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第104話 決勝戦直前!

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「正直、【ムーラン・ルージュ】がここまで勝ち残るとは・・・。さすがに予想外だが・・・」
会場入りした三橋がモニタールームで呟く。

「だが、こうなったら是が非でも優勝してくれよ。俺も全てを賭けてるんだっ!」
先日の準決勝で引き裂かれた御守りに変わり、今日は水晶のブレスレットを付けている。

「最強のパワーストーン、頼むぜ・・・」
そう言う三橋の前には、微笑を浮かべた恵比寿像が座布団の上に置かれていた。



「うわっ、満員御礼だな」
観客席に向けてカメラを回しているのは、岩田である。

「だって、決勝戦ですもん」
会場の熱気に煽られてか、すずの頬も上気している。

「出来れば、【ムーラン・ルージュ】に勝って欲しいけど・・・」
つい心の思いを口に出した三波。
だが、司会者という立場を思い出し口を噤む。



舞台袖には八郎と二郎、そしてカトリーナの姿がある。
「今日は心置きなく【ムーラン・ルージュ】の応援が出来ますね。師匠」
「今回の衣装は、わいの歴史に残る最高傑作や、皆、ビックリしよるでぇ」
八郎の顔もこれまでにない位に綻んでいる。
「イスケ・リエジャオ!(頑張っての意)」
カトリーナも両手をしっかりと組み祈る。


「あら、渡じゃない?」
所要で遅れ到着した渡を呼び止める声がする。

「梨央音さん・・・。どうして?」
「会場審査員に当たったんだけど。それが・・・?」
「その・・・。色々と有難うございます」
「あら、何の事かしら・・・。あの娘達は実力で勝ったのよ。私達は、ほんの少し手助けしただけ・・・」
「・・・」
「松永葵さんに宜しく・・・。それと、アキちゃんにもね」
(梨央音さん・・・)
客席へと向かって歩き出した梨央音の後ろ姿に深く頭を下げる渡であった。

そして、舞台を見上げ呟く。
「アキ、頑張れよ」

互いの命運を賭けた決勝戦直前――

控室へと向かう【ムーラン・ルージュ】と【ダイナマイト・ガールズ】がバックヤード通路で鉢合わせした。
「・・・」

【ダイナマイト・ガールズ】は総勢48名の大所帯である。
その人数に圧倒されるアキ達に近寄る一人の少女が居た。

「【ムーラン・ルージュ】!! 私達に勝てると思っているのカ!? 優勝は【ダイナマイト・ガールズ】が頂くネッ!」
リーダーの李苺琳(メイリン)である。
美しい流れるような黒髪、高い鼻梁が印象的だ。

「アレッ! 一人足りないヨ。もう、逃げ出したカ? 辞退するなら、早い方が良いネ! 恥、かかなくて済むヨ!」
妹の李桃琳(トウリン)、姉に劣らず艶やかな黒髪と濡れた唇が光を放つ。

「フフフ」
後ろに控えていた46人も敵意をむき出しにし、小馬鹿にするように笑っている。
「お前達には、負けないネ!」
切れ長の目を吊り上げ、【ムーラン・ルージュ】に宣戦布告する苺琳。

だが、その心中は・・・

(失敗する訳にはいかないネ。命も、家族も危なくナル・・・)
苺林が獲物を狙う肉食獣のような視線で睨みつけ、ゆっくりと立ち去って行く。

「なんだぁ、アイツら?」
穂波が思わず声に出した。

「あー、こわっ!」
汐音も声が出る。

「まさに、敵そのものって感じ」
優奈はやや呆れ顔である。

「それだけ、引けない理由があるのかも・・・」
圭は何かを感じ取ったのだろうか。

「アキちゃん・・・」
涼香がアキに寄り添う。

「大丈夫! わたし達だって負けないんだからっ!」
そんなアキをそっと見つめる七瀬。

(アキ・・・、強くなったね。リーダーとしても・・・)
それぞれの思いを胸に秘め、立ち去って行く【ダイナマイト・ガールズ】を見つめる【ムーラン・ルージュ】。
そこには、かつて無いほどの闘志が溢れ出ていた。



【ムーラン・ルージュ】の控室――

「いいかっ、泣いても笑ってもこれで最後だっ!」
葵が皆に喝を入れている。

「今までにやって来た事の全てが、チームワークと努力が実を付ける時だ」
「はいっ!」
「【ムーラン・ルージュ】の底力を見せてやれっ! そして、必ず勝てっ! いいなっ!!」
「はいっ!」
ステージ衣装に着替えたアキ達が力強く返事をする。


コンコン コンコン・・・

ドアのノックする音が聞こえた。

「はい?」
葵がドアを開けると、真紅の薔薇の花束を抱えた配送員の姿・・・
「『真紅の風車』様からのお届け物です」

薔薇の花束に添えられたメッセージカードを読む葵。

「『優勝を祈ります。 ファンより』か・・・」
そう言えば、【ムーラン・ルージュ】の名前となったのもこのファンのメッセージであった事を思い出すアキ達。

「ずっと応援してくれてるファンの為にも、絶対に勝とうねっ!」
アキの言葉に皆が頷いた。

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