88 / 129
第87話 薔薇が咲いた日
しおりを挟む
パチパチパチパチ
全ての演技を終えたアキ達に舞香達からの惜しみない拍手が送られていた。
舞台へと駆け上がり次々にアキ達へと抱きつく舞香達。
誰もが真っ赤な目になり、次々と涙が溢れ出ている。
「お姉様方・・・。本当にお疲れ様でした」
舞香が【シュシュ・ラピーヌ】を並べ、アキ達に深々と頭を下げる。
「もう、何も言う事はありません。堀塚のスキルをその身に付けられましたっ!」
舞香のその言葉を聞き、講堂に歓声が上がる。
「ありがとう・・・。舞香ちゃん」
アキが舞香の手を取る。
辛く苦しいレッスンの成果が今ようやくここに実を結んだのだ。
アイドル甲子園準決勝を翌日に控え、【シュシュ・ラピーヌ】が堀塚音楽スクールへと戻る日となった。
迎えの車の到着前に、舞香が七瀬を呼び出す。
「七瀬お姉様。【堀塚音楽スクール】にいらっしゃいませんか? お姉様なら磨けば必ず・・・」
「えっ!? あたしなんて通用しないわよ。 それにあたしは姉貴の待ってる【星野荘】に戻らないと・・・」
笑ながら首を横に振る七瀬。
「そうですか・・・。でも、お姉様ならきっと・・・。待ってます・・・」
踵を返して舞香は走り去る。
(舞香ちゃん・・・)
その後ろ姿を見つめる七瀬であった。
迎えのワゴン車が到着し、荷物が車内へと運び込まれていく。
「お世話になりました、お姉様方。葵先生・・・」
【シュシュ・ラピーヌ】が順番にお辞儀をして車へと乗り込んでいく。
「ありがとう」
「楽しかったよ」
「また、遊びに来てね」
アキ達も口々に声を掛ける。
「【シュシュ・ラピーヌ】、理事長に宜しく伝えて欲しい。この恩は・・・」
「・・・」
葵の一呼吸がおかれ、皆が次の言葉を待った。
「この恩は、決勝戦に進んでお返しするとっ!」
「はいっ! 確かに言付かりましたっ!」
こうして【シュシュ・ラピーヌ】のレッスンは終了した。
(梨央音さん・・・、ありがとう。貴女の生徒は、素晴らしい娘達です・・・)
渡も感慨深げに見送っている。
「舞香ちゃーん。礼華ちゃーん、穂加ちゃーん、澄佳ちゃーん。元気でなぁ~っ!」
まるで何事も無かったかのように両手を大きく左右に振る八郎。
実に現金なものである。
「皆さん、御達者で~」
「フィル・シレンゲー(さようならの意)」
二郎とカトリーナも舞香達との別れが寂しそうであった。
その車の中で・・・
「運転手さん、少し寄って頂きたい所があるのですが・・・」
「・・・、承知致しました」
この後、舞香達が向かったのが萌の入院している病室であった事をここに記しておこう。
同じ頃――
【Konamon18】の宿泊しているホテルの一室では・・・
「めい、どうや? 【ムーラン・ルージュ】は?」
「ひな、こんなん相手になれへんわ。なぁ、しずく?」
「歌はソコソコやけど、ハリボテの演出で上って来たんやろ? うららとかえではどう思う?」
「うちらの圧勝で決まりやで」
「ちょろいちょろい。なぁ、ひな? うちらの敵は【ダイナマイト・ガールズ】だけやで。
そやろ?」
「そやなぁ。ほんなら、一気にケリつけて行ったろかーっ!」
室内に【Konamon18】の笑い声が響いていた。
だが、この準決勝で想像を絶する事が起きてしまうのである。
「そうですか・・・。ご苦労様」
堀塚音楽スクールに戻った【シュシュ・ラピーヌ】が梨央音への報告を行っていた。
七瀬の思わぬ演技力の事も併せて報告する舞香。
