東京テルマエ学園

案 只野温泉 / 作・小説 和泉はじめ

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第110話 珍道中、行先はフランス!?

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 Attention, please!

成田国際空港の出発ロビー。

「さーて、これから何処へいこうかなぁ・・・」
ロビーをキョロキョロと見回しているのは、ヤミ・イーシャである。


空港の待合中央に置かれている巨大ディスプレイには、アイドル甲子園のライブ中継が流れている。

「ふーん、あの娘達が無事に出てるって事は・・・。せっかくの傑作だったのに飲んでくれなかったのかぁ」
ヤミは七瀬の特殊能力(スーパーテイスト)の事は知らない。
その為、意識して回避されたのではなく何かの偶然であのジュースを飲まなかったと思っているのだ。

「やっぱり、さっさと逃げといて正解だったなあ。これを孫が知ったら大変な事になってたよぉ」
その孫も今は、大変な事になっているのだがそんな事を知る由もない。


「あれ・・・?」
ヤミが視線を向けたのは、『カタール航空』のチケットカウンターである。

長身の女性が一人、手続きをしている。
係員との会話の最中にも、何度かディスプレイに映るアイドル甲子園の模様をチラチラと見ている。
なぜかその視線にはわずかな苛立ちと憎しみを感じるヤミ・・・

(あれっ、もしかしてぇ・・・)
悪戯好きの子供のような笑みを浮かべてそっとヤミが近づく。

「誰っ!」
足音を立てずに近づいたつもりだったが、その女性は勢いよく振り向く。
無意識だろうか、右手がコートの下 腰の位置辺りへと潜り込む。

「・・・っ!」
軽い舌打ちが聞こえた。

「私の後ろに立つなっ! 次に立ったら・・・」
「撃っちゃうとかぁ」
「お前・・・っ!」
「あはははははっ! やっばり、『ダーク・コンドー』譲りの名セリフぅ!」
高らかにヤミが笑う。

「へぇ、フランス行きかぁ・・・。そう言えば・・・、フランスの外人部隊にもいた事があったよねぇ・・・。ドルゴちゃん?」
「何者だっ!?」
身構えるドルゴ14・・・
すぐ横から、別の声が掛かった。

「ヤミ・イーシャ」
「おや、ボクの名前を知ってるとは・・・。お主、何者ぞぉ?」
ヤミとドルゴの視線の先には、黒人青年の姿があった。

「なーんだぁ、ケリアン君じゃないかぁ」
「ケリアン・・・。ヤミ・・・」
ドルゴ14もその名は聞いた事があった。

「10の顔を持つ魔女・・・。カロロス・ゴールの懐刀・・・」
「よーし、決めたっ! ボクもフランスに行こうっとぉ」
嬉しそうにケリアンとドルゴ14の手を取るヤミ。

「三人仲良く、フランスまでの珍道中だねぇ。行くよ、助さん格さん・・・」
「何ダ、ソレ・・・」
ケリアンの前で人差し指を軽く振るヤミ。

「チッチッチッ! 駄目だよぉ、アニオタだけじゃ日本文化は分からないよ! 時代劇も見ておかなくちゃっ!」
そう言うと、ヤミは出発ゲートへと走り出す。

「早く早くぅ~」
「早くも何も、アイツ? チケットも無しに・・・」
ドルゴ14の目には、ヤミが嬉しそうにかざしている『カタール航空』のチケット映った。
「フッ、ソンナ奴サ・・・」
ケリアンが出発ゲートへと歩き出し、歩を止める。

「宇月・・・、未羽・・・」
「・・・ッ!?」
「平泉萌ハ、ボクの大切な友達ダ。次ハ許サナイ・・・」
「仕事だったから、見逃す・・・か? 甘いな・・・」
「イヤ、カロロスの命令だからダ・・・」
「ほう・・・」

フランス・シャルルドゴール空港への出発便が三人を乗せて日本を後にした・・・

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