東京テルマエ学園

案 只野温泉 / 作・小説 和泉はじめ

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第109話 萌、参戦!!

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「よしよしっ! 客は皆、アキちゃんらの突拍子も無い衣装にびっくりしとるやんけ~!」
ウンウンと一人で頷く八郎。
悦に入っているとはこの事だ。

「師匠っ! 今回の衣装はオタク心を擽られますわぁ~。特に、アキちゃんなんかっ!」
アキのファンでもある二郎もかなりご満悦の様子である。

「後は、びっくりの2連発やでぇ・・・」

果たして、八郎が最後に仕掛けた衣装の秘密とは一体、何なのだろうか・・・


別室ではモニターの画面を穴が開きそうなほど見つめている男がいた。
三橋である・・・

「おいおい・・・。奇抜って言っても限度ってものが・・・・」
そう言いかけた三橋がふと何かを思いつく。

「いや、あの大塩の仕掛けなら・・・。何かあるぞ、これは・・・・」

そう言う三橋、だが彼は知らない。
先ほどまで寝転がっていた恵比寿像がいつの間にか、ちょこんと座っていたのである。
しかも、三橋の方の笑顔を向けて・・・

だが、モニターを夢中になって見ている三橋は全く気付く様子は無い。

あぁ、恵比寿様・・・。あぁ、福の神よ・・・。
何とぞ、この哀れな男に幸運をーー



ステップを踏み踊り出したくなるようなBGMが流れ出し、アキ達はマイクを持ち上げる。


♬最近、はやりの女の子 
可愛いおしりの女の子♬

(歌い出しはほぼ、予測通りだけど・・・)
涼香の表情が曇る。

(やっばり・・・、弱い・・・)
涼香の視線を受けたアキ、歌いながらも考える。

♬視線を向けたらルージュ
急に呼ぶから見つめて、光っちゃうのよ♬

(でも、わたし達にはもう、これしかないっ!)
真剣なアキの視線がメンバーに次々と向けられる。

(分かってる・・・)
(全力を尽くすだけっ!)
7人とも考えている事は同じである。

今は出来る事に集中するだけ・・・と。


「駄目だ・・・。全く勝ち目がねぇ・・・」
【ダイナマイト・ガールズ】の盛り上がりと比べるとあまりにも寂しい会場のリアクションに三橋も絶望を隠しきれないでいる。

会場も、テレビ視聴者も誰もが【ムーラン・ルージュ】の敗北を感じ始めた時である・・・


♬私を 見つめて 目を離さないで
貴方の眼差しが 心を揺さぶる♬

(えっ、何っ!)
(まさか・・・。そんな?)
(でも・・・)
(間違い無い・・・)

アキ達の声に交じって別の声が音声に入っている。

「おいおい・・・。まさか、これってっ!」
魂の抜け殻のようになっていた三橋の目に希望の光がわずかに灯る。

(萌・・・)
(萌ちゃんっ!)

♬そうよ いつも 私を見つめていて
ルージュ・フラッシュ♬


第1フレーズが終了し、BGMがテンポを刻む中――
舞台袖から車椅子に乗った萌が葵に押されて現れる。


萌はブラックの肩まであるストレートのウイッグを付け、赤・白の光沢のあるライダースーツを身に纏っている。

「萌・・・だ」
「萌ちゃんだ・・・」
「平泉萌だぁぁぁっ!」

先ほどまで反応の薄かった観客席が一気にヒートアップする。

葵に変わり萌の車椅子を押しているのは、圭である。
舞台中央まで進んだ萌は優奈と穂波に両脇から支えられ、やっとの思いで舞台に立つ。

そして・・・

「皆、今までありがとう。でも、ボクも最後は皆と一緒に居たいんだ・・・。だって・・・」
萌は身体の痛みに耐えて必死に言葉を繋ぐ・・・

「だって、ボクも【ムーラン・ルージュ】の一員なんだからっ!」


「うわぁぁぁぁ、いいぞーっ!」
「萌ちゃーん、待ってたぞぉーっ!」

皆が感涙の涙に咽ぶ中、間奏のBGMが終わりに近づき、第2フレーズが始まろうとしていた。


アキが萌の手を取る。
「お帰り、萌ちゃん」
「アキちゃん・・・。皆・・・」
萌が涙目になり皆を見回す。
「優菜さん、穂波さん。萌ちゃんをお願い」
アキの言葉に、優奈と穂波がコクリと頷く。

「第2フレーズからは、8人パートに変更っ! 【ムーラン・ルージュ】、ReadyGo!」
アキの掛け声に皆が笑顔になる。

一際歓声が高まる中、やっと8人が揃った【ムーラン・ルージュ】。
今からその反撃が始まろうとしていた。


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