「そう、それは楽しみね。まずは今回、貴女達がどこまで出来たのかは、アイドル甲子園準決勝が全てを物語ってくれるでしょうね」
梨央音の言葉に戸惑う舞香達。
「ご心配はありませんわ。理事長」
ドアを開ける音と共に聞こえた声に舞香達が振り返る。
「お・・・、お姉様方?」
そこには高等部生3名の姿があった。
「この短期間で貴女達も成長したようですね」
「お姉様・・・」
「理事長、【シュシュ・ラピーヌ】は私達が鍛え育てました」
「その私達が認めて送り出したのです」
「そう・・・、だったわね」
「舞香・礼華・穂加・澄佳・・・。よく、やり遂げましたね」
この時、【シュシュ・ラピーヌ】だけでなく高等部生達も涙を流していた事を知っているのは彼女達の他は梨央音一人である。
そして・・・
(星野七瀬・・・。そんな光る原石まで見つけて来るなんて・・・)
梨央音は新しい何かを思いついているようであった。
その頃、渋温泉 温水屋――
「残念だったねぇ・・・。弥生さん・・・」
「でも、奈美さんは当たったみたいですよ」
「泉華全員が応募して、奈美さん一人とは・・・」
「かなり人気みたいですしね」
「まぁ、仕方ないか。アキ、頑張りなよ」
星野荘――
奈美が仏間で手を合わせている。
「お父さん・お母さん・菜緒・・・。七瀬を見守ってね・・・」
新宿 ル・パルファン――
「流石、ママですね。くじ運も強い・・・」
「瀬尾君も瑠花ちゃんも外れたのねぇ。残念」
「中継見て、応援してあげましょう」
「そうね・・・」
(頑張って、皆・・・)
某敬老会――
「かぁーっ! 全滅とはのう・・・」
「息子や孫達もダメじゃったと・・・」
一瞬、暗い雰囲気が漂う。
「大丈夫じゃ、あの娘達なら・・・」
「そうじゃ、そうじゃ」
「あの娘達なら、きっと・・・」
明るくそして、楽しいひと時を思い出し老人たちはアキ達の勝利を願う。
群馬 草津温泉 季(とき)・たちばなーー
「私が気にする事じゃないけど・・・。あの娘達が気になる・・・か」
書斎でノートパソコンを閉じたのは、紗矢子である。
湯郷温泉 塩原亭――
(お姉ちゃん、頑張ってっ!)
お茶の間審査員の当選メールが届いたスマホをじっと見つめる、湊帆。
その後ろ姿を見つめている女将・・・
そして・・・
「・・・ん? 何だ、これは?」
研究室で急に届いた当選メールを訝しげに見る神酒。
「うわっ、当選しちゃてる」
「マジかっ! すっげーっ!」
「しかも会場審査員って、強運じゃねっ!」
神酒のタブレットを覗き込んだ学生達が騒ぎ出す。
「なんですか、君達?」
「いや・・・。その・・・」
「少しでも確率を上げようと思って・・・」
フーっと大きく息を突く神酒。
「つまり・・・、君達が勝手に申し込んだという訳ですね」
「不動院先生、これはレア体験できますよ!」
「くだらない、興味があるなら君達に譲ります」
「いや・・・。それが出来ないんです・・・、本人限定で・・・」
「まあ、行かなければ良いだけですが・・・」
その時、神酒が何かを感じたようである。
(ふん、確かめに行くだけだ・・・。何もない、という事を・・・)
同じ刻、不動院晶も空を見上げていた・・・
様々な人の想いを紡いで、アイドル甲子園準決勝が始まろうとしている。
全ての演技を終えたアキ達に舞香達からの惜しみない拍手が送られていた。
舞台へと駆け上がり次々にアキ達へと抱きつく舞香達。
誰もが真っ赤な目になり、次々と涙が溢れ出ている。
「お姉様方・・・。本当にお疲れ様でした」
舞香が【シュシュ・ラピーヌ】を並べ、アキ達に深々と頭を下げる。
