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第92話 フランスからの使者

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パッパパッ!

急に会場全体の照明が点く。
誰もが一瞬にして我に返る。

「な・・・、何だったんだ。今のは・・・?」
慌ててモニターを見る三橋。

「停電していたのは・・・、えっ!? 3秒だけ・・・」
この3秒間の出来事を最初から最後まで見ていたのは晶と神酒だけである。


「わたし達・・・」
アキが回りを見回す。
アキの頭の中に懐かしい声が聞こえる。

「時空を超えて、貴女に会えて良かった・・・」
(えっ、お母さん・・・?)
「今はやるべきことをやって。もうすぎ貴女達の力が必要になる・・・」
(今、やるべきこと・・・。っ!)

パンッ!

アキは両手で自分の顔を勢いよく叩いた。
七瀬達もこれまでと目の色が変わっている。

そして・・・

(あの娘達も・・・)
アキの視線の先には、【Konamon18】の姿があった。


(そうか・・・、あん時のモヤモヤしたんは・・・)
「ひな・・・?」
「分かっとるわ、めい。それとこれとは別の話や」
「せやけど・・・」
「・・・なぁ」
不安げなうららとしずく。

「心配いらんて。なあ、ひな」
かえでが明るく笑う。

「何であの娘らに突っかかってたんかも分かったんやし」
【Konamon18】も揃って笑顔を見せ、アキ達を見つめる。

(後は、この準決勝の結果だけや・・・)
まるで憑き物が落ちたかのように爽やかな笑顔を見せるひな達であった。



「クソッ、一体ドウナッテルンダッ!」
荒々しく机を蹴り上げているの男がいる。

孫王文、萬度グループを率いて日本侵略を画策していたのだが・・・

「しっかし、ドルゴちゃんが失敗するとはね~」
「アノ小娘ノ時ハ、完璧ダト思ッタンダガ・・・」
「早瀬駆の暗殺は失敗かぁ・・・。孫の手下もかなりやられたしねぇ」
「シカシ・・・、何故ダ?」
「ボクに聞かれても分からないけど・・・。失敗したからって依頼金を返してくるのはなかなか出来る事じゃないよ」
「ヤミ・・・、ドルゴヲ探セッ!」
「やっても良いけど・・・。今日はもっと大切な事があるんじゃなかったぁ?」
「フンッ! カロロス、何ノツモリカ知ランガ・・・」
「おや、到着したみたいだよ」


萬度の手下に案内され孫の居る部屋へと通されたのは一人の黒人男性だった。

「孫、カロロスの代理として言う」
「何ダト、小僧ッ!」
「ミケネスの将軍5人がキミの解任を決議シタ」
「ドウイウ事ダッ!」
「つまり、ロシア以外の将軍達はキミを不適任と判断したンダヨ」
中国の暗黒社会を牛耳り、ロシアと兄弟分である7代将軍の一人に対してこれだけの事を言う黒人男性、見ればまだ若さが垣間見れる。

「ミケネスの決定を伝エル。次に失敗スレバ、ミケネスにキミの居場所ハ無イ」
「グッ・・・。ソレハ・・・」
「無論、アノ方も御存ジ・・・。イヤ、アノ方の御意思ダト言ってオコウ」
「・・・、カロロスニ伝エロ。コノ日本ヲ萬度ノ配下ニ必ズ収メルトナッ!」
「覚醒剤を使ってカ?」
「ソウダ、ソノ第一歩トシテ・・・。アイドル甲子園デ【ダイナマイと・ガールズ】ヲ優勝サセル・・・。ダガ、オ前・・・、ナゼ俺ノ居場所ヲ知ッテイタ?」
「フッ、ミケネスに死角は無イ」
そう言った黒人男性の視線が一瞬、ヤミへと向けられる。

ニヤリと笑うヤミ、このやり取りに孫は全く気付いていないようだ。

「戻ッテ、カロロスニ伝エロッ! 日本ヲ手ニ入レタ後、フランスモ食ッテヤルトナッ!」
「キミが無事でいたナラ、そう伝えるヨ」
激怒する孫を全く意に介さない素振りで立ち上がった黒人青年は退席しようとする。

「待テッ!」
孫が呼び止める。

「まだ、何カ?」
振り返る黒人青年・・・

「オ前、名前ハ?」
「ケリアン・・・。ケリアン・ジラール」
(やっばりこいつが・・・。カロロスの懐刀・・・)
「覚エテオコウ・・・」
ケリアンを鬼のような形相で睨み続ける孫だった。

(ふう、取り合えずボクの事はバレなかったかぁ・・・。しかし、あのケリアンが来たとなると・・・)
ヤミが何かを考え始めていた。


カロロスの使者として孫と会った後、ケリアンの足はいつしか懐かしいテルマエ学園へと向かっていたのだったーー


「来るつもりハ無かったガ・・・。自然と足が向イタカ・・・」
独り言を呟き正門を見上げるケリアン。
ふと正門の柱の後ろに居る人影に気付く・・・

「誰ダ・・・?」
「ヤッバリ来たネ・・・。ケリアン・・・」
「カトリーナ・・・? どうシテ?」
アイドル甲子園準決勝が行われているのである、カトリーナもてっきり会場へと行っているものと思っていたのだろう。

思わぬカトリーナとの再会に驚き、そして嬉しさを隠しきれないケリアン。
黙って見つめ合う時間が流れる・・・

「ココ暫くで、色々な事がアリスギタ・・・。だから、近い内にアナタが戻って来るような気がしてイタネ。ドウシテ来日シタノ?」
ケリアンの目をじっと見据えて話すカトリーナ。

(モウ、隠しておくのは無理カ・・・)
「アル筋からの情報があってネ。カロロスの代理として来日シタ」
「萬度の事ネ・・・」
カトリーナは視線を逸らさない。
黙ってうなずくケリアン。

「・・・孫の居場所をリークしたのハ・・・。キミ?」
カトリーナは首を横に振る。

「ワタシ・・・。じゃナイ」
ケリアンとカトリーナが同時に呟いた。
「・・・、ヤミ・イーシャ。カ・・・」
ケリアンの顔つきが急に険しくなる。

「ヤハリ・・・、アノ方の意志が働いているノカ・・・」
「アノ方?」
カトリーナは不思議そうな表情を浮かべる。

「キミは、知らない方がイイ・・・」
ケリアンの瞳は真剣そのものだった。

そして・・・

「サヨナラ・・・、カトリーナ。元気デ・・・」
何か言いたげなカトリーナに背を向け、足早に立ち去るケリアン。
(ボクの事ハ、忘レテ・・・、生キテイク世界が違うンダ。キミを巻き込みタク無イ・・・)


そんなケリアンの後ろ姿をカトリーナはずっと見送っていた。

(ケリアン・・・。貴方のお蔭デ・・・・、ワタシは居場所を見ツケタ。アリガトウ・・・)
ケリアンの姿が視界から消えてもまだその方向を見続けるカトリーナ。

この日を境に、ケリアンの行方を知る者は居なくなったのであった。


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