中から、自分の息のかかった組織に電話を架け続ける。

「俺ダッ! 大暴レシテ、日本ヲ滅茶苦茶ニシロッ!」



「孫大人ノ命令ダッ!」
「日本人ヲヤッテシマエッ!」
東京だけでなく関東各地に点在する萬度の拠点から、武器を持った中国人達が街に走り出ようとする。

「何処に行こうってんだっ!」
飛び出そうとする中国人達の前に立ちはだかる男達が居た。

「ナンダァ?」
「二月会の如月だっ! てめえらここからは一歩も出させねぇっ!」
如月の言葉に合わせて、ビルの出口を封鎖している組員達が一斉に銃を抜き構える。
「マ・・・、待テ・・・」
戦意を失った中国人達が持っていた武器を手放し、次々と投降していく。


同じことが各地で起こっていた。


「バカナ・・・、警察ハ何ヲシテルッ! ヤクザ ダゾッ!」
孫でなくとも、日本の警察機構とヤクザが手を組む事など誰も考え付かないだろう。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

荷車尼僧の回顧録

石田空
大衆娯楽
戦国時代。 密偵と疑われて牢屋に閉じ込められた尼僧を気の毒に思った百合姫。 座敷牢に食事を持っていったら、尼僧に体を入れ替えられた挙句、尼僧になってしまった百合姫は処刑されてしまう。 しかし。 尼僧になった百合姫は何故か生きていた。 生きていることがばれたらまた処刑されてしまうかもしれないと逃げるしかなかった百合姫は、尼寺に辿り着き、僧に泣きつく。 「あなたはおそらく、八百比丘尼に体を奪われてしまったのでしょう。不死の体を持っていては、いずれ心も人からかけ離れていきます。人に戻るには人魚を探しなさい」 僧の連れてきてくれた人形職人に義体をつくってもらい、日頃は人形の姿で人らしく生き、有事の際には八百比丘尼の体で人助けをする。 旅の道連れを伴い、彼女は戦国時代を生きていく。 和風ファンタジー。 カクヨム、エブリスタにて先行掲載中です。

処理中です...