東京テルマエ学園

案 只野温泉 / 作・小説 和泉はじめ

文字の大きさ
上 下
104 / 129

第103話 FoolsFesta 始動!

しおりを挟む
 萬度のアジトにある地下室・・・、ここはヤミ・イーシャの研究室である。
所狭しと怪しげな機械・器具が並んでいる。

「ふんふん・・・。こんな感じかなぁ」
ヤミが複数の試験官の液体をフラスコへと移しガラス棒で攪拌する。
その様子をじっと見ているのは・・・、孫である。

「完成シタノカ? ヤミ?」
孫の顔に邪悪な笑みが浮かんだ。

「やっほぅ~。出来たよ、孫」
怪しげな色の液体の入ったフラスコを嬉しそうに見つめるヤミ。

「バルビツール酸系(向精神薬)から作った超強力睡眠薬だよ~。これ飲んじゃったら永遠に起きないかもね~。ボク、知~らないっとぉ」
瞳をキラキラと輝かせて嗤うヤミ。

「しかもぉ、無味無臭。ボクの最高傑作だよぉ」
そう言ってフラスコを孫の顔へと近づける。

「ナルホド、何ノ匂イモシナイナ」
「試しに飲んでみるぅ?」
悪戯っぽく笑うヤミ。

「冗談デモ笑エナイナ」
孫が不機嫌そうに突っ返す。

「ねぇ、孫? 今回はボクが直々に届けちゃってもいいかなぁ?」
「オ前ガ?」
「だって、【ムーラン・ルージュ】の見納めになるかも知れないしさぁ。一度は直接見ておきたいかなぁって」
「フンッ! 好キニシロッ!」
「わぁーぉっ! サンキュー、孫」



この後、孫は駆との再交渉へと出向く事を決めたのであった。



Trrr Trrr

早瀬コンツェルン総帥室のインターホンが鳴った。

「何だ?」
「お電話が入っております」
「・・・、誰からだ?」
「孫様と・・・」
ついに待っていた時が訪れたのだ。

将一郎と駆は互いに顔を見合わせ、大きく頷く。
そして、駆が受話器を上げた。

「やぁ、孫大人(ターレン)・・・。やっと連絡をくれましたね」
「ホウ・・・。大人ト言ウトハ・・・」
「目上の方に対する礼儀と伺いまして・・・」
「フンッ! マァ良イガ・・・」
「ご連絡を頂く前にDmazonの決済機構は変更しておきましたよ・・・。自動融資付きに・・・」
「準備ガ良イナ」
「せっかく大儲けするチャンスなんですから」
「俺ガ何ヲ売ロウトシテイルカ知ッテル筈ダガ・・・」
「えぇ、以前に横浜でお聞きしましたからね・・・。究極のダイエット薬でしょう?」
「Dmazonデ何処マデ捌ケル?」
「日本国内ならどこでも、海外ならFaDaxとも提携してますから・・・」
「分カッタ・・・」
「それと・・・」
「何ダ?」
「【ダイナマイト・ガールズ】のお勧め商品紹介の件ですよ。あるテレビ局と話が付きましたよ。大層、乗り気です」
「ソウカ・・・。イツノ間ニカ、逞シク成ッタヨウダナ」
孫の声に笑いが混じって来たのが感じられる。

「俺も成長したんですよ・・・。色々とありましたからね」
「ソウカ・・・。マァ良イ」
「どうです? メシでも食いませんか、赤坂 花の井あたりで・・・」
「時間ト場所ハ・・・。〇月×日 19:00に横浜 大成金飯店ダ」
「中華街か・・・」
「何ダ・・・。不都合デモ有ルノカ?」
探りを入れ値踏みしているような言い方である。

「いや、問題ない。料理はそちらで手配して下さい、後はこっちで払いますよ」
「オ前ニモ届ク商品ヲ見セテヤロウ」
「それは、楽しみです」
「・・・。デハ・・・、ナ」
通話が切れたのを確認し、駆も受話器を置く。
全身からドッと汗が噴き出て来る。

「あれで良かったのかな・・・」
「うむ、相手の懐に入らねば孫も信用はすまい。これが最良だっただろう」
「ふっ・・・」
「どうした?」
「いや・・・、親父に褒められたのっていつ以来だったかなって・・・」
「駆・・・」
「大丈夫だよ。絶対にやり遂げてみせるさ」
(奈美さんの為にも・・・)
そして、この事は飛鳥井・隼人を通じて関係各署へと通達されていった。


この時、もしヤミが孫の近くにいれば簡単に場所を決めずにいたかも知れない。
しかし孫には焦りもあり一気にケリをつけてしまいたいとの思いもあった。


「〇月×日 19:00・・・。アイドル甲子園の決勝と同じか・・・」
将一郎からの連絡を受け、飛鳥井が隼人達を集めていた。

「届く商品と言うからには・・・」
「まだ国内には持ち込んでいないという事か・・・」
「大友君・・・」
早乙女が武蔵を呼ぶ。

「海岸線は君に頼む事になるな」
「任せておいてください」
「大成金飯店への突入は竜馬の指揮で」
「はいっ!」
「各公道封鎖は隼人君の指揮下だな。二月会の事も・・・」
「そうですね。それと、神奈川県警にも協力要請を・・・」
「それは、私からしておこう」
飛鳥井が言う。

(アイドル甲子園の決勝と同刻か・・・。アキちゃん・・・)
竜馬の胸に去来したのは一抹の不安だったろうか・・・



二月会本部では、隼人が萬度の拠点リストを如月へと手渡している。

「横浜を中心とした萬度のアジトと思われる場所のリストだ」
「結構あるな・・・」
「出来るか?」
「出来るかじゃねぇ。やるんだよっ!」
二月会の組員達が各地の親分たちにその場所を伝えていく。


「〇月×日 19:00です。担当は〇〇市の△△ビルっ!」
「分かった、任せとけ。一歩も出れねえようにしてやるぜっ!」
同じような会話が関東各地で夜遅くまで続いた。

(・・・)
様子を見ていた如月が会長室へと戻り電話を架ける。

「はい・・・」
「橘か?」
「ゆかりって呼んでくれても良いけど・・・」
「質(タチ)の悪い冗談だ」
「ふふっ、それで何?」
「すまねえが・・・。〇月×日は、一日自由にさせて貰う」
「アイドル甲子園の決勝の日よね・・・」
ゆかりに歩み寄り、ミネルヴァが手を差し出した。
黙って受話器を渡すゆかり。

「夏生・・・」
「ミ・・・ッ!」
「萬度を壊滅させるチャンスだ・・・。しっかりと役目を果たして来い」
「な・・・、何でそれを・・・?」
「儂は何でも知っておるのだよ・・・」
そう言ってミネルヴァは受話器をゆかりに返す。

「さて、そろそろ潮時かな・・・。弾?」
立ち上がる弾を見るミネルヴァ。

「その日は・・・。俺も自由にさせて貰う・・・」
「なっ・・・、勝手なっ!」
思わずゆかりが叫ぶ。

「構わん・・・」
「えっ!?」
「しっかりと最後を見届けて来い・・・」
「それと・・・」
「何でしょうか?」
「アイドル甲子園の決勝戦は我々も見に行く事としよう」
「分かりました。では、手配を・・・」
「丁度よい余興になるか・・・」
ニヤリと笑うミネルヴァであった。


そして、数日後・・・

アイドル甲子園の決勝と日を同じくして、『FoolsFesta』も開始される事になったのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

処理中です...