「もう、何も言う事はありません。堀塚のスキルをその身に付けられましたっ!」
舞香のその言葉を聞き、講堂に歓声が上がる。
「ありがとう・・・。舞香ちゃん」
アキが舞香の手を取る。
辛く苦しいレッスンの成果が今ようやくここに実を結んだのだ。
アイドル甲子園準決勝を翌日に控え、【シュシュ・ラピーヌ】が堀塚音楽スクールへと戻る日となった。
迎えの車の到着前に、舞香が七瀬を呼び出す。
「七瀬お姉様。【堀塚音楽スクール】にいらっしゃいませんか? お姉様なら磨けば必ず・・・」
「えっ!? あたしなんて通用しないわよ。 それにあたしは姉貴の待ってる【星野荘】に戻らないと・・・」
笑ながら首を横に振る七瀬。
「そうですか・・・。でも、お姉様ならきっと・・・。待ってます・・・」
踵を返して舞香は走り去る。
(舞香ちゃん・・・)
その後ろ姿を見つめる七瀬であった。
迎えのワゴン車が到着し、荷物が車内へと運び込まれていく。
「お世話になりました、お姉様方。葵先生・・・」
【シュシュ・ラピーヌ】が順番にお辞儀をして車へと乗り込んでいく。
「ありがとう」
「楽しかったよ」
「また、遊びに来てね」
アキ達も口々に声を掛ける。
「【シュシュ・ラピーヌ】、理事長に宜しく伝えて欲しい。この恩は・・・」
「・・・」
葵の一呼吸がおかれ、皆が次の言葉を待った。
「この恩は、決勝戦に進んでお返しするとっ!」
「はいっ! 確かに言付かりましたっ!」
こうして【シュシュ・ラピーヌ】のレッスンは終了した。
(梨央音さん・・・、ありがとう。貴女の生徒は、素晴らしい娘達です・・・)
渡も感慨深げに見送っている。
「舞香ちゃーん。礼華ちゃーん、穂加ちゃーん、澄佳ちゃーん。元気でなぁ~っ!」
まるで何事も無かったかのように両手を大きく左右に振る八郎。
実に現金なものである。
「皆さん、御達者で~」
「フィル・シレンゲー(さようならの意)」
二郎とカトリーナも舞香達との別れが寂しそうであった。
その車の中で・・・
「運転手さん、少し寄って頂きたい所があるのですが・・・」
「・・・、承知致しました」
この後、舞香達が向かったのが萌の入院している病室であった事をここに記しておこう。
同じ頃――
【Konamon18】の宿泊しているホテルの一室では・・・
「めい、どうや? 【ムーラン・ルージュ】は?」
「ひな、こんなん相手になれへんわ。なぁ、しずく?」
「歌はソコソコやけど、ハリボテの演出で上って来たんやろ? うららとかえではどう思う?」
「うちらの圧勝で決まりやで」
「ちょろいちょろい。なぁ、ひな? うちらの敵は【ダイナマイト・ガールズ】だけやで。
そやろ?」
「そやなぁ。ほんなら、一気にケリつけて行ったろかーっ!」
室内に【Konamon18】の笑い声が響いていた。
だが、この準決勝で想像を絶する事が起きてしまうのである。
「そうですか・・・。ご苦労様」
堀塚音楽スクールに戻った【シュシュ・ラピーヌ】が梨央音への報告を行っていた。
七瀬の思わぬ演技力の事も併せて報告する舞香。
「そう、それは楽しみね。まずは今回、貴女達がどこまで出来たのかは、アイドル甲子園準決勝が全てを物語ってくれるでしょうね」
梨央音の言葉に戸惑う舞香達。
「ご心配はありませんわ。理事長」
ドアを開ける音と共に聞こえた声に舞香達が振り返る。
「お・・・、お姉様方?」
そこには高等部生3名の姿があった。
「この短期間で貴女達も成長したようですね」
「お姉様・・・」
「理事長、【シュシュ・ラピーヌ】は私達が鍛え育てました」
