東京テルマエ学園

第１０６話 脅威！ ダイナマイト・マジック！！

 大歓声の巻き起こる中、三波がゴールデンマイクを片手に実況中継を開始する。

「さぁ、いよいよアイドル甲子園も最終局面を迎えましたぁ！　ファイナリストに残ったのはこの二組。中国からの刺客、神奈川代表の【ダイナマイト・ガールズ】。なんと、総勢４８人の大所帯です！　その実力は折り紙付き、トップ独走かと思われていたのですが・・・。
なんとその行く手を阻んだその対抗馬はまさかの！【温泉アイドル！】。一風変わった芸風ですが、ここまで上り詰めてきた実力は本物っ！　ダークホースと言われ続けてきたものの、まさかまさかの大躍進！歌って踊るだけがアイドルじゃない、全世界の人たちに温泉の魅力を知って貰いたい、その一心で突き進んで参りましたぁ。東京代表【ムーラン・ルージュ】！！！果たして栄冠を手にするのはどちらのチームでしょうかっ！」
客席の声援が更に高まる。

「さぁ、始まりです。　先ずは【ダイナマイト・ガールズ】、曲目は・・・、【ダイナマイト・マジック】　それでは、どうぞっ！」


白熱した三波の司会が終わると、舞台の幕が上がる。
だが、舞台の上は真っ暗闇・・・、そこに声が響いた。

「イー・アー・サン・スーッ！（１・２・３・４の意）」
李苺琳（メイリン）の掛け声とともに舞台が眩しい程にライトアップされる。
派手なＢＧＭが流れ、苺琳と桃琳が舞台中央へと躍り出る。

苺琳は、オレンジカラーを基調としたミニのワンピースを着てヒールの低い網サンダルという出で立ち、腰の位置に大きな蝶型の黄色いリボンが目立つ。
桃琳は、対照的なダークブルーを基調としたタイトなミニスーツに足元は膝までのロングブーツに腰には光を放つ素材のベルトでアクセント。
この２人が舞台の中央で連続宙返り・連続バク転を立て続けに披露する。
客席から、拍手の渦が巻き起こった。
そして、メインヴォーカルトサブヴオーカルの２人が同時にマイクを持つ。


♬子供じゃないって　気づいたら
びっくりするわ　当然よ
瞳の中の　爆発は
何でも燃やす　力なの
お化粧なんかを始めたら
周り視線を独り占め
ダイヤの微笑　一つでも
誰もが私にもう夢中
マジックガール　ダイナマイトガール
貴方の心を　鷲掴み♬

１フレーズの終了と同時に控えていた４６人が一斉に飛び出し、入れ替わりに後方へと下がる苺琳・桃琳。

４８人が一体となった演技が披露され始める。
アラビアンナイトを彷彿させるベリーダンスのカラフルなコスチュームをその身に纏った少女達が現れ、蝶が舞い・花びらが舞うかの如く踊ると、客席からは、ホウッと言う溜息が漏れる。


（おい・・・、こんなの有りかよ・・・。これじゃ、いくら何でも・・・）
水晶のブレスレットを握り占めた三橋がワナワナと震えだす。

（ダメだ・・・、こいつら。世界レベルだ・・・）
大音響の振動だろうか、三橋の目の前で座布団に座っていた恵比寿像が、コロンと寝ころんだ。


再び、苺琳と桃琳が舞台の中央へと進み、鈴を転がすような音色で次のフレーズを歌い出す。


♬知らないなんて　甘すぎる
もっと世界を　見つめなさい
甘い香りに　誘われて
全てを捨てて　こっち来て
私の吐息に　包まれて
そのままずっと眠りなさい
それが何より幸せと
分かってくるまで　もう少し
マジックガール　ダイナマイトガール
貴方のハートを　鷲掴み♬


先ほどのように４６人の少女達が現れる。
今度は、両手に３本ずつ棒を持ちその各々の先で皿を回している少女。
両手にパラソルを持ち、くるくると回している少女。
フラフープや十の輪を腰で回転を付けて回す少女などなど・・・

上海特芸団の得意とするサーカスと体操の要素を詰め込んだ演技が披露され観客は完全に目を奪われ言葉を失っている。
そして、３フレーズに入る直前には天井から長い棒が降りて来て何人もの少女達が棒に捕まり大きく揺らす。
まるで大時計の振り子のような息の合ったパフォーマンスをバックに、苺琳と桃琳が舞台中央で三度、マイクを待った。


♬お化粧なんかを始めたら
周り視線を独り占め
ダイヤの微笑　一つでも
誰もが私にもう夢中
マジックガール　ダイナマイトガール
貴方の心を　鷲掴み　鷲掴み
マジックガール　ダイナマイトガール
貴方のハートを　鷲掴みっ！鷲掴みっ！♬


曲の終了と同時に大音響と花火を模した映像がバックスクリーンに投影され舞台は終了した。
完璧なまでのパフォーマンス、意外性を秘めた演出・・・、まさにパーフェクトな舞台といえるだろう。
シーンと静まり返った後・・・、嵐のような賞賛の声と大喝采。

苺琳と桃琳が満面の笑みを浮かべている。

「谢谢ッ！　ドウモ、アリガトゴザイマスッ！」
苺琳の言葉に合わせて、【ダイナマイト・ガールズ】総勢４８人が一斉に恭しくお辞儀をする。

客席は割れんばかりの拍手の渦に包まれていた。


どうだ、と言わんばかりに【ダイナマイト・ガールズ】総勢４８人の視線がカメラへと向けられている。

「ふーっ、駄目だ～」
「どうしたんですか？　岩田さん？」
すずが心配そうに近寄る。

「あの目・・・。カメラ越しでも何かが俺の頭の中を突き抜けやがった・・・」
「そんな・・・。それじゃ、【ムーラン・ルージュ】は・・・」
岩田は黙って頭を横に振る。


大波乱の幕開けとなったアイドル甲子園決勝戦・・・
果たして、７人の【ムーラン・ルージュ】に勝機はあるのだろうか・・・