上 下
96 / 129

第95話 ブービー・トラップ

しおりを挟む
「何やらきな臭いが・・・」
「早瀬も動いたという事ですか」
「しかし、思い切った事を・・・」
「まぁ、我々にはあまり関わりは無い・・・。夏生は躍起になっておるようだがな」
テルマエ学園でも会見の中継を、ミネルヴァ・ゆかり・弾の三人がそれぞれの思惑を持って
見ていた。

「取り敢えずは、アイドル甲子園ですね・・・」
「ふむ・・・」
ミネルヴァが顔を顰めた。

「何か?」
ゆかりが尋ねる。

「つい先ほど、妙な感覚がな・・・。気のせいやも知れんが・・・」
ミネルヴァの感じた違和感、それが現実になろうとしている。



別室へと移動した駆はソファに倒れ込むように座る。

「どうだった・・・?」
「かなりの演技ですね。あれならインパクトも・・・」
隼人が応える。

「後は・・・」
「奴らがどう出てくるか・・・」



「あっ、ちゃぁぁぁっ! 孫? これってマズいんじゃないのぉ?」
「早瀬・・・駆・・・。イッタイ何ガ・・・」
かつて自分が思いのままに操ろうとしていた駆とは違う何かを感じる孫。

「本気で殺されかけたから性格が変わったのかなぁ」
面白そうにヤミが孫の顔を見る。

「もしかして・・・、ドルゴちゃん逆買収されちゃったとか?」
「ウルサイッ! 黙レッ、ヤミッ!」
「それに外国筋って・・・。まさか、フランスとかじゃ」
「マサカッ!? カロロスっ!? 人ノ得物ニ手ヲ出スツモリカッ!?」
「おぉっ、怖いぃぃぃっ!」
(何か、起きるかも・・・。そろそろ、潮時かなぁ)
正に鬼の形相となる孫、それを面白そうに見つめるヤミ。

「早瀬駆ニ連絡ヲ取レッ!」
「あんまり焦らない方が良いと思うよ」
「ヤカマシイッ! 今ナラ未ダ失敗ヲ取リ戻セル・・・」
「ボクは知らないからね~」
怒りの収まらぬ様相の孫、何かを感じ取ったヤミこの二人の行動が今後の展開を大きく変えるのだった。



早瀬コンツェルン総裁室――


TrrrTrrr

卓上のインターフォンが鳴った。

「何か?」
駆が通話ボタンを押し、応じる。

「総裁と直接話したいと言う方が・・・」
「誰だ?」
「孫王文と・・・」
その名前を聞き、総裁室に居た全員に緊張が走る。
「・・・」
駆と隼人が互いを見る。
将一郎と飛鳥井が静かに頷いた。

(奈美さん・・・)
駆が震える手で受話器を上げ、ハンズフリーボタンを押す。

「早瀬だが・・・」
「駆サン、久シブリデスネ」
(孫っ!)
直接声を聞き、孫王文本人からの電話である事を確認した駆は手で合図を送る。
「孫会長、とんでもない事をしてくれましたね」
「何ノ事デショウカ?」
「まさか、この俺を襲撃してくるとは・・・」
「何ノ事カ・・・。サッバリ分カリマセンネ」
「中国訛りの暴徒どもの事ですが?」
「ソンナ事ガ有ッタンデスカ? ゴ無事デ何ヨリデス」
(くっ!)
感情的に成りかけた駆の肩を隼人がグッと掴んで自重を促す。

「それで今日はどんな要件で?」
「ソウソウ、新総帥ヘノ御就任ノ御祝イヲ・・・」
「下らん話なら、切らせて貰うが・・・」
「ホウ・・・。少シ成長サレタミタイデスネ」
「それなりにな・・・。裏社会とも繋がりを持てたし、そろそろ俺の時代だ」
「二月会デシタカ・・・」
「アチコチから誘いも多くてな・・・。渋温泉再開発の・・・」
「ソレハッ! 何処デスッ!? マサカ、フランス?」
「マシュランか?」
「ナゼ、ソレヲ?」
萬度と同じくフランスのマシュランがミケネスの一角であることは、飛鳥井を通じて知らされていた駆が上手く挑発した。

「カロロスッ!」
電話越しでも憎々し気な口調がハッキリと分かる。

「そう言えば、孫会長はウチの宅配ルートがどうとか言ってましたな・・・」
「Dmazon・・・」
「使わせましょうか?」
「ナニ?」
「Dmazonには、電子決済機能がある。ついでに、ウチのグルーブの金融会社を巻き込んで自動融資もさせれば・・・」
「駆サン・・・。アナタ・・・」
「会見でも言った筈だ・・・。儲かる事なら何でもすると・・・」
「良イデショウ・・・。アイドル甲子園デ【ダイナマイト・ガールズ】ガ優勝シテ、オ薦メノ商品ガ通信販売デ・・・」
「一度、会いませんか?」
「・・・。良イデショウ」
「場所と日時は、改めて・・・」
「イャ、コチラカラ連絡シマス」
(完全には信用していないか・・・)
駆は隼人を見る。
致し方無しという感じで隼人が首を縦に振った。

「思った以上に弱気なんだな・・・。まぁ、良いさ。いつでも何処でも行ってやるよ」
電話口から孫の激しい息遣いが聞こえた。

(挑発は成功だな・・・)
皆が顔を見合わせて大きく頷いた。

そして・・・

「俺に会う度胸が付いたら、いつでも連絡してくれ」
そう言って一方的に電話を切る駆。


通話が切れた事を確認して全身の力が抜け、床に座り込む駆。

「どうだった?」
「これなら、間違いなく乗ってくるでしょう」
「よくやったぞ、駆っ!」
「後は相手の出方待ち・・・。だが、流れはこちらに向いている」
『FoolsFesta』は着実に進行していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

海に漂う亡霊

一宮 沙耶
大衆娯楽
会社でおきた恐怖体験。夜1人でお読みください。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

不倫した挙句に離婚、借金抱えた嬢にまでなってしまった私、だけど人生あきらめません!

越路遼介
大衆娯楽
山形県米沢市で夫と娘、家族3人で仲良く暮らしていた乾彩希29歳。しかし同窓会で初恋の男性と再会し、不倫関係となってしまう。それが露見して離婚、愛する娘とも離れ離れに。かつ多額の慰謝料を背負うことになった彩希は東京渋谷でデリヘル嬢へと。2年経ち、31歳となった彼女を週に何度も指名してくるタワマンに住む男、水原。彼との出会いが彩希の運命を好転させていく。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...