「その私達が認めて送り出したのです」
「そう・・・、だったわね」
「舞香・礼華・穂加・澄佳・・・。よく、やり遂げましたね」
この時、【シュシュ・ラピーヌ】だけでなく高等部生達も涙を流していた事を知っているのは彼女達の他は梨央音一人である。
そして・・・
(星野七瀬・・・。そんな光る原石まで見つけて来るなんて・・・)
梨央音は新しい何かを思いついているようであった。
その頃、渋温泉 温水屋――
「残念だったねぇ・・・。弥生さん・・・」
「でも、奈美さんは当たったみたいですよ」
「泉華全員が応募して、奈美さん一人とは・・・」
「かなり人気みたいですしね」
「まぁ、仕方ないか。アキ、頑張りなよ」
星野荘――
奈美が仏間で手を合わせている。
「お父さん・お母さん・菜緒・・・。七瀬を見守ってね・・・」
新宿 ル・パルファン――
「流石、ママですね。くじ運も強い・・・」
「瀬尾君も瑠花ちゃんも外れたのねぇ。残念」
「中継見て、応援してあげましょう」
「そうね・・・」
(頑張って、皆・・・)
某敬老会――
「かぁーっ! 全滅とはのう・・・」
「息子や孫達もダメじゃったと・・・」
一瞬、暗い雰囲気が漂う。
「大丈夫じゃ、あの娘達なら・・・」
「そうじゃ、そうじゃ」
「あの娘達なら、きっと・・・」
明るくそして、楽しいひと時を思い出し老人たちはアキ達の勝利を願う。
群馬 草津温泉 季(とき)・たちばなーー
「私が気にする事じゃないけど・・・。あの娘達が気になる・・・か」
書斎でノートパソコンを閉じたのは、紗矢子である。
湯郷温泉 塩原亭――
(お姉ちゃん、頑張ってっ!)
お茶の間審査員の当選メールが届いたスマホをじっと見つめる、湊帆。
その後ろ姿を見つめている女将・・・
そして・・・
「・・・ん? 何だ、これは?」
研究室で急に届いた当選メールを訝しげに見る神酒。
「うわっ、当選しちゃてる」
「マジかっ! すっげーっ!」
「しかも会場審査員って、強運じゃねっ!」
神酒のタブレットを覗き込んだ学生達が騒ぎ出す。
「なんですか、君達?」
「いや・・・。その・・・」
「少しでも確率を上げようと思って・・・」
フーっと大きく息を突く神酒。
「つまり・・・、君達が勝手に申し込んだという訳ですね」
「不動院先生、これはレア体験できますよ!」
「くだらない、興味があるなら君達に譲ります」
「いや・・・。それが出来ないんです・・・、本人限定で・・・」
「まあ、行かなければ良いだけですが・・・」
その時、神酒が何かを感じたようである。
(ふん、確かめに行くだけだ・・・。何もない、という事を・・・)
同じ刻、不動院晶も空を見上げていた・・・
様々な人の想いを紡いで、アイドル甲子園準決勝が始まろうとしている。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
不倫した挙句に離婚、借金抱えた嬢にまでなってしまった私、だけど人生あきらめません!
越路遼介
大衆娯楽
山形県米沢市で夫と娘、家族3人で仲良く暮らしていた乾彩希29歳。しかし同窓会で初恋の男性と再会し、不倫関係となってしまう。それが露見して離婚、愛する娘とも離れ離れに。かつ多額の慰謝料を背負うことになった彩希は東京渋谷でデリヘル嬢へと。2年経ち、31歳となった彼女を週に何度も指名してくるタワマンに住む男、水原。彼との出会いが彩希の運命を好転させていく。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる